パウロ「ヒトガミ俺の息子にも手を出してやがったとか許さねえ」
リベラル「ヒトガミはハッタリが好きなので大丈夫ですよ」
ルーデウス「ヒトガミを倒す。それが僕の目標になりました」
忙しいからこそ逆にストレスを発散するために書いてしまうのだろうか。そんな時間はないのに…まあ支障なく勉強出来てるからいいでしょう。きっと大丈夫と私は信じてます。
作品を閲覧や評価して下さってる皆様、いつもありがとうございます。
※以前のエリナリーゼの一人称が「わたくし」になってたので「私」に修正しました。修正抜けがあったら教えてくださると幸いです。
後日、ルーデウスたちは家族総出で外に出ていた。
目的は守護魔獣の召喚である。
我が家を守る存在を呼び寄せるのだから、みんなで確認したいという思いがあってのことだり
ルーデウスは何が召喚されるのか知っているが、他の人たちは何も知らない。
台座の上に乗せた巻物に手を伸ばす。
「では、いきます」
助言されたように、聖獣のことをイメージしながら出来得る限りの魔力を注ぎ込んでいく。
それと同時に魔法陣からまばゆいカラフルな色の光が溢れ出た。
手を伸ばされるような感覚を覚えたルーデウスは、それを掴み、引っ張り上げる。
「よし、こい!」
「ワオォォォォン!」
遠吠えと共に光が収まった。
そこには当初の予定通り、大森林で出会った白い獣……聖獣がいた。
成功である。
「これが聖獣ですか……」
獣族の神聖な獣を初めて見たロキシーが、興味深そうに近付く。思っていた以上に可愛かったのか、口元を緩ませていた。
ノルンやアイシャも同様の気持ちだったのか、近付いてペタペタと聖獣を撫でていた。
「ひゃっ」
ロキシーは聖獣に顔を舐め回され、そんな声をあげていた。
何してんだコイツ、と思ったルーデウスは間に割り込みふたりを引き離す。
神聖だろうが犬畜生ごときにロキシーを舐めさせる訳にいかないのだ。
「ガルル……」
引き離されたことにご立腹なのか分からないが、聖獣に小さく唸り声をあげられてしまう。
ドルディア族の村では随分と懐いていた筈なのに、悲しい応対である。撫でようとしてもプイッ、と顔を背けられてしまった。
しかし、ふと思う。
リベラルに言われるがままに聖獣を召喚したが、聖獣は獣族たちに大事にされていた存在だ。
勝手に召喚してしまったが、後で怒られたりしないだろうか、と。
そんなことを思ったが、まあいいかと流す。
大切なのは聖獣がこの場に留まる意思があるかどうかだ。
『聖獣様、あなたにうちの家族を災厄から守る力、あるんですか?』
「……わふん」
そして、以前の歴史通りと同じ応対を行う。
家族を守ることや、敵対者への対応。契約に納得したのならお手をする。
聖獣の名前は『レオ』と同じように名付けられた。
しかし、以前のようにルーデウスに懐いた様子はなく、どこか警戒されてるかのような反応を続けられてしまう。
そのことに疑問を浮かべるも、契約出来た以上不利益な行動をレオが取るとも思えない。
契約を破棄出来るような力があれば別だが、それが出来るならそもそも契約もしようとしないだろう。
こうして、聖獣レオが守護魔獣となった。
余談だが、以前よりリベラルからアルマジロ型の魔獣を預けられており、ジローという名のペットも彼らの家にいた。
ゼニスを転移迷宮から救出した際、彼女を乗せていた馬車を引いていた魔獣であり、地味にラノアまで騎乗していたのであった。
――――
数日後、パウロはひとりでリベラルの自宅へと赴いていた。
用件はすぐに済むようなものではない。強くなる必要があると感じ、そのために彼女の元に向かうのだ
彼もまたヒトガミと戦うことに賛同した人物であり、あの悪神を許さないと思っていた。
