超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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ネプテューヌの新作の公式HPが公開されていました。プラットフォームは今のところPS4のみ…チクセゥモッテナイorz


Scene16 Diva of LeanBox~歌姫~

 

 

何だか無駄に長く感じる2週間だった…。

そんな事を考えながら俺はリーンボックス行のフェリーに乗っている。フェリーに乗っている最中に、イストワールから連絡があり“転生者”に関しての情報提供…だったのだが有力な情報は無く、殆どブランが調べてくれた情報と大差なかった。直接会って話をするのが一番なのだが、今のところ転生者と思う奴は数人候補として把握している。だが確信を持てる材料がないからその候補全員が転生者じゃない可能性もある。

 

≪幾ら探してもそのような情報しか出ませんでした…。申し訳ありません。≫

「いや、協力してくれただけでも助かる。感謝している。」

≪いえ、此方こそお力になれなくてすみません。それからもう一つご報告があります。≫

「なんだ。何か問題でもあったのか?」

≪はい…、リーンボックスでCDが売れなくなっているのはご存じですか?≫

「ああ、ラステイションに行く前にベールから連絡があって、その際に調べている。…更に売り上げが下がったと言うのか?」

≪劇的にという訳ではありませんが、確かに売り上げが下がっています。しかし、それだけではなく、プラネテューヌも、ラステイションも、更にルウィーでもCDの売り上げが落ちているのです。≫

「…裏がありそうだな。」

≪それから、リーンボックスで人員が不足している為アイエフさんを派遣させています。着きましたら合流して下さい。調査方法などはそちらにお任せします。≫

「分かった。合流出来次第また連絡する。」

≪分かりました。アイエフさんとの合流地点情報をそちらのNギアに登録しておきます。それでは、宜しくお願いします。≫

 

Nギアの電話を切ると、丁度リーンボックスまで間もなくというアナウンスが流れ出す。それから数分して到着のアナウンスが流れる。愛用(中古)のバイクを取りに行く為フェリーの駐輪所へ向かう為立ち上がる。…それにしても、Scene14で思ったテロップが現実になろうとは…洒落にならないな。

今回のフェリーでは輸送物等が少ないのか、がらりとした駐輪所で自分のバイクを見つけつつ目的地を確認すると、どうやら指定された場所はリーンボックス教会近くのようだ。Nギアをしまいエンジンを掛けようとした時だった。

 

ガタッ

 

と、奥の方から物音が聞こえた。物音の場所は不可思議においてあるコンテナの裏から方へ寄ってみる。念の為、ネプギアに協力してNギアに搭載した爆弾・地雷探知機をオンにしつつ、ガンホルスターに手を掛けながら近づく。

 

「…人?」

 

そこには、深く顔を隠すようにフード付ローブを羽織っていて、フードから長髪なのか黄緑色の髪が出ている推定17歳前後の女の子が体育座りで蹲っている。Nギアの探知機を切り、耳を澄ませてみると息はしているが分かった為、Nギアのライトをオンにして女の子へと向けつつ肩を軽く叩くことにした。

 

「おい、大丈夫か…?」

「ん………。…!?」

 

此方の事を認識した瞬間、目を見開いたような反応をし、猫がロッカーから飛び出てくるかの如く此方に飛んでくる。それに反応するように俺はバックステップで回避するが、こっちまで飛んでくる事無く方向転換し、女の子は出口の方へ一気に向かっていった。まるで何かから逃げるかのように…。

 

「………。面倒臭い事に巻き込まれてなければいいが…。」

 

このことを、イストワールやアイエフ、ベールに報告する事を決め、バイクに戻り目的地へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

【リーンボックス:合流地点】

 

永守との合流地点で待機しつつ、わたしはリーンボックスで起きている事の情報を集めているわ。まさか、リーンボックスだけでなく国全体でCDの売り上げが低下しているなんて、想像しなかった上に迂闊だった。オトメちゃんにも協力をお願いしてるけど今のところは連絡待ち…永守と合流したら教会で現状を確認するしかなさそうね。そうしていると、一台のバイクがこっちに向かってきているのが見える。あれは永守が中古で手に入れたバイクね…。それにしても、よく中古でEVA初号機みたいなカラーリングのバイクがあったものね。

 

「久しぶりだな、アイエフ。」

「そうね、久しぶりね永守。元気してた?」

「見ての通りさ。悪くない。…それで、具体的な状況はどうなっている。」

「まだ、有力な情報は掴めてないわ。ただ、裏があるのは確かね。それじゃあ、教会に行って状況を整理しましょ。」

「ああ。」

 

