暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜   作:さんめん軍曹

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こんばんは、さんめん軍曹です!
物語の展開を考えていたら、スランプに陥ってしまいました…
困ったもんですねぇ…

一応、書くことができたので投稿します!

では、本編どぞ!





強くなりたい!悩める吹雪と叢雲の過去

特型駆逐艦1番艦の吹雪は、天龍達と共に毎朝行なっているランニングに筋トレを終えた後、提督に挨拶するため歩いていた。

今日は提督とどんな話をしよう。そんなことを考えながら歩いていると、射撃場から話し声が聞こえて来た。第六駆逐隊だ。

一応区別はされているが、広義では暁達も吹雪の妹にあたる。それもそのはず、それ以降に建造された特型駆逐艦は彼女をベースとしているからだ。

だから吹雪は、そんな四姉妹が楽しそうにしている声を聴いて興味をそそられた。

半ば開いていたドアから覗き込むと、ちょうど獠達が撃とうとしているところであった。

 

「す、すごい…!」

 

ビリヤードショットを見事決めた獠に、彼女は感激していた。

いくら獠が過去にここへ訪問しているとはいえ、彼女は己を鍛えようと出撃を繰り返していたために殆ど彼と会わなかった。

それ故に、獠がどれだけの腕を持っているのかも今回初めて知ったのである。

 

「私もあんな風になれたらなぁ…」

「お悩みかしら?」

「ひゃっ?!」

 

驚いた吹雪が振り向くと、いつの間にか叢雲が壁に寄りかかっていた。

 

「む、叢雲ちゃん…」

「またあの時の事を考えてるのね」

「そ、それは…」

 

「よう。さっきからこっちを見てたようだけど、何か用かい?」

「ひっ!?」

 

さらに驚き振り向けば、獠が立っていた。

既に気づかれていたと思った吹雪はみるみる赤面して、

 

「あっ、あのっ!失礼しますーーっ!!」

 

と、瞬く間に走り去ってしまった。

 

「まぁ、お速いこと… 叢雲、なんの話をしてたんだ?」

「色々と訳があるの。てい…憲兵も交えてないと話せないわね」

「なるほどな。それから…少なくともこの建物は安全だから、わざわざ言い直さなくてもいいぞ」

「悪かったわね。あなたも人を驚かせるような立ち方は控えなさいな」

「昔からの癖だ。それに職業柄、相手が誰かわからない時は気配を消さないといけないしな」

「はぁ…わかったわよ。聞いたとは思うけど、今夜は遅れないようにね。しっかりなさいよ?」

「はいはいっと」

 

そう言うと、叢雲はコツコツと歩いていった。

 

(こりゃなんか、裏がありそうね…)

 

 

「ああ…、ああ。わかった。奴にそう伝えとこう。すまんな、美樹」

『いいわよ別に。暫くはかすみちゃんにうちをお願いすることになりそうだけどね』

「そうだな。慣れて来たらまた考えればいい。じゃあな」

 

ガチャリと受話器を置いた海坊主は、提督の部屋へ向かう。

途中で埠頭を通ると、先の方で体育座りをしている者とその後ろでいくつかの気配を感じ取った。

彼は、昔戦闘中に負った傷の影響で目が見えなくなってしまった。だが、その代わりに相手が持つ独特の気配と声で誰なのかを知ることが出来るのだ。

今回も何人かの艦娘がいる事は知れたが、1人はそれとなく重い雰囲気を纏っている。そこで海坊主は、後ろにいる中の1人に聞くことにした。

 

「天龍。一体どうし…もがっ?!」

「シッ!静かにしろ。吹雪なんだが、どうやら悩み事があるらしい」

「悩み事だと?」

「そっ、だから今は1人に…っておい!」

 

天龍の言葉を無視して、彼は吹雪に近づいていった。

 

「私、だめだなぁ」

 

はぁ、とため息をつく彼女だが、自分を覆う影に気がつくと後ろを見た。そこには、自身の身長の2倍はあるであろうゴツい人間が立っていた。

彼女は声にならない悲鳴をあげると、目に涙を浮かべて硬直してしまった。

 

「驚かせてすまん。だが、なぜ思い詰めてるのかと思ってな」

「あ、あの…海坊主さん…ですよね?」

「そうだ。お前は吹雪だな」

「はい…」

「それで、何を悩んでいる」

「実は…」

 

 

「もっと強くなりたい、だと?」

 

朝の射撃場で伊19が満足すると、獠はその足で提督室に向かいそこで待機していた叢雲と提督、暇をつぶしていた鈴谷と共に吹雪の話をしていた。

 