みんなに言ったと思うが、ルーデウスのように剣神に襲われればパウロも対処出来ずに負けてしまうだろう。
七大列強はパウロもかつて目指していた領域だからこそ、その強さを知っている。
今の自分では間違いなく太刀打ち出来ない。
そこで、かつてミリス神聖国で言われた言葉を思い出したのだ。
『そんなに不安なら修行でもすればどうです? 少しは自信も付くんじゃないですか?』とルーデウスに言われたのである。
その際に、リベラルに教えを請うことを考えていた。
ヒトガミという明確な敵が出来た以上、今よりもっと強くなる必要がある。
それに、うかうかしていたら
「ははっ……誰かに教わろうとするなんていつぶりだろうな」
パウロの剣は我流なとではなく、しっかりと教わったものを使用している。
幼少期、家を飛び出す前から剣神流の指南を受けていた。才能があったためある程度の強さを手に入れた彼は調子に乗っていた。
趣味は婦人のスカートに潜り込むことだった。そんなことをしても問題ない地位にいたし、力も持っていた。
父親と喧嘩し、飛び出した後はスラム街にいたラットという悪ガキたちと共に好き放題暴れ回った。
誰にも負けることなく天狗となっていた俺だったが――リーリャの父親にコテンパンに負けた。
そこからは彼女の父親の道場で扱かれ……最終的にリーリャとやることをやって出ていったのだが。
パウロの持つ三代流派は幼少期からの才能であったが、大人になるにつれ伸び代は減っていった。
天才などと持て囃されていたが、彼はただ早熟なだけだったのだ。
家へと到着したパウロがリベラルを呼び出すと、すぐに家から彼女は出てくる。
「はいはいどうしましたか?」
「よお」
「パウロ様? ひとりで来てどうしたんですか?」
顔を覗かせたリベラルに対し、パウロは気恥ずかしそうに頭を掻きながら口を開く。
「あー、その、なんだ。ブエナ村にいた頃に冗談で俺に剣術を教える、みたいなこと言ってたよな?」
「そんなことありましたっけ? 流石に数年前のことですから会話の内容を細かくは覚えてませんよ」
「まあ、あったんだよ。だからこうしてここに来たんだ」
パウロの言いたいことを察したのか、彼女は「あー、なるほど」と呟きながら全身を観察する。
意外にも、今のパウロに隙は見当たらなかった。
リベラルの性格的に、強さを求めれば不意打ちで何かを仕掛けてくると考えていたのだろう。
正解である。
何気ない感じで手刀を放てば、バックステップして避けていた。
「なるほど。ヒトガミと戦うためにも強くなりたいのですか」
会話中も手を伸ばし何度もパウロの乳首をつねろうとするが、彼はことごとく防ぐ。
「ああ、その通りだ。ってもういいだろ。ちょ、やめろ! いたっ! いただだだっ!!」
手を伸ばすペースを上げていくと、防げなくなったパウロは何度も乳首をつねられ、悲鳴を上げていた。
本気で藻掻こうとしたタイミングで手を止めたリベラルは、庭へと付いてくるように促し先を歩き始めた。
ブツブツと文句を言いつつも、彼もそれに付いて行く。
「それで、パウロ様はどれくらい強くなりたいんですか?」
「まあ、最低限が家族を守れる程度の力だな」
「理想は?」
「七大列強クラスだ」
「ふむ……ちょっと待って下さいね」
リベラルは魔眼を開き、パウロの全身の力の流れを読み解く。潜在能力まで見抜くことは出来ないが、指標を立てることは出来る。
パウロの基本的能力はとても高い。戦闘能力だけで言えば、この世界でも比較的上位の方にいるだろう。
剣神流、水神流、北神流がそれぞれ上級であり、七大列強の神級と比べたらパッとしない習熟度である。
良く言えば万能剣士。悪く言えば器用貧乏だ。
魔眼を閉じたリベラルは、土魔術で作った剣を彼に投げ渡す。
「一度手合わせしてみましょう。パウロ様に最適な戦闘スタイルを考えたいです」
