使徒「勝てない戦いを要求されてつらたん」
ノルン「フィットア領に何もなくてつらたん」
リベラル「責務が重すぎてつらたん」
大変お待たせいたしました。投稿してからの数日間は、細かい構成すら考えることなく過ごしてしまいましたね。くそやろうなのです。罵倒してやってください。
リベラルが向かったのは、フィットア領の少し外れにある、名も無い小さな森の中。人里から近いこの森には、整えられた道が存在しており、その道中にてとある物が存在するのだ。
特に長い時間を掛けることなくそれを見付けたリベラルは、眠ったノルンを背負ったままその“石碑”の前で場で立ち止まる。
「ありましたありました『七大列強』の石碑。相変わらず汚いですね……」
その石碑には、現在この世界で最も強いとされる、七人の戦士が描かれている。
序列一位『技神』、
序列二位『龍神』、
序列三位『闘神』、
序列四位『魔神』、
序列五位『死神』、
序列六位『剣神』、
序列七位『北神』、
本来の歴史通りだ。そこに、リベラルを示す紋様が刻まれていることはなかった。
石碑は魔道具であり、古代龍族の技術が用いられている。
世界中に散らばるこの石碑は、全てがインターネットのように繋がっており、更新された情報を自動で記載している。石碑の周囲にある情報を検知し、現在の情報を認識しているのだ。世界中に漏れなくあるので、“無の世界”や別の六面世界にでも行かない限り、全てが検知される範囲内である。
だが、自動で更新されるということは、手動でも情報の更新が出来るということ。リベラルは自分の情報を明かさないために、『七大列強』の情報を“書き換えて”いた。
『七大列強』なんかにされていれば、大きく歴史が食い違う上に、武勇を求めた輩に絡まれるだけだ。
転移事件まで自分の存在を広めたくないのだから、隠すのは当たり前だろう。
「さて、久し振りに送迎してもらいますかね」
リベラルは懐から金属性の笛を取り出し、口に咥える。音色を奏でるための穴のない、ホイッスルのような笛に、彼女は息を吹き込んだ。
「フスーッ!」と息の漏れる音だけが響くも、リベラルは気にすることなく笛をしまう。今ので、空中城塞にいる『轟雷のクリアナイト』が笛の音を聞き取り、使者をこの場に届けてくれるのだ。
「…………」
それからしばらくすると、遠くの空で何かが光る。その瞬間、リベラルの目の前に彼は現れたのだ。
金髪に、白い学生服のようなカッチリした前留めの服とズボン。キツネに似た動物をモチーフにした仮面で顔は隠されており、腰には大振りのダガーが下げられている。
「光輝のアルマンフィ。参上」
そして、現れた彼がリベラルへと視線を向けると、
「き、貴様……リベラルか……!」
今にも「ゲッ!」と言い出しそうに体を仰け反らせ、そのようなことをのたまったのだ。前回強制的に召喚した時と、全く同じ反応である。
「何ですかその反応は」
「いや、何故俺を呼んだのだ……一人で来れるだろう……」
「は? 別にそんなことはどうでもいいじゃないですか。それより、さっさと転移に必要となる媒介の棒を渡してくださいよ」
「き、貴様……」
「あーん? さっきから何ですかその態度は? 私は客人ですよ? 貴方のご主人様にこのことチクりますよ?」
「……フン! ペルギウス様はこのような些事など気になさらん! 勝手にほざいてろ!」
吐き捨てるかのように叫んだ彼は、踵を返し、その場から文字通り光速で立ち去ろうとする。だが、それより前に、リベラルはアルマンフィの服を掴んで阻止した。
「なんのつもりだ! その手を離せ!」
「はい、どうぞ」
アルマンフィの要求に従い、リベラルはパッと手を離した。あまりにもアッサリと従ったことに対し、彼は「何故?」と疑問を抱いたが、すぐに氷解する。
己の手から転移に扱う魔道具が無くなっており、それはリベラルの手に握られていたのだ。
「なっ……貴様、いつの間に……!」
「はいはい、そういうのはもういいので。さっさとパシられてくださいよ」
「ふざけるなぁ!」
「ちょっと! ようやく眠ったノルン様が起きるじゃないですか! 静かにしてください!」
「き、きさまぁ……!」
実際にはリベラルの方が大声だったのだが、そのことにアルマンフィは気付かなかった。
