無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

パウロ「お金貸してくれ…」
リベラル「ええで。担保はお前の身体な」
ルーデウス「そんなやり取りがあるとは知らず、ようやくシャリーアに辿り着きました」

実習中ですが何とか書き上げました。なのに何で今日は朝の8時から0時頃まで仕事してるんだろ…ちょー頑張ってるから誰か褒めて()


5話 『目標』

 

 

 

 

 シャリーアへと辿り着いたルーデウスたちは、ギルドを通して家族やリベラルの所在を把握した。

 早速パウロたちの新しい家へと赴いた彼らは、突然の訪問だが当然歓迎される。

 

「おかえり、ルディ」

 

 パウロからの言葉にルーデウスは一瞬呆然とした表情を浮かべるが、すぐにここが自分の帰る場所になったんだなと感慨深い気持ちとなる。

 このような当たり前な挨拶も、転移事件が起きてからはずっとなかったのだ。

 旅の最中にはなかった新鮮さを感じつつ、ルーデウスも気恥ずかしそうに、

 

「ただいま」

 

 とホッとした様子で返した。

 ヒトガミの件で沈んでいた気持ちが、少しだけ良くなった。

 

「お邪魔します」

 

 その後ろからシルフィエットとロキシーがおずおずと声を掛ける。

 家族の再会の場なのでここにいていいのだろうか、という気持ちはあったものの、リーリャが丁寧に案内することでそれは払拭された。

 荷物もあるので2人は部屋へと案内され、そのまま汚れを落とすためにお風呂へと連れて行かれてしまう。

 更にそこへノルンとアイシャも放り込まれ、大人数での浴場となるのであった。

 

 近況を話し合っていたパウロだが、女性陣がお風呂へ消え去るとニヤリとした表情を浮かべた。

 

「で、ルディ。誰が狙いなんだ?」

 

 ニチャァ、と擬音が聞こえそうなほどに下品な表情を浮かべるパウロ。とても楽しそうである。

 ルーデウスは呆れつつも惚けた返答した。

 

「えー、何のことです?」

「おいおい、ロキシーもシルフィもお前の大好きな子たちじゃないか。そんな2人と旅をして……何も起きない訳ないだろ?」

「いえいえ、残念ながら何も起きませんでしたよ」

 

 彼の下世話な話をサラリと躱すルーデウスだが、パウロも諦めず喰い下がる。

 

「ぶっちゃけどっちとヤッた?」

「どっちともヤッてませんよ」

「何だ。ならルディはまだ童貞なのか……」

「いえ、童貞じゃないです」

 

 その返答は反射的なものだった。

 かつて前世で童貞であることがコンプレックスだったルーデウスは、女性関係のことで馬鹿にされることが苦手であったのだ。

 パウロにおちょくられることを分かっていても、童貞という単語に反応してしまうのであった。

 故に、パウロはニヤニヤした表情のままルーデウスの肩に手を回し問い詰める。

 

「ロキシーでもシルフィでもないってことは、エリスか。ヒュ~やるねぇ! 流石は俺の息子だ!」

 

 全くも待って嬉しくない仲間意識だが、パウロはとても喜んでるようだった。

 彼としては息子と一度はそういう話をしたかったのだろう。

 ルーデウスからすれば勘弁してほしいが、いつも以上に上機嫌な様子である。

 

「確か、別れたんだってな? 理由は知らんがその前にヤることやった訳なんだな」

 

 かなりゲスい発言だ。

 息子に掛ける言葉ではないだろう。

 だが、とてもいい笑顔である。

 殴りたい、この笑顔。

 

「父さん、そっちの事に関してはちょっとばかし自信があるんだ。何でも聞けよ。こう見えても、父さん若いころは遊んでたからな」

 

 そう言われると、ルーデウスとしても相談したいことがあるのは確かだった。

 ルイジェルドにも指摘されたシルフィエットからの好意のことだ。エリスのことを忘れきれない彼は、曖昧な態度で接し続けている。

 自分でもいけないと分かっているのだが、ウジウジと情けない姿を見せ続けているのが現状だ。

 色恋沙汰とは別に、シャリーアへと辿り着く前の出来事で頭を悩ませていることもあるのだが……彼に話すべき内容ではないと頭を振った。

 なるべく明るく振る舞ったつもりだが、パウロの反応的に外面には出なかったのだと安心する。

 しかし、それらについての思考があったためか、パウロの話は上手く聞き取ることが出来なかった。

 

 愛想笑い、という訳ではないが、ルーデウスの反応はどこか上の空であった。

 

