超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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少々今回から、最後に行っていた【用語集】を止めてみます。理由としては、ネタ探ししているよりは、はよ小説書け的な感じです。
今後とも続けて欲しいという意見がありましたら、感想やツイッターに一言お願いします。


Scene37 奪われる片翼~Secuestro~

 

 

 

 

 

赤黒く染まった空、紫色に鳴り響く雷、荒れ果てた黒い大地、まるで吸い込まれたような崩れた複数の建物…。ここは、ギョウカイ墓場。全ての堕ちた者、負の感情が集う場所である。そんな場所に、まだ使える建物があり、その建物内に数人の人影があった。

 

「そうか…奴らは予定通り、ラステイションのゲイムキャラの力を持ったか。それで、奴らはルウィーに向かっているのだな?」

「既にリンダ、ワレチューを向かわせ、ゲイムキャラの捜索及び、古の四武器の捜索に当たっているようだな。」

 

そこは、薄暗い部屋でディスプレイから光が唯一の光源となっている。その部屋には、犯罪組織マジェコンヌの四天王が集まっており、ハーミットの姿もある。だが、現在の進行に対して気に食わない人物がいる。

 

「…気に入らねぇな。」

「ジャッジ、何が気に入らないと言う。」

「現在進行でやってるこの計画に決まってんだろ。確かに今の女神に挑んでも、弱すぎてつまらねぇ。…だがな、何時まで待てばいい!!俺ぁ我慢できねぇんだよ!!」

 

女神候補生にゲイムキャラの力と古の四武器を受け渡す事は、犯罪組織にとって計画の一つに過ぎない。しかし、その進行が遅く待てない戦闘狂のジャッジ・ザ・ハートは辛抱しきれない様子でいる。

 

「アックックック…確かに、待たされるのはしんどい。だが、力を付けた幼女をprprするのも吾輩は一向に悪くない…!」

「若しくは、強くなった女神を恐れているか…。」

「んだとぉ?俺が女神如くに恐れるだと?テメェこそどうなんだ、あぁ!?」

「…俺は、世界中の子ども達にゲームを届け幸せにする。その為にも、どんなに強かろうが、俺は負けない。…いや、負けるわけにはいかないのだ。」

「は!!そう言って、テメェこそ女神が強くなるのを恐れてるんじゃねぇよな?」

 

そのジャッジの言葉にピクリッと動く、見た目は場違いとも言える人物ブレイブ・ザ・ハートが、ジャッジに向かい掲げている大剣に手を置く。

 

「何だと…?」

「あぁ?やるかぁっ?」

「その辺でやめろ。」

『………。』

 

睨み合いを始めようとする二人に、マジックが威圧を放ちつつ二人に制止を促す。その威圧に二人は元の位置に戻る。

 

「私達は利害が一致した協力関係ではあるが、仲間として一致団結してるとは思えない。だが、我々の目的は犯罪神様の復活。そして、ゲイムギョウ界を統一する事だ…。それを忘れてはならない。」

「ところでマジックよ。奴は今の所協力はしてくれるし、利用価値はあるが、吾輩は奴を信用はおろか信頼する事は出来ぬぞ。」

「しかし、奴は力を求めて我ら犯罪組織に協力をしている。一定の信頼はしてもいいとは思うがな。」

「その力を求めているのが、吾輩には不透明で分からぬ。我らに再び仇なす為か、女神を仇なす為なのか…。」

「少なくとも、今は我々と協力関係なのは確かだ。」

「ふん…。」

「ジャッジ、何処へ行くのだ?」

「…ここに居ても詰まらねぇ。持ち場に戻るだけだ。」

 

そう言って、つまらなそうにジャッジは部屋から出ていく。

 

「戦闘狂が…。」

「抑えろ、ブレイブ。…トリック、犯罪神様の様子はどうだ?」

「今の所は、復活の為に力を蓄えているぞ。だが、吾輩達とは違う何かが流れ込んでいる感じもしたぞ。」

「…そうか。持ち場に戻れ。」

 

その声と共に、ブレイブとトリックは席を外す。

 

「…我々の思惑通りに行くのか。それとも、想像もしてない事になるのか…。ふ…それは犯罪神様のみぞ知る事か。」

 

マジックは椅子に再び座り、映像を再び見張るようにする。

 

「私なら、女神に頼らずともお前を救う手段を持っている。お前は、この状況でも女神を切り捨てる事が出来ないか…?」

 