「分かった」
「最初は上級剣士程度で、段々と強く対応して行きますね」
そう告げたリベラルも土魔術で剣を作り、上段に構える。
「準備はいいで…………ん?」
ふと、リベラルはパウロの後ろへと視線を向け動きを止める。
なんとなく嘘臭さを感じたものの、背後から音がしたので彼もそちらへと視線を向けてしまう。
そして、後ろには誰もいなかった。
「誰もいねぇ――うおっ!?」
「今のを避けますか」
リベラルから視線を外した瞬間、彼女は前へと踏み込み剣を振るっていた。
その気配を察知したパウロは辛うじて反応し、後ろに一歩下がることで避けていた。
どのタイミングかは不明だが、あらかじめ魔術か何らかの方法で音が鳴るように仕掛けていたリベラル。
パウロはそれに釣られてしまうものの、対応することは出来た。
だが、後ろにバランスを崩し体勢を乱してしまう。
その隙を見逃さずに、リベラルは彼に向けて再度剣を振り下ろした。
「チィ!」
パウロは自身の身体を回転させ、迫る剣を受け流した。その勢いのまま蹴りを放つ。
「なるほど」
リベラルもその蹴りに反応し、頭を下げて避ける。
パウロはまるでスケート選手のように、回転させた身体を空中で滑らせて着地した。
向き合う状態となったため、彼女は追撃せず動きを止める。
「素晴らしいです。パウロ様の動きは私も戦闘に取り入れる価値のある動きでした」
「はっ! そりゃどうも、よっ!」
一気に間合いへと踏み込むパウロ。
懐から隠すように構えていた剣を、横に一閃させる。
剣神流の技である『無音の太刀』だ。
「『
リベラルは後方に一歩下がりながら手首をくるりと回すことで受け流していた。
更に受け流した勢いのまま、パウロへと剣を滑らせる。
しかし彼は受け流されることを予感していたのか、元々の重心が後ろにあった。
そのため、身体を捻ることで躱すことが出来ていた。
互いの身体が交差し、視線が絡み合う。
体勢を立て直したパウロは、激しく左右にフェイントを入れ混じらせながら何度も剣を振るった。
大きく振りかぶり一閃。
横から滑らかな一閃。
鋭い突きを一閃。
だが、どれもリベラルは受け流す。
重心まで崩されないようにするため、パウロは中々身体を前に押し出せずにいた。
それどころか、受け流される度に後ろへとジワジワ押しやられる。
このままでは押し切られると直感した彼は、次の行動に出た。
「お、らぁッ!!」
パウロは地面を削るように、剣を振り抜く。
北神流の技である『
ガリガリと音を立てて振るわれたそれは、数多の石つぶてを纏いながら放たれた。
水神流『
迫りくる剣と石つぶてに、リベラルが取った行動は実にシンプルである。
円を描くように持っていた剣を高速で回転させたのだ。
石つぶてはその回転に巻き込まれ、そしてパウロの剣は弾かれた。
その瞬間にパウロはバックステップし、距離を取る。
回転を止めたリベラルが剣先を地面に付けると、先程巻き取った石つぶてが綺麗に並んだ。
「お返しです」
パウロの行動を模倣するかのように、リベラルは地面を削り取りながら『
地面に並んだ石つぶてと新たに巻き込んだ石つぶては、まるで散弾銃のようにパウロへと向かった。
「ちっ!」
四つん這い状態となり、放たれた石つぶてをパウロは躱す。
地面に両手を付けさせられたことに敗北感を覚えつつも、そのまま北神流の『四足の型』へと移行して距離を詰める。
「――――っ」
そのまま飛び掛かってくるかと思いきや、パウロはリベラルの間合いの外で動きを止めた。
そのまま進めば、タイミングを合わせた前蹴りによって首の骨を折られるような予感がしたのだ。
そしてその予感は正しかった。
リベラルはかつて『四足の型』を使ってきた盗賊を相手に、飛び掛かってきた瞬間に足を出すだけで倒したことがあった。そして今回もそのように対応しようとしていた。