 

――――

 

 

 現在、ルーデウスを一番悩ませているのはヒトガミからの助言である。

 

『リベラルを殺してよ』

 

 それが出来ないのなら、これからも使徒を送り込むと告げられた。

 使徒の強さは毎回剣神クラスが来るとは思わないが、寝込みや自分以外の者が襲われたりすれば対応出来ない。

 自分が生きている限り、ヒトガミからの攻撃が続く可能性があるのだ。

 当然ながらそれは困るし、何とか解決しなければならないことである。

 問題は、どうすればいいのか分からないことだ。今までは現代知識や経験を活かして前へと進むことが出来たが、今回はそうもいかない。

 ヒトガミにどうすれば一泡吹かせることが出来るのかも見当がつかない。

 

 リベラルは小さい頃からの付き合いであり、尊敬している存在でもある。今の自分の強さは彼女のお陰とすら思っている。

 ある程度親しい仲でもあるし、そもそも前回手合わせで為す術もなくボコボコにされたばかりだ。

 ヒトガミに言われたように寝込みでも襲えば殺せるかも知れないが……心情的に実行するのは難しかった。

 

 本来の歴史では、絶対に敵わないとすら思っていたオルステッドに挑む決心をしていた。

 そんなルーデウスがリベラルに挑む決心がつかないのは、彼女の強さや親しい関係だけが理由ではない。

 今のルーデウスはまだ結婚をしておらず、守るべきものも定まっていない時期なのだ。

 だからこそ葛藤していた。

 ヒトガミと戦う決心もつかず、リベラルと戦う決心もつかない。

 

「…………」

 

 最初は気丈に振る舞っていたルーデウスだが、徐々に精神的苦痛に犯されていく。

 何とか笑みを浮かべていても、心の中は常にヒトガミの助言で埋め尽くされる。家族と過ごしていたが、段々と笑みが減っていった。

 パウロもそのことに気付いていたが、彼から声を掛けることはなかった。己の息子は賢く、どうしようもない時はいつも自分から口を開いていたからだ。

 その父親からの信頼に、ルーデウスは応えることが出来なかった。いや、どうすればいいのか分からなかった。

 歓迎パーティーを開こうと提案していたパウロたちだが、所々話を聞き漏らしてしまう。

 

「ルディ、大丈夫か?」

「え、ええ……大丈夫です。ちょっとボーッとしてしまいました」

「……そうか。旅してたもんな。疲れたんだろう。一度睡眠を取って休むといいさ」

「……ありがとうございます。そうさせてもらいます」

 

 部屋から一人離れたルーデウスは魔術で身体を洗い流した後、家の窓から空を眺める。

 ヒトガミはリベラルの告げたように、邪悪な存在だった。仮にリベラルを殺したとして、アレはそれで満足するのだろうか。

 いや、もしかしたらそれからも良いように使われ続ける可能性もあるだろう。それは避けなくてはならないことだ。

 そもそもヒトガミとの確約はしてない。こちらからは手の届かない存在なのだから、気まぐれで災厄を振り撒かれる可能性もあった。

 だからといって、ヒトガミと敵対するのも避けたかった。

 ヒトガミと出会った場所は、あの夢のような場所なのだ。そもそもあそこは何処なのかも分からない。自分の姿も前世のものになるような場所なのだから。

 

 もしかしたら……本当に次元の違う存在なのではないかと恐怖している。

 画面越しから見てる視聴者のように。

 漫画を読んでる読者のような。

 そんな別次元の存在に喧嘩を売られてるのではないかと思い、心底怖かった。

 

 もしも本当にそんな存在であれば、敵対するなんて無理だ。そんなの馬鹿のすることだろう。

 そんな考えが頭の片隅にあったからこそ、踏み切れずにいたのだ。

 リベラルの話し方的に別次元の存在ではないと分かっているのだが、それでも恐怖は簡単に振り払えなかった。

 

「…………」

 

 しばらく無言でそのことを考えていたルーデウスだったが、不意に部屋の扉がノックされる。

 

「ルディ、ちょっといいかな」

「シルフィ? ええ、いいですよ」

 

 声からシルフィエットであることを把握した彼は、彼女を中へと招き入れる。

 お風呂上がりで髪の毛を仄かに濡らしていたシルフィエットは、いつもよりどこか艶っぽく感じられた。

 

「どうしました?」

「ねぇ、ルディ……悩んでいること、ない?」

 

 唐突にそんなことを言われ、彼はドキッとしてしまう。

 

