暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です。
さて、いよいよ迎えた決戦の時。果たして、獠達の運命や如何に…!?
今回はあの艦娘にスポットを当ててみました。

では、本編どぉーぞ!





怒れる鎮守府 幸運艦とスイーパー

 

 

 

雨がぽつぽつと降り出す。

遠くで雷も聴こえる。

それでも気にせず走り続けている男にはとある目標があった。

それは大事なものを取り返すという大きな試練と、その障害を葬り去ると言う事。

この物語の主人公、冴羽獠はただそれだけの為に前へと走る。

だが、道の分かれ目に差し掛かった時、どちらへ向かったのかわからなくなってしまった。

すると横の茂みからガサガサと音がしたので、彼は反射的にパイソンを抜く。

 

「誰だ!!」

「冴羽さん、雪風です!」

 

茂みから姿を現したのは、なんと泥だらけの雪風であった。

 

「なぜお前がここにいる?」

「はい、敵がこっちに来たので、ここに隠れてました!」

「なるほど…どっちに向かったかわかるか?」

「左です。多摩さんを抱えていました!」

「わかった、ありがとな!この先は危ないから…」

「冴羽さんっ!私も一緒に行きます!!」

「ばかっ!!奴は殺しを楽しむんだ、お前も危ないんだぞ!」

「わかっています!でも冴羽さんだけじゃないんです!雪風や長門さん、それに他のみんなだって気持ちは一緒なんです!!」

 

しばらく2人はにらみ合っていたが、やがて片方が根負けした。

 

「わーった、わーった!ただし、危ない真似はするなよ」

「了解です!絶対、大丈夫!」

 

そしてようやくたどり着いたそこは、断崖絶壁の上に建てられており、どこか無機質なオーラを放っていた。

 

「ここか…行くぞ」

「はい」

 

そして獠が一歩踏み出そうとした時、雪風が小さな悲鳴をあげた。

 

「どうした?!」

「いたた…ごめんなさい、足を取られてしまいました…」

「なんだよ…全く、驚かすんじゃない」

 

そう言いながらもまた前へ振り返ろうとした時、1m程先の茂みの中に何かが置いてあるのが目についた。彼はそっと近づいてみる。

 

「どうかしましたか?」

「いや…雪風、これを見ろ。そっとだぞ」

 

彼女が獠の後ろから覗き込むようにして彼の目線の先を見れば、足首くらいの高さに置いてあったそれは、なんとセンサー式のクレイモアだったのだ。

 

「クレイモア、対人地雷だ。お前が転んでいなかったら確実にこいつに引っかかって2人ともお陀仏になっていた所さ」

「えっ…」

「礼を言う。だが、こいつを解除しなければならない」

「時間はかかりますか?」

「信管を外すだけだ。…まてよ、ちょっと離れよう」

 

そう言うと獠は雪風と共に安全な場所まで避難した。

 

「どうするんですか?」

「こうするのさ」

 

懐からパイソンを抜いて即座に撃つ。クレイモアに弾が当たり、そのまま派手に爆発した。

獠が雪風を庇い、爆風が収まると解放する。

 

「奴が掛かるとも思えんが、これで俺らが引っかかったと思わせる。そうでなくとも、ここに来たことは気づくはずさ」

「いいんですか?」

「ああ。今更隠密行動もないだろう。それに、奴は絶対に始末する」

「はいっ!そして、多摩さんを絶対に助け出します!」

「いい答えだ」

 

その時、不意に声がした。2人が上を向くと、傷ついた多摩のこめかみに銃を突き付けたシリアルキラーが、不快な笑みを浮かべながらこちらを見下ろしていた。

 

「冴羽獠!お目にかかれて光栄ですな!一度あなたと戦ってみたかった!…その分だとあの提督は死んだようですね!さあ、ここを入れば素敵なゲームが待っていますよ!無事に辿り着けたら多摩さんを解放しましょう!」

「ハッ、お前の言うことを誰が信じるかよ!お前を殺して、多摩は取り返す。それだけだ!首を洗って待ってな!」

「さ……さえ…ば…」

 

多摩の力のない眼差しを受けた獠と雪風。シリアルキラーが高笑いをしながら奥へ引っ込むと、一刻でも早く助け出そうと前に踏み込んだ。

 

「待ちな、獠」

 

