超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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毎週金曜以降に出すとか決めていませんが、よく見ると金曜~日曜の間に上げている時期が多い。とりあえずマイペースに…あと、PUBGとアズールレーンが楽しい。


Scene35 第二のゲイムキャラ~2nd Contact~

 

 

 

 

 

「これは、驚いた。これほど、番狂わせになったのは初めてだよ。」

 

セプテントリゾートから、満身創痍な状態でラステイションの教会に戻って来た俺とユニちゃんは、戻ってくるなり教会の救急係に治療を受け終え、ケイさんに持ってきた(ブツ)を渡して品定めをして驚いている。

 

「驚いたってどういう事よ、ケイ。」

「まさかと思うが、それが要求していた…?」

「そうだね。結論から言えば、君が持ってきたこの結晶体が、血晶だ。」

 

それを聞いてユニちゃんは驚くが、俺は内心そうじゃないかと思っていた。あんな真っ赤な誓いとか言いそうなくらいの色だからな。

 

「とは言え、犯罪組織も血晶を探していたとなると、向こうも何か企んでいる可能性は高ぇだろうな。」

「これは僕の憶測だけど、犯罪組織も此方と同じことを考えている可能性はあるね。」

 

しかし、犯罪組織の情報が今のところ流れていない為に、此方が集めている物と同じものを集めて、同じことをやろうとしているとかそういうのは掴めていないらしい。まぁ、俺がどうこう考えようが、決定権はあいつ等に任せている事だし、俺はネプギア達が教会に着くのを待つことにする。それで、ラステイションのゲイムキャラの居場所を掴めば流れ的には悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程なくしてネプギア一行が教会に着き、宝玉をケイに渡す。それと、ジンが持ってきた長銃と、ネプギアが持っているバーチャフォレストで拾った剣を、修理等の為預ける事となる。

 

「確かにこれは宝玉だね。これで此方が要求していたのは全て揃った。お疲れ様。」

「こっちの行動はお見通しだったみたいだけど、血晶は予想外って感じね。」

「まぁ、僕としては、事が早くなった程度だけどね。でも、材料が揃った事は感謝してるよ。」

 

ケイの反応に、アイエフが若干ムスっとするが、そんなことよりジンとユニがセプテントリゾートで何があったのかを問い、一通りネプギア一行にセプテントリゾートで何が起きたかを話す。

 

「まさか、血晶がそっちで手に入るなんてね。運が良いのか…。」

「生きているのが奇跡的とでも言いてぇのか?」

「まぁね。良くもまぁあんなのと戦う気になれたわね。」

「…女神を見捨てる程、俺はバカじゃねぇさ。」

「ユニちゃんは大丈夫だったの?」

「アタシが、あんなのにやられるわけないでしょ。」

 

互いに情報交換をしていると、ケイがデータチップのようなのを出す。

 

「お話し中悪いのだけど、これが君達が探しているゲイムキャラの居場所などが入った情報だが、先にギョウカイ墓場で起きた事を伺いたい。」

「ギョウカイ墓場…。分かりました。」

「アタシも聞くからね。包み隠さずに答えなさいよ。」

 

そして、ネプギアはギョウカイ墓場へ突入した時の出来事を、助けられた時の事をケイとユニに話す。

 

 

 

 

 

 

「そうか…ノワールは無事か。」

「そんなに心配なら、さっさと教えても良かったんじゃないの?」

「此方にも事情があってね。その為にも、君達に要求した材料が必要不可欠だったんだよ。」

「でも、お姉ちゃんは捕まっている事に変わりはないんだね…。」

「ごめんなさい…。私がもっとしっかりしていれば…。」

「いや、これは君一人の責任ではない。此方がノワールだけを指名したこともある上に、犯罪組織が予想以上に勢力があることを見抜けなかった僕達にも落ち度はある。ユニも、何時までも意地を張っている心算だい?」

「あんなのを見せられたら、協力しざるを得ないわね。…ネプギア、アンタも苦しい思いしてるのに、アタシの我が儘で距離を置いてゴメン。」

 

自らハーミットに単独で挑んで負けた事。少し期待していたジンもやられた事に、今回の事の大きさを察したかのように、ユニはネプギアに距離を置いていたことを明かし謝る。

 