「えっと……特にないですよ?」

「…………」

 

 その返答に、シルフィエットは無言で彼の目を見続けた。ふざけた様子もなく、真剣な表情だ。

 そのことにルーデウスは混乱してしまう。何せ、今までシルフィエットがこのようなことを聞いてきたことがないからだ。

 本当に脈絡もなく、彼女は悩んでることはないのかと問い掛けてきたのである。

 

「……いえ、ありませんよ」

 

 しかし、ルーデウスも話せる内容だと思わなかったため、あくまでもしらを切った。

 

「ううん、嘘だよね」

「……何故そう思うんですか?」

「だって、ルディ、ずっと気付いてないもん」

「気付いてない? 何にですか?」

「ボクたちみんなが心配してることに」

 

 脈絡もなく、というのはルーデウスの視点からの話でしかなかった。

 旅の途中から、シルフィエットとロキシーは彼が何かに悩み、そして不安を抱いていることに気付いていた。

 

「ちょっとした時間だったのに、パウロさんもリーリャさんもルディが辛そうにしていることに気付いてたよ」

「そう、なんですか?」

「うん。ボクとロキシーは家族のことで心配があったのかなって思ってたけど……ここに来てもルディが変わらなかったから」

「…………」

 

 まさかそこまで心配されているとは思わなかったルーデウスはたじろいでしまう。

 上手く隠してたつもりのルーデウスだったが、パウロたちにまで筒抜けだったのなら俺は大根役者だったのだろうな、なんて場違いなことを思考する。

 

「……剣神と遭遇してからだよね。ルディが辛そうにし始めたの」

「そこまで分かりますか……」

「分かるよ。本当に辛そうだったもん」

 

 旅の道中では心配に思っても声は掛けなかった。

 パウロたちと会えば解決すると思ってたからだ。

 けれど、シルフィエットからは余計に苦しくなっているように見えた。

 

「ねぇルディ。何があったの?」

「……それは、言えない」

「どうして?」

「……話すことで状況が悪化する可能性が高いからです」

 

 ルーデウスの答えは結局そこに行き着く。

 話せないと思っているからこそ、一人で抱え込んでいるのだ。

 重要なことを相談せずに抱え込むのは、デッドエンドの頃からにもあった傾向である。

 

 ブエナ村でシルフィエットは彼の言葉にしつこく食い下がることはなかった。

 ここまで言えば彼女の追及は終わると思っていた。

 

「ルディが一人で解決出来るならこれ以上は言わないけど……そうじゃないよね?」

 

 けれど、シルフィエットは引き下がらなかった。真っ直ぐとルーデウスの瞳を捉えたまま、視線を外さない。

 その様子に彼は後ろめたさを感じたのか、反射的に顔を背けてしまう。

 

「……ブエナ村でのこと、覚えてるかな。ボクと初めて出会ったときのこと」

「覚えてますけど……それがどうかしましたか」

「ソマルたちを追い払った時、ルディが足を震わせてたこと思い出したの」

「えっと、震わせてましたっけ?」

「うん、そうだった」

 

 当時のシルフィエットはルーデウスに依存していた。その切っ掛けとなった最初の邂逅のことを、彼女はハッキリと覚えている。

 今でもその時のドキドキした気持ちを覚えている。けれど、離れ離れになってから自分がどれほどルーデウスに依存していたのか気付いた。

 そして、特別視していたことに気付いた。

 

「ルディは凄かった。今も凄いって思ってる。ボクに魔術を教えて、見たことのない世界に連れて行ってくれた」

「そう、ですかね」

「昔は漠然とした感覚だったけど、今はルディがどれほど高度なことをしてるのかも分かった」

 

 シルフィエットに出来ることは、ルーデウスも全て出来る。

 治癒魔術なら何とか追い付けそうだったが、今ではすっかり引き離された。

 聖級にはなれたが、王級には中々到達出来ないし、近接関係もからっきしだ。旅の途中でもルーデウスやロキシーに頼ってばかりだし、一人で出来ることは多くない。

 きっと転移事件でロキシーと出会えてなければ、どこかで野垂れ死にしていただろう。

 だからこそ、ルーデウスの凄さが分かるのだ。

 

 ルーデウスがロキシーを神聖視しているように、シルフィエットもルーデウスを神聖視していた。

 いじめから助けるという誰にも出来なかったことをやってみせたのが彼だったのだ。

 