何故リベラルが幼子を背負ってるのかはともかく、起きて泣き出されても面倒だろう。そのことで彼女から理不尽に怒られるのも嫌だし、もうこれ以上この女のペースで話しをしたくなかった。
アルマンフィはそう考え、悔しげに舌打ちをする。泣く泣く彼が引き下がった形だ。
「……次は許さんぞ」
捨て台詞のようにそれだけを言い残した彼は、光となって消え去ろうとする。だが、そこでリベラルは再びアルマンフィを引き止めた。
「ちょっと待って下さい」
「何だ? 早く行かせろ」
「……真面目な話です」
真剣な表情を浮かべ、アルマンフィを見据えるリベラルに対し、彼も仕方なく彼女へと向き直る。
早く戻りたい気持ちはあったものの、重要な話であれば聞かなければならない。
「――例の件は、どうでしたか?」
「例の件? それは、貴様の言っていた召喚された小娘のことか?」
「ええ、彼女の元にオルステッド様は現れましたか?」
リベラルが言う人物は、七星 静香のことである。
どのような時期に発生したとしても、とにかく転移事件が起きれば最初に現場へと向かって欲しいと頼んでいたのだ。この世界で『光輝のアルマンフィ』以上に、早く移動できる存在はいない。これが、彼女の保険だった。
故に、転移事件がいつ起きたとしても、彼が中心地へと飛んでいけば、必ずナナホシを保護することが出来る。しかし、オルステッドが現れるようであれば、接触せずにそのまま彼に任せて欲しいと頼んでおいたのだ。
目的であった転移事件が起きたので、リベラルは大々的に動けるようになった。そうなれば、必然的に歴史も変わってくるだろう。
だが、それでも本来の歴史通りでいて欲しい存在はいるものだ。そしてその人物が、ナナホシであった。彼女が歴史通りの行動をして貰わなければ、リベラルの目的から逸れるかも知れないので困るのだ。
「貴様の言う通り、オルステッドは現れた」
「ふぅー……そうですか……」
彼の言葉に、リベラルは安堵の溜め息を溢した。今までずっと、彼女はこの日を待ちわびていたのだ。
「…………はぁ……長かったですね……」
ナナホシが現れるのを待ち続け、歴史をあまり変化させないようにもした。ナナホシを召喚するために、非情な判断もした。ナナホシと出会うために、何千年と待ち続けたのだ。
ルーデウスが転生していたので、現れることはほぼ確実ではあった。しかし、絶対ではなかった。本当に現れたからこそ、目的へと大きく前進出来たのだ。
ここまできて、ようやく安心することが出来た。
「それより、本当に接触しなくて良かったのか? 貴様はオルステッドと会おうとしていただろう」
「……まあ、タイミングの問題と言うものです。もちろん、あのお二人方とは会いたかったのですが……機会を見極めなくてはなりません」
リベラルとしては、ナナホシと関わりを持つのはもっと後にしておきたかった。先程言ったように、彼女の行動を歴史通りにしたいからだ。下手に関わって大きな齟齬が起きることを好まなかった。
そして、オルステッドに関しては、むしろ慎重にならなくてはならない。流石に、彼もリベラルの存在は認識しているだろう。意図的に避けられていたのかは不明だが、以前から二人が出会うことはなかった。
リベラルは転移事件を起こすために、ある程度歴史通りに事を進めたが、全てを同じように進められた訳ではない。当然ながら、彼女自身もそのことを理解している。
問題は、オルステッドがリベラルのことをどう思っているかだ。少なくとも、好意的に捉えられてるとは思ってなかった。彼の知る歴史からどのように変化しているのかは不明だが、もしかしたら不都合な変化をもたらしてる可能性もあるだろう。
極めつけは、この転移事件だ。きっと彼の視点からは、リベラルが起こしたものに見えるだろう。歴史との相違点に、リベラルしかいないのだから。
実際に、彼女は起こそうとして起こした。なので、それは間違ってない。間違ってないからこそ、目を付けられる。
そう――オルステッドが敵対する可能性を、リベラルは考慮していたのだ。
転移事件前であれば、まだ何とか話も出来ただろう。しかし、このような大規模な変化が起きてしまっては、問答無用で襲われる可能性がある。それは、両者にとって不利益しかなく、非常に困るのだ。
