暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
こんにちは、昼下がりにお届けしますさんめん軍曹です。
早速ですが、このお話についてお知らせします。
表編と裏編に分けて投下しますので、どうかよろしくお願い致します。
表編は吹雪視点、裏編は球磨たちとなっており、それぞれの視点で物語を進めてまいります。
まずは表編からどうぞ!
少し遅れた吹雪達は、全速で球磨達の元へ向かっていた。
「嫌なくらい静かだわ」
「なんだか怖いね…」
そんな話をしながらもなお前へと進む2人であったが、突如目の前の海面が盛り上がった。
「冴羽!聴こえる?!」
『どうした?』
「新たな敵の出現です!艦種は…」
2人の前に立ちはだかった敵は駆逐艦には違いないが、角ばったその身に纏うオーラは明らかに違っていた。
「駆逐ロ級…flagship…」
「なんてこった…」
「獠!あの2人だけじゃ持たないわ!」
「わかってる!おい、海坊主!!」
「ああ。俺らで敵うかはわからんが、行くしかなさそうだな」
2人はありったけの弾丸をボートに積んで、すぐさま出撃して行った。
「吹雪!行くわよ!!」
「う、うん!」
叢雲がそう言うと、目の前にいる敵に向かって一斉に射撃を開始する。だが、相手はflagshipである。2人の砲弾や魚雷も難なく避けてしまった。それどころか、こちらに向かって砲撃をしてきた。
「きゃあっ!」
「吹雪!!」
まだトラウマが抜けていないのか、動きが鈍い彼女に砲弾が直撃してしまった。叢雲はすぐさま吹雪に駆け寄ると、しっかりと抱き起こした。
「いたた…中破しちゃった」
「ばか!しゃんとしなさい!」
「私はまだ戦えるよ…!叢雲ちゃん!」
「え?」
「間に合え…!」
「獠!あれを見ろ!」
2人が見た先には、海面に倒れ込む叢雲と泣きながら呼びかける吹雪がいた。
「クソッ!間に合わなかったか!」
「いや、それはないようだ。だが、吹雪の様子がおかしい」
「吹雪!叢雲!大丈夫か!!」
「……」
俯いて黙り込む彼女。トドメの一撃を喰らわそうと、ロ級が砲弾を撃ったその時。
吹雪は敵に向かって背を向けているのにも関わらず、後ろに向かって砲撃をした。そして、砲弾同士がぶつかり爆発を起こすと同時に彼女は飛び上がり、驚異的なジャンプ力で敵の背後にまわったのである。
それを見ながらも獠達は、叢雲をボートに引き揚げた。
「う、うぅ…」
「無理して喋るな。今は安静にしてろ」
ボロボロの服で、裸同然の彼女に獠は自分のジャケットを着せた。
「私は大丈夫…。不覚だわ。吹雪は?」
「あれを見ろ」
海坊主がクイと首を向けると、驚異的な速さで敵と戦っている吹雪が目に入る。叢雲は驚きながらもじっと見つめていた。
「なんてこと…」
よくみると、彼女のセーラー服の柄が変わっていた。そう、彼女は改2になったのである。
「よっぽど妹想いなんだろう、あいつは。倒れ込んだお前を見てキレちまったようだ」
「そうなの。…あの子らしいわね」
だが、吹雪もさることながら敵も満身創痍だ。
彼女がトドメを刺そうと構えた時、様子が変化した。
「弾薬が…0?!」
途端に、顔から血の気が引いて行く。
なんてことだ。ここまで来て弾が無くなるとは…!
「待て、2人とも。様子がおかしいぞ」
「あの子の弾薬が尽きたのよ!」
「なんだって?!」
「このままじゃ吹雪が沈んじゃう!!」
「くそ、何か方法は…ん?」
獠が胸の違和感に気づく。ふと見ると、そこには手のひらサイズの何かが顔を出していた。
「こいつは…!」
2度も妹を守りきれなかった。私ってダメだなあ…。
吹雪は自分の死を覚悟していた。だが、少しでも周りを守る事に貢献できた彼女に悔いは残っていなかった。
「諦めるのはまだ早いぞ吹雪ーーーーっ!!」
「?!」
突然の大声。吹雪が振り向くと、彼らが全力でこちらに向かっている。
「これを使え!今のお前なら出来るはずだ!!」
そう言いながら、獠は何かを投げた。
クルクルと弧を描きながら飛んでくるそれをパシリと受け取った彼女は、自分の常識では深海棲艦に効くはずのない物に驚きを隠せなかった。
「冴羽さんっ!これじゃ到底…」
「いいから使ってみろ!効き目はあるはずだ!」
獠のそんな発言に疑問を持ってはいたが、時間がない。一か八かとコルトパイソンを構えた吹雪は、敵の大きく開いた口に狙いを定めた。
「さあ…来い!」
ロ級が砲弾を撃ち出す瞬間、吹雪は6発全てを叩き込む。
ピンホールショットが決まり、敵が大爆発を起こす。自分の知っている範囲とはあまりにかけ離れた出来事に、彼女の頭は追いつかなくなっていた。
「うそ…なんで?」
「俺も驚いたが、ある物が力を貸してくれたのさ。お前の頭を見てみな」
吹雪が頭に手をやると、なにやら感触がした。
手にとってみてみれば、それは妖精だった。
「ええ?!なんで???」
「俺にもさっぱりだ。後で奴に聞くしかねえな」
「それより今はお前らの手当てだ。向こうに戻るぞ」
浜辺に戻ると、満身創痍の球磨達となぜかキラキラしている金剛姉妹が目に入った。
「お前らも終わったか、お疲れだな」
「おかえりネ!久々にBurning Loveしたヨ!でも、ワタシ達だけじゃ到底敵わなかったデース」
「えっ?お前ら以外にいたのか?」
「初めまして!あなたがここの提督ですか?」
獠が振り向くと、見たことのない艦娘が数名おり、そのうちの1人に声を掛けられ、自己紹介をされた。
「航空母艦、蒼龍です!空母機動部隊を編成するなら、私もぜひ入れてね!」
「おっ、おおおおおぉぉぉ!!」
彼女の持ち前である九九式艦爆を見た彼は、即座に顔を埋めた。蒼龍は顔を真っ赤にすると、
「えっと、あの…九九艦爆がはみ出ちゃうから…」
と言った。そして、後ろの気配に気がついた獠はすぐにそ弁解しようと振り向く。
「香っ!これは条件反しゃ…」
「蒼龍に何すんじゃボケーーーっ!!」
「あっ飛龍!」
「ごわあっ!!」
香かと思っていた獠だったが、どうやら違うようだ。ハンマーと感触が違い、かつ声のトーンも違っている。
1発KOした彼が上を見てみれば、そこにはオレンジ色の着物を羽織り、髪をサイドテールに結んで、ヒと書いてある飛行甲板を持っている飛龍と呼ばれた少女が立っていた。
「……もっこり白パン」
「死ね変態!」
彼女は持っていた飛行甲板を、自分のスカートの中を覗き込んでいる男の顔にぶつけた。
さて、表編はいかがでしたか?
ちょっとだけ吹雪の設定を弄らせていただきました。
そして凶悪な艦爆を搭載した艦娘がやって来ましたね。例によってもっこりですよ、場の空気を壊しにかかりましたよ。
次回は彼女らがやって来た経緯についても書いていきます。
では、また近いうちに!