そう言って、わたしと永守は持ってきたバイクを手押ししつつ教会に向かう事にした。そんな時、永守がフェリーであったことを話す。

 

「フェリーの駐輪所に不審者と思われる女の子ねぇ…。ここ最近の不審者情報は入ってないわね。それに、問題を起こしている訳じゃないなら今は保留にしてもいいと思うわ。」

「そうか…。」

「で、アンタこっちの問題には協力してくれるのよね?」

「無論だ。困っている人を助けるのが俺の本望だ。状況はある程度把握している。」

 

具体的に話す必要はなさそうね。ネプ子もこれくらいの要領が良ければね…。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【リーンボックス:教会内待合室】

 

リーンボックスの教会の待合室的な場所に集まり、状況を整理する為ベール同席の元行っている。同席に赤髪のツインテールで警察組織のようなリーンボックス特命課の一人“ケイブ”がベールの隣に座っている。軽く挨拶をした時呼び捨てで構わないという許可があるので、こうして呼び捨てで呼んでいる。情報収集を専門としているが、決定的な情報はまだ掴めていないとのこと。それからもう一人同席している。リーンボックスの歌姫こと“5pb.”がいる…いるのはいいのだが…。

 

「人見知りか…。歌を聴いた時の印象とは違うな。テニスラケットを持つと“おっしゃー!”とか、バイクに乗ると“うーッはーッ!”的なか?」

「…何か違う気がするわね。」

「…少々違いますが、まぁ、そんな感じですわ。」

「あの…その…ご、ごめんなさい…。ぼ、ボクは…あの…ステージの上に立ったり、歌う時は…その…スイッチが入るというか…えっと…男の人とも…あまり…。」

 

ベールとケイブの後ろに隠れるかのように、小動物が怯えているかの如く此方をチラチラと見ては隠れるを繰り返している5pb.がいる。本人曰く、舞台やステージ上ではやる気スイッチならぬ仕事スイッチ的なのが入るそうだ。驚くべき事は、プロデューサーはベールが行っており、二人は長い付き合いで且つゲームで鍛えぬいた感覚(センス)を注ぎ込んで今に至るそうだ。ゲーム感覚を除けばある意味多彩だなベールは…。それと、他の女神とも仲が良く、アイエフも5pb.とは一時期スランプになった時にアドバイスをしたり、人見知り克服大作戦をしたりと、何度か交流をしているそうだ。

 

「ところで、気になってましたが、永守さんは煙草とか吸わないのかしら?」

「煙草?何故。」

「いえ、失礼かとは思いますが、見た目的に吸っていそうだなっと思いまして。」

「あんな健康に悪い薬草(合法ハーブ)の何がいいんだ?…まぁ、ガムなら噛むがな。」

「ベール様に永守、話が脱線してるわよ。ベール様、話の続きをお願いします。」

 

アイエフの突っ込みもあり話を戻す。リーンボックスで独自に調べた売上データのグラフボードをベールが出してくれた。確かに2週間前からグラフが下降しており、丁度一週間前…ベールが俺に連絡を入れた時期を境に急降下している。それも5pb.以外のCD売り上げも低下している模様なのを再確認した。

 

「3曲入りで1500クレジット前後。10曲前後のアルバムで3500クレジット前後。DLの場合は1曲300クレジット。至って平均的な値段なのにな…。」

「やっぱり…ボクの歌に、興味がなくなっちゃったのかな…?」

「それは違いますわ。一つ、不思議なのがありまして、此方も見て下さいまし。」

 

そう言ってベールがもう一つのグラフボードを取り出す。それは3週間後、5pb.のライブイベントの入場券、それと特等席の売上データだった。不思議なことにこっちは完売している。だが、特等席+CDセットの売り上げはいまいちとなっている。グッツ関連も売り上げに変動がないそうだ。

 

「人気がないのならライブチケットも売れないことになるが…少なくともライブには興味があるという事だな。」

「確かに変ね。やっぱり、CDだけになにかありそうね。」

「このままじゃ、5pb.含めCD業界が飢えてしまうわ。」

「で、でも…ボクの曲は、お客さんにとって、今の価格じゃ…不釣合いなんじゃ…?」

「…確かめる必要があるな。」

 

そう言って俺は立ち上がり、とある場所へ向かう為行動に移る。

 

「ちょ、ちょっとアンタ。何処へ行く気?」

「最寄りの音楽店…CDショップだ。この目で確かめたい事がある。」

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

突然行く場所を言い出し教会を後にした永守を、わたしは気になってしまったので一緒に出ることにした。なんでも、CDを買わない原因である客の反応を見る必要があるとの考えで聞き込みを兼ねて観察するだとか。こういう所はわたしも見習うべきかしら?