「別に、今すぐオルステッド様と会わなくてはならない訳ではありませんし」
「そう言うのであれば、構わんのだが……」
「とにかく、私的にはもっと別のタイミングでいいと考えただけです」
ナナホシとも関わるつもりがないのだから、無理に接触する必要はないと判断した。だからこそ、ペルギウスを介せるとは言え、今は最適でないと考えた。
どのみち、ナナホシがいつでもオルステッドを呼び出せるようになるのだ。だったら、もっと確実なタイミングでいいだろう。
オルステッドの性格を、知っているからこその判断だった。
「そうか。ならば、今度こそ俺は帰るぞ?」
「ええ、お願いしますアルマンフィ様……貴方に、最上の感謝を」
空中城塞ケイオスブレイカーへと帰っていくアルマンフィを見送りながら、リベラルは感謝の言葉を捧げた。
――――
巨大な魔法陣の上に現れたリベラルは、天空から雲を見下ろしながら一息吐く。そこに、天人族の女性が歩み寄った。
「お久し振りですね、シルヴァリル様」
「はい、リベラル様もお元気そうで」
空中城塞ケイオスブレイカーへと転移したリベラルは、シルヴァリルに案内されながら、謁見の間へと向かう。
その際、のんびりと景色や芸術品などを見ながら歩くリベラルに対し、彼女は背負われているノルンが気になるのか、チラチラとそちらに目線を向けていた。
似ているのかはともかく、状況的にリベラルの娘だと思っていても不思議ではないだろう。ここでその説明をしてもいいのだが、どうせペルギウスに訊ねられることは分かりきっている。
なので、シルヴァリルには主人の元に辿り着くまで、事情の把握を我慢してもらうことにした。リベラルとしても、何度も説明するのは面倒だったのだ。
「くれぐれも無礼のないよう、お願いします」
「善処しましょう」
目的地に辿り着き、シルヴァリルは扉を開く。そして先に存在するのは、十一の精霊を従えるペルギウス。シルヴァリルもそこへ混ざり、十二となった。
「よく来たな、我が友よ」
「はい、やって来ましたよペルギウス様」
気軽に挨拶を交わすリベラル。しかし、ペルギウスはどこか不機嫌な様子でいた。
「フン……貴様の言う通りであったな」
「そうですね。見事に起きましたね、転移事件」
「……つまらん」
以前、ペルギウスと会話した時、彼は「今が未来を作るのだ。未来は定められてなどおらぬ」と言った。しかし、結果的にリベラルの告げた予言が的中したのだ。
ペルギウスからしてみれば、その結果は何とも面白くないだろう。だが、リベラルとしても、その反応は面白くなかった。
「何言ってるのですか。私はあくまでも転移事件を指標とし、起こそうと努力したのですよ? 定められた未来ではなく、私の築いた結果です」
「ハッ……ものは言いようだな」
「ええ、そういうものです」
しかし、どちらともなく互いに笑い出し、邪険な雰囲気が消え去る。何だかんだで、二人の関係は良好なのだ。この程度の言い合いなど、正に挨拶代わりでしかなかった。
「それより、なんだその幼子は? まさか、貴様の娘か? 貴様に惚れるような奇特な者がいるとは……驚きだな」
「私としても、そうだったら良かったのですけどね。あーあ、どこかにいませんかねー、私を貰ってくれる奇特な方は。チラチラ、いませんかねー」
冗談混じりに彼女がそう呟くと、ペルギウスは笑顔から真顔に変化していた。どうやら、つまらない冗談に感じたらしい。
彼の傍に控えていたシルヴァリルも、キッと擬音が出そうなほど、仮面越しにリベラルを睨み付けていた。こちらは嫉妬なのかも知れない。
あまり受けがよくなかったので、リベラルは気を取り直し、咳払いをしてから真面目に返答する。
「この子は懇意にしてる家族の娘ですよ。転移に巻き込まれる際に、連れてきました」
「ほう、貴様が態々連れてくるとはな。よほど気に入ってるようだ」
「まあ、せめてもの罪滅ぼしですよ」
「ならば、その者がここにいても構わぬのか?」
ペルギウスの言葉に、リベラルは一瞬何のことか理解出来なかったが、すぐに把握する。