「でも、ルディも普通の男の子なんだって思い出したの。

 魔術は帝級だし色んな知識を持ってる。魔大陸に飛ばされても、無事に帰ってくることも出来た。

 けど、知らないことは知らないし、恐怖を感じれば怯えたりする。

 それでも勇気を出してボクを助けてくれた同じ歳の男の子なんだって」

 

 だからこそ、放って置けなかった。

 ルーデウスは何かに怯えているのだと気付けた。

 そしてそれを誰かに話すことなく抱え込んでいるのだと。

 

「頼りないかも知れないけど、ボクはルディの味方だよ」

 

 安心させるかのように、シルフィエットは微笑む。

 どうすることも出来ず、一人で迷っていたルーデウスに手を差し伸べるかのように。

 

「…………」

 

 ルーデウスの脳裏に、ブエナ村でのことが蘇る。

 ずっと後ろについてきていた最初の友達。

 何をするにしても、一緒に過ごしていた。

 頼りないと思いながら、光源氏作戦みたいなゲスい考えも持っていた。

 共依存になってしまい引き離されてしまったが、今ではその頃の面影はなくなっていた。

 

 あの頃の少女はいなくなり、いるのはシルフィエットという意思を持った一人の人間だった。

 

「……シルフィ、相談があります」

「うん、何でも言って」

 

 ルーデウスはその言葉に導かれ、口を開く。

 ヒトガミという存在とリベラルが敵対していること。

 剣神が現れたのはヒトガミの手によるものだと。

 ヒトガミ側に付かなければこの先ずっと使徒を送り続けると言ったこと。

 リベラルを殺さなければならないこと。

 

 言葉に詰まり、所々震えた声になっていた。

 途中で話すのを止めようとも思ったが、何とか紡いでいった。

 難しくて分かりにくい話もあったが、シルフィエットはその言葉を否定せず全て受け止めた。

 急かすこともせず、話を聞き終えた彼女はゆっくりとルーデウスを抱き締める。

 

「ありがとうルディ。旅の途中からずっと不安だったんだよね。ずっと相談に乗れなくてごめんね……」

「……いえ、シルフィは何も悪くないです。謝る必要はないですよ」

「ううん、ボクもロキシーも気付いてたのに、甘えっぱなしだったから」

「…………」

 

 しばらく抱き締め、落ち着いてきたのかルーデウスは離れた。

 シルフィエットは名残惜しそうな表情を浮かべながらも、自分の意見を口にする。

 

「今の話だけどね、リベラルさんにも話すべきだと思うよ」

「……その結果、みんなに被害が及ぶとしてもですか?」

 

 ルーデウスその選択を出来ずに迷っていたのは、今しがた口にした通りのことが理由だ。

 彼一人だけの問題であれば、ここまで悩むことはなかった。

 だがその選択の結果、周りに影響が出るからこそ踏み切れないのだ。

 

「ボクはね」

 

 ポツリと、シルフィエットは口を開く。

 

「もしも同じような状況になって、ルディを殺せって言われても、絶対にそんなことしないよ」

「……そうですかね」

「だってその後平和に暮らせたとしても、そのことを一生後悔すると思うもん」

 

 …………。

 ……。

 

「後悔」

「うん、絶対に忘れないと思う」

 

 ルーデウスは不思議とその単語が、スッと胸の中に染み込む。

 

「ルディって、凄いよね。昔から見てきたから知ってる。でも、才能だけじゃなくてずっと努力してたのも知ってる」

「…………」

「どうしてそこまで頑張れるの? ボクには分からないけど、何か理由があったの?」

 

 今まで頑張ってきた理由。

 それはこの世界に生まれ落ちてから、ずっと変わらない理由だ。

 前世の過ちを繰り返さないと。

 そう誓った。

 

「ルディが決めたことならボクもこれ以上何も言わないよ」

「――――」

「でも、本当に後悔しないの?」

 

 シルフィエットの言葉と、生まれてから立てた誓いを反芻する。

 ヒトガミの言葉に従い、リベラルと敵対することは本当に誓い通りの行動なのだろうか。

 

「――……そう、ですね」

 

 冷静に考えれば、選択肢なんてひとつしかなかった。

 ヒトガミに恭順する道を選べば、これから先の人生はヒトガミに怯え続けるだけになる。

 そんな人生、後悔しかないだろう。

 

『俺はこの世界で本気で生きていこう。

 もう、二度と後悔はしないように。

 全力で』

 

 ルーデウスは生まれてから、そう誓ったのだ。

 だからこそ、頑張ってきた。

 もちろん、途中で妥協しそうな時期もあった。

 ブエナ村にいた頃に、際限のない生き方に疲れた頃だ。

 結局パウロに叩きのめされることで心を入れ替えたが、根本的な問題は解決していなかった。

 

