落第騎士と飢えた騎士   作:てーとくん

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見切り発車ですので、よろしくお願いします。


始まり

「ああ、つまらない」

 

どこぞの裏路地。そこでゴミとなって捨てられたのであろうボロボロになったイスに腰掛けながら少年は呟いた。

 

「ああ、つまらない」

 

その少年の前には何人もの人が倒れていた。死んではいない。ただ痛みでうずくまっているのである。

 

「ああ、つまらない」

 

少年は飢えを感じている。自分が子供の時から感じている決して満たされることのない飢えに。

 

そして少年は今日も探し続ける。自分のこの飢えを満たしてくれる存在を見つけるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅かったな天宮」

 

 場所は変わり、ここは伐刀者とよばれる己の魂を武器に変える現代の魔法使いを養成する学校、破軍学園の理事長室。

 

そこにいるのは黒いスーツで新しく理事長に就任した『神宮寺黒乃』と入室した破軍学園所属の生徒『天宮湊』、そして左ほほにくっきりとした紅葉のような跡をつけた天宮の友人である『黒鉄一輝』の三人。

 

「申し訳ありません。来る途中いざこざに巻き込まれてしまいまして……。ところでなぜ一輝がここに? あとその左ほほは?」

 

「それらがおまえを呼んだ理由でな。実は‐‐」

 

 そこから聞かされる事の顛末。全部だと長いので要約すると……

 

「つまり、一輝がヴァーミリオンさんの着替えを覗いてしまい、その罪滅ぼしとして自らも脱ごうとしたところ引っぱたかれたと」

 

「い、いやぁ不幸な事故だったなぁ」

 

 あはは、と笑ってごまかそうとしている一輝。

 

「……百歩譲って着替えを覗いたのが事故だったと説明できても、その後の自分も脱ぐはどう言い繕っても擁護できんよ一輝。というかなぜ脱ぐという選択肢を選んだ?」

 

「そのときはフィフティフィフティで紳士的な解決方法だと思って……」

 

 はぁ、とため息をつく湊と理事長。しかし起こってしまったことはしょうがないとして、二人は本来の問題に目を向ける。

 

 本来の問題、それは一輝が着替えを覗いてしまった相手がヨーロッパにある小国ヴァーミリオン皇国の第二皇女であるということ。もしこのことが大使館や皇国に知られたとしたら国際問題に発展しかねない。なので一輝には紳士として今回の問題の責任をとってもらうことにするとして天宮と理事長の意見は一致した。

 

 そして理事長が指を鳴らすと問題の相手であるステラ・ヴァーミリオンが入室してきたので一輝は頭を下げ、改めて謝罪をした。そして許してもらうために何でもすると言ってしまったのである。

 

「そうね。それじゃあ、ハラキリで許してあげる」

 

 出てきた言葉は死刑宣告であった。

 

「‐‐‐‐え?」

 

「よし、介錯は俺に任せろ一輝。友人の首を切るのは何分初めてのことだが安心しろ。痛みは一瞬だ」

 

「ちなみに白装束と小刀と脇差しはここにあるぞ」 

 

「いやいやいやいやいや!? なんでそんなに用意周到!? ていうかヴァーミリオンさん、冗談だよね?」

 

 一輝もまさかこんなかわいい娘が笑顔でそんなことを言うのは冗談であってほしいと思い、振り返って改めて確認するが‐‐

 

「何でもするって言ったでしょ?」

 

 ‐‐‐‐帰ってきた言葉は先ほどと変わらず死刑宣告であった。

 

「一輝くんのー、ちょっとハラキリするところ見てみたい!」←湊

 

「それ、ぱーりらぱりらぱーりら!」←理事長

 

「はいはい!」←湊

 

「いや、湊も理事長先生も煽らないでください!!」

 

 

 

 

 

 

まぁ、一輝イジリもこの辺にして。

 

「事の発端である一輝はなんで部屋を間違えたんだ?」

 

「いや僕は間違えてないよ?」

 

「はあ!? 私が間違えたって言いたいの!?」

 

「でも僕はちゃんと確認したし……」

 

「私だってちゃんとしたわよ!」

 

 埒があかないので俺の合図で二人に部屋番号を同時に言ってもらうことにした。

 

「はい、せーの」

 

「「405号室!…………え?」」

 

 なんと出てきた部屋番号はなぜか二人とも同じ番号。てか同じって事はさ。

 

「ああ、そういえば言い忘れてたが黒鉄とヴァーミリオンはルームメイトだぞ」

 

「「え、えーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」

 

「ですよねー」

 

 

 

 

 

 破軍学園でのルームメイトを決める基準はランクが同レベルの者同士とされており、Fランクである一輝とAランクであるヴァーミリオンが同室になるのは絶対にありえない。しかし理事長の言い分としては一輝ほど劣った生徒は他におらず、またヴァーミリオンほど優れた者も他にはいないということで今回は特別にということで同室になったのである。

 

 だがそんな理由で下がるような人間ではないヴァーミリオンは一輝に対してまだあーだこーだ言うので理事長が「騎士であるなら己の運命は剣で切り開け」の一言で試合をすることになったのである。

 

 ちなみにそのときヴァーミリオンが負けた方は勝った方に一生服従という条件をつけたのである。もちろんこのときの音声はちゃんと録音してあるので後になって言い逃れはできないようにしてある。

 

 

 ‐‐‐‐え? 何でそんなことをするのかって?

 

 

 ‐‐‐‐そういうおもしろいことや楽しいことをしてれば俺の飢えが満たされるかもしれないからだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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