白銀と黄金   作:彩夜華三鳥

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Q:どうしてやたらと元ネタのものより変更が加えられてるの?馬鹿なの?タヒぬの?

A:気付いたらこうなっていた。そして2の筈が二分割せざるを得なくなっていた。

  すいません、許してください!
  (元ネタの方々の依頼ならシーン追加は)なんでもしますから!


2-1:努力(物理)

 例えば、あなたが現代日本における成人男性として平均の身長、体重だと仮定する。身長170センチメートル、体重64キロ半ばだ。

 仮に木製のバットのような約1キロ程度の棒を持った所で、軽く振り回すぐらいは何ら支障はないだろう。それをもう少し重い物、日本刀にしても少しの間ならば問題はない筈だ。

 

 では、更に重いものではどうだろうか?

 

 コードレス掃除機ともなれば約4キロ程。これを振り回すとなると短時間ならば兎も角体力の消耗は激しいだろう。

 もっと増やしてみよう。自分の体重の約5分の一程度。成人男性の平均から見れば十数キロの非常に重い棒を振り回してみろと言われて容易くできる人間がどれ程いるのだろうか。ただの荷物として運搬するだけでも疲れるに違いない。

 ターニャの行っていることは正しくそれだった。どころか、より条件を悪くしたと言っていい。女性故の根本的な筋肉の少なさと、子供故の単純な体力不足。

 8歳程度の子供が4キロ近くもあるライフルを思い通りに扱える訳がないのだ。棒の長さが下手をすれば自身の身長を超えるとなれば尚更である。

 

 「実銃は重い重いと生前では散々ネットで書かれていたが、成る程。

  これは、確かに……いや、そもそも子供が持つことなど前提にされていないか」

 

 ターニャにとっては重く、使いにくい悪夢のような道具だ。引き金を引けるかと言われればかなり疑わしい。

 彼女の小さな手ではグリップから引き金までの僅かな隙間もかなりの距離に感じられる。純然たる肉体的なハンディキャップはそれほどまでに大きい。

 流石にこれを責めるわけにもいかないと教官ですら目を逸らす始末。無理なものは無理なので、理不尽な指導がないのは素直に感謝すべきことだった。

 

 「だからといって、はいそうですかとサボるのもな」

 

 性根として、根っこの部分はやはり真面目な人間なのだろう。単にライフルを構えるというだけだが、肉体的には凄まじい重労働をどうにかこなそうとターニャは努力を続ける。

 ライフルの銃口を持ち上げるよりは下がらないのに必死になっているあたり、もはや先は見えていたが。数発はどうにか撃てたが、そこが純粋な体力の限界となってしまっていた。

 

 一端呼吸を整えようとライフルを下ろし、半ば硬直してしまっていた肩を解す。

 

 なんとなしに目線が逸れた先にいたのは同年代とは思えない程に成長したハイドリヒだった。周囲の、年齢だけで言えば倍近い少年たちと比較しても彼の背は謙遜ない。

 それだけ立派な肉体であればだろう。ハイドリヒは涼しい表情でライフルを構え、標的へと向けていた。

 ターニャの目線を感じたのか、ハイドリヒが笑いを浮かべる。

 無表情だと冷徹という概念を彫り刻んで美男子にしたかのようなハイドリヒだが、笑うと思いのほか人懐っこい顔つきになる。これでターニャが無邪気な乙女であれば頬を赤らめただろうが、中身が中身だ。

 あれは笑いではなく嗤いなのだと本能で理解する。怒りを容易く表すなど社会人としては失格であるという自制心が表情に出すことこそ防いだ。

 内心は既に怒りの炎が燃え上がっている。声を出すと力が出やすいだったか、と前世ではそこまで使うことのなかった運動関連の知識を引っ張り出す。

 本人としては意気込んでいるつもりで、声を出しながらライフルを構えようとする。

 

 「ふぬぬぬぬぬぬぬぬ」

 