「うぅん…元はと言えば、私がユニちゃんを心配させちゃう行動をしてたことも悪いんじゃないかな。」

「そうやって一人で抱えちゃうところも、変わってないわね。」

 

二人の和解により、周りにも微笑みが現れている中、ジンはケイから貰ったチップを携帯端末に差し込み、情報を受け取る。

 

「…ここに、ラステイションのゲイムキャラがいるのか。」

「そう、君達が探しているゲイムキャラはそこにいる。ただ、彼女の協力を得られるかどうかは、此方で保証は出来ない事を覚えておいて欲しい。」

「え?それってどういう意味?」

「…我が儘か、頑固ってところだろう?」

「そこは、実際に会って見た方が早いかな。僕は、ここで彼女の協力を得られる事を祈ってるよ。」

 

転生者のジン以外は、ラステイションのゲイムキャラがどんな人物像なのかは分からない。ただ、ジンも曖昧な上、自分が知っている流れではない為確信を持てずにいる。

 

「ユニちゃんも、ゲイムキャラには会いに行くよね?」

「そうね。自分の国のゲイムキャラが、どんな奴かを知らないってのも変な話よね。一時的にアンタと協力するわ。」

「一時的…?」

「え~?ずっと着いて行かないの?」

「うん。アンタと行くには、まだまだやらなきゃいけないことがあるわ。それが終わったら、アンタ達と一緒に戦うわ。それだけは約束する。」

 

REDがユニに若干不服な感じに言うが、必ず同行するとユニが言い渋々納得する。

 

「(やっぱり、ノワール様に似てるからか、譲れないところがあるんだね。)」ヒソヒソッ

「(…そこが、ユニの取柄でもあるだろ。)」ヒソヒソッ

「日本一さんとジンさんは、何を話してるです?」

『ん、なんでも?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【セプテントリゾート:奥地】

 

教祖のケイから、ゲイムキャラの情報を貰い、その地図に従い一行はセプテントリゾートへと向かう事にした。指定された場所に向かう途中、披露宴をするような場所に着き、関係者以外立ち入り禁止という訳でもないが、警告マークがあり裏方への一般立ち入り禁止のような形になっている。

 

「…見た目は行き止まりね。」

「そうだね…。でも、渡された地図はこの先にあるみたいだけど…。」

「あいつは、ビジネスに関しては対等よ。今更嘘の情報を渡すとは思えないわ。」

「…確認した方がいいだろう。」

 

そういって、ジンはその建物の扉に手を伸ばしてみる。すると扉には触れず、まるで水の中に手を突っ込んだような感覚になる。そして、そこに顔を突っ込み、周りが驚くがすぐに顔を出す。

 

「この先に道があるぞ。」

「…あえてこうする事で、あたかも関係者が出入りしていると示しているのかしら。」

「でも、情報通りならこの先にゲイムキャラが…急ぎましょう!!」

「そーだね、早くヨメの為にも会わなきゃね!!」

「ちょ、ちょっとネプギア!一人じゃ危ないわよ!!」

 

前の事があった為、一分一秒でも早く会わなければと思い、ネプギアは駆け足でそのエリアに入り、それを追いかけるようにREDが、慌てるようにユニが入っていく。

 

「…団体行動ってなんだ?」

「今更それを言っても仕方ないわよ。ほら、私達も置いて行かれる前に行きましょ。」

「はいです。」「ああ。」

 

そうして、ジン、アイエフ、コンパ、日本一は先行した3人を追いかけるようにその向こう側へと入る。その後ろをある影が追っている事も知らずに…。

 

 

 

 

 

一行は警告エリアに入るが、そこは特に変わった感じはなく、通常のセプテントリゾートと大差ないといった感じだ。一つ違う事を言えば、幅広の円型エリアは存在するが、基本的に一本道となっている。

 

「あ…あれは、もしかして!」

 

すると、最前列に立っているネプギアが何かを見つけ走り出し、全員がそれに合わせるように走り出す。最深部と思われる場所に、浮遊する青光りな球体がそこにあった。

 

 

