暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
本当にご無沙汰しております。さんめん軍曹です。
前話でクラウンコンフォートを登場させた直後に本物を買ってしまったので、そちらに力を注いでいました()
本当に少しずつ進めてはいましたが、スランプ気味でイマイチ力が入らず…
そんな中、シティーハンターのファンの1人である'きらり山 優さん'に当小説のファンアート並びにご紹介いただいたご縁がありまして、無事に(?)スランプから脱する事ができました!(Twitter→ @ymzkmsr)
4年ぶりの復活、どうぞご覧ください!!
「冴羽!伊勢が入渠したって本当…か…」
勢い良くドアを開けながら日向が入ると、そこには資料で見た深海棲艦が潮の膝にちょこんと座っていた。
ーーしまった!その場が凍りつく。
「ひっ、日向くん!違うんだ!これはその、深いわけがっ!」
「う…う…」
「ま、待て!早まーーーー」
時を同じくして、大淀は届いた郵便物がないかを確認しに正門脇にあるポストへと向かっていた。
ちょうど執務室のあたりに差し掛かったところでふと上を見上げる。
その刹那、日向の大きな叫び声とともに執務室が吹き飛ぶのを目撃したのである。
すぐに現場へ飛び込むと、そこには艤装を展開した日向と真っ黒焦げになり床へ突っ伏した獠や間一発で爆風を逃れた七駆の姿があった。しかし漣がいない。
「冴羽さん大丈夫ですか?!一体何が…え」
「うう〜ん、もっこり感触…」
胸に違和感を感じた彼女の眼鏡にピシリとヒビが入る。
そのまま自分の提督を窓の外へ投げ飛ばした。
「まったく…ところで、漣ちゃんは何処へ行ったのかしら」
その言葉と同時に、壁にへばりついた机がメキメキと剥がれる。
そこにはめり込んだ漣の姿があった。
「お前、何やってんだ?」
「香サン…たしけて」
「そのまま埋まってろ」
「まったく、冴羽さんはもう少し提督としての自覚を持っていただきたいところだわ」
「彼はいつもああなのか?」
「まあ、美人となると見境なしですね…」
「なんという男だ…」
獠の変態具合に呆れていた日向だが、ふとキョロキョロと辺りを見る。
「?どうしたんですか日向さん」
「いや、さっき北方棲姫がここにいてだな…」
「えっ?そんな、またまたご冗談を」
「いや、確かにだな…」
「誰かと間違えてるんでしょう。私はそろそろ戻りますよ」
「うむ…」
日向はまだ納得が行かない様子だが、大淀は考えるのは無駄だと思い、話を全く信じずにその場を離れようとした。
直後、鎮守府のあちこちから悲鳴や叫び声、爆発音がこだまする。
北方棲姫が浜辺へ向かうと、そこには釣りをしている天龍と摩耶の姿が。
「なあ天龍」
「ん?なんだ」
「今日の海、なんだかシケてないか?」
「そうかぁ?」
曖昧な返事をする天龍だが、すぐ後、釣り竿に大物がかかったような引きが入った。
「んおおおおっ?!キタキタァ!摩耶、手伝え!」
「……」
「おい摩耶!どうした!!手伝えっていって…」
自分1人ではなんとかならなそうだったので摩耶にヘルプを求めるが、彼女からの返事がない。そこで天龍が振り向くとそこには…
「ココハ何ガ釣レルンダ?」
北方棲姫の姿があった。
「…」
「…」
「…」
3人は押し黙っているがそれも束の間、釣り竿に更に強い引きが入った途端、天龍は海へと引き込まれてしまった。
続いて喫茶キャッツアイ。
ここでは球磨型姉妹が美樹特製のスイーツに舌鼓を打っていた。
「ん、このパフェ美味いねえ」
「ふふっ。北上さん、口の周りにクリームがついていますよ?私が拭いてあげます」
「さんきゅう大井っち」
「全く。大井は北上を甘やかし過ぎだクマ」
「そんなこと言って、球磨姉さんだってさっきから多摩姉さんをゴロゴロしてるじゃない」
「こうすると多摩が気持ちよさそうにするからな。見てて面白いクマ」
「にゃ〜」
「多摩姉、マジで猫みたいだな」
球磨に顎をカリカリされて気持ち良さそうにする多摩だったが、ある物が目に入った途端にすーっと顔が青ざめていった。
