暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
本日2度目の更新です。
思いついた展開を忘れないようにメモに書き溜めてたら、いつのまにか完成してしまいました…()

この話の特徴として、緊迫した雰囲気を表すためにセリフがほとんどを占めています。誰がしゃべっているかは、読者の皆様の脳内補正にお任せします←ぉぃ

では、本編どうぞ!





摩耶よ永遠に 復讐の横須賀鎮守府【その2】

 

 

「!」

「摩耶ちゃんがやられたでち!」

 

「なんだって?!」

「おい野郎ども急げ!!やばいことになった!」

「狩野ォ!お前確か医療器具持ってたよな!」

「車の中っす!」

「急いで取ってこい!」

 

「摩耶、摩耶ああああああああっ!!」

「た…たかお…ねえ…」

「なんて事を…許さないんだからァっ!!」

「…Shit!」

 

「摩耶ァーーッ!!」

「摩耶ちゃん!!」

「あたし、行ってくる!」

「まって、私もいく!」

「くそっ!艦載機たち、後は頼んだぜ!!」

 

「ハハハハハ!ついにやったぞ!!摩耶、永遠に眠れ!!」

「獠!何とかしてあいつを止める方法はないのか!」

「…」

「獠!!」

 

止めのひと突きをしようと、敵司令官の腕が振りかざされる。2本目のナイフが振り下ろされようとしたその瞬間、窓ガラスに何かが貫通した。

 

「ぐわあっ?!」

 

ナイフが落ちる音。よく見ると、彼の右手は皮一枚でぶら下がっていた。

 

「!」

「やっと撃ちやがったな。あのじゃじゃ馬娘」

 

 

銃口から硝煙が上って行く。引き金を絞った指を元に戻すと、狙撃手はフゥと息をついた。

 

「命中でち」

「当たり前なのね。獠ちゃんに仕上げてもらったこの腕、外すわけがないの」

「そうでちね」

「さて、あとは…」

 

もう一度、スコープを覗き込む。その先には相変わらず、痛みに苦闘するかつての司令官がいた。

 

「…さよならなのね、私の過去」

 

肺の空気を全て抜きながら、伊19は徐々に引き金を絞って行った。

 

 

「うおおおおお!伊19うううううっ!!!」

「自分の仕込んだ狙撃手に殺される気分はどうだ?最高だろうが」

「貴様アアアァァァッ!!」

 

しかし、相手の叫びもそう長くは続かない。次々と飛び込んできた弾丸は男のアキレス腱をぶち抜いて行く。支えが無くなりひざまづく様な格好となった男に、提督と獠が最期の言葉をかけた。

 

「「終わりだ(チェック・メイト)」」

「まだ終わらんぞ!赤いペガサスはこれからも…」

 

男は言葉を続けることができなかった。なぜなら額に風穴が開けられたからである。

ドサリと倒れる音と共に、高雄が摩耶を抱えようとする。

 

「動かすな!」

「でも摩耶が!」

「今動かしたら確実に死ぬぞ!」

「冴羽さん!医療器具持ってきましたァ!」

「篠原!できるか?!」

「任せろ!俺を何だと思ってるんだ!高速修復剤は!」

「注射器一本だけです!!」

「そうか。バケツ一杯に満たない量でどこまで持つか…っ!」

「どうした?」

「クソがっ!見たところナイフが心臓の手前まで行ってやがる…」

「そんな…」

「やれるだけのことはやってみるさ…俺達の娘は死なせん!」

 

そこには、テキパキと応急処置を始める衛生兵の姿があった。

 

 

「…フーッ」

「お疲れ様でち。イク、とってもえげつなかったでち」

「…あれはあいつに殺された人たちの分、なのね。最も、イクも受けるべきかもしれないけど…」

「それを言うなら手助けしたゴーヤもでち。でも、ゴーヤたち艦娘は指令には逆らえない。だから気にしなくていいと思うよ。…それに亡くなった人達も関係者だから、よく知ってるでち」

「…ゴーヤ。ありがとう、なの。だいぶ楽になったのね」

「うん。…でも摩耶ちゃん…大丈夫かな…」

「イク達にできる事は全てやったのね。あとは、提督の腕と神様に任せるしかない、のね…」

 