≪…何やら大勢来ると思えば、これは珍しい客人だ。まさか、プラネテューヌとラステイションの女神候補生が来るとは…。≫

 

流石に大勢で来ていたからか、ゲイムキャラが此方に誰か来ている事は察していたことが伺える。しかし、プラネテューヌとラステイションの女神候補生であるネプギアと、ユニがこの場にいることに、ゲイムキャラは若干驚いてる。

 

「あ、ラステイションのゲイムキャラさんは起きているです。」

「…それだけ、プラネテューヌに比べて、ラステイションが危機なのかもしれないわね。」

「これが…ゲイムキャラ…。」

「あ、あの。貴方が、ラステイションのゲイムキャラですか?」

≪如何にも…。だが、お前達二人がいるのはどういうことだ?≫

「お願いします!私と一緒に来てください!!」

≪唐突だな。理由も無しに私がここを離れるなど出来るはずがない。≫

 

ネプギアがゲイムキャラに向かって頭を下げる。だが、行き成り着いて来て欲しいと言った為か、ゲイムキャラが若干不機嫌な感じで言い返してくる。そこで、ジンがゲイムキャラの前に出て口を開く。

 

「ネプギア…行き成りそれは失礼だろ…。俺から説明します。今から3年前に四女神がギョウカイ墓場に向かったが、そのギョウカイ墓場にいる犯罪組織に捕らわれています。女神様を助ける為に、力を貸して欲しいのです。」

≪…成る程。薄々は気付いてはいたが、女神は余所の地に捕らわれていると…。≫

「そうなんです。だから、お願いします!力を貸してください!」

「アタシからもお願いします。お姉ちゃん…いえ、ブラックハート様を助ける為に、力を貸して下さい…!」

 

ネプギアとユニが二人して、ゲイムキャラに頭を下げる。だが、ラステイションのゲイムキャラが、ネプギア一行に放った言葉は予想外な事だった。

 

≪確かに、お前達に私の力を渡すことは容易だ。だが、女神が捕らわれているなら尚の事、お前達と一緒に行く事は出来ない。≫

「なっ!!」

「え~!どうして!!」

「な、なんで、ラステイションだけでなく、ゲイムギョウ界が大変な事になってるんですよ!!」

 

ゲイムキャラが放った言葉に、ユニが驚くと同時に顔を上げ、REDと日本一がゲイムキャラに不服と思い返答を求める。

 

≪…私の使命は、女神の身に何かが起きた時、女神の代わりにこの地を守護する事。私がここを離れるという事は、女神候補生がいると言えど、この地を無防備にしてしまうのと同等の意味となる。≫

「アンタ…それじゃあゲイムギョウ界がどうなってもいいって言うの!お姉ちゃんが助からなくてもいいっていう訳!!」

≪私の力は、この地を如何なる脅威から守護する事。これは、古の女神と交わした約束でもあり最優先事項でもある。つまり、私の力は女神を助ける為のものではない。≫

「…プラネテューヌのゲイムキャラは、力の一部を貸してくれた。それもダメなのか?」

≪力を渡すという事は、私自身の力の一部が無くなる。そうなれば、私の守護する力は弱まり、全ての驚異から守れなくなる。残念だが、お前のその籠手にも協力する事は出来ない。≫

「そんな…。」

「成る程、あいつが言っていた事ってこういう事なのね。これは厄介ね…。」

 

プラネテューヌのゲイムキャラが協力してくれているから、同意してくれるだろうという考えも、しっぺ返しを食らったかの如く失敗に終わる。どうすれば協力してくれるか、全員が考えていると、来た道から何かが此方に向かってきている。

 

「愛しのマイハニー、コーンーパーちゃーんーーー!!」

「え…?ふぁああ!ね、ネズミさん!?」

 

後ろから名前で呼ばれた為、コンパがそっちの方を向くと、ネズミ事ワレチューがコンパ目掛けて飛び込んできた。羨ま…もとい怪しからん事に、コンパの胸へ飛びついてくる。

 

「わ、ワレチュー!」

「な、アンタは…!!コンパから離れなさい!!」

「ヂュっ!!な、何するっチュか乱暴女!!折角コンパちゃんやゲイムキャラに会えたっチュのに!!」

「誰が乱暴女よ!!」

 

