暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんにちは、さんめん軍曹です。
今回は獠達が他の鎮守府を救うお話です。
出来るだけそれぞれの色が出るように書きました。


では本編をどぉーっぞ!






怒れる鎮守府 艦娘(ロンリーガール)に救いの手を

 

 

 

「明石、聞こえるか?」

『冴羽さんですかー?バッチリ聞こえますよ!』

「遅くにすまない。ドックまで来てくれるか?」

『いいですよ。何があったんです?』

「来てから話す。夕張は隣にいるか?」

『ええ、2人で工廠の整理をしてたら遅くなっちゃって』

「そうか。悪いが、2人で来てくれるとありがたい」

『わかりました。すぐ行きます』

 

そこでブツリと通信が切れる。この様子であればすぐにでも来るだろう。

先程自室へと侵入してきた艦娘が獠の腕の中で気絶したので、すぐさまトランシーバーを持ってドックへと急いだのである。

しばらくすると、2人分の足音が聴こえて来た。

 

「お待たせしました!」

「すまないな。こんな時間に呼び出しちまって」

「どうしたんですか冴羽さーん?」

「俺が寝てたら誰かが入って来たんだが、明らかに虐待を受けたと思われる艦娘だった」

 

2人とも驚きの表情を浮かべ、

 

「なんてこと…」

「許せない!」

 

と怒りを露わにしたのである。

 

「とりあえずその子は入渠させてあるんだが、一体どんな名前なのかが知りたい。そして、徹底的にそのクソ提督を叩きのめしてやる」

「いいですね。私もウズウズして来ました…!」

「そいつには私の新兵器の餌食になってもらいましょうか…うひひひ」

「夜が明けたらすぐにでもみんなで会議するぞ。まずはあの子を確認して来てくれ」

「「了解です!」」

 

そして朝、全メンバーを会議室に呼びつけた獠は某最高司令官のポーズをしながら開口一番にブラック鎮守府が存在する可能性を明らかにした。それを聞いたその場にいる全員の意見は見事に一致。曰く

「ギッタギタにしてあげちゃう」

とのことである。

 

「さて、明石たちの話によればその子の名前は【駆逐艦 曙】と言うことだ」

「それって…」

「そう言うこと。つまり、特型駆逐艦の括りで言えば吹雪ちゃんの妹に当たるな」

「そんな…」

「冴羽。とすると私達の姉ということになるのかい?」

「その通りだ。さすがだな、ビェッ…ベッ…ブゥエッ」

「ヴェールヌイ。非常に言いにくそうだから、これまで通り響でいいよ」

「本当に言いにくいのです」

「黙ろうか電」

 

響は余計な一言を発した電の頭にゴスリとチョップを喰らわせた。

 

「り、理不尽なのです…」

「冴羽さん。質問です」

「大井くんか。どした?」

「九三式酸素魚雷はいくつ持って行ったほうがいいですか?」

「それ、あたしのセリフ…」

 

 

そろそろ集中力が途切れたか。どうすっかな…

そんなことを考えていると、海坊主が口を挟んだ。

 

「お前ら。気持ちはわからんでもないが、今は目の前の事をどうするか考えろ。段取りを組まなければ潰そうにも潰せない」

「そうだな。まずは大淀と俺、それに海坊主や冴子に武蔵でそれぞれのルートを使って情報集めだ」

「情報戦か…。私はあまり得意ではないのだが?」

「大和ちゃんがいるだろ。大淀が大本営を、そして俺と海坊主が」

「知り合いの情報屋だな」

「そゆこと」

「私は警視庁の内部ね」

「頼んだぜ。みんな、しっかりやってくれたら海坊主の店が開いた時に無料でご馳走だ」

「なっ?!何を勝手な事を…!!」

 

だが時すでに遅し。艦娘達からはギラギラとしたオーラが放たれていた。

 

「ぬうぅ…」

「海ちゃん、そういう事でよろしくぅ〜」

 

獠にそう言われた海坊主。彼は目に見えぬ速さで獠の身体を押さえ込んでコブラツイストをかましたのだった。

 

 

「ブラック提督の排除かぁー」

「そうですわね」

 

なんやかんやとあったが会議は終わり解散。鈴谷と熊野は廊下を歩いていた。

 

「でも、酷い目にあってる子が助けを求めてりゃ、そら本気になるか」

「私の時もそうでして?」

「ならないわけないじゃん?!それどころか、みんなを助けたいって気持ちでいっぱいだったし」

「今は鈴谷だけでなく、みんながその気持ちを抱いているのですね」

「そりゃーねー。…くまのんは時々おっちょこちょいでブッ飛んでるけど、鈴谷にとっては大事な妹だよ。傷つけるやつは絶対許さない」

「まあ、酷い言われようですわね」

 

熊野はクスクスと笑いながらも、いい姉を持ったなと思った。

 

「もちろんくまのんだけじゃないよー。もがみんも大切なお姉ちゃんだし、まだ来てない三隈ねえも鈴谷にとっては掛け替えのない姉妹じゃん?」

「それどころか、ここにいるみんなは家族、でして?」

「あったりー!いいカンしてんじゃん!」

 

2人がそう言いながら歩いていると、廊下の先から騒ぎ声が聞こえて来た。

 

「落ち着いて下さい!」

「離せぇっ!!アタシはみんなの所に行かなきゃいけないんだっ!!」

「あなたが単凸したって無理に決まってるでしょ!!一旦座って!!」

 