彼らが振り返ると、そこにはSMAWを構えた海坊主がしゃがんでいた。

 

殺人鬼は多摩を床に転がすと、モニターに向かって歩き出そうとした。しかしその瞬間、轟音と共に激しい縦揺れが襲う。

 

「なっ、なんだ?!」

 

急いでモニターに向かうと、そこにはぽっかりと穴の空いた入口があった。

 

「相変わらず派手だなぁ、お前はぁ…」

「コソコソしたのは性に合わん。それだけだ」

「まったく…」

「2人共!早く前進しましょう!」

「そうだな……いや待てよ…多摩が上にいるのはわかった。海坊主もちょうど良くここに来た。と言うことは…」

「多少は無茶しても構わん。そうだな獠」

「そういうこと」

「全く、本当に人使いが荒い奴だ」

 

雪風はなんのことだかわからなかったが、海坊主が担いでいるそれに目を向けると、何かを察した。

 

「えっ、まさか…」

 

2人は顔を見合わせると、雪風に向いてニヤリと笑った。

 

次々と襲う縦揺れに、さすがの殺し屋も何が何だか分からなくなっていた。

 

「一体何が起きてるんだ?!」

「よう、来てやったぜ」

 

来ただと?あまりに早すぎる!

そう思いながら振り返ると、そこには銃を構えた冴羽獠が立っていた。

 

「随分とお早いお着きで」

「なに、簡単な事さ。入る前に全て破壊した。海坊主のお陰で、すんなりとここまで来れたぞ」

「フンッ」

「多摩さんを返して下さい!そうすれば命だけは助けます」

「フッフッフッ…甘いですよ!」

 

シリアルキラーはマントをひるがえす。獠が反応してそこへ撃つが、奴の方が動きが速かった。3人が見回すと、多摩を掴み上げ彼女のこめかみに銃を押し付けていた。

 

「さあ、これで形勢逆転となりました…銃を捨てなさい!」

「クズはやる事が同じだな…」

 

2人が銃を捨て雪風も展開していた艤装を解除しようとしたその時、近くに雷が落ちた。

驚いた雪風は艤装を落としてしまうが、その時にチャンスが生まれる。なんと、落としたくらいでは暴発しない連装砲が暴発したのだ。そのまま明後日の方向に飛んだ砲弾は壁に直撃。大爆発を起こした。

 

「うおっ、なんだ?!」

「うあっ…!…おかしいです、私の連装砲はここまで大きく爆発しません」

「大方、武器庫にでも直撃したんだろう」

 

一方、向こうを見てみれば、多摩を下敷きにしたシリアルキラーが起き上がるところだったのだ。

今だ!

目線でお互いに合図を送った2人は一気に動く。

先に海坊主が掴み飛ばし、そのまま多摩を抱き上げ、自分の戦闘服を被せた。

 

「にゃっ…」

「それ以上喋るな。大人しくしていろ」

 

次に獠は、相手のトカレフを蹴り飛ばす。だがその時にはシリアルキラーが起き上がっており、飛びかかって来たのでそのまま揉み合いになった。

その隙に多摩と海坊主が退避。その時、雪風の電探に反応があった。

 

「海坊主さん」

「どうした?」

「電探に味方機の反応アリです。おそらく、蒼龍さんと加賀さんのかと」

「通信であいつらに聞いてくれ」

「了解です」

 

彼女がしばらく向こうとやりとりして、それが終わると海坊主にこう言った。

 

「周辺地域を観測していたところ、球磨さん達が罠をそっちのけで物凄い勢いでこちらに進軍中だそうです」

「なんて奴らだ…」

 

しかし獠はというと、激闘の最中相手に馬乗りをされてしまい劣勢の状態にあった。

 

「ぐっ!」

「ハハハ!天下のシティーハンターも、これでは形無しですな!!」

 

冴羽さんがピンチだ、何とかしなければ。

幸い、敵は獠に夢中でこちらの事など気にしてない様子だ。

雪風が海坊主をちらと見ると、彼もまたうなづいたのであった。そして、抱えている多摩をそっと壁際に座らせる。

脚に履いている艤装をコツコツと叩かれたので見てみると、パイソンの妖精がいた。

 

私を使えということか。

 