そのことを読み取ったのは素晴らしいことだろう。
「パウロ様、見事
だが、動きを止める場所が悪かった。
十分な予備動作をする時間が出来たリベラルは、居合の構えとなっていた。
そこから放たれる技を、パウロは知っている。
かつての仲間だったギレーヌが得意としていた技だ。
『光の太刀』。
ポツリとそんな声が聞こえたような気がした。
――光を置き去りにした刃は、時間の停止した世界を斬り裂き、全ての事象が遅れて発現する。
刹那の間も存在せず、剣を振り終えたリベラルがそこにいた。
「ぐ、ああっ!」
パウロの右手が弾け飛んでいた。
それと同時に、彼女の持つ剣も粉々に割れる。
空中をくるくると舞う腕をキャッチしたリベラルは、すぐさまパウロの右腕に引っ付けて治癒魔術を唱えた。
次の瞬間には、彼の腕は綺麗に癒着していく。
「お疲れ様でしたパウロ様。想像以上の強さでしたよ」
「ぐっ……お、おう。こっちこそありがとよ……」
痛みを堪えながら感謝をするパウロ。
リベラルは彼の痛みが治まるのをしばらく待ち、顔色が良くなったタイミングを見計らって口を開いた。
「落ち着きましたか?」
「ああ、久し振りに泣き喚きそうになっちまったよ」
「どうやら大丈夫そうですね」
軽口を叩いたため、平気だと判断する。
それから先程までの手合わせについて、リベラルはひとつひとつ評価していく。
「結論から言えば、今のパウロ様は聖級と同等以上の実力ですね」
「聖級、か。もうちょっとやれると思ったんだがな」
「もちろん王級とも渡り合うことは可能ですが、現時点での勝利は厳しいでしょう」
リベラルは武器を扱うことの出来ない呪子だ。
聖級以上の動き……即ち王級の実力で戦えば今回のように武器が壊れてしまう。
彼女の最後の『光の太刀』は、剣王クラスを模倣した一撃だった。
そしてパウロはそれを凌ぐことが出来なかったのである。
とはいえ、パウロは聖級までの動きであれば全て対応してみせた。
十分すぎる強さだろう。
「先程の戦闘で、私は徐々にレベルを上げていきました。
三大流派の上級、聖級、王級と。
パウロ様は聖級に至っているものがないにも関わらず、その動きに付いてきてました」
パウロの何が凄いのかと言われれば、それに尽きる。彼は三大流派を全て習ったが、それぞれが上級までのレベルでしかない。
恐らくどれかひとつの流派だけで戦えと言われれば、聖級のレベルですぐに敗北しただろう。
行動に迷いがないのだ。
技が増えれば増えるほど、選択肢も増えて迷いが生まれる。
だが、パウロにはそれがなかった。
直感的、本能的に戦う彼のスタイルと、とても噛み合っていた。
それぞれの三大流派を淀みなく扱うことで、聖級以上の実力を発揮していたのだ。
自分が何をしているのか理解出来なければ強くなれない、とギレーヌは言った。
リベラルもそれには同感である。
しかし、考えない方が強い人種もいるのだ。
「パウロ様、貴方はどれかひとつだけを伸ばす必要はありません。それぞれの流派のいいところだけを取り込んでいきましょう。
そうすれば七大列強に届く強さを得られるかも知れません」
「……まじで言ってんのか?」
「まじで言ってるんですよ」
理想として七大列強の名は出した。
けど、本当にそれほどの可能性があるとは思ってなかったのだろう。
パウロは驚いた表情を見せていた。
「もちろん、そのレベルに至れるかは貴方の努力次第ですが」
「ああ、やれる限りやるよ」
「では契約成立ということで、パウロ様は私の魔術の実験台になってもらいますね」
「……は?」
頓狂な声を上げる彼に、リベラルは当然と言わんばかりの顔をする。
「今までに剣術を無料で習った経験がありますか?