 どう控え目に表現してもうめき声を出しているようにしか聞こえず、周囲の他の者達が脱力しただけだった。当然、ライフルも前回と同程度にしか持ち上がらない。

 自己申告をさせれば数センチは上に持ち上がったのだと主張するだろう。教官が聞けば、憐れみの篭った目線で「そうか、頑張ったな」とでも言うかもしれない。

 

 「ぐ……ぬぬぬっ」

 

 自分でもまぁ無様な姿だろうとはターニャとて理解しているのだ。背後から感じる、ハイドリヒが口だけを動かして馬鹿にしきった声なき声援を送っているのを感じられるから止めようなどとは毛頭思えないが。

 

 「上司になったら絶対に、絶対にだ。前線送りにしてやる!」

 

 食いしばった歯の間から漏れる声は誰も聞き取る事はなかったが、構いはしない。屈辱に対する宣誓なのだ。ターニャが、自身の決意として口にしたという事実が大切だった。

 ハイドリヒが自分だけ前線送りにされたならば道連れにせんと考えている現状、二人ともの言葉が実現するなら仲良く揃って前線送りになる。それを知ればやはり、仲良く二人揃って苦虫を噛み潰したような顔になるのだろう。

 存在Xが士官学校にでもいれば読心でそういった現象が発生したかもしれないが、誰にとっても幸いな事に怠惰な白痴の王は士官学校になど過去現在未来を通して現れはしなかった。

 

 そう、士官学校である。

 ターニャとハイドリヒは見事、帝国が誇る士官学校への入学を果たしていた。戦時特例扱いで本来四年間かけての教育となるべき所を二年で行うため、無事士官学校の二号生となったことになる。

 数えにして若干八歳。貴重な魔導師の士官に際し、同じく戦時特例扱いで年齢制限は撤廃されている。

 

 若かろうとも十分な実力があるならば良しとする、というのは聞こえは大いに結構ではある。

 若く優秀な人間を集めるには適しているし、才能ある魔導師は早熟である事も多いので理に適ってすらいる。

 実際、幼いと言える年齢で配属される魔導師とて最近はそれなりにいるのだ。制度として成果が出ている以上、魔導師の才能ある者が試験を突破出来さえすれば年齢は気にしないという風潮が出来上がっていた。

 

 ターニャとハイドリヒの思惑だけで考えれば両手を挙げて歓迎できる事態では、ある。児童に戦争の作法を叩き込むという明らかな人権的問題に目を潰れば。

 現実問題として帝国は四方全てが仮想敵国であり、世界情勢そのものが不安定化している。なのに、二人の前世における第一次世界大戦に類する戦争は発生していない。

 大戦において直接的とは言えないが、大きな要因であるサラエボ事件すら起きていないのだ。

 

 二人がそうした、帝国の現状を知ったのは孤児院でシスターの蔵書を借り、前世と違いがあるのかと調査していた時のことだ。ハイドリヒは直後は平和な世であることを無邪気に喜んで見せた。

 どのような因果によるかは不明だが、大戦を回避できたのだと。

 対し、ターニャは憮然とした表情で存在Xを罵る言葉を吐いた。疑問を顔に浮かべるハイドリヒにターニャは答える。

 

 「奴の言葉を忘れたのですか?

  あの思い出すのも嫌な存在Xは戦争があり、追い詰められればと言ったのですよ。

  世界大戦を回避したのではありません。世界大戦はこれから起こる……いえ、起こされる」

 「ちょっと信じがたい話だが」

 「別におかしい話ではありません。

  そうですね……ああ、貴方には通じますか。飲みかけのペットボトルを真夏の部屋に放置したらどうなるか、ご存知で?」

 「まぁ、飲んだら腹を壊すな」

 「……ええ、知ってました、貴方が無教養であることは知ってましたとも。

  そもそも飲むなという話ですが、続けます。端的に言えば腐る訳です。飲み物が」

 

 頷くハイドリヒは深く理解している訳ではなさそうだが、腐ると腹を壊すが脳内で繋がる程度には理解できているようだった。

 当たり前のことを説くというのも時間の無駄に感じられるが、上司と部下の共通認識をすり合わせるのは大切であるとターニャは前向きに考える。

 替えのきかない人材ではあるのだ。であれば、効率主義の信徒であるターニャとて教育というものを試みざるをえない。

 

 「腐ると、ガスが発生します。ではこの時、ペットボトルの蓋を閉めたままにしていると?

