無職転生ールーデウス来たら本気だすー   作:つーふー

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前回のあらすじ。

パウロ「捜索団止めたからシャリーアに向かうぜ」
ルーデウス「デッドエンドとして頑張ったよ!」
シャンドル「トリス確保したからアリエルの元に送り届ける」
リベラル「みんなが来るまで無職を満喫します」

実習が終わったと思ったら吐きそうな量の課題に試験の数々。プライベートの時間がないんやぁ…(血涙)
医療系と言った気がしますが全く関係ない英語の試験だけを現在落とした悲しみ。英語は日常的に使わないからホントに覚えらんない。英語ぺらぺーらになりたい思いはありますけど現実は残酷でした。


2話 『ルイジェルドの誓い』

 

 

 

「では、よろしくお願いします」

 

 5年前、フィットア領にたどり着いたルーデウスたちはパーティーメンバーが変わった。

 エリスがいなくなり、その代わりにシルフィエットとロキシーが加入したのだ。

 加入する際には特に問題もなかった。

 エリスと正式な恋人になれたと思った矢先、事情を告げずに去られてしまったことに対しての悲しみはあった。

 しかし、そこは敬愛すべき師匠に幼馴染の妹弟子だ。

 2人がルーデウスの気持ちに寄り添い、支えてくれたのである。

 そのお陰もあり、彼は失恋から立ち直ることが出来た。

 デッドエンドのパーティーメンバーが変わったことに対して、ルイジェルドはどことなく寂しそうな表情を浮かべていたものの、

 

「出会いがあれば別れもあるように、変わらないものはない」

 

 と、深そうなことを呟いていた。

 ルーデウス自身もデッドエンドと言えばエリスとルイジェルドの2人だったが、目的を考えればパーティー名を変えるわけにはいかない。

 立ち直ったルーデウスは、あてもない世直し活動を始めるのであった。

 

 基本的には、今までのような活動内容であった。

 問題なさそうな依頼にはルイジェルドの名を、失敗したりした依頼にはルーデウスの名を使っていた。

 とは言っても、失敗した依頼はほとんどないのだが。

 魔大陸で旅をしていた頃に比べれば、冒険者や依頼内容のレベルが全体的に低いのだ。

 魔物のレベルも高くてCランク程度であり、ルーデウス一人で余裕を持って対処出来る程度の相手しかいない。

 もちろん、気を抜いていたらアッサリ殺されてしまう可能性もあるので油断はしない。

 そのようにパウロやリベラルに叩き込まれたのだから。

 

「魔術師が3人に前衛が1人……どうします?」

 

 パーティーを組むに当たって頭を悩ませたのは、フォーメーションである。

 全員が予想していたことなのだが、何度か依頼を熟して行くとパーティーのバランスの悪さが浮き彫りになった。

 前衛のルイジェルドが強すぎて3人の働くタイミングがないのだ。

 ぶっちゃけた話、ルイジェルドが1人いれば残りの3人は棒立ちでも問題ないのだが、流石にそうする訳にもいかないだろう。

 かと言ってルイジェルドも己の我儘に付き合わせているため、働かないという選択肢はなかった。

 

「……では、折角なので僕が前衛に回ります。ルイジェルドはサポートして下さい」

「前衛が出来るのですかルディ?」

「まあ、そこそこですけど」

 

 ロキシーが疑問の声を上げる。

 魔術師としての力が突出してるせいで忘れられてそうだが、彼はブエナ村で過ごしていた時点で剣神流は中級になってたのだ。

 魔大陸で旅をしている時も、ルイジェルドの手合わせがあったお陰で腕は鈍っていない。

 ルーデウスは闘気を纏えないものの、その腕前は既に上級と言っても差し支えないレベルに上達していた。

 更に言えば、剣神流よりも北神流に適正があったこともあり、そちらも既に上級と言える実力だったのだ。

 パウロと近接戦を繰り広げたのは伊達ではなかった。

 

「分かった」

 

 ルイジェルドは実力を知っているため驚きはないが、ロキシーとシルフィエットはその事実に目を丸くする。

 ロキシーとシルフィエットの2人は魔道具によって近接関係の対処をしていたが、素の実力では戦えない。

 魔術も使えて剣も使えるような存在は珍しく、それこそ初代水神くらいしか知らないのだ。

 

「とりあえずそれでやってみましょう。駄目そうならまた考えればいいだけです」

 

 こうしてフォーメーションは決まった。

 連携の調整をするためにも、まずはあまり強くない魔物を相手にする。

 

「じゃあ、これとかどう?」

 