深々と椅子に背凭れを寄せつつ、ため息じみた小声でそんな事を呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ルウィー:郊外】

 

ルウィーの街外れにある人気の全く無い場所に、一人安座で遠くから街並みを見ている黒装束を身に纏った男がいた。まるで、ルウィーを監視するかのように見渡しているようだ。そして、上からその人物に向かって何かが下りてくるのだった。

 

「よーう!こんなところで何やってんだよ?」

「…見ての通りだ。」

「んだよその反応、ツレねぇなぁ。“何か用でもあるのか?”ぐらい言えっての。」

 

男の素っ気ない反応に、少しは構えよという感じで話すが、それでも男は素っ気ない態度を示している。

 

「そもそも、お前みたいなのが黒幕だったとは、誰も思わないだろう。」

(ひっで)ぇなその言い方はよ。俺は歴史を面白可笑しくしてるだけだぜ?」

「…その結果がこれだ。」

「いーじゃねーか。これで犯罪組織側が勝っても負けても、面白くなるのに変わりはねぇんだからよ。俺は面白くする為に誘導するだけであって、その先の未来がどうなるかまでは分からねぇけどな。」

 

黒い妖精が面白可笑しく笑いながら言う。そんなことを後目に、相も変わらず素っ気ない態度を示す。

 

「…俺と漫才をしに来たわけじゃないだろう。」

「おー、そうだったな。まぁ、オメェの予想通り、向こうも面白可笑しくはなってるが、抗っているのは確かだぜ。」

「そうか。」

「でもよ。それ以前に、オメェが思い描いているシナリオのまま進むと、最終的にオメェは肉体的にも精神的にも死んじまうぞ?残された奴らの事はどうするんだよ。」

「この場に及んで俺の心配か?意外と優しいんだな。」

「なっ?!ち、ちげーよ!!オメェがそうなっちまったら、面白い材料が一つ減っちまうからでだな!!」

 

何かを心配するように黒い妖精は男に言うが、逆に揶揄<からか>うように言われあたふたしてしまう。

 

「その時は、俺がその程度の男だって事だ。」

「おいおいおい…本当にそれでいーのかよ。」

「…形あるものは何時か壊れる。例え、それが生命であってもな。」

「はぁ…良く分かんねぇよ、ホント。」

「分からなくていいさ………ッ!!」

 

男のその死んでも構わないような態度に、黒い妖精は溜め息をしてしまう。そんな時、男が立ち上がると同時に、頭を抱え体制を崩す。

 

「お、おいおい、大丈夫かよっ!!」

「…大丈夫だ、問題ない。」

全然(ぜんっぜん)大丈夫に見えねぇよ。顔色わりーし。あとその台詞は止めろよ…。まぁ、俺はオメェを止める権利はねぇから、止めたりはしねーけど、命は大事にしろよ?」

「肝に銘じておく。」

 

そう言いつつ、男はルウィーの方へ歩み始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【ルウィー:国際展示場】

 

「へへ…隙だらけ過ぎて、欠伸が出ちまうぜ。」

「ふえぇ…。」

「リンダ、テメェ…。」

 

前回のあらすじ…をここに居れるのはどうかと思うが、ロムと共にペンを落としたと思われるルウィー国際展示場で、ペンを見つけた矢先だった。ロムの背後にリンダが現れ、人質の如く捕まってしまうのだった。そして俺は、リンダのエネミーディスクから放たれたアイスフェンリル3体を目の前にしている。

 

「ロム、変身して脱出するんだ!!」

「…ダメ、出来ない…!!(ふるふる)」

「なん…だと…。」

「馬鹿め!アタイが何も考えずに来てると思ったら、大間違いだぜ!!」

 

なんてこった…。リンダは何かしらの方法で女神化出来ないものを持っているようだ。現状では、対象を触れているか、範囲で女神化を阻止しているのかが分からない。

 

「おぉっと!動くんじゃねぇぞ。こいつは人質なんだからなぁ?」

 

躙り寄ろうとした瞬間、開いている手で持っている銃のようなものを、俺からロムに向ける。迂闊に動けば、ロムに何をするか分からない状態だ…。

 

「へへっいいねぇこういう光景。散々痛い目に遭ったんだからなぁ。」

「…汚ぇ手使いやがって。」

「それは、アタイ等にとっては誉め言葉だぜ?そんじゃ、そいつ等の餌にでもなってろよ。あばよ!!」

「待ちやがれ…!!」

 