  逃げ場のない狭い空間にガスが延々と溜まっていきます。それこそ、破裂するまで。

  人間の社会も同じです。不平不満というガスが社会という閉じた容器の中で延々と溜まっていく。戦争という、破裂の瞬間まで。」

 「だけど、世界大戦は起こらなかったんだろう? 蓋が開いたり、亀裂から漏れたりすれば破裂はしないんじゃないのか?」

 

 否定はせず、ターニャは頷いた。討論という程ではないが、会議において意見の否定はご法度だ。効率的な会議とするならば尚更に。

 

 「ですから、逆です。存在Xが蓋が抜けたりといった隙を見逃すと思いますか?

  あの手の手合は、他人に不利益を与える場合は全力であらん限りの手を尽くすものです。であれば、破裂の瞬間が遅れているだけです」

 

 遅れているだけ、溜まったガスも増えていることだろうとはターニャをしても怖くて口にできなかった。些細な衝撃で破裂するような極限状態を引き伸ばされていたとすれば、それこそ最悪だ。

 極限まで圧力の増した容器と、ある程度の圧力がかかった状態の容器。破裂するときにどちらの破壊力が優れているかは言うまでもない。

 社会という、人間が生きるには必須となるプラスチック容器が跡形もない程の勢いでなければいいが。戦争を生き延びた所で、その後の社会がなければ待っているのは悲惨な生活だ。

 第一次世界大戦ですら、当事国はその後の立て直しに苦労したのだ。それ以上の大戦とは一体どのような惨事を引き起こすのか、ターニャにしても想像がつかない。

 

 「……ヤバい?」

 「ヤバい。割と本当に、心折れそう」

 

 地頭とターニャの醸し出す危機感で理解したのだろう。

 ハイドリヒの問いに、ターニャは唯でさえ白い顔色を更に白くしながら端的に答える。人格は別として眼前の少女の能力は間違いないと思っている彼からすれば、それは難易度ベリーハード開幕の宣言に他ならない。

 

 「なら、どうすればいい?」

 「とにかく偉くなります。できれば、勝ちたいですが。

  かと言って戦争犯罪に関わるような戦果や行動はご法度です」

 

 戦争犯罪に関わる行為というものがどのようなものかは不明だが、ハイドリヒはとりあえず頷いた。方針が決まるだけでも万々歳だった。

 

 「幸い、魔導師は規定の年齢まで達しなくても士官学校に入学できます。

  ……というか、既に戦時特例扱いになっているようで。義務教育が終了する前に入らないと魔導師の強制徴募対象となります。

  ええ、笑える事につまりです。さっさと試験を通過し、早めに取れる手段を増やさないと幼年学校に強制入学。兵として前線で死ぬ確率が雲を越えて上空へ垂直発射されます」

 

 

 そう、取れる手段を増やさなければならない。

 ターニャは誰もいない射撃場で一人、再びライフルを構えようとしていた。周囲は薄暗く、同期である二号生達は既に宿舎へと戻っているのだろう。

 幼い肉体で士官学校に入ればどうなるかは理解していたのだ。自身が天才でないことなど知っていた。前世で既に、嫌というほど理解させられたのだから。

 

 年齢に関わる差で肉体的にも優位な天才に追い縋る手段は一つしかない。肉体を限界まで、それこそ潰れる直前まで酷使し、努力を積み上げる。

 現在主席である二号生が10の努力をするならば15の努力を。一日一日では小さな差だが、継続する事で積み上がった分は間違いなく己の力となるのだから。

 主席殿は魔導師ではないので、教官におかれましてはそのあたりをご考慮頂きたい。許されるならば、ターニャはそう言っていただろうが。

 

