無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

リベラル「前世では静香に協力して元の世界に帰すよう過ごしてました」
ナナホシ「――――」
リベラル「帰すって約束したのに……何で諦めてしまったんですか」

マヨネーズを作るも失敗してしまったリベラル。
龍鳴山でサレヤクトと別れた頃くらいの容姿をイメージ。

【挿絵表示】

使用させていただいたメーカー:「もぐもぐメーカー」
キャラ作成って楽しいですね。何か気付いたら作ってました。


2話 『俺の黒歴史がばら撒かれてる』

 

 

 

 唐突に自分の秘密を暴かれれば、とても驚くだろう。

 ルーデウスはその日、驚愕の連続を体験することになった。

 ナナホシの実験を手伝っている際に、いきなり言われたのだ。

 

「ルーデウスって私がトラックに轢かれそうになってた時にいたぽっちゃりした人だったのね」

「え゛っ!?」

 

 あまりにも不意打ちであり、間抜け面を見せるルーデウス。

 どうして分かったのか、という感情よりも先に、前世の情けない頃の姿がバレてしまったという焦りが湧き出す。

 冷や汗をダラダラと流し、焦りを隠せないルーデウス。

 そんな彼の姿を見て、ナナホシは苦笑を隠せなかった。

 確かに昔チラリと見たルーデウスと、今のルーデウスは見た目からして全然違う。

 けれど、それは昔の話であって今とは違うのだ。

 そもそも当時のルーデウスは最後にその姿を見ただけであり、外見以上のことを知らない。

 小汚いおっさんだったな、くらいの感想しかなかった。

 今のルーデウスはイケメンだと思っているが、その姿を維持するために相応の努力をしていたことは知っている。

 

「それと、オルステッドとリベラルが郊外にある小屋に来て欲しいって言ってたわ」

 

 ナナホシは「何で私が伝言役を……」などと愚痴っていたが、今はそれどころではない。

 衝撃を与えられた後に用件をサラッと言われてしまったため、内容が上手く頭に入らなかった。

 深呼吸を何度か繰り返したルーデウスは、なんとか冷静さを取り戻す。

 

「えっと……色々聞きたいんだけどそもそも何で転生前の俺のことが分ったんだ?」

「リベラルから聞いたのよ」

「何でリベラルさんが俺のことを知ってたんだ?」

 

 それは……と答えようとしたナナホシだったが、思い出したかのように口をつぐむ。

 

「そういえばあなた、前に反省の意味を込めて詮索しないって感じのこと言ってたわね」

「ぬぐっ」

 

 確かにルーデウスはそのようなことを告げた。

 殺そうとしてしまった相手のことを探るのは良心が痛むし、ましてや恩人である。

 リベラルのことをもっと知りたい……知りたいのだが、勝手に詮索することに抵抗を感じてしまう。

 

「確かに言ったよ。言ったけど……あの、やっぱその発言無かったことに出来ない?」

「私みたいに本人に直接聞けばいいじゃない」

「……がんばる」

 

 情けないことを言うルーデウスに対し、彼女は至極真っ当な助言をする。

 そのことは彼も分かっているのだが、一歩踏み出すことが出来ずにヘタれてしまう。

 別にそこまで躊躇する必要もないことは分かっているため、覚えていれば聞こうなどという結論に落ち着いた。

 

「話は変わるけど、オルステッドさん? ってどんな人なんだ?」

 

 郊外の小屋へと向かうのはいいのだが、片方は会ったことのない人物だ。

 話を何度か聞いたことあるものの、圧倒的な実力者ということしか知らない。

 ヤクザみたいな人だったら嫌だな、なんて思いつつ尋ねる。

 

「そうね……見た目は怖いけど実際には優しいわよ」

「具体的には?」

「何だかんだ言いつつも、私のわがままは全部聞いてくれたわね」

 

 ナナホシがオルステッドと旅をしていた頃、最初は言葉も通じなかったため非常にコミュニケーションに難航した。

 しかし、それでも彼はナナホシが言葉を覚えるまで接していたし、意図を読み取ろうと努力してくれていた。

 疲労で歩けなくなった時はおぶってくれたし、戦いでは巻き添えにならないようにも立ち回ってくれていた。

 金銭関係の工面もしてくれたし、人脈づくりの手伝いもしてくれた。

 かなり良くしてくれてることが窺える。

 最初に出会ったのがオルステッドでなければ、魔法大学に入学して研究なんて出来なかっただろう。

 

「敵には容赦ないけど、味方には優しいと思うわ」

「なるほど」

 