俺はリンダを追いかけるように、その場から勢いよく走り出そうとする。それと同時に3匹いるアイスフェンリルの内の1体が俺に向かって体当たりを仕掛けてくる。

 

(わり)ぃな、読み通りだ。」

 

そう言い俺は飛び上がり、突進してきたアイスフェンリルの頭を、赤い配管工の如く踏み台にして飛び上がり、この場を退けようとした。そう、この高さなら奴らも飛びつきは出来ないはずだ…。

 

 

 

 

 

―――――はずだった。

 

「なに…!!」

 

飛び上がった俺の正面には、飛んでこれるとは思えない高さからもう1体のアイスフェンリルが、空中体当たりを仕掛けてくる。空中にいる為に方向転換も出来ず、鞭で別の場所を引っ張って方向転換する時間もない為、俺はアイスフェンリルの突進をモロに受け、地面に叩きつけられる。

 

「ぐぅ…。(な、何をしやがったんだ…。)」

 

腹部を抑え、顔を左右に振りつつ立ち上がるが、奴らがどうしてあの高さまで飛んできたかは見てない。その間に、徐々にリンダは遠くへと逃げていく。だが、アイスフェンリル達は、俺に休む暇を与えてはくれねぇようだ。驚く事にアイスフェンリルが、ジグザグに動いたり、設備の上に乗ってショートカットをしたりと、まるで戦隊モノが連携をとって相手を倒そうとするような感じだ。

 

「やっべぇ…冗談じゃねぇぞッ…!!」

 

そのアイスフェンリルの動きとは思えない行動に、悪寒や危機感を感じた俺は体制を直し、後ろに全力疾走する。誰がどう見ても、訓練された警察犬のような動きをして、こっちに向かってきているのだから…。ここに来て、日本一と分かれた事が仇になろうとはな。1体なら俺一人でも何とかなるが、3体は流石にきつい上に得体の知れない動きをしやがるから、迂闊に攻撃が出来るとは思えねぇ。流石に足の速さは負けるが、ローリングやスライディングで辛うじて攻撃を避けていく。走っている最中に鞭の力を解放して、鎖鞭にしたのはいいが、攻撃を与える隙が見えねぇ。

 

「しまった、壁か…!!」

 

無我夢中に走っていた為か、角に追い込まれてしまった。壁に背を向け正面を見ると、アイスフェンリルが3方向から俺目掛けて走ってきていやがる。どう考えても絶体絶命だ…。だが、こんな所で“おお勇者よ!死んでしまうとは情けない!”になるのは御免だぜ。

 

「こうなったら…日本人健康男児且つスタントマンを舐めんなよ!!」

 

こっちに全力前進してくる3体のアイスフェンリルの距離を把握し、鎖鞭を上空のパイプに向けてフックショットの如く放出する。アイスフェンリル3体がこっちに飛び込んでくるタイミングを計ると同時に、フックショットのように放出した鎖鞭を引き戻すようにし、フワッと体が浮くと同時に上のパイプの方まで引っ張られる。

 

 

 

どっすーーーんっ

 

 

 

アイスフェンリル達は、飛びつきによる体当たりにより制御が効かず、飛び込んだ先の壁に激突し、3体とも壁に転がっていく。そして、俺は着地と同時に餞別(せんべつ)という事で、アイスフェンリルに向けて手榴弾を3つ投げ爆発させる。

 

「ジャックポット…!」

 

こうも上手く決まるとは思っていなかった為に、思わず背を向けつつガッツポーズをしちまった。

 

油断という、狩りでも、戦闘でも…最も恐ろしくて、迂闊な事をしてしまった事を後悔する。

 

「ぐがっ…!!」

 

突如、ガッツポーズとして体の横に出していた手に痛みが走る。右腕に嚙みついているボロボロになった、1体のアイスフェンリルがそこにいた。

 

「ぐっコノヤロぉ…!!」

 

開いている籠手を着けている左手で投剣を取り出し、体を捻りつつアイスフェンリルの目に突き刺す。アイスフェンリルの目に突き刺した事で、その痛みに耐えれず口を緩ませる。その隙に痛む右手を抑えつつ、アイスフェンリルから距離を置く。…はずだった。

 

「うぉ…!!」

 

