暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんにちは、さんめん軍曹です。
今回から新シリーズが始まります。名付けて、大規模作戦討伐編です。

このお話では3人の艦娘が着任します。

では、本編行きましょう!





大規模作戦討伐編
ついに始まる!初の大規模作戦、準備は万端に!


 

 

 

 

摩耶が復帰して数日後。

昼になったので2人で食堂を訪れ、摩耶はざるそばの二枚もり、獠は特濃つけ麺とカツ丼の特盛セットをかき込んでいた。

 

「獠、お前、そんなに食って大丈夫かよ…」

「ふぁいひょうふは、ほんはいはい」

「口に物入れて喋んな!」

 

しばらくして2人は昼食を摂り終えると、提督が近づいてきた。

 

「ようお二人さん」

「おっす」

「お?どうした」

「実は今日付で艦娘が2人こちらに転属するんだが、お前らに迎えに行ってもらおうと思ってな」

「生憎だが俺のミニは蜂の巣にされて修理中だから使えんぞ。パンダも香が使ってるし」

「ああ。だろうと思ったから特別に俺の車を貸してやろう」

 

と言うと提督は、腰にぶら下げているキーホルダーからひとつの鍵を取り出した。鍵にはトヨタのロゴが入っている。

 

「ん?ハンヴィーじゃないのか?」

「車検でな。俺の自前のだ。ガレージの中にあるから大切に使ってくれよ」

「わーったよ」

 

獠は鍵を受け取ると、その足でガレージへと向かう。

 

「提督の車かぁ…気になるなぁ」

「同感だ。なんだかんだ俺も見たことないからな」

 

そんなことを話しながら、2人は目的の場所へと到着する。

 

「着いたぜ」

「お、アレじゃないか?」

 

摩耶の指す方向には、一台のセダンが鎮座していた。

 

「…ま、なんつー車だよ」

「なんだか…イモいな…」

「よりによってタクシーか…なんて趣味してんだよ…」

 

提督の愛車はなんと、主にタクシーなどに使われているトヨタ・クラウンコンフォートだった。

 

「フェンダーミラーに黒塗りか…」

「おっさんくせえ…」

 

散々バカにする2人だが、この車、驚きの機能が沢山隠れていた。まず2人が近づくと、自動的にロックが解除され、乗り込むと音声ガイダンスが始まる。

 

「「イギリスのスパイか!!」」

 

 

「遅いなー」

「まあまあ。もしかしたら渋滞かもしれないし、もう少し待ちましょ」

 

しばらくして、待ち合わせ場所である東京駅八重洲中央口で待っていた2人の艦娘のうち1人は、痺れを切らしたのかしきりに文句を言っていた。だが、銀座方面からクラクションの嵐が聞こえ始め、それは次第に近づいて来る。

 

「えっえっなんかあったのかな」

「なんだか嫌な予感が…」

 

果たして、その正体はなんとタクシープールの中を突き抜けてきた黒塗りのクラウンコンフォートだった。車寄せに入り、2人の前で急ブレーキをかけるとドアがガパッと開く。

 

「…え、これが私達の迎え?翔鶴姉ぇ」

「なんだかわからないけど、乗りましょ瑞鶴」

 

 

少し前。

高速に乗っていた獠たちの車だが、首都高横羽線に入った段階で渋滞に巻き込まれてしまった。

 

「なあ、これいつまで続くんだよ」

「事故渋滞と聞いていたが、まさかここまでとは思わなかったなあ」

「これじゃ待ち合わせ時間に間に合わないぞ。なんとかして早く行きたいな」

『了解。10秒後にオートスピードモードを展開します。シートベルトをしっかりと着用してください』

「「え」」

『10、9、8、7』

「まっ待てよなんだオートスピードモードって?!」

「わからねえだが1つだけ言えることがあるっ!!」

「なっなん」

『2、1、ゼロ』

「しっかりつかまってろおおおおおぉぉぉぉうわああああああ!!!!!!!!」

「ひえええええええええええええ!!!!!!」

 

カウントが終わると同時に、後ろからジェットエンジンの奏でる甲高い音が聞こえて来る。次の瞬間、2人は強烈なGに襲われたのだった。

 

「うわわわわわ対向車線っ!!!!」

「とっ飛んだぞいま飛んだっ!!!」

「あああああぶつかるううううう!!!」

 