 ギルドの掲示板にあった依頼を剥がしたシルフィエットが、それを見せる。

 

 

=========================

 

フリー

 

・仕事:ゴブリン討伐

・報酬:耳一つにつきアスラ銅貨5枚

・仕事内容:ゴブリンの間引き

・場所:フィットア領北部

・期間:特になし

・期限:特になし

・依頼主の名前:ピレモン・ノトス・グレイラット

 

・備考:新人は時折発生するホブゴブリンに注意。なお、この依頼は剥がさず、収集したものをカウンターにそのままお持ちください。

 

=========================

 

 

 Eランクのクエストである自由依頼<フリークエスト>を手に取った彼女に、ルーデウスは頷く。

 フィットア領は転移事件の影響で人手が足りてない状況だ。

 そのため、魔物への対応が全く追い付いていない。

 ゴブリンに限らず、魔物は狩れば狩るだけ喜ばれる。

 

「それにしましょう」

「分かりました」

 

 ゴブリン程度であれば近付かれる前に魔術で一掃出来るが、今回はルーデウスの実力の確認と連携が目的だ。

 ルーデウスが攻撃を仕掛けるまで魔術は禁止となった。

 

 準備はあまり時間も掛からずに終わった。

 本来の歴史ではシルフィエットはアリエル王女の側近だったが、今は冒険者だ。

 旅慣れしたメンバーしかいないため、目的地には滞りなくたどり着く。

 転移事件によって辺り一面が草原となっているため、ゴブリンはすぐに見つかった。

 6匹のゴブリンがおり、更に1匹体格の良いホブゴブリンが棍棒を持ってうろついている。

 

「僕がナイフで一撃を加えたら離脱しますので、2人はそのタイミングで魔術をお願いします!」

 

 既に魔術の射程距離だが、ルーデウスは剣を持って駆け出す。

 因みに、剣は適当なお店で買ったロングソードだ。

 

 ゴブリンたちも接近するルーデウスに気付き、喚き声をあげながら駆け出す。

 彼は頭の中でシミュレーションを繰り返し、ゴブリンたちの行動を予測しながら動く。

 少し斜めへとズレながら移動することで、ルーデウスしか見ていないゴブリンたちもそれに合わせて動きがズレていった。

 ゴブリンたちが一列に近い集団となったタイミングで、彼は持っていた剣を投げつける。

 

「ギャッ!」

 

 虚を突かれた先頭のゴブリンは胸に剣が突き刺さり、そのまま転げるかのように倒れていく。

 一列になっていたため、その後ろにいたゴブリンたちは躓いて倒れていった。

 最後尾にいたホブゴブリンだけはそれを飛び越え、ルーデウスへと駆けていく。

 完全に一対一の形となる。

 

 既に明鏡止水へと入っていたルーデウスは、目の前に迫るホブゴブリンを見つつ懐からリベラルのナイフを取り出す。

 単調な動きで棍棒を振り上げるホブゴブリンに、彼は完全に軌道を見切った。

 

 ――(ナガレ)

 

 水神流の基本にして奥義とも言える技。

 流石に力をそのまま跳ね返すことは出来ないが、受け流すことは出来る。

 迫り来る棍棒を滑らせるかのように逸らしたルーデウスは、そのままホブゴブリンの首をナイフで切り裂いた。

 悲鳴をあげ何とか一矢報いようとするホブゴブリンを視界に捉えつつ、ルーデウスはバックステップして離脱する。

 その瞬間、後方から放たれた魔術によってゴブリンは粉砕された。

 

「泥沼」

 

 転げていたゴブリンたちも既に立ち上がり復帰していたが、足下が泥沼と化したことによって再び転げてしまう。

 何とか逃れていた個体もいたが、接近したルーデウスに蹴り飛ばされ泥沼へと沈められた。

 

「汝の求める所に大いなる水の加護あらん、清涼なるせせらぎの流れをいまここに『水弾(ウォーターボール)』」

「『水矢(ウォーターアロー)』」

 

 更に追い打ちにロキシーとシルフィエットの魔術が命中し、ゴブリンたちは一網打尽となった。

 無事に依頼完了だ。

 ふぅ、と一息吐いたルーデウスの元へ2人は駆け寄る。

 

「凄いよルディ!」

「これほどの腕前だったのですね……驚きました」

「2人の魔術のタイミングが完璧だったからですよ」

 

 ルーデウスは棍棒を受け流すときに内心ビビっていたが、無事に倒せたことにホッとする。

 頭の中で描いていた通りに事が進んだ。

 なんだかんだで魔物に剣やナイフで斬り掛かったのは初めてだったので、上出来な結果と言えよう。

 後ろから歩いてきたルイジェルドも、満足そうな表情を浮かべていた。

 

