超次元ゲイムネプテューヌ~闇夜の円舞曲~   作:KeyMa

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気づいたらUAが1,000を超えていた。あざっす!


Scene13 忍び寄る影、新たなる目標

 

―――夢を見ていた。

 

それは、俺がここに転送される前に見た光景と同じ、周囲は黒く染まった闇の世界のような空間。前回と違い今回は動けている。装備を確認するも、着ている服以外は何も持っていない。そんな中、目の前には前回見た男が居る。此方も前回と違い背後ではなく正面を向いており向かい合う形になっている。仮面をしている為に素顔は見えず、髪色と服装は違うものの、背格好は殆ど同じでありどことなく雰囲気も似ていると同時に憎きニグーラと同等の威圧感も感じる。更に驚くべき事は、そのロングコートの正面には十字架の上に黒獅子が刻まれた紋章がある。

 

「その紋章、まさか…。」

 

十字の黒獅子(クロスアターレオ)の紋章。金で友人をもターゲットにする、裏社会では有名な暗殺組織であり、S.T.O.P.によって壊滅させた組織だ。俺としては二度と関わりたくない組織の一つでもある。

 

『お前の肉体、貰うぞ…。』

 

仮面の男がそう言うと、此方を敵と見なしていると感じ取れる程の殺意をむき出しにしている。そして目の前の男は、右手の黒い手袋を外し捨てる。その右腕は人の手の形はしているものの、尖ったような赤く染まった爪と模様、肌部分は黒く染まっている。

 

「くっ…!」

 

握り拳を作り振りかざしてきた仮面の男による拳をドッチロールで回避する。回避した為その拳は地面に当たり石が砕ける音と共に殴られた部分が陥没しているのが見える。

 

「肉体を奪うと言ったな。俺の代わりに表に出るというのか?」

『………。』

「…答える気はないか。だが、得体の知れない奴に俺の肉体を奪われる気はない。」

 

仮面の男に向けてパイロキネシスによる火の玉を放つ。牽制の為に放った為簡単に避けられてしまったが、この空間でも超能力は使えるという条件は大きい。俺は仮面の男を指さしてこう言う。

 

「…アンタに恨みはないが、倒させて貰う。」

 

そう言いつつ俺は、パイロキネシスによる火の玉を2発放ちつつ急接近する。仮面の男は火の玉をいとも簡単に右手で払いのける。払いのけてノーガードな所に右肘による回し打ちを放つ。だが、スウェーで交わされてしまう。空かさず左ジャブ、右打ち回し蹴り、左水平平打ちを放つが全て受け止められてしまう。

 

「ぐぁっ!」

 

水平平打ちを受け止めた所に、仮面の男からの左の張り手を頬当たりに受けてしまう。夢のはずが、尋常じゃない程現実味のある痛みと感触が伝わってくる。直ぐに体勢を立て直し、右、左、右のストレートに左の蹴りを放つがこれも防がれた上に仮面の男の押し蹴りを腹に受けてしまう。

 

「うぉあはぁっ…!」

 

かなり強かったのか、1m程後ろに飛び左膝を付きつつ受けてしまった腹の所を右手で押さえる。

 

『ふん…!』

「させるか…!!」

 

怯んだ所に仮面の男が叩き込んでくるかのように接近してくるが、予測していた為直ぐに体勢を立て直し、先程の俺と同じ攻撃を仕掛けてくる。更に仕掛けてきた右蹴りを受け止め、残っている左足目掛け掬い上げるように蹴り上げ転倒させる事に成功し、御返しのように俯せ状態になった所に腰あたりへ踵落としを食らわせようとするが、仮面の男も読んでいたのか俯せから横に転がるように回避し立ち上がる。現時点での戦闘力は五分五分といった印象をお互いに受けたのか、一定距離を保った状態で仕掛けるところを窺っている。

 

『貴様、何故人間…いや、女神の味方をする。』

「どういう意味だ。」

『本来であれば貴様は此方の立場にいる存在。貴様は光のある場所にいる存在ではない。』

「だろうな。」

『…知っていて尚、女神と共存する心算か。出会って間もない奴らの手助けをするというのか。』

「俺は、あの時に正義に目覚めた。例え闇に染まっていたとしても…、それだけの事だ…。」

『女神の為か…?はたまたS.T.O.P.の方針か…?』

「自らの意志だ。俺の誇り高き魂が叫ぶ…、お前のような奴を止めろとな。」

『素材は良くても、器としては残念だな。だが、面白い考えだ。』

「悪に褒められても嬉しくはないな。」

『だが、貴様は我々の計画の邪魔になる。代わりに俺が貴様の体を使うぞ。』

「ここまで潜り込んできて悪いが、そう易々と渡す訳にはいかないな。」

 