「シルフィの言う通りです……よし、決めました」

 

 後悔しないように生きる。

 その目標はいいだろう。

 だがそれは着地点のない目標だった。

 

 しかし――今回の件で明確な目標が出来上がった。

 

「リベラルさんに相談します。冷静に考えればそれが一番正しかったですね」

 

 スッキリした顔で、ルーデウスはそう告げた。

 

 

――――

 

 

 ルーデウスは今でも戦いが嫌いである。

 危ないし、痛いし、怖い。

 自分より強い相手がいれば、逃げ出したくなる。

 可能であれば、戦いなんて避けたいことだった。

 それでも彼が魔術や剣術を習っていたのは、この世界で生きていくのに必要な技能だったからだ。

 外の世界では魔物は闊歩してるし、盗賊なんかも存在する。

 戦う術を持たなければ生き辛いだろう。

 

 きっとこの先、理不尽なことで大切なものを失うこともある。

 正しいと信じた選択をしても、望まぬ結果になることもある。

 前世でもそうだった。

 妙な正義心に駆られて行動した結果、イジメに合って不登校。そして目出度くニートまで引き摺ってしまった。

 

 あの時正義心に駆られなければ、とか。

 勇気を持って登校していれば、とか。

 そもそも違う学校に行ってれば、とか。

 

 そんなことばかり考えていた。

 けれど、それはもう変えられないことなのだ。

 後悔してもどうしようもないことだった。

 最終的に現実から逃避し、都合の良い世界に入り浸ってしまった。

 

(……親の葬式、行けばよかったな)

 

 この世界で努力すればするほど、前世の失敗を思い出す。

 昔からもっと頑張っていればよかったなんて、誰でも抱くような当たり前の後悔ばかりが溢れ出るのだ。

 

(俺は今、人生の分岐点(ターニングポイント)に立っていた。

 そして、選んだ。

 怖くて震えそうになったけど、それでも選択した)

 

 シルフィエットの言う通り、ヒトガミに従うことを選べばきっと後悔しただろう。

 リベラルと敵対するからなのか、それともヒトガミに怯え続けなければならないからなのか。

 どの理由で後悔することになるかは分からない。

 ヒトガミと戦うことを選んだが、それでも後悔することもあるだろう。

 大切な人を傷付けられるからなのか、それとも自分が殺されるかもしれないからなのか。

 それもその時にならなければ分からない。

 

 この世界で本気で生きることに、明確な目標が出来上がった。

 言葉だけの決意では、揺らいでしまうこともあるだろう。

 それでも前に進むために、心の奥底に刻みつけるのだ。

 

(ヒトガミを倒す――それがこの世界での目標だ)

 

 この先どうなるかなんて、誰にも分からない。

 かつてのように、やっぱり後悔する日が来るかも知れない。

 全力を尽くしたのに、どうすることも出来ないなんてこともあるだろう。

 けれど、それで終わりじゃないのだ。

 楽しいことも、嬉しいことも、辛いことも、苦しいことも、悲しいことも。

 どんな生き方をしても経験することだ。

 その結果を受け止め、先に進まなければならない。

 それが本気で生きるということ。

 

 

 ――生きていくのだ。

 いつ死んでも後悔しないように。

 本気で。




推敲してないから誤字あったら申し訳ない。

Q.パウロ…息子が苦しんでるのに何故下世話な話を。
A.まあきっとルディの気を少しでも緩めるためでしょう。

Q.ロキシー
A.本当は相談に行きたくてウズウズしてましたが、シルフィエットがルーデウスに好意を抱いてることを知ってるため、一歩引いてしまいました。

Q.シルフィエット
A.ルーデウスが好きなので、ちょっとでも励ましたかったようです。結果は大成功。

Q.ルーデウスの目標
A.二章7話で少し触れましたが、際限のない生き方だったと記載したので、明確な目標を立てました。後はそれを達成するための道筋を整理するだけです。

Q.今回の最後。
A.原作でも特に大好きなシーンだったので入れさせてもらいました。汚してしまってないことを祈る。
本気で生きていくって言葉にするだけなら簡単ですけど、それを行動に移せてるからこそルーデウスはカッコいいし大好きなんですよね。

皆さんは戦闘シーン好きですか?精神面の話なんかより、バーサーカーの如く戦闘シーン大量の方が好みでしょうか?

  • バーサーカーになれ!!
  • バーサーカーは嫌いです。
  • 今のままでいいよ。

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