暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

24 / 47


こんばんは、さんめん軍曹です。
今回は表現をちょっと生々しくしております。
それが苦手な読者様、誠に申し訳ないです…

最初に書いた通りアニメをベースとしておりますが、今回の話の流れは原作寄りとしました。
文字も多めに書いているので、読み応えはあるかと…

では、本編どうぞ!!






怒れる鎮守府 ゲスな提督に堕ちる本気の鉄槌

 

 

昼下がりの午後。2回目ではあるものの、獠の招集がかかったので艦娘達は嫌な顔一つせずにまた会議室に集まった。

 

「何か進展でもあったのかしら?」

「ああ。その前に香の事についてだ。あいつは今、曙の側にいる。あいつならあの子の本音を引き出せるだけの力を持っているからな」

 

そして彼は解散後、なにがあったかを話した。出来れば駆逐艦達には聞かせたくはなかったが、現実として受け入れてもらうためにも全てを話したのである。

そしてそれが終わると、1人拳を机に叩きつける者がいた。

 

「クソッ!!オレら艦娘をなんだと思ってやがんだ!!!バカにしやがって!」

「天龍ちゃ〜ん…」

「天龍の言う通りだ。だがしかし我を忘れるな。見失ったら最後、お前が大変な事になる」

 

そう言うのは武蔵。天龍はその言葉に喰ってかかろうとしたがやめた。理由は、自分が何を言ったって武蔵の言葉の通りにしかならないからだ。

 

「…わかったよ武蔵さん。悪かった。ついアタマに血が上っちまった」

「仕方ないさ。私だってこの手で八つ裂きにしたいところなんだからな」

 

武蔵のその獰猛な笑いを見て、天龍は少し悪寒を覚えた。

それと同時に香がドアを開けて中に入ってきた。彼女は獠の元へ行くと、耳に口を近づけ囁く。

 

「獠。曙ちゃんがね…」

 

香から一通りの事を聞いた獠。彼は皆をこちらに注目させた。

 

「実はな、曙もここに来て参加したいってい…」

「「「「「「「もちろん!」」」」」」」

「お、おう…」

 

そして香は曙を連れて来た。

 

「アタシの名前は曙。特型駆逐艦18番艦、綾波型の8番艦、曙よ。事情は聞いてると思うけど貴方達の力を借りたいの」

「もちろんだ。なんでも言ってくれ」

 

提督がうなづく。

 

「ダー。言われなくてもこちらからお願いしたい」

「よし。問題はいつ動くかだがーーーー今夜だ」

「えっ?」

「曙。お前の言う通りだとすれば、今日だってまた奴の毒牙にかかるかもしれないだろ?」

「う、うん」

「これ以上奴の好きにさせてたまるか。そうだろ皆?」

 

獠が振り向くなり、全員拳を突き上げ雄叫びをあげた。

 

「あったりまえだクマ!」

「うおぉぉっしゃ!血が騒ぐぜ!!」

「出来れば沈む前に助けたいのです…!」

「慢心はダメ。今のうちに航空機の手入れをしましょう?」

 

皆がそれぞれの気持ちを話している中、獠は曙の肩に手を置いた。

 

「ひっ…?!」

「おおっとすまん」

「ふん。どうって事ないわよ」

(なんだろう。こいつの手はなぜか暖かい…)

 

今までなかった経験に、彼女はこれまでとは別の意味で涙を堪えるだけで精一杯だった。

 

 

「こちら多摩、潜入完了だにゃ。曙の言う通り中の警備が手薄にゃ」

『金欲しさに大事なところをケチったか。どうせそんなこったろうと思ったぜ』

 

夜になり、曙が教えてくれた建物内の図を頼りに通気口から侵入を果たした多摩。彼女はその特徴から、音も無く建物に侵入するのは容易いことであった。

 

「配電盤の前まで来たにゃ。冴羽達は配置についたかにゃ?」

『おう。いつでもいいぞ』

 

そして獠の一声を合図に、建物の電気が一斉に消える。

 

「今だ!門を壊せ!」

「ウラーーーーーーッ!!!!」

 

響が連装砲を発射すると、派手な爆発と共に門が消え去った。

獠たちを乗せたジープは急発進して侵入すると、気づいた警備兵から銃弾の雨が降り注ぐ。

 

「オラァッ!!艦娘は銃弾なんか効かねぇ!!この天龍様を怒らせた以上はタダじゃ帰さねえぞ!」

 

あとから入ってきた天龍達。他の艦娘が機銃で応戦する中、彼女は自分の刀で次々と相手を容赦無く斬る。

 

「冴羽殿っ!あれを見ろ!」

 

長門が指を差した先には、M72 LAWを構えた敵がいる。それをみた彼らは一斉に飛んだ。

と同時に、発射されたロケットがジープに直撃する。

 