ノルンは転移事件の被害者であり、リベラルは転移事件の主犯者とも言える立場だ。今は何も理解できずとも、後々成長していけばこの件の恨みや嘆きを募らせるだろう。
もしかしたら、ここでのやり取りをずっと忘れないかも知れない。そうなれば、きっとリベラルへとその感情をぶつけるだろう。
「……まあ、構いませんよ。どうせ忘れるでしょう。それに、今は眠っておりますし」
「そうか」
「仮に覚えていれば、その時はその時です。この子には、真実を知る権利がありますから」
もっとも、それすらも利用する算段があるのだが。
そんな内心の思いを飲み込みながら、リベラルはノルンの寝息を背中で感じ取る。どのみち、打算があってもそのようなことが出来るかは別問題だ。感情を抜くことは出来ない。
被害者たちに対し、リベラルから積極的に教えるつもりはないが、彼らが真実を求めるのであれば、それを拒否するつもりはなかった。
ペルギウスは彼女のそんな考えを理解したのか、それ以上は追求せずに、次の話題へと傾ける。
「それにしても、貴様は言っていたな。転移事件によって一人の少女が召喚されると」
「そうですね。その為に起こしたようなものです」
「そこまで重要な者なのか? 直接会っていない我には分からぬことだが……」
彼にとって不思議なのは、被害者たちを度外視したリベラルの行動だった。昔からある程度の話を聞いてるとは言え、ペルギウスからしてみれば、そこまで入れ込む理由が分からないのだ。
態々アルマンフィに頼み込んだし、更にはオルステッドと接触する機会を潰してまで、ナナホシという少女を優先している。それが、分からなかった。
「もちろんですよ。その為に、今までやってきたのですから」
「具体的な内容が分からんな」
「……まあ、そこは内緒と言うことで。ですが、いずれ分かりますよ」
悪戯っぽく笑みを見せるリベラルに、ペルギウスは不満そうにしながらも口を閉じた。
リベラルにとって、ペルギウスとは様々な関係性で繋がっている。
共に古代魔族の血を引いた初代五龍将の子であり、戦争を生き抜いた戦友。ラプラスと因縁を持ち、互いの事情をある程度共有している。
共に過ごした時間も、かなり長い。それこそ、数百年以上もの付き合いだ。喧嘩だって何度もした。楽しみや悲しみを分かち合った。とても気心の知れた仲だ。
だからこそ――リベラルはそれ以上の関係になることを拒む。心を開き切ることを許せなかった。
(……五龍将とは、本当に救われない存在ですね……)
ペルギウスは『甲龍王』だ。五龍将の一人であり、『五龍将の秘宝』を内に宿す者。ヒトガミの元に至るには、彼等の秘宝が必要であり、いずれぶち当たる存在なのだ。
そして、リベラルは『龍神の神玉』を内に宿す。それは、『五龍将の秘宝』の代わりと成りうる価値がある。そう、リベラルが生け贄になれば、ペルギウスは死ななくて済むのだ。
だが、当然ながらリベラルとて死にたくはない。彼女にだってやるべきことがあり、果たさなければならないものがある。死ぬわけにいかないのだ。
全てを曝け出すことは出来なかった。親友となるのには、その運命はあまりにも残酷過ぎる。
故に、友以上になるわけには、友以上にはなりたくはなかった。だって、そんなの辛すぎるから。オルステッドも、同じような気持ちなのだろう。
人神は倒さなくてはならない。そして、人神の元に至るには、どちらかの犠牲が必要となる。リベラルは死にたくないし、ペルギウスだって死にたくないだろう。
やがて、非情な決断を迫られる時は来る。その時に、リベラルが彼を見捨てられるかは、その時にならねば分からないことだ。
(ちっぽけな誇りと共に自由に生き、くだらん仇のために死ぬ……ですか。溜め息しか出ない運命ですね……)
一つだけ言うのであれば、リベラルはその問題を解消できる手段を持ち得ていた。リベラルにとっての奥の手であり、最終手段とも言える手段だ。
だが、容易に行うことを憚れる方法でもある。失敗してしまえば、それこそ世界を滅茶苦茶にしてしまうかもしれない。
リベラルにとって奥の手とは、使わされれば敗北したのと同然だ。そこまで追い込まれた時点で、既に駄目なのだ。それに、矛盾しているように思えるが、使用しても結局どちらかが死ぬことになってしまう。