「そう。吹雪はね、以前任務で鎮守府海域の哨戒に当たっていたの」

「あー、あったよねそんな事。確か、鈴谷がここに来た直後だったっけ?」

「そうね。アンタが建造されてすぐだったわ」

「まーさか鈴谷の初仕事が2人を拾いに行って、風呂場(ドック)に放り込む事だとは思わなかったよね」

「そうだ。もう何年も前になるだろうか。俺が吹雪と共にここに配属されて少し経った頃、この海域にウロついているイ級を排除するようお達しがきてな」

「それで?」

「彼女に海に出てもらっている間、いつまでも1人でやってもらうわけにはいかんから仲間を増やしてやろうと通常のレシピを回した。そしたら、まさかの1時間半が出てきてな」

「1発目の建造で鈴谷か…。しかもオール30とか、どんだけ運がいいんだお前は…」

 

実はこの提督、悪運の強さには定評がある。

戦場で獠たちと戦っていた時は地雷を踏んでも不発だったり、捕虜になって牢屋に入ると、自分のいる独房以外は突然起きた地滑りに巻き込まれて敵が全滅したりなど、数々の伝説を残している。

今回の襲撃に関しても、急ブレーキを踏んだ際にシートベルトがたまたま切れ、同時に着弾時の衝撃でフロントガラスから飛び出すという、とんでもない結果になった。

 

「知らん。続きを話そう」

 

提督は叢雲をちらと見やると、続きを話し始めた。

 

「実はそこにいる叢雲はな、その時海上を彷徨っていたところをうちで引き取ったんだ」

 

獠が目を見開いて叢雲を見る。飲んでいた紅茶を置いた彼女は、獠を睨みながら言った。

 

「何よ、悪い?」

「いや、お前がドロップ艦娘だとは思わなかったんでな。すまん」

「別に大した事じゃないわ。ただ、気がついたら海の上で寝ていただけよ。他にも同じような子がいるわけだしね。問題なのはその後」

「というと?」

「行くあてがないし、仕方なくフラフラしてたら後ろからイ級に襲われたのよ。その時いた場所は、どうやら敵の縄張りのド真ん中だったようね」

「なるほど。お前が轟沈しそうな所を吹雪が助けに来たが、逆に大破しちまったわけだ」

「そう言うことになるわ。あの子が来なかったら私はここにいなかったかもしれない」

 

 

『くっ…このアタシが背後を取られるなんて…!』

『グアァッ!』

『う、動かない…!!動いて!!お願いだから!』

 

叢雲が死を覚悟したその時ーーーー。

 

『私の妹に手を出すなーーーっ!!!!』

『ギャアッ?!』

『…!』

『叢雲ちゃん!大丈夫?!』

『あなたは…吹雪ね』

『良かったぁ!もう少し遅かったら取り返しのつかないことになってたね』

『そうね…。!吹雪、うしろ!!』

『えっ?』

 

 

「その後はよく覚えてないけど、私の姉と鈴谷の話によれば、1人で3体を殲滅した後そこの海岸で倒れてたらしいわ」

「そーそー。日が暮れてもぶっきーが戻って来ないのを提督が心配したから鈴谷が海を見ようと出た瞬間、2人が倒れてたのを見つけたってわけ」

「鈴谷が大慌てで無線を飛ばして来てな。何事かと外に出たらボロボロの2人が倒れてたもんだから、すぐに俺らでドックまで運んだってわけだ」

「気がついたら医療棟にいたわ。私は次の日に目覚めたけど、あの子は3日も寝てた」

「そこから吹雪ちゃんは強さにこだわり始めた、と」

「そーゆー感じかな。改になったからもういいじゃん?って鈴谷は思うけどなー。それよりも、起きないぶっきーを心配してた時のくもっちと提督はウケたわ。2人ともそわそわそーわそわしてたし」

「るさいわねぇ。私はただ助けてもらったお礼がしたかっただけよ」

「そういやあ叢雲はツンデレだってこいつ(提督)から聞いたな。大方、妹って言われて嬉しかったんだろ?しかもさっき、あの子を姉って呼んだしな。だからこの鎮守府にいるんじゃないのか??」

「なっ…!あ、アンタ、酸素魚雷喰らわすわよ!!」

「えっ?いや、悪かったっ!悪かったって!!」

「問答無用!!喰らえ変態!!」

 

獠ごと床に叩きつけた酸素魚雷の音は、埠頭にいた海坊主達にまで聴こえたという。

 

 

 

 

 




さて、今回は獠らしい日常と、この鎮守府の始まりに少し触れて見ました!
オール30で鈴谷とか、実際では無理なことをこの提督はしてしまうわけで…。書いておきながら無茶苦茶だと思いましたよね()

皆様の最初の秘書艦は誰でしたか?筆者は電ちゃんです(゚∀゚)
ではでは、また次回お会いしましょう!!

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