「やりやがったな…この!」

「修理代は高くつくぞ」

 

獠と海坊主が両サイドの敵を倒す。

 

「全員怯むな!とっとと倒して前に進むぞ!」

「「「「「「ウラーーーーーーッ!!!!!!」」」」」」

 

 

「ひぃっ?!一体なんだ、何が起きてる!?」

「ここの状況を聞いた横須賀鎮守府がお前を始末しにきたにゃ」

「だ、誰だ!!」

「軽巡、多摩にゃ。冴羽獠提督の命の元、お前を拘束しにきたにゃ」

「へっ、そうか。あのシティーハンターが…クックク…」

「何がおかしいにゃ。気でも狂ったかにゃ?」

「そう簡単に僕はやられない。後ろがガラ空きなんて…それでも艦娘かな?」

「にゃっ…?!」

 

多摩が後ろを振り向こうとするが、気がつくのが遅かった。

 

「がっ……!」

 

首筋に強い衝撃を感じると共に、彼女の意識は遠のいていった。

 

 

「多摩。そちらの状況はどうだ?……多摩?」

 

長門が問いかけるが、返事が返ってこない。

 

「多摩、どうした?!返事をしろ!おいっ、多摩!多摩!!」

「長門、何があった!」

「多摩からの応答がない!」

「なんだと?!」

「多摩が危ないそ冴羽殿!」

 

獠が入口を見ると、目の前にバリケードが建造されておりそこから重機関銃の弾幕が張られていた。

 

「長門、あれを破壊できるか!」

「やってみよう!」

 

長門が1発発射するが、バリケードはびくともしない。

 

「ダメだ冴羽殿!どうやら私の砲弾が効かないようになっているらしい!」

「それじゃ、ちっと早いが奥の手だな。おい武蔵ィ!!」

「どうしたァ!」

「お前の出番だ!アレを破壊しろ!」

「合点だ!この主砲の本当の力、味わうがいい!」

 

そして彼女は姉譲りの試製51cm連装砲を連射した。耳をつんざくような音が響き、煙が晴れると入口付近は跡形も無くなっていた。

 

「礼を言うぞ武蔵!全員、この長門に続け!!」

「「「「「オオオオォォォ!!!!」」」」」

 

 

「ん…」

 

多摩は意識を取り戻すと、周りを見た。

 

「ちくしょう…やられたにゃ」

「お目覚めかな?」

 

声がした方に振り向けば、そこには先程のブラック提督とは違う男が立っていた。すぐに殴りかかろうとしたが、手足共に壁に縛られておりまともに動けない。

 

「誰にゃ!」

「初めまして。私はシリアルキラーと申します。ここの司令官に冴羽獠とその手下を始末するよう依頼を受けております」

「あくまでアイツは自分の手を汚さないのにゃ?まったく、ゲス野郎にピッタリの殺し屋だにゃ」

「お言葉ですが、貴女は今自分の立場を分かっておいでですか?」

「当たり前にゃ。ドジりはしたけど、ここの子たちはみんな助け出すにゃ。そして、お前らは冴羽に葬られるにゃ」

「ハッ!この状況でもそんな世迷言を…。どうやら痛い目にあいたいらしいですね」

 

「オラアアァァァァッ!多摩姉を返せえええええ!!!!」

 

普段滅多に怒らない木曽ではあるが、今回は違っていた。

なんと彼女、一切武器を持たずに素手で敵兵を殴り倒していたのである。

 

「私、木曽があんな風に戦ってるの初めて見たわ…」

「普段怒らない子がキレるとやばいよねー」

「北上。お前も人のことを言えないクマ」

「まーねー。よっと」

「ぐわっ!」

 

北上は真顔で近くにいた相手の腹に1発叩き込むと、その流れでジャーマンスープレックスを決め込んだ。

 

「幾ら何でもやりすぎだクマ…」

 

同じ頃、獠たちは提督室に向かって走っていた。

 

「冴羽!ここよ!」

「私に任せろ!」

 

そう言って長門が前に立つなり、パンチでドアを破壊した。

 

「うん、随分早い到着だね」

「ゴタゴタ抜かすな!散々私達を弄びやがって!!このゲス提督!!」

「なるほど。やっぱり曙だったか。おかげさまでこんなに早くシティーハンターが僕の目の前に現れてくれたんだ。感謝するよ」

「俺の名前を知ってるなんて光栄だね。まさかとは思うが、俺をここに呼ぶためにわざわざ艦娘達にあんな酷いことをしてたのか?」

「君は随分察しがいいようだね。そうさ、あんな奴らなど僕の出世のための踏み台にすぎない。最も、ストレスが溜まった時は随分と慰めてもらったけどね」

「…貴様!断じて許さねぇ!」

 