 ナナホシの話を聞き、ルーデウスはある程度の人物像を掴む。

 もしもヒトガミ側についていたら、世界最強と言われる存在と敵対していたのかとしみじみする。

 知らない間に味方になっているが、心象をよくするためにも実際に接するのは悪くないだろう。

 少なくとも、悪い人ではなさそうだった。

 

 

――――

 

 

 予定時刻に合わせ、ルーデウスは郊外の小屋へと向かっていた。

 顔合わせと今後の方針についての話し合いだと彼は聞いている。

 以前にリベラルからヒトガミとの戦いについて少しだけ聞いていたが、具体的にどうすればいいのかは分かってないままだ。

 ヒトガミの布石を潰すと言っても、何が布石なのかも分からない。

 それについての説明がされるのだろうか、と考える。

 

 到着したルーデウスは、小屋から漂う雰囲気に怯みながらもノックする。

 返事があったので入れば、リベラルと三白眼をした銀髪の男が座ってご飯を食べていた。

 思った以上にホッコリした場面に、彼も思わず肩の力が抜けてしまう。

 食べているのは……餃子だろうか。

 ご飯をまだ食べてなかったルーデウスは、思わずお腹を鳴らしてしまう。

 

「ルディ様の分もありますよ」

「あ、どうも」

 

 席に促された彼の目の前に、餃子が置かれる。

 早速一口食べてみれば、前世でも食べたラーメン屋さんに出るような味がした。

 美味しかったのでもう一口食べようとしたが、自分がここに来た目的を思い出す。

 ここにはご飯を食べに来たのではなく、今後のことについて話しに来たのだ。

 

「あなたがオルステッドさんですか? はじめまして、ルーデウス・グレイラットと申します」

「ああ、オルステッドだ。話に聞いた通り、本当に呪いを受け付けないんだな……」

「呪い?」

 

 唐突に出てきた単語に疑問符を浮かべると同時に、自分は何らかの影響下にいるのかと警戒を抱いてしまう。

 その様子にリベラルが苦笑しつつ説明する。

 

「ルイジェルド様と同じようなものですよ。オルステッド様は『他者から恐れられる呪い』を持ってるんです」

「なるほど……」

 

 ルーデウスはかつてあったリカリスの町でのことを覚えている。

 髪色を緑に戻しただけで命を助けた筈の人物からも悲鳴を上げられ、町の人々が逃げ惑う光景があった。

 当時は呪いであることを知らなかったが、髪色をキーに強い呪いが発動していたことを後から知った。

 ルーデウスにはその呪いは通用しなかったが、オルステッドも同じような呪いがあるならリカリスと同じ光景を再現することも出来るのだろう。

 

 と、そこまで考えてふと気付く。

 何故自分に呪いが通用しないことを知ってるのだろう、と。

 

「あの、リベラルさん」

「どうしましたか?」

「俺に呪いが効かないことを知ってたのも、例の未来日記とやらの情報ですか?」

 

 ナナホシには情けないことを言ったが、タイミング的に今なら聞けるだろう。

 先延ばしにしていたことを、ルーデウスはようやく聞くことが出来た。

 

「ええ、その通りです」

「なんか、随分と細かいところまで分かるんですね」

「そりゃあ、ルディ様が書いた未来の日記ですからね。ルディ様のことならほとんど情報が載ってますよ」

「…………へ?」

 

 あっけらかんと告げられた言葉に、彼の頭は疑問符で埋め尽くされる。

 未来の日記とやらは、俺が未来で書いていた日記? ぱーどぅん? わんもあぷりーず。

 そんな感じで混乱していた。

 いきなりそんな事実を言われたので、その反応も仕方ないだろう。

 リベラルはニヤニヤしながら更なる情報を告げる。

 

「34歳無職童貞」

「ちょ!?」

「静香を助けようとするもトラックに轢かれ転生」

「待って!!」

「親の葬式日にブリッチオナ――」

 

「――うわあああああぁぁぁぁぁぁぁっ?!!」

 

 突然告げられる黒歴史に、ルーデウスは発狂した。

 錯乱しながらリベラルを押し倒そうとし、逆に足を掛けられ倒される。

 そのまま上に伸し掛かかったリベラルは、更に耳元で囁く。

 

「よくロキシー様の水浴びを覗き、パンツまで強奪。更には私のパンツまで盗みましたね」

「うわ、わぁぁぁぁっ!! 殺せぇぇぇ!! 殺してくれぇぇぇぇぇ!!」

「ルディ様の弱み……握られちゃいましたねぇ?」

 