奥の手を使うのであれば、更に次の手を用意しなければならない。少なくとも、容易に行うものではない。下手に使い過ぎて、ヒトガミに対策されれば台無しになってしまう。
結局、どうすることも出来ないのだ。“その時”になるまでに、『五龍将の秘宝』の代わりとなる手段を作り出すか、それとも諦めて、残酷な運命を受け入れるかだ。
ペルギウスの過去を知っているリベラルとしては、やるせない気分だった。少しくらい、救われて欲しいと思っている。
そんなリベラルの気持ちを知ってか知らずか、彼は優しい雰囲気を晒しながら、次の疑問を口にしていた。
「ならば、
「そんなものを知りたいのですか?」
「当然であろう。ラプラスはその言葉を聞いて激高したが、貴様もそれが目的だと言ってただろう」
「……まあ、知りたいのであれば、別に構いませんが」
ペルギウスとヒトガミに、直接的な関係はない。だが、間接的には関わりがある。それこそ、どれもが彼の因縁と繋がりのあるものだ。
彼の本当の母親である初代『甲龍王』は、ヒトガミの策略によって殺されたし、彼が恨むラプラスだって、ヒトガミの策略によって『魔神』となってしまったのだ。更には、ヒトガミの元に至るための生け贄になるかも知れない。
だが、そんなことを伝えても、ピンとこないだろう。特に、本当の母親のことを教えても困惑してしまう。
「
「
「龍族を滅ぼした張本人ですよ。探せば同胞はいますが、それでも私たちは数少ない存在となってしまいましたからね」
「ふむ……にわかには信じられん話だ。だが、貴様が言うのであれば真実なのだろう」
顎を擦りながら、興味深そうに頷くペルギウスに、リベラルは更に話を続ける。
「全ての『龍神』はヒトガミを倒すために存在し、技術を研鑽させてます。勿論、ペルギウス様の兄貴分であったウルペン様も、同様ですよ」
「……なに?」
「龍神ではありませんが、私も似たようなものです。ヒトガミを殺すために、牙を研ぎ続けてます」
「…………」
不快そうに眉をひそめるペルギウスだが、それも仕方ないことだろう。元々、親のいなかった彼を拾ったのは、ウルペンだった。まだまだガキンチョで世界を知らなかったペルギウスは、ウルペンの背中を見て育ったのだ。
二人の過ごした時間は、とても長いものだっただろう。それこそ、本当の家族のように過ごしていた。
そんな“兄貴”のことを、ペルギウスは知らなかったのだ。理由はどうあれ、ウルペンは自分の使命を彼に教えなかったのだ。
嫌な気分になるのも、当然だった。
「他にも色々とありますが……聞きますか?」
「いや……もうよい。十分だ」
「そうですか。では、また聞きたくなれば、いつでも聞いてください」
「……そうさせてもらおう」
会話は、そこで途切れた。
ペルギウスは口を重たく閉じ、黙りこくる。
「……では、私はここでおいとまさせてもらいますね」
彼がもっと深く事情を求めるのであれば、リベラルはそれに答える。しかし、何も一度に全てを知る必要もないのだ。
一つ一つの真実を知っていき、やがて自分がどうするのかを決断すればいい。
ヒトガミは、そこかしこに因縁をばら蒔いてる。きっと、ペルギウス以外にも深い繋がりを持つものもいるだろう。
リベラルにとって、ヒトガミが何なのかは既にどうでもいい問題だ。
実は罪の意識をずっと抱えていても、逆に欲望にまみれた思考しかなくても、そんなことはどうでもいいのだ。
ヒトガミの罪は、矛先を納められる段階を過ぎてる。仮にどんな事情を抱えていたとしても、許されることはないのだ。
少なくとも、リベラルは絶対にヒトガミを許すつもりはない。必ず打倒せんとする意思を持っている。
「ペルギウス様、また会いましょう」
そうして、リベラルは空中城塞ケイオスブレイカーから立ち去った。
Q.七大列強の石碑……。
A.独自設定ですね。レーダー的な検知をしていて範囲のギリギリの位置に石碑が置いてあるみたいな。まあ、深く考えなくていいと思います。
Q.ナナホシにして欲しいことって?
A.リベラルが説明した通り、原作通りのことですね。後々判明させます。
Q.奥の手……なにそれ?
A.本気で考察すれば、恐らく現時点でも分かる……のかなぁ。まあ、深く考え(ry