 喜ばしい点があるとすれば、全く忌まわしい事に転生者であるという事だった。

 前世で青春を勉学に捧げてまでも得た勉学、学問の知識は単純な差として現在を生きる若者との間に存在する。勉学へ向ける時間を削れる所ではない。単純に目の前の事に集中しなければならない他と比較して、ターニャの知識はこの時代の成人が持つそれすら越えているのだから。教育の効率化と様々な知識が手に入りやすい現代社会万歳と言うべきだろう。

 

 かといって、そんな事で存在Xへと感謝を捧げる訳もない。

 

 怪我の巧妙どころか、毒物を飲まされたら副作用で肩こりが治ったようなものだ。根本的な問題は一切解決していない。帝国言語を理解するのが異様に楽だったりと多少手を加えられている気はするが、その程度の贈り物を以って感謝しろと言われても断固拒否するだろう。

 故にターニャは何度であろうと思うのだ、存在Xに災いあれ、と。

 

 「とはいえ、身体を壊してしまえば元も子もないか」

 

 士官学校に入学して以降、栄養状態は劇的に改善している。孤児院にいる時もハイドリヒとつるむことで他の孤児達よりはるかに栄養状態では恵まれていたが、身体が資本の軍人の食事は比べるのもおこがましいものだった。

 

 尚、ランチである軍用レーションは覗くものとする。

 

 無論、それでも日本と比べれば舌を見せたくなる程度には不満がある。それでも嗜好品として珈琲があるのは格段の進歩だ。

 ミルクと砂糖を加えたドリップコーヒーを口にした時は感涙すらおぼえたものだと、ターニャは入学直後を思い出す。

 流石にブラックは幼い身体故飲まないが、文明的なマイルドなコクと苦味は間違いなくコーヒーのそれ。孤児院では当然、口にできるものではなかった。悲しいかな、煮沸した水が精々である。

 

 「食事もしっかり取らねばな」

 

 故に、娯楽という意味でもしっかりと食事を取ろうとは思えるのだ。

 努力は尊い。が、それで食事を忘れて翌日の体調が崩れては意味がない。

 未だ10歳にすら満たない身、まだまだ不安定ではあるのだと戒めをあらためる。一度風邪を引いた時にシスターとハイドリヒにこれでもかと世話を焼かれたという屈辱があればこそだ。

 テキパキとライフルを所定の場所にしまい、宿舎へと足を向けた所でターニャの視界を白いタオルが遮る。

 

 「わぷっ」

 

 少々浮かれて、足を早めていたターニャの顔に着弾。直後、ハイドリヒの抑えた笑いが耳へと入る。

 

 「……何のつもりかね、ハイドリヒ二号生?」

 「これはこれはデグレチャフ二号生。栄光ある帝国士官学校生が汗と泥まみれというのはよろしくないのでは?」

 

 その体格と外見故に、ハイドリヒのもったいぶった仕草は様になる。もし彼が孤児だと知らない第三者が見れば、どこぞの良家の子息かと思える程だ。

 

 「その煽りは通じんなぁ。何せ貴方にそういった仕草を教え込んだのはこの私だ」

 「教育の成果を見せてるんだ。中々のものだろう?」

 

 仰々しく片腕を広げてみせるハイドリヒにターニャは頷く。外見だけのものとはいえ、礼儀作法は大事だ。体面というものがある軍隊、それも士官ともなれば尚更だった。

 実力が重視される士官学校の試験にも面接があるのはそういうことだ。建前としては人格や試験で見れない諸々を考慮するためとあるが、ようは集団に馴染めないものを排除するためにあるのだ。

 魔導師ならばそれでも通る可能性はあるが、出世という面では絶望的だろう。前線で酷使されるのがオチだ。

 故に、ターニャ直々の教育によってハイドリヒは目上の人間に対する口の聞き方や態度を。更には他人を不快にさせない社会人としての立ち振舞を叩き込まれている。

 

 「タオルには感謝するよ。確かに、汚れたままで食堂に行くにはよろしくない」

 「そうかい、どういたしまして。ちなみに今日のメニューはだなぁ」

 「ええい、止めんか! 数少ない楽しみを奪う気か」

 