 馬乗りされてるため、ルーデウスはもがくが脱出出来ない。

 ついでに謝罪も要求されたが、最早それすらも耳に入らず暴れまわる。

 唐突に暴露された黒歴史には、それほどの恐ろしさを秘めていたのであった。

 

「……そこまでにしておけ」

 

 あまりにも楽しそうにおちょくっていたリベラルだが、呆れたオルステッドにいい加減に引き止められる。

 残念そうにしていたリベラルだったが、ルーデウスの狂乱っぷりに「やりすぎたかも」と思い、大人しく引き下がった。

 

 これ以降、彼女はルーデウスから少し避けられるようになるのであった。

 そのことについて「ルーデウスに恐れられる呪いを患ってしまった」などと触れ回るのは余談だろう。

 尚、心の中でオルステッドへと感謝したルーデウスであったが、彼もまた『リベラルが書いたルーデウスの日記』を読んでいるのだった。

 そのことを知らないのは不幸中の幸いなのかも知れない。

 

 それからしばらく時間を置くことで、ルーデウスもようやく落ち着いていく。

 リベラルに対して僅かに距離を取るようになってしまったが、それも仕方ないことだろう。

 完全にトラウマとなっていた。

 

「すみません、取り乱してしまって」

「いや、いい」

 

 何だか居心地が悪そうなオルステッドは、端的に返事する。

 あまりこのようなふざけた雰囲気に慣れてないのかも知れない。

 

「俺のことを知ってるみたいですけど、よければオルステッドさんのことも教えてもらっていいですか?」

「俺のことか?」

「はい」

 

 リベラルに紹介されたとはいえ、それでホイホイと全てを信じるほど彼は甘い人生を送っていない。

 大丈夫だと思ってはいるが、念の為オルステッドのことを見極めたかった。

 

「何から知りたい」

「そうですね……」

 

 そうして、本来の歴史と似たようなやり取りが行われた。

 オルステッドとヒトガミの関係や、4つの呪い、そして転生体について。転生してくる魔神ラプラスについても話す。

 しかしループしてることは流石に言わず、運命を見る力と濁していた。

 彼もまた日記だけの情報で判断せず、実際に接していく中で信頼出来るかの確認をしたいようだ。

 横でやり取りを眺めていたリベラルも、そのことは分かっていたので反応せずに過ごす。

 

 魔神ラプラスの話の過程で、ルーデウスは自身が本来のルーデウスを乗っ取ってしまったのではないかという不安も見せていたが、それについてのフォローも行われた。

 本来は死産だったということを知った彼だが、リベラルの持つ未来日記との話に齟齬が生じることについての質問も出る。

 

「オルステッドさんの話では本来の俺……ルーデウスは死産だって言いましたけど、リベラルさんが持つ俺の未来日記ってどこから湧いてきたものなんですか?」

「それは私が未来から来たからです」

「……ん?」

「順を追って説明しましょう」

 

 どういうことか分からず首を捻る彼に対し、リベラルはゆっくりと話していく。

 

「元々ルディ様や静香はイレギュラーであり、本来は存在しない筈でした」

「オルステッドさんの話で死産って言ってましたもんね」

「そうです。ですがふたりが転生と転移をしてきたことによって、その歴史が変化しました。

 それから静香の手伝いをしていた貴方は最後の転移が行われる際に、自身の軌跡を記した日記などを彼女に渡したんです」

「えっと、まさかそれが……?」

「予想通りですよ。それが私の持つ未来日記です。その日記を持った静香は転移に失敗し、私の元に現れました」

「…………」

 

 ルーデウスは混乱した様子だったため、少しばかり整理する時間を設けた。

 しばらく待つと、彼は次に進んで大丈夫だと促したため話を続ける。

 

「そして私も静香に協力するため転移を試みましたが、結果は失敗。何故か知りませんけど5千年前にやってきた訳です」

「なるほど……」

 

 5千年前まで遡れた原因が分からないことに疑問はあるものの、何となく理解は出来た。

 本来はルーデウスがいない世界に進む筈だったが、そこに自分が転生したことによってイレギュラーが起きる。

 しかしそのイレギュラーの世界から更に過去に遡ったリベラルという存在が現れたということだ。

 つまり、言ってしまえばここは2週目の世界ということなのだろう。

 オルステッドはイレギュラーの世界を知らないが、リベラルは未来から来たため知っているということだ。

 

「てことは、俺のこと知っててブエナ村に来たってこと?」

「そうなります」

「…………」

「ロキシー様のパンツだけで満足すると思いましたが、誤算でした」

「そのことはもう勘弁してください」

 