 

「何か変わったことはないか?」

 

永守がCDショップの店主にそう聞き込み、客の動きとか事細かく聞いていく。最初こそ秘守だったけど女神様の協力の下とか…色々と言いくるめて店主に情報を言わせたりしていた…。

 

「アンタ、随分と強引な所もあるのね。」

「使えるものは使う。それをしたまでだ。」

 

何店舗か回って同じことをしつつ客の動きを検証してみたわ。来客数は午前の10時から2時間ぐらい見ていたけど、片手で数えられる程しか来客がなかった上にCDの前に行って欲しそうな顔はしていたけど、そのまま出て行ってしまった客もいたわね。

バーガーショップ”バーガーゲイム”で軽食をしつつ愚痴を溢している。わたしだったら適正価格だと思うし、欲しいと思ったら是が非でも買うと思う。ただ、わたしは客の動きを見て思ったことがある。

 

「でも何ていうか…避けている感じ?」

「その根拠は?」

「恐らくだけど、欲しいCDが有ったら大抵確認の為に近づくじゃない?それが、殆どの人はCDラックから一定距離を保った状態で見ているような…避けている感じがするのよね。」

「あとは、何処か諦めきった感じの表情もしていた。」

「そうそうそれよ。欲しいのなら買えばいいのにね、全く…。」

 

愚痴っぽくなっているけど、そうしないと本当にやってられない感じになってしまう。そんな時、永守が口元に手を添え、暫くしたら紙ナプキンを二枚取り出した。

 

「なぁアイエフ。仮説としてだが、ここに二枚の紙がある。」

「それがどうしたのよ。」

「この紙を販売するとしてだ。…片方は100クレジット、もう片方は10クレジットとする。何方も材質、販売数、内容量を同じで販売する。お前ならどっちを選ぶ。」

「…材質は同じ。それならわたしは10クレジットを選ぶかしら。」

「どうしてだ?」

「だって、同じ材質で内容量も変わらないならそっちを…。」

 

そこで、わたしは紙ナプキンへ伸ばした手を止める。もしや永守が言いたい事とは…。

 

「…アンタ、それ本気で言ってる?」

「あくまで仮設で断定はできないが、否定も出来ないだろう。」

「…もう少し調べる必要がありそうね。」

 

わたしと永守はそう言って、バーガーゲイムから出て再びCDショップへ向かう。一度行った教会から最寄りのCDショップへ再び入ると、信じがたい事を言っている客がいた。

 

 

 

 

 

「おいおい、何だよこの音楽CD一枚の値段は。たった3曲だけにこんな値段払えるかよ!!」

 

その男は音楽CDの前でそう叫んでいる。只でさえ許せない光景なのだが、寄りにもよって5pb.ちゃんの音楽CDの前で…。

 

「アンタ、今なんて言ったのよ…!」

「あぁん、何だ?俺は買い手全員が思っている事を言ったまでだぜ?たかが3曲入りで1500とか足元見すぎだってな!」

「そんなことないわ!一般的な市場からしたら適正価格よ。何より、5pb.ちゃんの…いえ、歌い手全員の曲は、値段には代えられない価値があるのよ!」

「はぁ?てめぇの言ってる事は詭弁だろ。少しでも高く売りたいって思う下心があるんだろ。」

「アンタ…、CDだけじゃなくてライブとか見たことあるの?勝手な思い込みで言わないで!」

「聴いたり見たりしたさ。だがな、ライブが良くてもそれがCDの価値とは到底思えないがね。その証拠に、実際に売れてないじゃないか。」

「そ、それ以上可笑しな事言うんじゃないわよ!!」

 

わたしは、今すぐにこの男を殴りたくて手が出てしまった。だが、その手は永守によって止められてしまう。

 

「な…!!アンタ、邪魔しないで!!」

「アイエフ、落ち着け。ここで殴っても何も変わらないぞ。事実、此奴の言っている事は正しいのだからな。」

「はっ!そっちの男の方がてめぇより世間ってのを分かってるじゃないか。」

「永守、どいて…!!こんな奴に乗るっていうの…!!」

「おい、お前。今のうちに何処かへ消えてくれ。」

「言われなくても消えてやるさ!くそが!!」

「ま、待ちなさ…イタッ!!」

 