武蔵が副砲を突きつけるが、こちらを向いたゲス野郎はモニターと無線機を手にしていた。

 

「良いのかい?僕がやれと言ったらモニター越しに映っている子がやられちゃうよ?」

 

そう言ってモニターを4人に見せつける。

そこに映っていたのはなんと一方的に顔を殴られて血だらけの多摩であった。

 

「どうだい?たった1人のために抵抗できないんだよ?いい気味じゃあないか」

 

フヒヒと笑う支配者。武器を捨てろと命令されたので、全員そうするしかなかった。そして獠がパイソンを床に落とそうとした時、声をかけられた。

 

「おおっとと、その銃はこちらによこしてもらおう。生身となった君達は怖くない。シティーハンターの銃で全員死んでもらおうか」

「………」

 

凄まじい殺気を放ちながらも、彼は相手の方に銃を滑らす。相手はそれを拾うとしげしげと眺め、

 

「これが噂のパイソンか…。自分の銃で殺されるのもなかなか幸せだと思うでしょ?」

 

と言い、銃口を獠に向けたのだった。

 

「……いいさ、撃てよ」

「ん?」

「撃てよ。貴様に殺せるもんなら、この俺から先に撃ってみろ」

「ホントにぃ?後悔しない?またまたカッコ付けちゃって…ヒィッ?!」

 

ゲス提督が見た目の前の人間は、もはや普通の顔をしてはいなかった。

全ての毛が逆立ち、カミソリのような目付きをし、立っているのがやっとなほどの殺気を飛ばしてきていたのだ。

 

「どうした。早くやれよ」

「いっ、いい言われなくても!」

 

そしてすぐに引き金(トリガー)を引くが、シリンダーは回れど不発だった。

 

「あ、あれっ?あれっ?」

 

何度も引き金(トリガー)引くが、結果は同じだ。

その瞬間、目にも留まらぬ速さで後ろまで来た獠はそのまま裏拳を背中に叩き込む。

 

「があっ…!」

「まずは多摩の分だ」

 

そのまま前に吹っ飛んで来た奴に対して、今度は長門が右フックを顔面にぶつける。

 

「そしてこれが今までで貴様の踏み台にされた奴らの分!」

 

武蔵に飛んで来たので、そのまま右ストレートを喰らわす。

 

「オラァッ!お前に純潔を踏み躙られた艦娘達の分だっ!!」

 

曙は涙を流していた。そして、同時にこれで終わりだとも考えた。彼女は一歩踏み出して飛ぶと、身体をくるりと回転させ、

 

「や、やめっ」

「最後に私の…私達からのお返しだァッ!ありがたく受け取れこのクソ提督!!!!」

 

相手の頭に渾身の回し蹴りを喰らわす。そのまま窓を突き破り、崖下の海へと落下していく。

 

「ウワーーーーーアアアァァァ……」

 

その様子を見届けた彼らではあるが、曙は膝から崩れ落ちてしまった。

 

「ぅ…」

「大丈夫か曙?安心するのはまだ早いぜ」

「?」

「多摩が囚われている。あの子を救い出して残りの敵を始末しないと」

「…ごめん。でも、腰が抜けた…」

「仕方ないな。どれ、私がおぶって行こう」

 

そういうや否や、長門はひょいと曙を自分の背中に乗せると同時にキラキラし始めた。その様子を武蔵と獠はジト目で見る。

 

「な、なんだ?!」

「長門よ。噂は本当だったのか…」

「なっ、違っ?!」

「百戦錬磨の長門くんも、駆逐艦には弱いってか?…俺は先に行ってるぞ」

「冴羽殿まで!」

「…今のは見なかったことにしておくわ。…獠、ここから少し離れたところに拷問部屋がある。多摩はそこに連れていかれたかもしれない。気をつけて行って」

 

曙の少しの変化に3人で一瞬だけ目を合わせると、

 

「わかった。お前らも気をつけろ」

 

と言い、走り出す。

 

「今回は冴羽殿の銃の妖精に助けられた、か」

「こんな事もあるのね」

「まったく、不思議だぜ」

 

目的地へ向けて走る獠の後ろ姿を見ながら、先程の出来事を思い返す3人であった。

 

 

 

 






いかがでしたか?
獠を本気で怒らせてしまったが最後、命は無いですね…
話を原作寄りにして見たら、中々キャラ達が映えますね。

シリアスな展開の中、デレを見せるボーノさん。
中々かわいいですね。

ナガモンについては…見なかったことにしておきましょう!w

次回、いよいよ大詰めです…!
殺し屋を前に、獠達はどう立ち向かっていくのでしょうか?
乞うご期待!!

では、またお会いしましょう!!




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。