「ある程度強い魔物相手でも、今の立ち回りが出来れば十分だろう」

 

 彼も今の戦い方に文句がなかったのか、太鼓判を押す。

 例え大型の魔物が相手でもルーデウスには魔術がある。

 対応力だけで言えば世界有数とも言えるほどだ。

 後は、その引き出す判断力が培われれば、ドラゴンを相手にしても倒せるだろう。

 

 こうして、依頼は問題なく終えた。

 

 

――――

 

 

 旅の途中の夜、見張り番であったルーデウスは夜空を眺めながら黄昏れていた。

 そんな彼の隣に、ルイジェルドが座る。

 

「ルーデウス」

「どうしました?」

 

 普段から彼は、見張り番であろうとなかろうと起きていることが多い。

 ルーデウスのことを認めてない訳ではないだろうが、任せきりにさせないのがルイジェルドの性なのだろう。

 ルーデウスも驚くことなく受け入れる。

 

「…………」

「……?」

 

 隣に座ったルイジェルドは、神妙な表情を浮かべたまま黙っていた。

 それに対して疑問を感じたルーデウスは、不思議そうな顔をして彼を見る。

 

「……エリスのことをどう思っている?」

 

 ようやく口を開いたかと思えば、この旅路にはいない人物の名が挙がりキョトンとする。

 てっきり、いつものように手伝わせてすまん、みたいことを言われるかと思っていたのだ。

 

「いきなりなんですか?」

「いや……気付いているか知らんが、シルフィエットとロキシー。あの2人はお前にそれなりの好意を抱いている」

「あっ、そうだったんですね。全然気付かなかったです」

 

 ルイジェルドは2人のことを彼から旅の最中に何度も聞いている。

 己の全てを変えたという偉大なる家庭教師ロキシーと、初恋であり初めての友人だったシルフィエット。

 思っていたのと違った、というルイジェルドの感想はさておき。

 シルフィエットは明らかにルーデウスのことを意識していると外から見て分かった。ロキシーについては不明だが、少なくとも親愛の気持ちがあるように見えた。

 

「数年間会っていなかったというのに、健気な様子だったな」

 

 元々シルフィエットはルーデウスに依存していたものの、自らの殻を破りその傾向はなくなっていた。

 しかし、ルーデウスに頼り切りにならないように、という彼への想いを根底に抱えながら成長していたのだ。

 だからこそ、数年振りの再会でも好感度が高いのだろう。

 

「……そうですか」

「エリスのことが気になるのか?」

「当たり前ですよ」

 

 だが、エリスへの想いもあったからこそ、彼は今の状況に浮かれることも出来ずにいた。

 立ち直ったとは言え、割り切った訳ではない。

 それに、ルーデウスには考える時間があった。

 

「ちょっと考えれば分かることでしたよ。フィリップ様が亡くなったなんて情報はなかったのに、フィットア領にいなかったんですから」

「…………」

「詳しい事情は分かりませんが……エリスはフィリップ様の元にいるのでは?」

 

 言葉通りだ。

 パウロから一度フィットア領の状況は聞いている。

 仮にサウロスのように処刑されたのであれば、アルフォンスがあの場で伝えていただろう。

 それがなかった以上、フィリップは逃避のためかは不明だが表舞台から姿を消したことは想像できる。

 そしてそのことをエリスが知れば、きっと父親を選ぶだろう。

 旅の途中、彼女は家族への思いを見せる場面があった。

 だからこそ、その答えに至った。

 

「……気付いていたか」

「まあ、冷静になれば気付けました」

 

 なにより、ルイジェルドがエリスの行方を伝えなかったことが大きなヒントだ。

 最初は恨みもしたが、時間を置けばおかしいことに気付ける。

 家族に対する思いのある彼だからこそ、ルーデウスも察することが出来た。

 

「シルフィに関しては、自分でも気持ちが分からない状態です」

 

 シルフィエットのことは好きだ。

 けれど、ライクであってラブではなかった。

 

「元々はシルフィが初恋です。でも、離れていた時間や関わった密度を考えれば記憶は薄れるものです。今となっては妹のように感じてたんだと思いますよ」

「…………」

「エリスとは長い時間関わりました。だからこそ、彼女のことを好きになっていた部分もあるんですけど……」

「次はエリスが離れてしまった訳か」

 