そう言って、伊19はライフルを片付け始めた。

 

 

すぐ執務室へたどり着いた蒼龍たちは、血にまみれた瀕死の摩耶を見て絶句した。

 

「そんな…こんな事って…」

「嘘…」

「…2人とも、しっかり気を持ちな。あいつが帰って来るのを待たなければ、2度と会えなくなっちまうさね」

 

絶望に染まる2航戦を励ます隼鷹。だが彼女も、こればかりはわからないと思っていた。

 

「…よし、少し揺らしても問題はないな。みんな、運び出すぞ!時間がない!」

「けど、入り口まで結構あるよ…」

 

北上の言葉が終わるか終わらないかの時に、窓が激しく割れた。

何事かと全員が振り向くと、そこにはいつぞやのモンケンと一緒に藤原の姿があった。

 

「おま、これは…」

「摩耶さんがうちを解体した時に使ったもんです!これを伝ってください!」

 

提督が準備をする中、獠が摩耶を抱えてクレーンを滑り降りる。そして下にはちょうど駆けつけてきた冴子の姿があった。

 

「冴子!パトカー貸せ!」

 

摩耶を抱えた獠を見て冴子はただ事じゃないと感じたのか、

 

「いいわよ。始末書の一枚や二枚、どうって事ないわ」

 

と、すぐさま明け渡したのだった。

 

 

しばらくして、サイレンを鳴らしながら横浜横須賀道路を爆走する一台のパトカーが。

 

「摩耶…頼むから生き延びてくれ…!」

 

後部座席に乗った提督は、彼女の頭を撫でながら強く願っていた。

 

「お前が槇さんの所へ行ってしまったら…みんな悲しがる…」

「待ってろ。鎮守府はすぐそこだ!」

 

そう言いながら、パトカーは門の中へと吸い込まれていく。

 

 

「提督!冴羽さん!」

「準備はできています!早くこちらへ!」

 

やがて、扉の上には手術中のランプが点灯した。獠たちは外へ出て、今か今かと終わる時を待っていた。

 

「摩耶は助かるだろうか…」

「馬鹿!今は祈れ!俺らにはそれしか出来ん!」

 

2人が海岸で拾った缶詰の中には、近くのコンビニで買ったラッキーストライクとハイライトの吸い殻が限界以上に詰まっていた。

 

「くそっ、せっかくやめたのに…」

「俺もさ。吸う気も起きなかったが、まさかここで煙草のありがたみを感じるとは思わなかったぜ」

 

そこへ残してきた艦娘達が帰還する。

 

「提督と冴羽さん、煙草吸うんだ…」

「傭兵時代はヘビースモーカーとして有名だった2人だ。無理もない」

「そういう海っちはどうなのさ?」

「俺もその1人だ」

 

そこで彼は持っていたワイルドターキーを一息に煽る。

 

「…海っちも気になるんだねー。摩耶っちのこと」

「当たり前だ。悪党以外の死に様を見るのはもうごめんだ。これまでも、これからもな」

「ファルコン…」

 

しばらくして、獠のスマホが鳴り響く。相手は明石からだ。

 

「…結果は?」

『手術室の前でお待ちしてます。…皆さんで来てください』

 

嫌な予感しかしなかった。

 

さらに数分後、目を閉じた摩耶の周りに集まる全員の姿が、そこにあった。結果は獠の予想通りになってしまう。

 

「すみませんっ!ぜ、全力は尽くしましたがっ!!」

「摩耶さんは…なっ、亡くなってしまいましたっ!ごめんなさいごめんなさい!!!」

 

泣き崩れる明石と夕張。結果を聞いた艦娘の中には、膝をつく者や倒れる者、ショックのあまり立ったまま気絶してしまうものまでいた。

 

「高雄ちゃんしっかりして!目を覚ますのよ摩耶ちゃん!」

「お姉ちゃあん!死なないでよおっ!!」

「そんな…馬鹿なことが…」

「嘘だろ!お前が居なくなったらオレはどうすんだよっ!」

 