瞬時にそう判断した彼女は、パイソンの位置を確かめた。

そんなに離れていない。飛べば手が届く。

そしてもう一度海坊主を見て、合図を送る。

彼が反応すると、雪風はすぐに飛んだ。パイソンを取った彼女は狙いを定め、

 

「お願い、当たって!」

 

と引き金を引いた。

残念ながら弾丸は当たらなかったが、敵の脚のすぐ脇をかすめたので、そちらに気を取られる。

 

「この至福の時を邪魔するか…小娘ェ!」

 

そして飛びかかるような姿勢を取った時、獠が動いた。

相手の胸ぐらを掴んでアッパーを食らわせたのである。

 

「獠!避けろ!」

 

海坊主の声と共に飛び退くと、シリアルキラーは立ち始める。そして、彼は側に落ちていた雪風の連装高角砲を構えると、連射をしたのだ。

素早く察知した相手は飛んで避けるが、そのうちの1発がそばで炸裂し、その爆風に飛ばされた。

穴の空いた壁まで吹き飛ばされるが、咄嗟に床を掴んだ。そして下を見れば、かなり高い断崖絶壁の上にいる事を自覚したのである。

 

「くぅっ…」

「さっきの言葉、そのままお返しするぜ。形勢逆転だな」

「何を馬鹿な…!」

「いいのか?ここから落ちたら助からんぞ」

「…!」

 

そして彼らは睨み合ったが、シリアルキラーが不意に獠のズボンの裾を掴む。そして立ち上がると、獠を殴って飛ばしたのである。

そして足元にあった自分の銃を手に取ると、獠に向けた。

 

「フゥ…一時はどうなるかと思いましたが、そろそろ死んでもらいましょうか」

「冴羽さん!!」

 

くそっ、何か手はないのか…。

だが、少し手をずらしたとき、冷たい物に当たった。

ちらと見ると、先程雪風が解除した連装砲が落ちていたのである。

幸い、あちらは気づいていない。

 

「さあて、1発で終わらせて差し上げますよ」

「くっ…!これでも喰らいやがれ!」

 

すぐに連装砲を持ちながらくるりと回転した獠は、そのまま連装砲を撃った。

砲弾はそのまま真っ直ぐ的に向かい、直撃するとシリアルキラーを粉々に粉砕したのである。

 

「……うっ」

「冴羽さん!!」

 

悲鳴に近いような声を上げながら雪風はこちらに駆け寄る。

 

「大丈夫だ…。それより…」

 

獠が心配をかけまいと言葉を続けようとすると、突如建物に異変が起こった。

物凄い縦揺れと共に、だんだん下に落ちていたのである。

 

「急げ!爆発が何回もあったおかげで地盤が脆くなったんだ、崩れるぞ!」

 

もう一度多摩を抱え上げた海坊主は出口へと誘導する。雪風に助けられながらもようやく立ち上がった獠は、よろよろと向かい始める。

 

「海坊主、お前は先に行け!後から追う!」

 

彼の表情を見た海坊主は、そのまま走り出した。

 

「雪風、俺を置いていくんだ」

「出来ません!冴羽さんは…いや、獠さんは私達の宝なんです!何としてでも一緒に来てもらいます!!」

 

彼女は強い眼差しと共に力強く言う。

が、しかし時間がそれを許さなかった。

 

「うみぼーず!うみぼーず!!あれを見るにゃ!」

 

大人しくしていた多摩であったが、突如パニックになりながら話しかける。

振り向いた海坊主は、建物が突き出した崖と共に崩れ去るのを見た。

そこへ、救助した艦娘達と共に駆けつけて来た長門や加賀達もまた、衝撃の場面を目にするのであった。

 

 

 

 

 







いかがでしたか?
さすがは雪風、といった感じですね。
彼女の起こした偶然が獠を救いますw
そして何よりも心が強い雪風。まだ艦だった時代に目の前で仲間が次々と沈んでしまったのを見届けたからでしょうか。

もう一つ、海坊主と多摩をちゃんと絡ませてみたいと思いました!
普段は彼女を苦手とする海坊主ですが、やるときゃやる男だ!ってのを書きたかったのでw

さてさて、やっと外道どもを葬り去った獠ですが、雪風と共に崩れる建物に巻き込まれてしまいます。果たして彼らもまた、海の藻屑となってしまうのでしょうか…?

次回からは目が離せません!
ご期待下さい!

Ryo Saeba,Will return...




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