 ルーデウスは自分という人間の性根を、前世で嫌というほど理解させられた。

 嫌なことには耐えられず、すぐに逃げ出すような人間だ。

 自分の都合の良いことばかりに流されてしまう。

 このままエリスと長く会わなければ、きっと記憶から薄れてしまうだろう。

 シルフィエットとこのまま過ごすと、きっと彼女のことを好きになるだろう。

 前世で散々悪意をぶつけられたからこそ、好意に対して弱いのだと自覚していた。

 

「どうすればいいですかね」

「…………」

 

 エリスはいずれ戻ってくるだろう。

 そして情けない話だが、ルーデウスはそこまで待てる自信がなかった。

 手紙のやり取りすら出来るかも怪しい状況だ。

 いつになるかも分からない。

 だが、エリスの想いを分かってるからこそ、シルフィエットの想いに応えることも出来なかった。

 どっちつかずとなり、現状を変える努力を怠っているのだ。

 

 典型的なクズ男だな、と内心で溜め息を吐く。

 これではパウロに文句を言うこともできない。

 

「話し合え」

「話し合う、ですか」

「それしかないだろう」

 

 当たり前の話だが、何も言わなければシルフィエットは何も分からない。

 エリスという少女に失恋したという話はルーデウスを立ち直らせる際にしていたのだが、それ以上の話は誰も分からないのだ。

 引きずるにせよ、忘れるにせよ、気持ちをハッキリさせた方がいいだろう。

 

「話すのは、ちょっと怖いです……」

 

 だが、そこでヘタれてしまうのがルーデウスという人間だ。

 前世では画面越しの嫁は沢山いたが、残念ながらリアルでは誰一人としていなかった。

 ゲームとは違い、返答を誤ることで取り返しの付かない結果になることを恐れているのだった。

 現状に甘えてるとしか言いようがないだろう。

 

「……そこまでの面倒は見れん」

 

 誰かを好きになるのは自由だが、気持ちを蔑ろにするのは頂けない。

 エリスのことは仲間として気にかけてるので、出来ればそっちとくっついて欲しいと思っている。

 だが、人の恋路を邪魔するのもどうかといったところだ。

 結局、ルイジェルドは頼られても何かを出来る立場ではない。

 

「ミリス教でないなら……いや、何でもない」

 

 一夫多妻のことをルイジェルドは考えたが、すぐに首を振る。

 それは当人たちで決めることだ。

 あまり口出しをして迷わせるわけにいかない。

 

 情けない発言をしたルーデウス本人も、何が最善なのかは知っている。

 けれど、今の彼は分かっていても行動に移すことが出来なかった。

 

「…………」

「…………」

 

 互いに無言の時間が流れ、ルーデウスはどこか気不味くなってしまう。

 ルイジェルドは小さく溜め息を吐き、立ち上がった。

 

「今すぐ決める必要もないだろう。だが、気持ちというものは揺れ動くものだ。ずっとこの状況が続くわけではないことを忘れないようにしておけ」

「……そうですね」

 

 エリスの時もそうだったが、今の旅路も正直に言うと楽しかった。

 出来ることなら、こうして悩むことなく過ごしたい。

 ルイジェルドの言う通り時間は有限だ。

 この世界に転生したときに誓ったように、後悔しないように努力しなくてはならない。

 ただ、前世も含めて恋愛というものはこの世で一番むずかしい問題ではないのかと彼は思った。

 

 結局、その後もルーデウスは何も話すことが出来ずに時間だけが過ぎていった。

 

 

――――

 

 

 旅は順調に進む。

 デッドエンドの名はとても有名になった自覚があった。

 その名を出すと驚く人々が多くいたからだ。

 以前のようにルイジェルドに対して立ち合いを申し込む者もおり、そんな彼らも事情を知ることで協力すると笑顔で話していた。

 

 また、ルーデウスの魔術師としての実力も広まっていた。

 なにせ今の彼は全ての攻撃魔術が聖級以上なのだ。

 その他の魔術も全て上級以上となっている。

 ひとたび魔術を使えば、空は裂け海は割れるとまで言われていた。

 ホラ吹き扱いされることもあったが、ルーデウスの魔術を見れば誰もが称賛する。

 そんな彼のことをいつしか人々は――『魔術王』ルーデウス・グレイラットと呼んでいた。

 

 知らぬ間にそんな中二病を患ったかのような称号で呼ばれていた彼は狼狽えていたが、時間が流れればいつしか慣れてしまう。

 そんな呼び方をされていることも利用し、スペルド族の治療に対する協力者を募っていたのだ。

 その甲斐もあってか、スペルド族に対する差別はかなり緩和されることとなるのであった。

 

 シルフィエットとロキシーもルイジェルドに対して協力しており、彼女たちもまたスペルド族の差別や治療に貢献していた。

 