絶望に包まれる鎮守府。なにも悲しんでいたのは艦娘だけではない。香や冴子、美希は涙を流し、海坊主はサングラスを外す。そして獠と提督は静かに震えていた。

 

「お前を…守りきれなかった。許してくれとは言わない。安らかに眠ってくれ」

「摩耶…俺の大事な娘よ…よくやってくれた」

 

泣き声は一晩中止まることはなかった。

 

 

ーーーーん?ここはどこだ。…あー、アタシ、死んじまったのかー。みんな、悲しんでるんだろうなー。

 

ー…や…

 

ーー誰だ?アタシを呼ぶのは。

 

ー摩耶…

 

ーーっ…その声は!

 

ー久し振りだな。摩耶。

 

ーー槇村っ!!

 

夢でも見てるのだろうか。しかし、自分は死んだはず。まあ死んだのなら槇村が居てもおかしくないと、彼女は納得した。

 

ーお前さん、なんでここにいるんだ?

 

ーーアタシ、赤いペガサスの幹部に刺されて殺されちまったんだ。

 

ーいや、お前さんはまだ死んじゃいないさ。

 

ーーは?どういうことだ?

 

ーうーむ、正確には死ぬのはまだ早いってところかな。

 

ーー聴こえるか?みんなの声が。見えるか?姿が。

 

重巡摩耶は、衝撃的な光景を目にする。

海岸に放置されている吸い殻の詰まった缶詰。自分の亡骸を取り囲む艦娘達。そして、みんなにバレないように努力しているだろうが、泣いているのがバレバレな提督や八戒組を含めた男性陣。

 

ーみんな、摩耶が生きるのを望んでいる。それを裏切ったんじゃ、天下の摩耶様の名折れじゃないか?

 

ーーでも、アタシは…

 

ーお前さんの声、聞こえてたぞ。

 

ーー…マジ?

 

ー摩耶みたいな性格でも、泣くと可愛いもんだな。

 

ーーなっ?!バッ…

 

ー俺は香を育てることばかりしか考えてなかったからなぁ。少し嬉しかったかな。

 

ーー!それじゃ…

 

ー摩耶、勘違いするんじゃない。お前さんのやるべきことはまだ沢山ある。俺のことばかりを考えずに前向きになれ。

 

ーー…そうだな。アンタと話せてスッキリした。これからは心にしまう事にするよ。

 

ーそれがいい。…時間だ。それじゃまたいつか。

 

ーー待ってくれ、最後に直接言わせろ!アタシは、アンタをーーーー。

 

 

次の瞬間、眩い光が目に入る。

 

「ぐぉっ…」

 

ようやく光に慣れたその目には、見慣れた自室の天井が映っていた。

 

「アレは…夢だったのか?」

「摩耶、さん?」

 

自分を呼ぶ声。この声の持ち主は、自分とよく艦隊を組んでいた、あの幸運を呼ぶ駆逐艦のものだった。

 

「えーーっと、おはよう雪風…」

「お、おはよう、ございましゅ」

「聞きたいことがあんだけどよ…」

「」

「…あれから何日経った?」

「えっあっ…その」

「ん?」

「んっ、みっ…」

「み?」

「みっ、みみっ」

「な、なんだよ…」

「みみみみみみみみみ皆さあああああんんんん!!!!!!!」

「うおっ?!」

 

小さな駆逐艦から出たとは思えないほどの強烈な大声を発した雪風は、そのまま廊下へ飛び出していった。

 

「待てゆきっ、いでででででででで」

 

雪風を止めようとした摩耶だったが、胸に刺された傷が痛みを発してうずくまってしまった。

 

あー、こりゃ大変な事になるな…

 

耐え難い痛みに襲われながらも、高雄型重巡洋艦、3番艦の摩耶はニヤリと笑うのであった。

 

 

 

 






いかがでしたか?
衝撃の連続だったかと思います。
正直、書いてる身でありながらハラハラしてましたね…

この話は終わったような書き方をしておりますが、まだ同じ題名で続きますので、どうぞこれからもよろしくお願いします!

感想もあればどうぞよろしくお願いしますっ!



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