2人の目の前には、事故車両と思われる横転したトラックが迫ってきている。

その時、ピピっとセンサーが反応し、天井の辺りが開いた音がした。

 

『障害物検知。目標ロックオン。…発射』

 

機械が告げる冷淡な声と共に前方のトラックに向かって二筋の煙が流れていくと、瞬く間に大爆発を起こしてしまった。

 

「なんだよミサイルって!そんなのありかよ!!」

「あの野郎!帰ったらとっちめてやる!!!」

 

さて、読者の中で首都高を走った事のあるドライバーなら、その特徴はご存知だろうか。

この高速道路は、都心のビルを縫うように敷かれており、カーブが連続するのだ。

特に銀座周辺は高低差もあり、2人は遊園地のアトラクションよろしく身体を上下左右に激しく揺さぶられていた。

 

「うっぷ気持ち悪っ!!」

「しっかりしろ摩耶!出口はすぐそこだ!!」

 

しかし、勾配を上った先には、こちらに迫り来るトラックが。

 

「うっ嘘っ!!!」

「うおおおおおおお待て待て待てぇ!!」

「「ぎゃあああああああああ!!!!!!!」」

 

 

そして現在。五航戦の2人が車に乗り込むと、助手席にはダッシュボードに突っ伏した摩耶と、ハンドルを握ったまま動かない獠が目に入ったのだった。

 

「あの、あなたが冴羽さん…でよろしいですか?」

「あ、ああ。とりあえず乗ってくれ。…あ、シートベルトはちゃんとつけてね」

「は、はい」

「なんで2人とも力尽きてるの…」

 

 

およそ30分後、一行は大黒PA付近を走行していた。

 

「この車、見かけによらないのね」

「うちの憲兵の愛車でな。まあ色々あったからこんな装備してるんだろう」

 

獠は送迎中とあってか、高速を法定速度で走っている。しかし、後ろに違和感を感じて瑞鶴が振り向くと、一台の軽自動車がべったりと張り付いていた。

 

「あれはなんなの?」

「あー、ガキが煽ってんだ。高速じゃよくあることさ。ほっとけほっとけ」

 

しばらくそのままで走行するが、後ろがふと右の車線に変えると、窓を開けて怒鳴ってきた。

 

「おせーぞ!1番左でも走っとけカス!」

「マジサイテーなんだけどー!」

「これでも喰らえバーカ!」

 

そう言い放つと、窓を開けていた翔鶴に向かって空き缶を投げてきた。勢いよく投げられたその缶は、彼女の頭に当たってしまう。

 

「ギャハハハ!ザマーミロ!!」

 

気が済んだのか、追い越し車線を走り去っていく危険運転の車。

 

「翔鶴姉ぇ!大丈夫?!」

「え、ええ。少し痛かったけど…」

「…お前ら…シートベルトはしてるな?」

「え?うん、してるけど…」

「おっ、おい、まさか…」

「絶対に外すなよ。…コンフォート」

『ご用命はなんでしょう』

「あの車の速度に合わせ、車間距離を保ちながらベッタリつけろ」

『了解』

 

徐々に速度を上げるコンフォート。あっという間に走り去ったはずの車の後ろについた。

 

「機銃はあるか?」

『機銃装備中。弾薬は装填済』

「よし、照準を展開、マニュアルモードで頼む」

 

獠の一言でフォグランプの辺りから銃身が顔を出し、フロントガラスにはライフルのスコープで使われているようなレティクルが表示される。彼はそれをタイヤに合わせると、ハンドルについているボタンを押した。

ズドンと音が鳴ると、左後部のタイヤにあたり、派手にバーストを起こす。だが、50口径弾に耐えられなかったのか、スピンしている最中に脱輪。そのまま出口の緩衝材に当たり停止した。

 

「さ、冴羽さん、流石にやり過ぎじゃ…」

「なあに、死んでやしないよ。普段なら放っておく所だが、女の子の顔を傷つける奴は許さないタチでね。大人気なかったかも知れんが少しお灸を据えてやっただけさ」

 

 

「よう、早かったな」

「あの車はなんだ!ひでえ目にあったわ!」

「そうだぞ提督!危うくそばを戻すところだったんだからな!!」

「俺は新しい車の調達を頼んだだけさ。以前殺されかけたからって明石と夕張が気合入れてカスタムしたらああなった」

 