アイエフがワレチューを掴み投げ飛ばすと、折角裕福な時間を堪能できるところを邪魔された為に反論する。

 

「何?あの黒いネズミさんは…。」

「ねぇジン、あのネズミと知り合いなの…?」

 

ワレチューの事を知らないREDと日本一が、最初にワレチューの名を言ったジンに寄って言う。

 

「…ああ、女神様もよーく知ってる存在だ。まさかと思うが―――――」

「チュッチュッチュッ…察しがいいっチュね。」

「ネズミ、まさかアンタ…!!」

 

不敵な微笑みをするワレチューに、アイエフが察したように言う。その流れに乗るように、ワレチューが左手を腰に当て、天を指すように右手を上げる。

 

「そうっちゅ。今のオイラは、オバハンの右腕じゃなく、犯罪組織マジェコンヌの一員であり、ネズミ界のNo.2マスコットのワレチューは、オイラのことっチュ!!」

『ええ!このネズミ(さん)って敵の一員だったの!!』

「やっぱり…!また何か企んでるのね…!!」

 

ドドーンッ!とワレチューの後ろが爆発すると共に、エヴァ明朝風の書体でワレチューという名前がテロップ風に出現する。…あくまで演出ですはい。そして、敵である事に驚く日本一とREDであった。そして、ユニがワレチューを警戒し銃を構える。

 

「ね、ネズミさんが派手ですぅ!」

「く…下っ端と違って派手ね…!」

「下っ端…?ああ、アイツの事っチュね。オイラとアイツを比べるのは困るッチュよ。さぁ、犯罪組織と愛しのコンパちゃんの為にも…チュ?」

 

ワレチューが色々と話していると、自分に何か太い紐状の物が絡まっているのに気づく。

 

「そこで寝てろ。」

「チュっ!ヂュヂュっーーーーーーー!!!」

 

その紐状の正体はジンの鞭であり、ジンはそれを思いっきり引っ張り、空中に上げた後叩きつけ、更に鞭を引っ張り戻しワレチューがその場でコマの如く高速回転する。その回転が収まる時には、既にワレチューの目は渦巻き状になっていた。

 

「ちゅぅ…こ、コンパちゃんが…いっぱい…。お…お前、酷いッチュよ…。」

「色々な物語の悪役にな、ずっと思った事があんだよ。…無駄に(なげ)ぇ自己紹介とか、悪の組織紹介だとかしてる時が一番隙じゃね?ってな。それを利用したに過ぎねぇよ。」

「…アンタ、鬼ね。」

「俺ぁユニのように、女神程強くねぇし、しがないスタントマンを目指してる傭兵に過ぎねぇしさ。倒せる隙があるなら倒す迄だ。」

 

すると、コンパが少し前に出てワレチューに話しかける。

 

「あ、あの、ネズミさんは、犯罪組織の方です?」

「(うぅ、天使のコンパちゃんに嘘は言えないッチュ…。)そ、そうッチュ…。」

「ネズミさん、わたしは女神さん達を助ける為に旅をしているです。だからネズミさん。貴方はわたし達のできです!」

「て、敵ぃ…!?ガガガガーーーーン!!」

 

ワレチューはその言葉にショックを受けたのか、その場に項垂れorzな状態になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「犯罪組織のシェアが多くても、やはり人数で分が悪いか…。」

『っ!?』

 

その時だった。ワレチュー側から声がしたが、どう考えてもワレチューとは思えない声がした為、全員がワレチューを視線を向ける。なんと、ワレチューの影から人型の何かが出てくるのだった。口元を隠す程のネックコートに狩人帽、暗殺者のような仮面に包帯で顔を覆っている。そんな異質な雰囲気を出す人物に対して、その場に居る全員がゲイムキャラを守るようにその人物に向けて武器を構える。

 

「(顔の包帯と仮面が無ければ、殆ど“吸血鬼狩りのD”見てぇじゃねぇか…。それに、あの影潜りは…。)」

「何者よ、アンタ!」

「…名乗る程でも無い。」

 

そう言ってその人物は、倒れているワレチューを左腕で挟むように持つ。

 

「アンタも犯罪組織なのね…!」

「だとしたら、どうする。」

 