 ロキシーは未だにパンツの行方を知らないが、リベラルには知られてしまっているのだ。

 悪いのは自分のため、謝ることしか出来なかった。

 

「もしかして、転移事件についても知ってたりするんですか?」

 

 ふと思い出したことについて、彼は口にする。

 ナナホシにも尋ねたが、彼女曰く『自分が召喚されたことが原因』と言っていた。

 だが、リベラルならそれ以上のことを知ってるのではないかと考えたのだ。

 

「静香が召喚されたことが原因ということ以上は分かりませんが……転移事件が起きることは知ってました」

「やっぱり、ですか」

「沢山の人が巻き込まれることを知ってながら対処しなかったんです。……軽蔑しましたか?」

 

 どことなく怯えた雰囲気を纏うリベラルに対し、ルーデウスはとても冷静であった。

 

「まあ、思うところはありますけど、そんなに気にはなりませんね」

「…………」

「薄情かも知れませんけど、俺は俺の身の回りの人が無事だったらそれでいいですよ」

「でも、サウロス様やロールズ様など貴方の知ってる人も亡くなってしまいました……」

 

 ロールズはシルフィエットの父親だ。

 あまり関わりがなかったので何とも言えないが、サウロスはそれなりに関わった存在である。

 エリスの母親であるヒルダもそうだろう。

 確かに彼らが亡くなったことは悲しいことである。

 

「シルフィとエリスが聞いたら怒るのは確かでしょうね」

「…………」

「とはいえ、俺たちのために配慮してくれたことは分かりますよ」

 

 例えばゼニスがそうだろう。

 廃人のようになってしまったものの、それを治すために治療を行っているし、そもそもベガリット大陸まで救援に向かったと聞いてる。

 初動の早さからして、迷宮に囚われていたことを知っていたのだろう。

 それでも単独で救助してるのだ。

 フィリップもリベラルが助けたのではないかと予想出来た。

 サウロスの死亡原因は処刑されたからであり、決してフィリップも無関係ではなかっただろう。

 エリスが離れたのも恐らく彼が生きており、その手助けをするためであることはもう分かっている。

 本来ならばフィリップも死んでいたことは予想に難しくない。

 

 そして何よりもルーデウスの家族が全員無事であり、生存確認からひとつ屋根の下で暮らすまでが非常に早かった。

 そのことから、リベラルがルーデウスたちに配慮していたことは分かるのだ。

 

「それに、辛い思い出は時間が解消してくれました」

「……そうですか」

「少なくとも、今の俺は気にしてませんよ」

「ルディ様……ありがとう、ございます」

 

 気に病んでるリベラルを元気付けるための行動だったのだろう。

 感謝する彼女に対し、ルーデウスは「お礼におっぱい揉ませてもらいますね」と告げ、そのまま手を伸ばしていた。

 罪悪感があったリベラルはそれを拒絶せず受け入れてしまったため、小さく「んっ」と言いながら触らせてしまう。

 茶化すための冗談だったため、そのことにマジかよと思いつつも手を止めないルーデウス。

 しかし、近くにいたオルステッドに止められてしまう。

 

「話が進まん。それくらいにしておけ」

 

 オルステッドはかなり不機嫌な様子だった。

 もしかしたら呪いの関係で、今まで女性と致したことがない可能性もある。

 羨ましかったのかも知れないと考え、ルーデウスは彼にこう告げた。

 

「オルステッドさんも揉みます?」

「…………ふざけすぎだ」

「すみません」

 

 残念ながらオルステッドに冗談は通じないのであった。

 

 

――――

 

 

「それで、これからのことについてですよね?」

「ああ、そうだ。今までの俺は呪いの関係もありひとりで戦っていたが、これからは二人の手を貸して欲しい」

 

 それについてはルーデウスとしても是非もない。

 ひとりではどうやって戦えばいいのかすら見当もつかないのだ。

 オルステッドの存在は非常に頼もしいだろう。

 

「リベラルからはどの程度聞いた?」

「ヒトガミの布石を潰し、将来的に追い詰めると」

「その認識でいい」

 

 オルステッドは顎に手を当て、やや上の方向を見た。

 

「ヒトガミの所に到達するには、ラプラスの持つ秘宝が必要となる。ラプラス戦役を乗り越えるために必要な人材や環境を整えることが主になろう」

「はあ」

「危険の多いことに関しては俺とリベラルで手を回すが、細かい布石はお前に任せることになる」

 