 違和感なく二人揃って宿舎へと帰る様子はさながら兄妹にも見えなくはない。幸いと言うべきか、指摘する人間はいなかったが。

 

 

 翌日、翌々日になっても二号生がやるべきことは対して変わらない。例え短期促成のハードスケジュールと云えどか。あるいはだからこそか、陸戦の叩き込みは基礎として繰り返し行われる。

 もう少し経てば今度は体力育成も兼ねた野外演習を徹底的にやることになるが、入学直後のライフルを構えた事すらない二号生を野外演習に叩き込んでも糞の役にも立たない事を鑑みれば妥当と言えた。

 それでも許して頂けるならば、本人と教官あるいは指導して頂ける一号生の誰かには文句を言いたいものだ。ターニャの内心は割りと切実である。

 

 「餓鬼じゃねぇか」

 「軍はお遊戯の会場じゃねぇんだぞ」

 

 逆説的に、魔導師の才覚のない他の二号生は本来入学する年齢の者たちばかりとなっていた。彼らからすれば、如何に魔導師の才能があるとはいえ歳のかなり離れた妹のような童女がいることがどう見えるか。

 

 軍人を志すからにはよくも悪くも生真面目で、柔軟な考えというよりは頑固なタイプが多いのだ。明らかにターニャの存在は異質であり、集団において異なるものは爪弾きに合う。

 

 「年齢や外見で判断するのは非効率的だとは思うが、流石になぁ」

 

 彼らの目線から見れば解らないでもないのだが、せめて、せめて言うならば聞こえない所で言ってくれまいか。そう思うのは不自然だろうか?

 本人に直接私が言うと角が立つならば、せめて教官か一号生が注意しろよとターニャは切実な気持ちを抱いていた。

 理屈では無論、理解できている。立身出世を思えば他人の雑談などに気を払っている余裕はない。

 教育が未だ中途半端であり、年齢的に見ても精神が育ちきっていない連中だ。ターニャの脳内スケジュールでは既に余裕が殆ど無い現状、気を払うよりも自らの鍛錬に集中すべきなのだから。

 悲しいかな、頭ではそう思っても簡単にいかないのが人間である。ターニャの場合、更に悲しい事実がある。

 

 前世と比較し、異常と思える程の細かく感じるのだ。他人の視線を。

 

 自身のどこに目を向けられているか、その目線がどのような意志のものか。大まかにではあるが、なんとはなしに理解できてしまう。

 転生した当初は男のちら見は女のガン見というネット上の格言はこういう意味だったのかと感心したりもしたものだった。

 

 孤児院の生活では、町中をハイドリヒと歩き回る時に悪意を感知しやすく便利であるとすら思っていた。

 だが、今までにない男だらけの中で生活するという体験でターニャはそれを憎悪すらしていた。

 向けられる目線は侮蔑やさげずみのもの。それはそれで大変気味が悪いが、欲情の目線であればまだ耐えられただろう。最悪、ハイドリヒを盾にするなり多少の恥ずかしさ覚悟に憲兵に頑張ってもらえば良い。

 お前は無能だと言わんばかりの見方をされるのは、なんとしても我慢できない。

 

 屈辱なのだ。自分の精神が否定されるかのように。

 

 「ぐっ!」

 

 まだ発展途上の肉体は精神の影響を如実に表わしてしまう。思うように力の入らない肉体でどうにかライフルを構え、必死で引き金を引いても弾が向かうのは明後日の方角だ。

 数発撃てば肩はじくじくと痛み、ライフルを構える事すら困難となる。

 魔導師は宝珠を持つようになれば大人に劣らない程の動きができるようになると言うが、ターニャからすれば一日でも早く渡してくれと叫びたい程だ。

 少なくとも、こんな惨めな思いをすることはなくなる。ただその日を夢見てターニャは休憩までライフルを構え続けた。




ドイツも結構コーヒー国家。

2017/2/26
改行等を改定。誤字修正は確認、修正を予定しています。

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