アイエフが質問をするが、反応からして恐ら十中八九犯罪組織所属だろうと判断する。そう言っている間に、ジンと日本一がその人物に接近する。

 

『ここで止めるまでっ!!』

「受けよ!正義の剣!!」

「俺の力、その身に刻めっ!!」

 

日本一の剣と、ジンの鞭が同時に振り下ろされる。

 

『い、いない…!!』

 

驚く事に、そこにはワレチュー含め何もおず、ただ空を斬っただけになった。

 

≪な、何をする…!!ち、力が…!!≫

 

自分達の背後からゲイムキャラの声がし後ろを振り向くと、そこには先ほどの人物が、化け物のような右手でゲイムキャラを鷲掴みにしているのだった。

 

「何時の間に、何があった!!」

「ジンさんと、日本一さんが仕掛けた時、急に帽子を投げたと思ったら、地面に消えたんですよ!」

「(冗談抜きでやべぇ奴じゃねぇかよ。)」

「ゲイムキャラさんを、話で下さい!」

 

だが、その言葉に耳を貸す気配は無く、開いている手でワレチューからCDのようなものを出し、ネプギア一行に差し向ける。すると、そのCDから禍々しいオーラを纏ったフェンリルが出現する。

 

「お前達の相手は此奴がする。生きていたらまた会おう。」

 

その人物はそう言いつつ、足下に魔方陣を転換する。犯罪組織が離脱する際に使っていた転送魔方陣だ。だがしかし、ただ一人だけその右腕と瞬間移動の方法を知っていて、心当たりのある人物が一人居る。

 

「待ちやがれ!獨斗ぉ!!」

 

そう叫びつつジンはその人物に鞭を振る。だが、一歩遅かったようで、その人物はその場から消えてしまい空振る。

 

「ガウウウウッ!!」

「…!しまっ―――――」

 

 

バーーンッ

 

 

ジンは、周囲が見えていなかったのか、襲いかかってくるフェンリルの攻撃に気づくのが遅れてしまった。だが、間一髪で女神化したユニの攻撃がフェンリルに当たり、攻撃を中断させる事に成功する。

 

「アンタ、ここに居ない奴の名前なんて叫ぶ前に、目の前の相手に集中しなさい!」

「…助かったぜ、ユニ。」

「ネプギア、アンタもぼさっとしてないで、女神化しなさいよね!」

「あ、ご、御免なさいアイエフさん。…行きます!」

 

何か飛んでもないのを見たのかという表情をしていたネプギアに、アイエフが渇を入れ女神化の指示を出す。

 

「それにしても頑丈ね。頭を吹き飛ばす気で撃ったのに…。」

「それだけ、何か強化を施されてるのかもしれねぇぞ。」

「そうだったら厄介ね、気をつけて戦うわよ!」

「グルルルル…。」

 

7対1とフェンリルの方が不利に見える。だが、フェンリルは怯える様子は見えない。まるで戦うことだけを命じられた機械のように、ネプギア達に敵意を向けている。

 

「チッ、殺る気満々じゃねぇか。」

「タダのフェンリルじゃなさそうね。こっちがどう行動するか様子を見ている感じね。」

 

目の前に居る禍々しいオーラを纏うフェンリルは、前足を地面に引っかけつつ首を左右に向けて警戒をしている。一歩前に進むのを確認すると、唸り声を出し威嚇する。

 

「(こんな状態じゃ、いつまで経っても前に進めないよ。)」

「(…突破口は、自分達で切り開く。そうだろ。)」

「(じゃあアタシ達のやることは一つだね。)」

「(わかりきった事を…。)」

 

ジンと日本一が、そんな感じのアイコンタクトをして頷く。長い月日、手を組んでいた二人ならではの行動である。当然ジンは鞭を、日本一は剣をと武器を取り構え、一歩前にでる為、周りからも驚かれる。

 

「ちょっと、アンタ達何考えてるのよ!」

「何って、アタシとジンが陽動するよ!」

「その間にそっちはそっちで、作戦を考えて行動しろ。」

「ヒーローが何時までも、大人しくしている訳にもいかないもんね。」

『未来は、自分の手で切り開くものさ!』

「待ちなさい…!」

 

