暁のスイーパー 〜もっこり提督と艦娘たち〜 作:さんめん軍曹
今回は二倍盛りにしてお送りいたします!
新年度と、長らくお待たせしてしまっているお詫びとして…(汗)
その分、ボリュームはあるかと思いますので、どうぞごゆるりとお楽しみください!
では、本編どうぞ!
獠達が香奪還の為に出ていった後、海坊主のアジトでは大和が冴子と電話をしていた。
「物音がして目が覚めたら、冴羽さん達が車で出て行くのが見えました。香さんは乗っていなかったので、おそらく鎮守府の人間に誘拐されたものかと」
『そう、わかったわ。私は今から大和さんと美樹さんを迎えに行くわね』
「お待ちしています」
『それから、お願いがあるんだけど…』
「よぅ、熊野ちゃん、香。元気してた?」
「冴羽様!」
「獠!」
「感動の再会に浸るのはあとあと。さっ、行くぞ」
そう言うと、熊野を抱えたまま走り出した。
それと同時に追手が後ろから撃って来たので、右に見えた角を曲がって一旦退避をすると獠はすぐに顔を出しパイソンを敵に向かって撃つ。敵はどんどん倒れて行くが、一向に数は増えて行くばかりだ。
「このままじゃ埒があかないわ。その扉の奥に入りましょ」
香が提案したので、そうする事にした。最後に獠が入ると同時に扉を閉める。
「ここは…」
「提督室だな。なーんか嫌な予感がするぞ。…熊野ちゃん、立てるかい?」
「…先程はバランスを崩してしまいましたが…なんてことないですわ。ただ、中破してるから入渠は必要かしらね…」
そう言って自分で立とうとする熊野であったが、やはり後ろに倒れこんでしまった。彼女を香が支えるが、艦娘といえど艤装がない生身の状態では厳しかったのだ。
「私とした事が、艤装がないのをうっかり忘れてしまいました。生身ですと流石にキツイですわね…」
その時、背後からカチリと音がした。
すぐに反応した獠は2人を庇いながら銃を抜くが一瞬遅く、相手は引き金を引いてしまった。
彼も同時に撃つが、敵の銃口から飛び出した弾丸はそのまま真っ直ぐ左肩を貫き、獠が撃った弾は制帽を弾き飛ばした。
「ぐっ…!」
「獠ーーー!!」
「来るな!俺は大丈夫だ!!」
駆け寄ろうとした香を止めようと振り向いた獠。だが、振り向けば熊野の顔が驚愕に満ちていた。
それを不思議に思い熊野と同じ方向を向けば、彼もまた驚いたのである。
「お前は…!!」
「まさか…そんな!!」
目を見開いている彼らの視線の先には、殺されたはずの提督が立っていた。
その時、後ろから現れたのはこの事件の原因である鎮守府の現提督であった。
「やあやあ。シティーハンター、冴羽獠くん。どうだね?親友との再会は素晴らしいだろう?」
「…はっ、あいつを死んだように見せかけ、薬で操ってる、ってとこか。つくづくゲスな野郎だよ、お宅」
「彼のおかげで仕事がスムーズに進んだよ。俺は艦娘ごとき兵器を人間としてみている奴が大嫌いでね。所詮は戦艦、ただの兵器もとい奴隷にすぎんのさ。なら、我々の手先で駒のように動くのが正解だろう?」
「そんな…あんまりですわ!私たちの提督をこの様な事に利用するなんて…酷い!酷すぎますわ!」
「アタシもそう思うわ。アンタは相当なゲス野郎ね」
「なんとでも言えばいいさ。さて、ここは彼に任せて俺はトンズラするとしよう。…ああそうだ。さっき、ここに仕掛けた爆弾を作動させた。あと数十分でここは粉々になる」
言いながら、横に置いてある先程から忙しなくタイマーが動く大量のプラスチック爆弾に手を置いた。
「彼の相手をしているうちにみんなで木っ端微塵だ、親友と死ねるなら本望だろう?では、おさらばだ」
そう言って大隈は立ち去り、提督はこちらに銃を向ける。何もできずにただ黙って見ることしかできない3人は悔しいと言う思いでいっぱいになっていた。
ただ、彼らは気づいていないが、熊野の髪留めに内蔵されている無線機のスイッチがONになったままであることが、後にこの場にいる全員の運命を左右する事になる。
時は少し遡り、獠と別れた海坊主と鈴谷はこちらに向かって撃ってくる大隈の手下たちへ応戦していた。
鈴谷が敵に向かって砲撃し、残ったものを海坊主がなぎ倒していく。
歴戦の元傭兵と戦うことに長けている艦娘が相手では、敵が全滅するのも時間の問題だった。
「海ちゃーん!艤装の弾がほとんどなくなっちった!なんか貸してちょ!」
「ほら、これを使え」
そう言うと、海坊主は彼の愛銃であるS&W M29を鈴谷に投げ渡した。
「でかっ!てか重っ!」
「るせぇ!それで我慢しろ!」
予備のクリップも鈴谷に渡しながら撃ち続ける海坊主。
鈴谷もマグナムで応戦するが、一見普通の女子高生が世界一強力と言われていた銃を撃つ姿はあまりにギャップがあった。
そういえば、JKがマシンガンを撃つ映画もあったっけ、と思い返す彼女だが、すぐに状況は一変した。
背後からキャタピラの音が聴こえ、振り向いた鈴谷は驚愕した。
「伏せろ!」
と海坊主が言い終わらないかのうちに彼女は反射的に身を伏せる。その瞬間、耳をつんざくような轟音を響かせてそれは砲弾を撃ち出した。
そう、彼女らの僅か数十メートル先には、なんと日本が採用している74式戦車が砲身をこちらに向けていたのだ。
「うっそマジで〜…。超ありえないんだけど〜…」
つい彼女が発した言葉は、疲労と呆れが混じっていた。
さて、いかがでしたか?半分まで書いたあたりで気がつきました。このままでは鈴谷と海坊主の存在が薄くなる…!とw
そこで、空いた時間で切ったり貼ったりを繰り返した結果、納得がいくまで修正することに…
でも、今の時点ではこれまでよりか出来はいいのではないかと(自画自賛)
さて、次回予告も出しておきますので、ここから先は見れる方のみで←今更かよ
《次回予告》
順調に戦っていた鈴谷と海坊主だが、突然現れた戦車に対抗手段がなくなった彼らは、太刀打ちできずに追い詰められていく!
一方、獠達は殺されたはずの提督と再会を果たすが、なんと彼は催眠薬により極悪提督の言いなりとなってしまった。
仕掛けられた爆弾のタイムリミットが迫る中、傷付いた3人は必死に提督へ呼びかけるが一向に目を覚まそうとしない。そこへある人物がやって来た…。
彼らは無事にピンチを乗り越えられるのだろうか?!
そして、提督は無事に帰ってくるのか?!
次回、さらばハードボイルドストーリー その4 お楽しみに!