それに私にお金を借りてるからないじゃないですか。
だったらもう身体で払ってもらうしかないじゃないですか」
別にお金に困っているわけではないが、最近のパウロはリベラルに頼り過ぎなのだ。
別にそれは構わないのだが、何でもかんでも頼られるのはいいように使われてる気がして嫌だった。
そろそろ貸しを返してもらってもいいだろう。
「くっ……危ないことは止めてくれよ……?」
「善処しますが……取りあえずまたパウロ様の乳首をつねりましょうか」
「お前のその乳首への執念はなんなんだよ?」
「乳首スイッチONです」
再び手を伸ばすリベラルに、パウロは悲鳴を上げる。
そんな下らないやり取りをしていたが、彼女はふと動きを止めてパウロの後ろに視線を向けた。
視線の誘導は既にやられた手法なので、彼はそれに引っ掛からず手の動きに注視する。
「エリナリーゼ? ラノアに来られてたんですか?」
「おいおい、そんな露骨なフリすんなよ」
何とか胸を死守したいパウロは、意地でもリベラルから目を離さない。
「ふぅーっ」
「うおおおお!??」
だが、唐突に背後から耳へと息を吹きかけられパウロは跳び跳ねる。
驚いて振り返れば、そこには本当にエリナリーゼが立っていたのであった。
彼女とはミリスでお別れした筈なのだが、どういう訳かこの場に現れたことに驚きを隠すことをしない。
「なんですのその反応は。童貞になりましたの?」
「お前なんでここにいるんだよ?」
「ゼニスのことが心配だったからですわ……悪い?」
「いや、悪くねぇけどよ……」
喧嘩ばかりしていたとは言え、そこは元仲間だ。
驚かせたりしつつも、特にいがみ合う様子もなく会話を続けていく。
「ギースとタルハンドも来てますわ」
「けっ、ゼニスは俺の嫁だからお前らには渡さねぇぞ?」
「うるさいですわね。私の嫁にしますわよ?」
などと言い合いつつ。
彼女が現れた用件も聞いていく。
「ゼニス様に会いに来ただけなのですか?」
「元々はその予定でしたわ。けど、ルーデウスたちの話を聞いて考えを改めましたの」
「何の話を聞いたんですか?」
「ラノア大学に入学するみたいですわね。私も大学に興味が湧きましたの!」
どうやら先にルーデウスやゼニスたちと会い、こちらに来たようだ。
恐らくギースとダルハンドも、今はそっちにいるのだろう。
ルーデウスたちから話を聞いたエリナリーゼは、3人がラノア大学へ入学することを知ったらしい。
恐らく本人たちから直接聞いたのだろう。
「なんでまた入学しようと?」
「決まってますわ。ルーデウスが心配だから……」
「嘘付け、男漁りしたいだけだろ」
「その通りですわ。ルーデウスぐらいの歳の子に興味が湧いて来ましたの」
あっけらかんと告げる彼女に、リベラルは呆れた表情を浮かべる。
ルーデウスは15歳前の少年だ。
そんな年代の子に手を出すのは犯罪臭がする。
「あらあら、そんな顔して貴女も興味ありますの?」
「興味ありそうな顔してませんけど。それに今のところ男を作る予定はないですよ」
「でも聞きましたわよ。ルーデウスととっても仲がいいって」
エリナリーゼは何故かしなだれかかってきたが、リベラルは努めて冷静に話す。
「興味、あるんじゃなくて?」
「確かにな。こいつやけに俺の乳首触ってくるし」
「パウロ様はちょっと黙ってください」
知識だけは豊富なため、興味があるのは確かだ。
しかし、ヒトガミを倒すまでの間に妊娠などしてしまえば目も当てられないだろう。
本来の歴史では強固な運命に守られていた筈のロキシーが、妊娠という運命の緩むタイミングに一度殺されてしまっている。
龍族であるリベラルは妊娠期間が人族より長かったと記憶してるため、ヒトガミに大きな隙を見せることは避けたかった。