鎮守府に帰るなり、颯爽と執務室へ怒鳴り込む2人。だが、会話の中で五航戦は妙な疑問を持つ。

 

「提督…?」

「えっ、ここの提督さんって、冴羽さんじゃないの?」

「まあまあ、色々あったんだよね。それはまた話すじゃん?」

「そう…」

 

一通り怒鳴られた提督はコホンと咳払いをすると、改まった様子で皆に話しかける。

 

「さて、今回五航戦がこっちにきたわけなんだが、近いうちに大規模作戦があるのが理由だ」

「大規模作戦?」

「一種のイベントのようなものね。ある一定の期間になると、深海棲艦の中でも姫級や鬼級と呼ばれる強い個体が姿を表すの。それを狙って、全鎮守府で討伐に出るのよ」

「そうだ。そしてそのイベントではブラック提督達も本性を表す、まさに絶好の機会というわけだ。あとはわかるな獠」

「ああ。作戦の傍ら、そいつらを退治すればいいんだろ?」

「うむ。艦娘達の中には疲労で倒れる者もいる。その調査をして欲しい」

「わかった。また不知火や多摩、冴子にでも頼むか」

「そうしてくれると助かる。あともう1人こちらに来る予定だ。彼女も多摩のアシスト役にはもってこいだから使ってやってくれ」

「オーケー。ありがたいね」

 

 

その夜。いつも通り蒼龍にちょっかいを出して飛龍と香からお仕置きを喰らい、獠は地下の懲罰房に放り込まれていた。

 

「いってー。普通ハンマーと後部甲板で顔を挟むかよ。ったく…」

「ねえ」

 

背後からいきなりの声に対して、獠はガバリと振り向く。そこには、忍者のような格好をした少女が1人、立っていた。

 

「?!お前、どこから…」

「そんなのどーだっていいじゃん。あなたがここの提督?」

「まあ、そうだが…」

「なんでこんなとこにいるの?」

「色々あってな…」

「ふうん。それよりさ」

「あん?」

「夜戦…しよ?」

 

 

獠を地下へ放り込んだあと、香は蒼龍や飛龍と話をしながら歩いていた。

 

「冴羽さんってほんっとサイテー!」

「まあまあ飛龍。あの人もふざけてるだけでしょ」

「艦娘にセクハラする事のどこがおふざけさ!ねえ香さん」

「うーん、それは否定しないけどね。でも、アイツはアイツで結構いいとこあるのよ?」

「嘘だー!」

「本当よ?大概はスケベ目的でもっこりしてるけど、わざとやってる場合もあるの」

「と言いますと?」

「沈んでる場の空気を和らげたり、緊張を解いたりするかな」

「ふーん」

「ま、あそこに入れたからって治るわけじゃあないけどね。だから蒼龍ちゃんも気をつけてね」

「えー…わかりましたよぅ」

『ぎゃああああああああ!!!!』

 

突如響き渡る叫び声。どうやら地下からのようだ。

 

「あの声は…獠!」

「あ!待って香さん!!」

 

その後、獠の叫びを聞いて駆けつけた香や提督、艦娘達は衝撃の光景を目にしたのだった。

 

「夜戦しよーよ!やーせーん!!」

「いだだだだだ!!離せ!離してくれ!獠ちゃん肩外れる!!」

「いーやーだ!夜戦してくれるまで離さないんだから!」

 

一同の視線の先には、なんと艦娘から袈裟固めを喰らう獠の姿が見えていたのだ。あまりに面白い光景だったので、北上や響が無言でスマホのカメラを連写、鈴谷や飛龍は大爆笑していた。

 

「あっはははは!!冴羽さんが一本決められてる!!ウケるわ!」

「ひぃーーーっ!獠ちんマジパないじゃん!ばくわらですわこれ!!」

「おまえら!見てないでどうにかしろぉーーっ!!」

「やせーーーーん!!!」

 

獠の叫びも虚しく、しばらくはこのままの状態が続くのだった。

 

 

 

 






いかがでしたか?
車に関しては、今自分が欲しいものと趣味とパロディが混ざっております(ぉぃ)

空母率が高めですが、まあ気にしないでください()
そして、夜戦大好きなアノ艦娘に襲われる獠。決して意味深な方ではないです、ええ。

では、次回もお楽しみに!!


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