アイエフの抑制を振り払い、ジンと日本一がフェンリルに駆け寄る。

 

「喰らいな…!」

「てやぁあっ!」

 

ジンが飛びかかるように、砂入りグレネードをフェンリルの目に目掛けて投げる。衝撃で爆発する仕組みのようで、フェンリルの額あたりに当たり爆発と同時に大量の砂と粉塵が舞い、フェンリルの視界を奪う。その隙に日本一がフェンリルの側面や背後に回り込み、剣や蹴りを織り交ぜて戦っている。そして尚且つ、ネプギア達に向けないよう、ジンがフェンリルの敵対心(ヘイト)を稼ぐように投剣や鞭等で牽制しつつ、その隙に日本一がといった戦法をしている。

 

「うぉ…!!」

「ジン…!!」

「大丈夫だ日本一。思ってたよりこのわんこは威勢がいいみてぇだ。」

 

それでも、フェンリルはお構いなしに体当たりや引っ掻きの攻撃を仕掛けてくる。その攻撃をジンは鉄製の十字架で防ぐという荒業を見せる。だが何だかんだ二人共、異様なフェンリルと対等にやり合っている事も予想外であり、アイエフが頭を抱え吹っ切れる。

 

「ああもう!ネプギア、早く指示をしなさい!!」

「ええ!わ、私ですか!?」

「曲がりにも、ネプギアは女神様なんだからね。」

「アタシはヨメの為なら、従うまでだよ!!」

「ギアちゃん、わたし達も協力するです!」

 

少し考えた後、ネプギアは力強く頷き全員に言う。

 

「…分かりました。アイエフさんとREDさんは、ジンさんと日本一さんの支援と足止めを。コンパさんは、もしもの為に回復の準備をして下さい。」

「分かったわ!」

「りょ~か~い♪」

「はいです!」

「ユニちゃん…!」

「…今回はアンタの指示に従うわ。さぁ、何をすればいい?」

 

最初は断られるんじゃないかと思っていたが、左手でガッツポーズの合図をした事で、協力する事を強調したのだとネプギアは思った。

 

「私のM.P.B.Lと、ユニちゃんのX.M.Bの最大チャージで一気に決める…3分で出来る?」

「…いえ、一分で十分よ。」

「うん、わかった!」

 

そう言って、二人は互いの武器を構え、武器にエネルギーを蓄え始める。

 

 

「いっけぇえええっ!!」

「ジン、日本一、助太刀するわよ!ラ・デルフェスっ!!」

 

フェンリルに向けて、REDは巨大なフリスビーの乱舞、アイエフは魔法による攻撃を仕掛ける。フェンリルの視野外からの攻撃によりクリーンヒットし怯む。

 

「作戦が決まったんだね!」

「何となく、何をするか分かるな。なら、足止めするまでだ!」

 

怯んでいるフェンリルに、ジンが急接近し、印を示した左手をフェンリルの胴体に当てる。

 

「大人しくしてな…、怒りの雷撃ッ!!」

 

古のゲイムキャラの力が宿る籠手から、雷の力を放ち強力な電流がフェンリルを襲う。一瞬の触れだけで強力な電流により、フェンリルは痺れて身動きが取れない状態になる。

 

『ジン(さん)、退いて(下さい)!!』

「…!!」

 

ネプギアとユニの方を見て、準備が出来たのだと察知したジンは、その場からバックステップで離れる。

 

『いっけぇええええええっ!!』

 

ネプギアのM.P.B.Lと、ユニのX.M.Bがフェンリルに向かって放たれる。その二つのレーザーがフェンリルに直撃し大爆発が発生する。爆風と共に、フェンリルだったであろう結晶片があたりに飛び散るのだった。

 

 

 

 

 




【用語集】

○orz
 顔文字的な一種で、手をつき跪いているような格好に似ている事から、そんなシチュエーションの際に使用される…と思う。

○未来は、自分の手で切り開くものさ!
 元ネタは”テイルズ オブ ジ アビス”のガイ・セシルの台詞の一つ。因みに、自分は何となくこの言葉を入れた後、検索したら上記の元が会った事に驚いています。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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