 彼なりの配慮なのだろう。

 以前に殺されかけたことは聞いているため、なるべく安全な場所へと出向けるようにしていた。

 ルーデウスとしてもそれは非常に助かる話だった。

 

「だが、危険でもお前の手が必要な場面はある」

「ほうほう」

「ひとつはアスラ王国での王位継承。アリエルを王にする必要があるが……その際に同行してもらうことになる」

「因みに、何故アリエル様を王に?」

「約100年後にアスラ王国は危機に晒されるが、アリエルが王になることで滅びを回避することが出来る。

 アスラ王国からはラプラスを倒す人材が生まれる故、それは避けねばならん」

 

 想像以上に具体的なビジョンがあったため、ルーデウスは本当に目の前の人物が未来を知っているのだと再認識する。

 具体的なビジョンがあるのであれば、ヒトガミに対して優位に立てるのは確かだろう。

 

「シーローン王国にも出向いてもらうことも考えたが……そちらは恐らく大丈夫だ」

「なんのことですか?」

「ああ、それは私からの情報を元に考えたんですね」

「そうだ。俺は知らないことだが、本来であればシーローン王国で起こる戦争にお前が出向くことになったらしい」

 

 いきなり話が飛躍したことで何のことだと混乱するが、ルーデウスはすぐに理解した。

 今はリベラルの未来からの情報を元に、話をしてるのだと把握する。

 

「そこでパックス・シーローンが自害することでラプラスの転生位置が分からなくなるのだが……奴が自害することはリベラルの干渉によりなくなった」

「そうなるようにしたので、それは幸いです」

「ああ、恐らくいつものようにクーデターを起こし、共和国を作る筈だ。使徒は恐らくジェイドになるだろう」

 

 ルーデウスだけ何のことか分からないまま話が進んでいく。

 

「とはいえ、絶対ではない。念のため俺も直接出向き確認しよう」

「分かりました。私はその間どうしますか?」

「ザノバのこともある。ルーデウスのサポートに回るといい」

 

 よく分からないまま話が終わってしまった。

 だが、分からないことは時が来れば説明されるだろう。

 流石に今の説明だけで「よし行け」ということになるわけがない。

 

 オルステッドは他にも何かあるのか、再び顎に手を当て、やや上の方向を見ていた。

 きっとそれが彼の考えるポーズなのだろう。

 

「ルーデウス。お前の妹であるアイシャが作るルード傭兵団も便利な存在だ。それも作られるよう働きかけてもらう」

「それはどのようにですか?」

「そうだな……」

「それについては私が説明しますよ」

 

 オルステッドもあまり分かってないことだったのか、リベラルが前に出てきた。

 

「まず、リニアーナ・デドルディアはラノア魔法大学を卒業後、詐欺にあい多額の借金を抱えた奴隷になります」

「……はい?」

 

 突然出てきたリニアの名前に目が点となるが、彼女は気にせず話を続ける。

 

「彼女を買い取った後、アイシャ様をサポートにつけて傭兵団を作るよう促せばオッケーです」

 

 色々と突っ込みどころがあり、ルーデウスは思わず額に手を当ててしまう。

 

「あの、リニアって奴隷になるんですか?」

「言った通りですよ。リニア様は商人を目指しますが、残念ながら才能がなかったんです」

「それを、俺が買い取る……? 幾らでですか?」

「金貨1500枚相当です」

「……代わりの猫いませんか?」

 

 今のルーデウスにそんなお金がないのは分かりきってる話だ。

 奴隷購入断固拒否、と言わんばかりに嫌がる彼に対し、オルステッドが溜め息を溢しながら軍資金を渡すことで解決するのであった。




推敲無しがデフォになりつつあります。誤字脱字あれば申し訳ない。

Q.リベラルの未来日記はルーデウスの日記だけど、そんな詳細まで覚えてるの?
A.元々過去に行くつもりだったので、事前にルーデウスの日記を読み込んでいた。そのため、転生後も日記の内容について覚えており、忘れないよう何冊かに分けて書いてました。

Q.黒歴史を無許可でばら撒いてる。
A.ヒトガミを倒すためだからね、仕方ないね。

Q.おちょくるリベラル。
A.最近ハマってます。

Q.何故餃子が出された?
A.作者である私が本日(昨日)ラーメン屋さんに行ったのですが、餃子を食べ忘れてしまったため食べたくなりました。

Q.今回の話見る限り、原作とあんまり変わらなくなる?
A.めちゃくちゃ変わるので安心してください(安心出来ない)。

Q.オルステッド。
A.今までふざけるようなことがなかったため、戸惑ってます。

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