暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
やっと解決したハードボイルド編。
続きを書きたいと思いつつ、今は自分の事に集中しております。
次話投稿までのスパンが長いですが、ここまでお付き合い頂いている方々には大変感謝の極みでいっぱいです。
ここからは、獠っぽい日常編です。
では、本編いきましょう!
新提督着任?!獠もびっくりの新鎮守府!
「調子はどうだ?相棒」
滅多な事では相棒と呼ばない海坊主が、珍しく話しかける。
「まあ上々と言ったところだな。だが、いくら命が狙われるかもったって、こうカーテンを締め切ってたんじゃあなあ」
「今は我慢しろ。もうすぐ獠が来る」
その時、扉を誰かが叩いた。
「待ち人来たる、か。どうぞ」
ドアが開き、肩を鳳翔に支えられた獠が入ってきた。
「天下のシティーハンターが、なんてザマだ」
「うげぇ…隼鷹に死ぬほど飲まされた…あいつらの肝臓は一体どうなってんだ?」
「だから気をつけてくださいとあれほど言いましたのに…」
昨夜は提督が復活し、鈴谷の退院祝いという事で艦娘達が鳳翔の店に集まり盛大な飲み会が繰り広げられた。
その中でも特に酒豪と言われる隼鷹や那智、足柄にしこたま飲まされ、調子に乗った獠はパンツ一丁で踊り出し香のハンマーをお見舞いされるというカオスな展開になっていた。
「お前はどうして平気でいられるんだ…」
「お宅と同じだ。あいつらに飲まされてるうちに慣れた」
「へっ、情けねえ。普段から女に気をつけろと言ってるだろ」
「あんだと?!冴子の色仕掛けにしょっちゅうかかってるのはどこのどいつだ?!」
「しっ知らん!あの女狐が勝手に胸を押し付けてくるだけだ!!」
「それで照れちゃう海ちゃんも純粋だねぇ。このっこのっ!」
「フンっ!」
鈴谷からのツッコミで照れたのか、まるでゆでダコみたいになった海坊主はそっぽを向いてしまった。
「さて、お遊びはここまでにして、獠。海坊主。お前らに頼みたいことがある」
「なんだなんだ改まっちゃって」
「無茶は聞かんぞ」
「獠、お前にはここの提督として鎮守府にいてもらいたい。そして海坊主、お前は獠の監視役を頼みたい」
ぽかんとする獠を尻目に、海坊主が口を挟んだ。
「こんなもっこり男をここに置いていいのか?それに、監視役は香が適任だと思うがな」
「なんだとっ?!」
「いや、なに、監視役というのは建前だ。実はな、ここにお前の店を開いて艦娘達の士気を高めて欲しいんだ」
「俺は構わんが、美樹に聞いてみないとな。大方、金剛あたりが喚いたんだろう」
「うむ、頼んだ」
「ちょっと待て。俺に提督をやって欲しいってのは、何か訳があるんだろう?」
探るように見てくる獠に対し、提督はこう言った。
「その通りだ獠。今回の件で分かったと思うが、俺は命を狙われている。大隈中将がいつまた俺を殺しにくるかわからん。そこで、俺を死んだことにしてお前に提督をやってもらい、俺が憲兵として動いてくれと佐伯元帥からお願いがあった訳だ。引き受けてくれるな?」
ちらと後ろに目線を飛ばした獠。彼はこう答える。
「全く。戦友のお前の頼みだし、元帥の依頼とあっちゃあ引き受けないわけにもいかん。それに、ギャラリーもいるわけだしなあ?」
その場にいる全員がドアに注目した途端、艦娘達が雪崩れ込んできた。その中でも1番早くに入ってきた、紅い瞳の駆逐艦が獠に向かって飛びついてきた。
「冴羽さ〜ん!大好きっぽい〜〜!」
「ぐえっ!!」
夕立のタックルをもろに受けた獠は、2mほど吹っ飛んだ。
「愛されてるじゃねえか、獠」
「バーロー!!でも、前までガキンチョだったのに随分成長したなあ」
「そうなの!冴羽さんが帰ったあと、夕立頑張って改ニにしてもらったっぽい!」
「なるほどな…おムネもこんなに素晴らしく…ぐふふふふ」
鼻の下を伸ばす獠に夕立は顔を真っ赤にしながら、
「冴羽さん!どこ見てるっぽい!?恥ずかしいっぽい!!」
直後、夕立の右ストレートが顔面にめり込む。そのまま吹っ飛んだ獠は、柔らかいものに当たった。
(ムッ?この感触は…)
プルプルと震えだしたので上を見上げれば、目に影を落としている戦艦が目に入る。
「不幸だわ…」
「山城は妥当だが、駆逐艦にまで手を出そうとするとは。見境がなくなったな?」
ニヤニヤしながら聞いてくる提督に、2人は愕然とした。
「提督までっ?!」
「ゲッしまった!夕立は駆逐艦だったんだ…。冴羽獠、一生の不覚!!」
「ども、青葉ですーっ!証拠押さえました!!記事にしますーっ!」
「山城ちゃんごめん!そして青葉ァ!そら堪忍やでーーーっ!!」
だが獠の努力もむなしく、次の日の朝刊にはでかでかと載ってしまった。