俺が構えると同時に向こうも身構える。“キイイィィィイインッ”という擬音が聞こえるかのように俺は自らに集中力を高める。“限界突破(オーバーギア)”、俺はそう呼んでいる。超能力により身体能力、五感を向上させる。そして右手に力を溜め、右手の拳に燃え上がるように炎が纏わる。仮面の男も同じく右手に力を溜めて右手の拳に黒い炎が纏わる。その右手から感じる威圧感は高く、渾身の一撃が来ると予想した。

 

『一撃で仕留める気か。』

「其方も同じ考えのようだな。技量が同じなら、俺は持てる力の全てをぶつけるまでだ。」

『気が合うな。お互い同じ立場だったら良い戦友になっていただろう。』

「…冗談にしては面白くないな。悪とは思えない言葉を言う。」

『下らん話はここまでだ。裏切り者よ、ここで死んで我等の糧となれ。』

「言っただろう。簡単に渡す訳にはいかないと。」

 

そう言い終わると、お互い標的を捉えたライオンのように近づく。

 

『うぉぉおおおおおおおおおおお!!!!』

 

そして、お互い拳が届く射程範囲に入り右拳を相手に放つ―――

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

【ルウィー教会:貸部屋前】

 

数十分前―――

 

最終日、永守には休日という事にしている。だが、時間は午前10時を過ぎており、彼はまだ部屋から出てきていない。わたしは永守に貸している部屋の前に行った。ロムとラムも可笑しいと思っており一緒にいる。扉をノックする…だが、返事が返ってこない。

 

「永守、居るなら返事位しなさい。」

 

そう言いつつノックを何回かするが、返事はおろか物音すらしない。

 

「お姉ちゃん…なんか変だよ…(おろおろ)。」

「確かに、可笑しいわね。」

「むぅ~、遊んでもらおうと思ったのにぃ。えーい、入っちゃえ!!」

「あ!こら、ラム!!」

 

ラムが勢いよく扉を開ける。永守が来てから初めて入るが、部屋はきちんと整理されており、何時でも巣立ちが出来るだろうと思う程片付いている。ベッドの方を見ると、熟睡しているかのように永守が寝ている。…寝返りしてないのか随分と綺麗な状態で寝ている。

 

「もう、何時まで寝てるのよ。永兄、起きて!!」

「ラ、ラム!乱暴にしては…、!?」

 

ラムが勢いよくベッドの布団目掛けて飛び乗る。一瞬ビクッと動くが、それはラムが勢いよく乗った反動だった。乱暴にしてはダメと言おうと近くに行く。確かに規則正しく息をしており寝ている。まるで白雪姫が毒リンゴを食べた後のように…。しかし、永守の寝顔を見た瞬間、様子が可笑しい事に気づく。苦しそうな表情はしていないが、尋常な程汗をかいでいる。部屋は暖房を付けてない為、寧ろ涼しい方にも関わらずにだ…。額を触ると体温が上昇しているのが分かる。

 

「え、永兄…?」

「永守お兄ちゃん…!?」

「こ、これは…!?ロム、治療魔法を!!ラム、氷水取ってくるわよ…!!」

『う、うん!!』

 

何が起きているか分からない。ただ、今出来ることをやるまで。ルウィーの女神として貴方を助けて見せる。

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

【異空間:???】

 

お互い、一撃必殺とも思える燃える鉄拳を顔面目掛けて放った…。だが、結果はお互いの腕が絡み合うよう…クロスカウンターのようになり頬の皮を一枚削る結果となった。俺は古傷が開いたのか血が滲み出ている。対する仮面の男の方は、仮面にヒビが入り仮面が砕け散り素顔が見える。その素顔を見るが俺の記憶には該当しない人物だった。

 

