暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
こんばんわ、夜も更けた頃にお届けするさんめん軍曹です。
早速ですが誤字報告ありがとうございました。
気づいたのにそのまま忘れてしまい申し訳無いです…
読者の皆様が楽しめるようにご協力いただきました事、この場を借りてお礼をさせていただきます。
さて、題名の通り今回の黒幕が出てきます。
一体どんな結末を迎えるのやら…?
では、本編どうぞっ!
鎮守府、正門前ーーー。
晴れた青空の下、横須賀鎮守府正門前には多数のパトカーと何台かの護送車、それに救急車がいる。例の雇われ屋についてはここに連行する際にふん縛られていただけなので、そのままパトカーに押し込められ御用となっていった。
「りょ〜〜う〜〜?」
「はひっ!ごめなさっ!!」
香達の通報でやって来た冴子は、目の前の惨状を見るなり獠に食って掛かったのだ。
「大体ね、犯罪者を検挙できるのはこちらとしては嬉しいけど、あなたの場合一度に持ってくる数が多すぎるの!」
「しーましぇん…」
「金剛さんも。もっと力加減を考えて!」
「Oh…Sorryデース…」
金剛も冴子に怒られたところで、獠はふと気になる事が出てくる。
「そいえば金剛ちゃん」
「どーしマシタ?」
「摩耶や球磨達は?」
「アッ…」
しまったと言う顔をする金剛。そんな彼女をみた獠と冴子の顔からは血の気がみるみる失せていった。
「あって…まさかあなた…」
「あーあ…俺しーらねっと」
「待ちなさい獠」
「ぐえっ?!」
「あなた…どうなるかわかってるわよね?」
「ひえっ!?」
「このツケとしてもっこり10発ね」
そして彼女は、獠のジャケットの左ポケットからもっこり券をするりとかっぱらって行った。
「あっ!待て冴子!!」
「うるさい!素直に渡さないと公務執行妨害で逮捕するわよ!」
「そんな理不尽な…」
「公私混同デース…」
文句をぶーたれる2人。それを聞いた冴子はキッと睨むと
「嫌なら早くあの子達を何とかしなさい!!」
と言いながら冴子は獠達が今来た方向を指差した。
「んー…遅い!!」
男は机をダンと叩く。
「組長、そうカリカリせんといて」
「じゃかあしい!元気一杯に出て行ってから数時間、何も動きがなけりゃ心配するに決まってるだろが!」
「まあ、そらそうですが…」
「組長おかんみたい」
その時、けたたましく電話が鳴る。
「はい」
『よう、八戒組さんよ。アタシ、摩耶ってんだ』
「はい?」
『艦娘だよ艦娘。お前、羽黒を誘拐しようとしたろ?』
「艦娘…羽黒…あー、あの娘か…。羽黒って言うんやな…ってぇっ?!」
『何も知らずに攫おうとしたのかよ…』
「ちょっと待ちい。確かにマズい現場は見られたし口も封じようとはしたけど誤解やで」
『ほー。そんなお前らにプレゼントがあるぜ』
「まっ、話を…」
『いいから外を見なよ』
突然建物が揺れ出す。何事かと思い一同が窓に目を向けると、不意に視界が明るくなる。
「おりゃああああああ!!!!」
がしゃんと窓が割れ、叫び声と共に現れる摩耶。彼女が乗っていたのは建物を崩す為に使うモンケンだった。
兎にも角にも、その一撃で事務所内はパニックに陥ったのであった。
「あぁ〜あ。遅かったか」
「ワタシもこの場に居たかったネ…」
「バカ言え、俺が冴子にこってり絞られんだろが」
事務所跡だと思われる現場を目の前にした2人は、唖然としていた。
しかしその傍には、悪党どもをふん縛りふふんと得意げな顔をする摩耶達の姿があった。
「どぉだ冴羽!懲らしめてやったぜ!」
「球磨たちをナメてかかった罰だクマ」
「この摩耶様達にかかりゃ、ざっとこんなもんさ」
と、次々に感想を述べる彼女らに獠は片っ端からチョップを喰らわせて行った。ついでに金剛にもだ。
「な、なんでワタシまでなんデスか…」
「共犯だ。お前ら悪党を制裁したのは褒めてやるが、ちとやり過ぎだ。危険なやつだったらどうする」
「あでで…でもよ、これ冴羽のやり方を参考にしただけだぜ?」
「へ?」
「島風が持って来た新聞の過去の記事で、ニュースになってたのを参考にさせてもらった」
それを聞いた獠。彼は開いた口が塞がらなかった。
「あんのスピード狂紐パン娘め…」
彼らがそうこうしているうちに、遠くからパトカーのサイレンが聴こえてくるのであった。
現場にいち早く駆けつけた冴子は、逃亡を開始しようとした獠達を捕らえ、そのまま取調室まで連行した挙句にさらにもっこり券を15発分没収する。それが終わった後は自分の執務机の前で頭を抱えていた。
「お疲れ様です野上刑事。最近犯罪者の検挙率が上がっているそうじゃないですか。署内で評判ですよ?」
「お疲れ様。私としては嬉しくないのよね…」
「どうしてですか?」
「あのバカ男のせいよ」
「えっ?」
しまった。余計な事を口に出してしまった。
そう思った彼女はすぐに訂正をする。
「あっ、いえ、何でもないのよ?ただ、休まる暇がないってだけ」
「あぁ、そういう事ですか。確かにそうですね」
「それより、例のファイルは持ってきてくれたかしら?」
「はい、こちらに」
そう行って彼は1枚の茶封筒を差し出した。
「わかったわ。ありがと、そこに置いといてくれる?」
「わかりました」
「あなたも帰って休んでおきなさい?いつ犯罪が起きるのかわからないから」
「わかりました。では、野上刑事も身体にお気をつけて」
同僚の刑事が立ち去ると、冴子は続く限りの溜め息を吐き出す。
「今追ってる事件、獠の鎮守府の艦娘に関する事なのよね…」
そう呟いた彼女は1枚の写真を取り出す。そこには伊19と伊58の顔が写っていたのだった。
数日経って、執務から逃げ果せた獠はふらふら歩いていると、ふと視線を感じる。
(…なんだ?)