「よう! ルイジェルドの旦那!」

「今日もまた手伝ってくれないかい?」

「酒でも呑もーぜー!」

 

 ずっとデッドエンドの名を使い、活動を続けていた。

 魔大陸では誰かを助けても、恐れられることしかなかった。

 いつも誰かに罵声を浴びせられてばかりだった。

 

 こんな光景は、もう二度と見れないと思っていた。

 

「…………」

 

 今日もまた依頼熟し、人助けを行い、そして感謝される。

 ずっと昔。

 ラプラス戦役よりも前に見た、自身に向けられる多くの笑顔。

 とても、胸の熱くなるような光景だった。

 

「……ルーデウス」

「どうしましたか?」

「お前と出会えて良かった」

 

 フィットア領に辿り着いてから、3年の年月が過ぎた。

 約束していた期間は過ぎている。

 ルーデウスは相変わらずシルフィエットやロキシーと上手く会話出来ていないようだが、それでも頼りになった。

 出来ることなら、まだ皆と旅を続けたかった。

 だがこれ以上、己の我儘で彼を縛る訳にいかないのだ。

 ルーデウスの家族が待っているのだから。

 

「たったの3年で、ここまで状況を変えられたのはルーデウス、お前のお陰だ」

「そうですかね……未だにヘタれてシルフィと話せてない僕のお陰とは思えませんけど」

「そんなことはない。確かに女関係は上手くいってないが、この状況を生み出したのはお前のお陰だ」

 

 魔大陸にいたときからそうだった。

 愚直に子供を助けるだけでなく、いろんな方法があるのだと教えてくれた。

 デッドエンドが失敗した時は、自分が泥を被るように立ち回っていたことも途中で気付いた。

 

「汚名を雪げさえ出来ればそれでいいと思っていた。だが、それすら困難な状況だった。

 我武者羅に何かを成そうとしたが、どれもこれも空回りばかりだった。今までずっと、俺はスペルド族のために何も出来なかった」

 

 それが、気付けば笑顔に囲まれるようになっていた。

 己では動かすことの出来ぬ状況を、目の前の少年が動かしてくれたのだ。

 まだまだ差別はあるし、地域を移り変わると再び偏見の目に晒されるだろう。

 それでもデッドエンドと出会った者たちは手を差し伸ばしてくれるようになった。

 

「転移事件が起きたあの日、お前と出会わなければこの未来は存在しなかっただろう」

「そんなことはないですよ。自分自身の力で状況は変えられた筈です。それに、一緒にいようとしたのも元はヒトガミの助言で……」

「見たこともない神などどうでもいい」

 

 目を逸らすことなく見続け、彼は言葉を続ける。

 

「ルーデウス、誓うぞ。お前が困っている時、苦しんでいる時、どうしようもないそんな時――俺は必ず駆け付ける」

 

 ルイジェルドの人生は大きく変わった。

 もしも人生に分岐点(ターニングポイント)があるのだとしたら、1つ目はラプラスから呪いの槍を受け取った日。

 そして2つ目はルーデウスと出会ったことなのだろう。

 彼との出会いは、ラプラスよりもずっと大きな意味を持ったと断言出来る。

 

「この恩は一生忘れない」

 

 だからこそ、ルイジェルドは誓った。

 ルーデウスを裏切るようなことは絶対にしないと。

 常に彼の味方であろうと胸に刻みつけたのだ。

 

「ルーデウス、また会おう」

「……はい、また会いましょう!」

 

 こうして、デッドエンドは解散した。




Q.シルフィエットとロキシー。
A.ロキシーはそうでもありませんが、シルフィエットとは知らない間にギクシャクしてるような雰囲気になっている。ルーデウスが恋愛に対して過敏になってることが原因。

Q.ヘタレウス・グレイラット。
A.前世はヒッキーだからね、仕方ないね。性根はやはり中々変えられずにいたのだった。

Q.ルイジェルドとの変化はどんな感じ?
A.原作と大きく違う点はルイジェルドルートが解放されたこと。今のルーデウスが告白すればルイジェルドとのBLルートに行くことが出来る。ただし将来的にはBADEND。

Q.魔術王の称号。
A.傍から見たら化物。無尽蔵とも言える魔力量に、ありとあらゆる魔術を扱える魔術師としての頂点。伝説上でもルーデウスと同等の魔術の使い手は『魔神』ラプラスしかいないんじゃないか?と思われている。神級魔術も扱えると周囲から思われているが、原作通り人族の肉体では耐えきれないため神級魔術は扱えない。

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