一夜明けて気がついた曙。しかし彼女の精神は錯乱していた。

 

「どしたの?!」

「一体何が……!!」

 

騒ぎを聞きつけた2人が駆け付けると、そこには明石に羽交い締めにされる曙と前から抑え込む夕張の姿があった。

 

「あちゃー…」

「私、冴羽様を呼んできますわ!」

 

熊野が走り、鈴谷は明石達に協力をしようと近づいた。

 

「早く行かないと…みんなが…みんなが!!」

「気持ちはわかるけどもさ、1人じゃ無茶だよ?」

「うるさい!お前らに何がわかるんだ!!」

「そーりゃわかるよ。だってここも少し前まではブラックだったし?」

「そんな証拠がどこにある!」

「ここにあるさ」

 

全員が振り返ると、壁に肘をついた獠と提督、そして熊野の姿があった。

 

「ちょうど近くを歩いてたら熊野ちゃんが慌てた様子でここから出て来たから、一緒に来てみたらやっぱりこうなってたか。…こいつはここの元提督だ。ブラック提督達に命を狙われてるから、今は俺が代わりをやっている」

「あっ、アンタは…」

「昨日のことを思い出したようだな?」

「あたしは…アンタの部屋に…」

「そうさ。鈴谷」

「なーに?」

「お前が俺に助けを求めた時、どんな気持ちだった?」

「一寸の狂いもなくこの子と同じだったじゃん?でも、獠ちんと会ったら不思議と落ち着いたよ」

「だそうだぞ曙。お前も少し落ちつこうぜ」

 

2人に論され、少し我を取り戻した彼女。だが、ここでふと気になったことを言った。

 

「獠って…アンタまさか」

「俺のことを知ってるのか?」

「知ってるも何も。シティーハンター、冴羽獠。あのクソ提督が口に出してたのを聞いて、なす術がなかったアタシはアンタに助けを求めた」

「どうやらあちらさんも知ってるようだな。良ければ君の鎮守府の話を聞かせてくれないか?」

「…わかったわ」

 

曙が重い口を開き、全員が黙って聞いた。彼女の口から出たものは想像以上に壮絶であり、その場にいたもの誰もが驚愕している。

要約すると、その鎮守府の提督は駆逐艦しかおらず、その艦娘達を連日出撃させて休む暇もなく働かせた挙句に手に入れた金で私腹を肥やしているのだという。

 

「他にもネタは沢山あるけど、1番許せないのはそれで名声を手に入れていることと、夜、必ず1人づつ艦娘を提督室に入れている事ね。アンタを狙っているのも、シティーハンターを殺して裏の世界NO.1の座を奪いたいのかもね。…あいつはアタシが気に入らないのか、誰もいない隙を狙って殴ったり襲われたりしたわ。ここに来た時もその隙をついて脱走したのよ」

 

それがどういう事を意味するのか、皆が理解していた。特に獠に関しては無表情だったが、握っている拳からして尋常じゃなく頭に来ていることは明白だ。

同じく怒りを感じていた明石達ですらもたじろぐ程の殺気である。

 

「冴羽さん…」

 

そこへ海坊主達が入ってくる。

 

「獠。電話でテツに聞いた所、ここから離れていない所に噂の鎮守府があるらしい。情報屋の間でも最悪の評判だぞ」

「そうか」

「こっちも本庁に聞いたわ。証拠が集まり次第ガサ入れをするみたい。急ぎFAXで資料を送ってもらったから、後で見て欲しいの」

 

そう言いながら冴子は持っていた資料を獠の側の机に置いた。

 

「冴羽さん。私と武蔵さんで大本営に問い合わせた所、ここ最近で急激に功績を伸ばしている鎮守府があります。海坊主さんのいう通りここからそんなに離れておりません。私の口からお話しすることもできますが、どうされますか?大和さん曰く、いきなりの成長に元帥も不審がられているとか」

 

大淀の話を聞いた獠は、曙の方へと向く。

 

「曙ちゃんよ、君の口から場所を聞かせてもらえないか?辛いかもしれんが、それで俺らは動ける」

「…アタシも行く」

「ん?」

「アタシも行きたい!ここで黙って見てるほど屈辱的なものはないわ!」

「危険が伴うがいいのか?」

「構うもんか!アタシだって今まで一緒に苦労を共にして来た仲間を助けたいの!アンタが嫌でもアタシは行くわよ!」

「わかった。その心意気、気に入ったぜ」

 

獠はフッと笑った。

 

「………っ!…それから、アンタ達にまだ言ってなかったわね」

「なんだ?なんでも言いな」

 

そこで曙はすうっと息を吸い、獠達をしかと見つめて言葉を続ける。

 

「XYZ。もう後がないの。お願い、一緒にあの子達を助けてちょうだい」

「その気持ち、しかと受け取ったぜ。任せな」

 

そういうと彼は、書類を持ちジャケットを翻して廊下へと出るのであった。

 

 

 

 






いかがでしたか?
少しでもシリアスでカッコよく、時々お茶目な感じに書けてればなと思います。
北上様だけでなく響も自分のワールドを展開しちゃってます。故に、お互い違う方向のフリーダムさがあって筆者は好きでございます。
獠は女性に弱いから、これからも彼女達に振り回されそうです。

そして、海坊主のコブラツイストは死んでも受けたくないですね()

次回からはしばらくシリアスな展開が続きます。一体彼らはどう動くのでしょうか?

次回をお楽しみに!



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