正面を見ると、そこには紺色のベンツが停まっていた。
「おっ、来ましたよ組長!」
「来たか。奴には果たさなければならん事があるからな」
摩耶達に潰されたはずのヤクザ達。報復でもするのだろうか、また正面に集まっていた。
「またここに来たようだが、何の用だ?」
「来たな。おい、アレを出せ」
例のアニキがジャケットに手を入れる。
その瞬間を獠は見逃さなかった。すぐにこちらもパイソンを抜くと相手に向ける。
「…まだ懲りていないようだな?」
「待ってくれ!何も復讐しようとして来たわけじゃあない」
その言葉を聞いて、彼は眉をひそめる。
「じゃあなんだよ」
「これを受け取ってくれ」
差し出されたものを見てみると、それは詫び状と書かれた手紙であった。
「…は?」
すぐに組長とアニキを連れて執務室に戻り、香にボコされた獠は応接室で羽黒を含めた関係者を集める。
「…で、なんだこれは?」
「うむ。率直に言おう。羽黒さんと言ったな?」
「は、はい」
「この度は済まなかった!」
そう言いながら土下座をする組長。その様子にどよめく一同だが、あわあわとしながらも羽黒が言った。
「組長さん、頭を上げて下さい!」
「いや、妻に内緒で女と密会した時の名刺が風に飛んでしまってな、貴女が拾ったのを見てそれを返してもらうとともに口止めをしようとしたんだ」
一息に言い訳をする組長。その場にいた獠サイドが呆気にとられていた。
「無理やり攫おうとしたのは事実だが、なにも殺そうとしたわけじゃない。家に招いて来いと言ったのにこの馬鹿どもが勘違いをして無理に乗せてしまったんだ」
「えぇ…」
「そこでだ、お詫びとして冴羽殿にお願いしたい」
「な、なんだ?」
「ここで冴羽殿の鎮守府を警備させてほしい。知らなかったとはいえ、あのシティーハンターの身内に手を出してしまった。償いをさせてくれ」
突然の頼みに混乱する獠。助けを求めようと提督に向いた。
「憲兵っつってもな…ちゃんとした試験を通らないといかんし、だからと言って人数が足りないのも事実。だったらいっそあんたの組ごと職変えて、警備会社にでもしたらどうだ?民間の」
「なるほど。それじゃあ…」
「うむ。俺はいいぞ。さっきも言ったが手が足りないのは本当だし、ブラック提督からいつ狙われるかわからんからな」
「ほう。ならそうして貰おうか。組長さんよ、それでいいか?」
「うむ。ワシから組員に伝えよう。必ず好意にはお答えする」
こうして、鎮守府に新たな仲間(?)が加わったのだった。
「よろしかったんですか?冴羽さん」
結果的にオーバーキルをしてしまった摩耶達を軽く叱った(組長達は当然の事だと言って許してくれた)後に廊下を歩いていると、妙高が聞いてくる。
「まあ、悪気はなかったようだしな」
「はい。名刺は返しましたし、私もあの方たちがとても悪いようには見えないです」
「なるほどね。ところでなんで羽黒はそれを拾ったのかしら?」
妙高に質問された羽黒が少しためらいながらも話す。
「実は…女の方の名前だったので、後で役に立つのではないかと…」
ガクッとこける2人。
やれやれと思いながらも、結果的には人手が増えたのでまあいいかと流した。
「あ」
「どうされましたか?」
「いや、あいつらにさっそく仕事を与えようと思ってな」
「どんな仕事ですか?」
「いや…過去の事さ。ここに来てから情報が入って来てないからな。あいつらに調べてもらおうと思ってさ」
そう言った後の獠の目は、どこか遠くを見つめていたのだった。
いかがでしたか?
個人的には八戒組、なかなか憎めないですねw
今後の展開も考えて、彼らには仲間に加わってもらいました。
羽黒の事件は解決したけど、また新たな匂いが…?
「次の主役、どうやらイク達のようなのね」
「やっとでちか。長かったでちね」
「今度はお前らの過去の話だ。ちょっと暗めだな」
「まあまあ。あの時は大変だったけど、今は楽しくやってるでち」
「これ以上はネタバレになるからやめるのねゴーヤ。読者のみんなにはこれをもって次回予告とするのね。イクも脱ぐなのね」
「「やめろ泳ぐ18禁」」
ご期待ください。(脱ぎはしません)