永守の腕を振りほどこうとしたら、ネプ子のように永守式デコピンを額に食らった。

 

「…タタタタ…。」

「…落ち着いたか?何時ものお前らしくないぞ。殴っていたら別の問題が生まれてしまうぞ。」

「うっ…ごめん…。」

 

冷静に考えれば、殴ってもわたしの心がすっきりするだけであり、その対価として余計な問題が増えてしまう。永守がいてよかったと思ってしまった。諜報部所属であるのに我ながら情けない…。

 

「アイエフ、少し別行動をする。」

「…急に何よ。」

「気になる事がある。追って連絡する。」

 

そう言って永守はわたしを置いてCDショップから出て行った。一体何を考えているのだか…。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【リーンボックス:市街地】

 

先程アイエフと言い争った男がどうも気になったので、俺は後を追っている。何となくだが、男の瞳に生気を感じられなかったからだ。一定距離を保ちつつ、一般人に紛れ込み、Nギアの望遠鏡機能を使いつつ追っている。宛ら(さながら)どこかの白装束のアサシンの如くやっているが、はっきり言ってどっちが犯罪者なのか分からなくなる。…そうやって追っていると、とあるビルに入っていくのを確認。追っている間にもいくつか店とかに入っているのを見たが、今しがた入っていったビルは明らかに裏路地であり、入る際に周りを警戒するかのように見回していた。

 

「…廃ビルではないようだ。」

 

一応そのビルには幾つか会社が入っているようだ。それでも幾つかはペナント募集中となっている。そのまま追跡を続けると、空き室へと入っていくのを確認し、ゆっくりと扉へ入る。

 

 

 

 

 

中は内装用カーペットを剥がした後のような、ビジネス会社のオフィスといった感じだ。入口周辺と窓際には、大量段ボールが置いてあり、追っていた男は奥の方でPCを触っている。そのPCの数はざっと見て5、6台はあり、全てのPCにCDドライブが備え付けてあるようだ。段ボールの方へ寄り周辺を見ると、大量の音楽CDが置いてある。但し、表紙は如何にも“印刷しましたよ”感満載の出来栄えだ。そしてCDケースに値段ラベルが貼ってあり、1つ“100クレジット”と書いてある。これで一つの仮説が本物へと変わる。

 

「(どうやらここでは、音楽CDの複製を主にしている感じだ。闇市場(ブラックマーケット)ではなかったか。だが、それでもこの情報は大きいな。後は、何処で闇市場を開いているかだ。)」

 

念の為、Nギアに現在位置をマーキングしておく。これを提示して食い止めれば、一つの闇市場(ブラックマーケット)を潰すことが出来るはずだ。だが、そんな時だった。

 

…冷たい風を感じる。どうやら隙間風があるようだ。

 

 

 

カランカラン…

 

 

 

「(クソッ音が…!)」

「何の音だ?」

 

隙間風の影響か、近くにあった空き缶が転がり落ちたようだ。そしてあの男がこっちに向かっている。薄暗いとはいえ、目視出来る程の明るさはある上に隠れる場所が机の下しかない…。

 

「(万事休すか…。)」

「チュチュゥ。」

「…なんだ、ネズミか。」

 

そう言って男は引き返し元の作業に戻っている。…ナイスだネズミの父さん。

 

「(闇市場(ブラックマーケット)の場所は分からないままだが、これ以上いると見つかる可能性が高くなるな。)」

 

そう思いつつ、気づかれないように足早にその場を立ち去る。

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

【リーンボックス:教会内】

 

「そういう訳だ。場所までは開催地までは分からなかったが…。」

「アンタ…よくそんな危ない事出来たわね…。場合によっては酷い事になってたのよ?」

「伊達に地獄は見てないさ。任務で似たような事はやっている。」

 

日が暮れた後に永守から連絡があり、教会で集合する事になった。わたしもギルドやオトメちゃんからの情報を入手し、かなり重要な情報を手に入れたのだった。

 

「会員制の店か。」

「ええ、会員になる条件はただ一つ。“正規の方法音楽CDを買わない事。”よ。そうすれば“どんな音楽CDも好きなだけ格安で買い放題”…。」

「まさか、そんな店があるなんて思いませんでしたわ…。」

「重要なのは、売上が落ちているアーティスト全員の曲が売られている事。しかも、リストには5pb.ちゃんの曲も入っているわ。」

「買わなくなった理由はそういう事だな。」

「そ、そんな…。」

 