「そんなにプルプル震えてどうしたクマ?」
机の下に潜り込む多摩。
北上達が不思議に思い辺りを見回してみると、そこには物欲しそうにクレープを見る北方棲姫の姿が。
「あ…あ…」
わなわなと震え出す大井。
「コレハナンダ?」
気にせず話しかける北方棲姫。
「う…う…」
青ざめながらも即座に艤装を展開する北上。そして…
「よ、よせ!!ここで撃つな!!!」
慌てて止めに入る海坊主だが一瞬遅かった。
その数秒後にはキャッツアイが派手に爆発してしまった。
「ファルコン…」
「なんだ、美樹」
「しばらくお店はお休みね…」
「そうだな…」
その後も北方棲姫は更衣室へ入ったり、艦娘たちが入渠しているドックへ顔を出したりと彼女はやりたい放題だった。
一方で、悲鳴の上がった場所が場所なので、とばっちりを受けた獠は修羅顔負けの表情をたたえた香から追いかけ回されていた。
「ドウヤラ、私ハ歓迎サレテナイヨウダナ」
小さなボスは運よくその場から逃げおおせたが、後ろには大勢の艦娘達が武器を手に追いかけてきていたのだった。
しばらくして。
「するとなんだ?北方棲姫が伊勢を手当てして、潮は北方棲姫と仲が良くて、獠は3人を連れてきたってわけなんだな?」
医療棟の一室。伊勢が寝ている横で、頭を抱えた様子の摩耶が状況を整理する。
彼女の胸元には、先の出来事で刺されたナイフの傷跡が残っていた。
「ワタシガ浜辺ニイタラ、ソノカンムスガ流レツイテタカラ、ムシスル訳ニハイカナカッタ」
「ちょっと待て、そうすると伊勢は既に傷ついてた状態だったのか?」
「ソウイウコトダ」
「ほーん。となるとこの子は深海棲艦にやられてからずっと海を漂い、ほっぽちゃんの住処に辿り着いたわけか」
「ソレガ…」
「どうした?」
妙に歯切れの悪い北方棲姫。
獠達が疑問に思っていると、診断書を手にした明石が入ってきた。
「冴羽さん。重大な報告があります」
「伊勢ちゃんの事か?」
「そうです。まず、艦娘と深海棲艦の弾薬が違うのはご存知ですよね?」
「ああ。知ってはいるが…。確か、長さの表記が違うんだっけ」
「そうです。我々艦娘はセンチメートルで長さを表していますが、彼女ら深海棲艦はインチで長さを決めています」
「それで?」
ここで明石が一呼吸置くと、彼女は真剣な眼差しで獠をじっと見た。
「彼女を調べた結果、被弾したと思われるのは14cm連装砲に使う砲弾でした」
それが何を意味するか。この場の全員が理解するのにそう時間はかからなかった。
「明石…。お前、何を言ってるのか分かっているのか…?」
摩耶はやっとの事で声を絞り出すが、対して明石は淡々と答える。
「もちろんです。流石の私でもこの結果には驚きざるを得ませんでした」
「つまり、伊勢さんは味方から撃たれたと、その解釈でいいんですか…?」
潮は恐る恐る聞いた。
「間違いありません。しかも後ろから、です」
提督の動きがピタッと止まった。
「艦娘が後ろから同胞を撃った、って事だな?」
「それについてはまだ確証を得ていませんが、大本営のデータベースによると最近14cm連装砲が一門、何者かに盗まれ行方不明になっているとの情報があります」
「なるほど。つまり誰かが連装砲を盗み出し、それを使って伊勢を砲撃した、ってことか」
提督が言い終わらないうちに、扉の方から物音が。
「誰だ!」
すかさず獠が扉を開けると、そこには日向の姿が。
彼女はしばらく獠をじっと見ると、何かに耐え切れなくなったのか外へ駆け出していった。
ご覧いただきありがとうございます!
今回は小さな大ボスが鎮守府を荒らしまわる話でした。
ここから、どんな物語になっていくのか、自分でも楽しみです(ぉぃ)
ちなみにPixivにも、加筆修正した物を少しずつアップしていってます。そのうち文章を統一しますが、よろしければそちらも見ていっていただけると嬉しいです!
では、次回またお会いしましょう!!
それから、TwitterとPixivではパイナップル軍曹と言うHNでやっておりますので、そちらもどうぞよろしくお願いします。