そういった恋愛や性への活動は、全てが終わってからにしようと考えていた。そのため、ルーデウスは対象外としていた。
推し、といえばいいのだろうか。
確かに彼への好意はあるが、愛だとかそういった感情ではない。リベラルが抱いているのは憧れやファンのような気持ちだ。
だからこそ皆のことを敬称で呼び、心の距離感を最低限保てるように彼女はしているのだが。
「ちょ、ちょっと触りすぎじゃないですか?」
「そんなことありませんわ。私はあなたに素直になって欲しいだけですもの」
指先でふんわりとなぞるように背中を触られ、思わず反応してしまう。制止してもエリナリーゼはクスクス笑っているだけだ。
その場から移動しても、彼女はピッタリと付いて着る。仕方ないので龍神流の歩法を使い、無理やり距離を引き離した。
少し不満そうな表情を浮かべるエリナリーゼだったが、気を取り直し口を開く。
「私も色々な経験がしたいのですわ」
「まあ、俺が金を出すわけじゃねぇしな。好きにすりゃいいだろ」
「当たり前ですの。貴方からお金を借りる訳ありませんわ」
そうして、何故か分からないがエリナリーゼもラノア魔法大学へと行くことになった。
それに反対する者はいない。そもそも個人の自由なので止める権利もないだろう。
ルーデウスたちにも事前に話を通していたらしく、後日会った際に「楽しみですね」と口にしていた。
エリナリーゼも以前の歴史通り、パウロの娘になるのは嫌みたいなので彼には手を出してないようだ。
――――
そしてしばらくして、ルーデウスたちはラノア魔法大学に入学した。
ルーデウスは巷で『魔術王』などと呼ばれているのだから当然ながら特待生。
ロキシーは希望通り教師。
エリナリーゼは一般科。
そしてシルフィエットも一般科。
シルフィエットも特待生になれるだけの実力と実績もあった筈なのだが、特待生になることを断ったとのこと。
そのことを聞くと、ブエナ村でのことを反省しているらしい。
「おんなじところに行ったら、またルディに頼り切りになっちゃいそうだから」
とのことだ。
シルフィエットはシルフィエットなりに努力をしていた。
ハーレムを築きバラ色の学校生活を送る予定だったルーデウスは、彼女のその選択は誤算だったのだろう。
特待生は変なやつばっかで大変だと愚痴っていた。
また、その際にサイレント・セブンスターと会うアポも取れたとのことなので、後日会うらしい。
リベラルは大学に通う予定はないので、友達が出来たら紹介して下さいとだけ伝えておいた。
今回も推敲なし。やる時間がぬぇ…。
あと全く関係ないんですけど、執筆してる端末の文字変換がクソ過ぎて『わからないけど』みたいな簡単な言葉も漢字に変換してくれなくてキレそうです。たまにひらがなだったり漢字だったりすのはそれが原因です。すまぬぅ…。
Q.聖獣。
A.予定調和。召喚される運命だったようです。
Q.アルマジロのジロー。
A.原作と同個体なのかは誰も分からないのであった。ロキシーが学校に通う際の足になります。
Q.パウロ。
A.原作での対人戦がほぼなかったため具体的な実力は不明ですが、当作品では聖級上位ほどの実力としました。水聖と北聖には勝てますが『光の太刀』にまだ対応出来ない状態なので、剣聖には勝率が低い感じです。
Q.エリナリーゼ。
A.言葉通りです。
ゼニスのことを見に来たらルーデウスがカッコよくなってた→キュン!→でもパウロの息子だからヤルわけには…→せや、同じ年代の子とヤればええんや!→なら入学しよう!
と、原作とほぼ同じ理由での入学です。
Q.手合わせで使った技。
A.もちろんオリジナルです。それぞれの流派の特性に合わせた技にしました。有効性は作中の通りです。
石蕾剣→剣をスコップ代わりにして砂を掛ける技。※蕾は『らい』で音読みです。
廻天→剣をくるくる回転させるだけの技。