艦娘達によれば、鬼の形相をした香に追いかけられる彼の姿があったという。
「くそ…ひでぇ目にあったぜ。まったく…」
自業自得な気もするが、気にせず獠は1人で歩いていた。
すると目の前から、サンダルを履いたスクール水着の艦娘が近づいてくる。
「おっ、イクじゃないか」
「やっほー獠ちゃん!おはようなのね!」
「何してたんだ?」
「獠ちゃんに伝えたいことがあって探してたの!今夜、みんなで獠ちゃんの就任式?みたいなのがあるから、1800に食堂まで来て欲しいのね!」
「お安い御用だ。美人の顔も拝めるしな」
途端に、伊19がジト目になる。
「まったく変わってないのね。それから、イクの個人的なお願いがあるの」
「まさかその豊満な胸を見せてくれるってか?そりゃ嬉しいね」
瞬間、彼女は獠の鼠蹊部を蹴り上げた。
悶絶する獠。沈み込む彼に伊19はこう言った。
「そろそろ殴るのね?」
「もう”殴っでるっで…」
「今のは蹴っただけなのね。イクは久しぶりに獠ちゃんと射撃で勝負したいのね」
「ん?どういうこった」
「ここ最近、アイツのせいでオリョクルばっかしてたからすっかり腕がナマっちゃったの。そこで、獠ちゃんに見て欲しいと思ったのね」
「なるほどな。イクだけか?」
「うん。潜水艦のみんなは寝てるし、起こすのもなんかなぁって。みんなには後で伝えとくなの!」
「わかったよ、俺も暇だし付き合ってやる」
「やったなのね!」
「ねぇ、みんな。なんか聴こえない?」
「何だい、暁」
「本当だわ!何の音かしら?」
「はわわっ!銃声なのです!」
「銃声?!敵襲なの!?」
「いや、それにしては音が小さすぎるわね。とにかく行ってみましょ?」
雷がそう声をかけると、電の手を引っ張って先に行ってしまった。
「わわっ、待ってよ2人とも〜!私がお姉さんなんだから先でしょーっ!」
「ちっちゃい事を気にする時点でまだまだ子供だね。おチビさんだけに」
「響まで!?なによ、もーーっ!」
そう言って雷電コンビの後を追うが、追いついた先には音の正体があった。
「「「凄い(のです)…」」」
「ハラショー」
彼女らが見たものは、的の中心を射抜こうと挑戦する伊19と、脇でピンホールショットを決める獠であった。
「やーん!また負けちゃったのなのーっ!」
「甘いぞイク。少し慌てすぎだ。照準がブレる原因になるから、撃つ時は落ち着いて目標を見据えろ」
「わかったのなの!」
「よし、じゃあもっかい…ん?」
人の気配がしたので入口の方を向くと、4人の少女達と目が合った。
「冴羽さんなのです!」
「こんにちわっ!」
「ズドラーストヴィ、冴羽」
「おはよーっ!」
「よう、第六駆逐隊のお嬢ちゃん達か」
「暁はレディーよ!お子様みたいな呼び方しないで!」
「冴羽、私達も君の射撃を見たい。いいかな?」
「わかったわかった。見学しててもいいが、邪魔だけはしないでくれよ」
「「「「はーい!」」」」
そう言って、獠たちは練習を再開。しばらく見ていた第六駆逐隊であったが、電があることを口にした。
「あのっ…あのっ!冴羽さん!」
「ん?」
「またあの技を見せて欲しいのです。ダメ…ですか?」
「あの技…?あー、あれか!」
あることを思い出した獠は、パイソンの残弾を確認して伊19に向き直った。
「イク、頼みたい事がある」
「なーに?」
「俺が合図したら、あの的に撃って欲しい」
「それだけでいいのね?」
「ああ」
「わかったのね。お安い御用なのね!」
その後、2人はそれぞれの銃を持って的に向ける。
「よーし、行くぞ。…今だ!」
伊19は合図とともに引き金を引いて、1発撃ち出した。
獠も少し遅れてパイソンをブッ放す。また少し遅れてもう1発。
それぞれの方向に向かう弾丸だが、伊19のそれに当たったものはお互いに角度を変えた。
そして、あとからやって来たものにも同じ現象が起き、最終的には3つの頭部に当たったのである。
「すっ、凄いのです!全部真ん中に当たってるのです!」
「ま、ちょっとした遊びさ。ビリヤードショットの応用版、てとこかな」
「新技という訳か。また腕を上げたね。ハラショー」
「この戦法は効率的ではないが、敵の意表をつく時に使えるはずさ」
そう言いながら、ホルスターに銃を収める。
その後も続ける彼らであったが、影から1人、それを見つめる者がいた。
さて、いかがでしたでしょうか?
海のスナイパーと裏の世界No.1を絡ませてみたかったと言う願いですw
最後の影とは、いったい誰なのでしょう?
それから、獠と海坊主、提督は傭兵時代の戦友というわけです。
筆者としては仲間でいてもらいたかったのと、アニメ版ではそこまで明確にされていなかった気もするので設定を作っちゃえ!という(汗)
提督の名前はそのうち出てきます。
では、次回またお会いしましょう!