わたしはあの時のような、ぶん殴りたいときの気持ちが沸き上がっている。許せない事だけど、ここは落ち着いて話を続ける。

 

「次の開始日程は“明日の夜12時”ね。場所もそこまで遠くはないわ。」

「開店前に向かって、根元を絶つか…。」

「そういう事よ。こんな事、放っておいたら大変な事になるわ。」

「では、わたくしとケイブは、明日に永守さんが見つけた場所に向かいますわ。永守さんとアイちゃんは、闇市場(ブラックマーケット)に向かうってことで宜しくて?」

「ああ、問題ない。」

「分かりました、ベール様。…ところで、5pb.ちゃんは?」

「5pb.なら、教会内にある防音室に行ったわよ。」

「防音室…。」

 

そう言って、わたしは永守の方を見て合図を送るかのように目を合わせてお互い頷く。

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 

【リーンボックス:防音室】

 

アイエフと永守は防音室に向かい、今回の件と明日行う事を5pb.に話した。

 

「そ、そうなん…ですか…。」

「ごめんね、歌の練習の最中にこんな話をしちゃって。」

「い、いいの。ただ…歌えば不安が…とれるかなって…。」

「…やっぱり、永守になれない?」

「え?…あ…、うん…。」

「随分と直球に言うな。」

「ひっ!あ、…ご、ごめんな…さい…。」

「気にしないさ。…5pb.は、音楽が好きかい?」

「え?う、うん。大好きだよ。…でも、ボク…どうしたらいいか、わからなくなって…。」

 

永守がまだ怖いのか、柱に隠れながら永守に向かって言う。音楽は好きだが、不安が抜けきらない。そんな感じの表情をしている。

 

「…安心は、出来ないか。」

「…うん…。」

「思ったより、堪えてるのね。」

 

そんな時、永守はある楽器に目を向け近づき、音色を奏でる。

 

「透明アクリル樹脂か…。クリスタル・ピアノなんて初めて見たぞ。これは5pb.の私物か?」

「あ、えっと…。それは、ファンからのプレゼント…あ、いや…贈呈品というか…。」

 

それを聞いた後、永守はピアノ椅子に座り音色を確認した後、鍵盤に指を掛け奏で始める…。

 

「…あれ、アンタ、この曲って…?」

 

永守が今奏でている曲…それは、5pb.の持ち歌の一つ。それをピアノアレンジで引いている。ただ、コピー仕切れていないのか所々雑音が入ったりしている。

 

「5pb.ちゃん…。」

 

アイエフの隣に5pb.が寄ってきており、よく見ると足でリズムを取りつつ口を動かしており、小声でだが歌っているのが分かる。そして、その口ずさんでいた声は徐々に大きくなっていく。

 

クライマックスまで弾き終えた後、5pb.はハッと自分が歌っていた事に気づき驚く。

 

「悪いな、びっくりしたか?」

「うぅん。そんなことない…。寧ろ、楽しかった。」

「そうか…。」

「永守…アンタ、ピアノなんて弾けたのね。」

「あぁ、なんだ。前の部隊所属の時、“謎解きに使う”とかよく分からない理由で学ばされたんだ。」

「何その理由。」

「…ぷっ。」

 

そんな会話をしていると5pb.が少し笑う。

 

「あ、ご、ごめん。別に、バカにしてる訳じゃ…。」

「いいさ。ただ、感情が表現しにくい分、楽器なら感情表現を出来るしな。」

「そうだね。それと、ありがとっ。」

「…ふっ、どう致しまして。」

「ちょっとちょっと、二人だけで何納得してるのよ。」

「あ、ごめんねアイちゃん。でもボク、改めて気づいたよ。何のために歌を始めたのか。」

「5pb.ちゃん…。」

 

そんな彼女の顔は、不安という字はなく、嬉しそうな顔をしていた。

 

 

 

 

 

 




【用語集】

○テニスラケットを持つと“おっしゃー!”とか、バイクに乗ると“うーッはーッ!”
 此方は、テ○スの王子様とこ○亀が元ネタとなっております。うーッはーッ!は別ですが…。

○バーガーゲイム
 ハンバーガーショップ”バーガーキング”をゲイムギョウ界風に変えてみただけである。…決して一文字抜いて読んではいけない。先生との約束だぞ!

○ネズミの父さん
 アナトール。以上。

○伊達に地獄は見てないさ。
 幽遊白書の主人公の「伊達にあの世は見てねぇぜ。」のオマージュ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

永守が弾いた曲は、一応5pb.の持ち歌ということで、何を弾いたかはお任せします!(ぇ

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