“二度ある事は三度ある”とはこのことか…とか思ってる場合じゃねぇよ!!急に体が痺れだし足が縺れてしまいコケてしまった。

 

「牙に、麻痺毒でもあったと言うのか…!?」

 

アイスフェンリルの攻撃に麻痺系なんてあったかどうか覚えてはねぇが、兎に角上手く身動きが取りにくいこの状況では、流石にアイスフェンリルも受けたダメージが残っていて、身動きが鈍くなっているとは言え、戦う事も困難極まりねぇ。近づいてきては噛みついてくるが、完璧に動けない訳ではない為ぎこちないローリングで上手く距離を取っていく。

 

「(血が、出すぎている…。)」

 

噛まれた右腕が深いのか、出血が収まる気配がなく徐々に目の前が霞んでいく。

 

「(おいおい、これって絶体絶命じゃねぇか…。)」

 

こんな事になるなんて全く予想外な為に、回復アイテムは愚か肉すら持ってきてねぇ…。そしてついに手も足も麻痺で殆ど動かなくなってしまった。しかし、無慈悲にもアイスフェンリルはこっちに近づいてきて、その鋭い牙で噛みつこうとしてくる。だが、こんなところで第二の人生を終わりにはしたくねぇよ。

 

「ぐおおおおお…!!頼む、上がってくれ…!!」

 

足が震えているが、何とか立ち上がる事は出来た。だが、麻痺毒は俺を許してはくれないらしく、手が全くと言っていい程持ち上がらねぇ。そしてアイスフェンリルが目と鼻の先まで近づいてきてしまった。ああ、目の前がホワイトアウトかブラックアウトになった…になっちまうのか…。

 

 

 

 

 

それでも、天は俺に見方をしてくれたようだ。

 

 

 

 

 

「やあああああああっ!!」

 

突如、上の方から掛け声がして、瀕死状態のアイスフェンリルに斬撃を加えた、猫耳帽子を被った女性が現れ、目の前にいたアイスフェンリルが結晶片となる。

 

「キミ、大丈夫!?」

「…助かった…ガクっ。」

「ええええ!!全然大丈夫じゃない…!!」

 

俺は、そのまま倒れ込んでしまい意識が遠のいてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで逃げれば、あの筋肉モリモリの変態マッチョマンは来ないだろう。」

 

ロムを人質に取り、リンダは国際展示場を出て国際展示場の入り口の方に振り返る。

 

「………。」

「それにしても、この睡眠薬を仕込んだハンカチは良い効き目してやがるぜ。さぁて…此奴はとことん利用しねぇとな。今までアタイをバカにしてきた事を後悔させてやらぁ!」

 

リンダの表情は何処か勝ち誇ったような感情と、ロムをどう利用しとうかという考えが混同し、妙に悪どい顔をしている。

 

「そうだそうだ、ゲイムキャラの場所は把握してんだ。交換条件ってのもいいな…うっし、それで行くとするか。」

 

人質であるロムを交換条件的な事で利用しようと思いつき、リンダが国際展示場を背に向け闇の中へと消えていく。

 

 

 

 

 

それから数十分後。余りにも二人の帰りが遅いからか、ネプギアとアイエフが国際展示場の前まで向かってきていた。

 

「アイエフさん、何か転がってます!!」

「行ってみましょう。」

 

二人が国際展示場の前に転がっている棒のような物を見つけ、そこまで走っていく。その棒は二人にとっては見覚えのあるものだった。

 

「これは…ロムちゃんが持ってた杖…!?」

「信じられないけど、二人の身に何かあったとしか言えないわね。…一緒に情報収集していれば…。」

「ロムちゃーーーん!!何処にいるのーーーーー!!」

 

ネプギアの呼ぶ声は、雪が降る暗い夜に響き渡るが返事は帰ってこない。それどころか、その声は虚しく響き渡るだけだった。

 

 

ガッチャン―――――

 

『!?』

 

突如、国際展示場の扉が開く音がし、二人が扉の方に目を向ける。

 

「ふぅ…やっと外に出れたよ…。見た目以上に重いよこの人…。」

 

―――――その扉から一人の少女と見覚えのある右腕が血まみれの男が出てくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

一応犯罪組織編の最後の展開は出来ていますが、そこまで辿り着くまでの工程を行き当たりばったりに書いていたせいか、若干ネタ切れというかペースダウン気味です。

あと、現在ローペースでですが、1stEncounterを少しずつ今風に書き直しています。


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