『貴様…、ワザと外したな。』

「…アンタこそ、ワザと軌道を変えたな。」

『殺そうと思えば相打ちも出来たものを…。』

「殺気は確かにあった…。だが、死合う気を感じなかった。それだけだ。」

『………。くくく…はーっはははははは!!』

「…悪からしたら可笑しいか。」

『はははは…ああ、済まない済まない。決して馬鹿にした訳ではない。だが、俺と彼女の想像の斜め上に行ってしまったのだからな。しかし、その殺意では何時か飲まれてしまう。』

「斜め上…それに彼女…?」

『ああ、彼女は貴様に度々囁いていた人物だ。今は彼女と会うことは出来ない上に真実を話すには早すぎる。だが、俺と彼女の願いを聞いてくれないか。』

「願いとは何だ。」

『奴を…、“エンデ”を殺してくれ。そして、協力者、“転生者”を探せ。』

 

転生者…聞いたことがない言葉だ。だが、エンデと言う名を聞き一歩踏み込む。

 

「あの子どもを知っているのか…!!」

『…時間だ。また会おう。』

「待て!!質問に答えろ…!!」

 

そう言いつつ走り出す。だが、踏み込み足が前に着いた途端足元が崩れる。いや、この空間の地面全てが崩れ落ちている…!!

 

「な…!?」

 

余りの急な出来事の為反応が出来ず、真っ逆さまに落ちていくがその最中に意識を失う。しかし、意識を失う少し前にまたあの女性の声が聞こえる。

 

転生者を探して下さい―――

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

【ルウィー教会:貸部屋】

 

ロムとラムが心配する中、職員の協力の下、永守の看護に当たっている。しかし、体温以外は全く正常という不可解な状態の為に、迂闊に手出しが出来ない状態である。

 

…永守、貴方は一体何を抱えているの?

 

現状、そう思うしかなかった。確かに獨斗永守は普通の人とは違う能力を持っており、この世界に来て様々な活躍をしているし、誘拐事件の事で借りもある。彼がいなかったら今のわたしはいないだろう。ネプテューヌはどう思っているかはわからないが、面持ちは無表情…というより暗い影をわたしは感じていた。彼は元居た場所で活躍しており、数多くの犠牲を出したとは言うものの、わたしはそれ以外にも何かを背負っていると感じている。

 

「貴方は…、人には手助けする癖に自分の事は自分だけで解決しようとしてるんじゃ…。」

 

わたしはそう小声で呟いていた。そんな時だった―――

 

「うぉあああ…!!」

 

突然永守が目を覚まし、勢いよく上半身を立たせていた。軽いホラーを見たかのように部屋に居た全員がビクッとなってしまった。

 

『永守お兄ちゃん(永兄)…!!』

「うぉ…。」

 

ロムとラムが涙目になりながら永守にしがみつく。わたしも永守が無事かは分からないがホッとしている。彼は周りを見て察したのか、申し訳ないという感じをしている。

 

「そうか…。戻ってこれたのか。すまない、迷惑を掛けた。」

「目覚めて早々悪いけど、何があったか聞かせてくれないかしら。」

「ああ…、だがその前にシャワーが先だ。」

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

「転生者…?それと貴方に何か関係があると言うの?」

「分からない。だが、“転生者を探せ。”という事は何か意味があるのかと思う。」

「…そうね。知っていて損はないと思うわ。万が一その転生者が現れた場合にどういうのか知っていれば、少しは対応出来るはずよ。その転生者が敵か味方かわからないけど。」

「念の為、イストワールにも知っているか聞いてみる。ここである程度分かるだけでもいいのだが…。」

 

シャワーを浴び終わった永守に、寝ている間何があったかを聞いた。まるで妄想のような事を言っているようにしか聞こえないが、転生者というのは何処かで聞いた気がしたので探しつつ永守に質問をしている。ああ、永守のシャワーシーンはないわ。PC内に入れている資料を漁っていると、それらしいのが見つかった。情報としては、わたし達現女神が誕生する前のものね。

 

「あったわ、転生者に関しての資料よ。」

 

ルウィーは最初に出来た場所であり最古とも言える為、過去の資料…それこそ初代女神の情報も全てではないが揃っている。これはルウィーとして自慢の一つとも言えるわね。…さて、なんて書いてあるのかしら。

 

【転生者の資料】

“死んだ者の魂を呼び戻して生き返らせる禁断の秘術の一つとして分類する。我々のように現在を生きている者をパーソン。転生によって新たに生み出された人をReパーソンと名付けている。転生者の見た目は我々人間と差異が無い為、見分ける事はほぼ不可能に近い。但し、転生者は生まれ変わる段階で自ら好んでいた、又は理想の姿として生まれ変わり、更に何かしらの『特権』を得て誕生するが、その特権は転生者によって異なる。転生者は我々の世界で死んだ者を呼び戻すことは現段階では不可能であり、転生者を創造する方法は見つかっていない。嘗て崩壊した国でこの転生者を利用し最強の軍隊を作り上げるという計画があったらしいが失敗に終わっている。上記を踏まえ、転生者は生まれ変わる人の人格を持っている為、それにより善にもなり悪にもなる。その為、必ずしも転生者は良いとは言い切れない。”

 

「転生者…輪廻の事か。」

「確かに、この説明文でなら近いわね。そういえば、イストワールからは何か分かったかしら?」

「いや、一応調べるけど“3日は掛かる”そうだ。」

「そう、いつも通りね。」

「しかし、この文章を見る限り転生者は俺達と同じ見た目をしているってことだ。に一般人一人一人に話しかけて探すのは御免だ。」

「非効率的ね。それでも、これだけじゃ分からないわね。貴方が探す目的も不確定…。信じていいのか分からないわ。」

「行き当たりばったりってのも嫌いじゃない。この体験期間中に1人ぐらい出会えればいいだろう。」

「可能性の低い賭けね。貴方の運だと厳しいんじゃない?」

「…返す言葉がない。」

 

彼は面白い事に、戦闘時での勝負運は強いのだが、遊び等の賭け事には滅法弱い。ロムとラムと一緒に“すごろくゲーム”をしていた時の話をすると、6目サイコロを使っているにも関わらず、1~3ばかり引く上に3番目の永守ばかりにお邪魔マスの被害が被っている程の運の無さを見た。…あのすごろくゲーム事態問題ありの印象を受けたがそれを無視しても酷いもので、ラムは大爆笑していたわね…わたしも笑いそうになったのだが…。

 

「まぁ、目標が見つかっただけでも良しとしよう。ありがとな。」

「…どういたしまして。」

 

面と向かってありがとうと言われるのは結構恥ずかしいわね。

 

「さて、明日ラステイションに向けて準備しないとな。」

「随分と早く準備するのね。」

「慌ててやるよりはいいだろう。」

「そうね。忘れ物されては困るのは貴方よね。ただ、休める時に休んでおきなさい。」

「そっちもな…。」

 

そう言いつつ彼は執務室から出ていく。彼はわたし達に何を齎す(もたらす)のか…考えても未知数ね。今は見届ける事が大事ってことかしら。

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

【翌日:早朝】

 

ルウィー教会の入り口前に永守とブランが立っている。ロムとラムもいるが早朝の為か眠たそうに目をこすったりしている。敬意を込めてか、永守は敬礼をしている。それを見たロムとラムもツラれて敬礼の真似をする。

 

「一週間、世話になった。」

「…敬礼は置いといて、一週間ここで働いてどうだったかしら?」

「悪くはないな。まぁ、ラステイションとリーンボックスでの体験が終わってからだな。」

「そうね、今決めても不公平ね。」

「永兄、また遊びに来てね。」

「また、来て。(にっこり)」

「ああ。あとはしっかり勉強もしとくんだぞ。」

「うえぇ…勉強はヤダなぁ。」

「ラムちゃん、勉強、やらなきゃメっだよ。」

「分かってるよぉ。」

「…そろそろ行くとする。」

「ええ。いい返事を待っているわ。」

 

そう言って、永守はラステイション行きの列車に乗る為に歩き始めた。

 

 

 

 

 




【用語集】

○十字の黒獅子
 永守のいた世界で暗活していた、受けた依頼は全て完璧に熟す凄腕殺し屋集団。

○すごろくゲーム(話に出てきたシステムに難ありのゲーム)
 元ネタは(会社自体はあるが)今は無きゲーム部門により世に放たれた”人生ゲーム ハッピーファミリー ご当地ネタ増量仕上げ”。筆者はゲーム自体は持っておらず、動画でのみ視聴したが、2011年KOTY大賞に選ばれるだけの実力を持っていた。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

また伏線作ってしまった…。どうやって回収しようとか考えつつ書いております。
そして気づいたらGWが終わっていた。はえーよホセ!

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