この素晴らしい世界にヒーローを!   作:不死身の決闘者モル

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ヒント:モンスター名変更しました!展開は変わらないのでご安心を!混乱させて申し訳ない!


死は、来たる…

アクセル近くの森

 

クリスside

 

「こりゃあ、かなりまずいね…」

 

「クリス、私の後ろへ」

 

ダクネスが私を庇うように片手を伸ばし、剣で周囲を取り囲むタウロス達をけん制する。

 

本来私とダクネスはこの森に出没するガーガーバードという害鳥駆除のクエストを受けやって来ていた。いざ獲物を探している最中、私の敵感知スキルがかなり多くの敵を察知したのだ。その数は20体近くはいると感じられ危険と判断した私はすぐに撤退しようとダクネスに提案したが敵の行動が迅速で、すでに私たちは逃げられないよう森の開けた場所で取り囲まれていたのだ。

 

「気を付けてダクネス!こいつら皆武装しているよ!!」

 

本来、タウロスは武器を持たない。しかし冒険者や商人を襲い奪った武器や防具を使うこともあるという。現に周囲にいるタウロス達は剣や斧を携えている。少し離れた位置に見えるタウロスはなんと弓まで持っている。

 

「それにしても…何かおかしいな」

 

私は2点気になる事があった。1点目、タウロスにしては行動が的確すぎるのだ。強靭な肉体と獣のような嗅覚を持つとされるタウロスだから私達の居場所を察知したのは分かる。しかし、こちらが逃げる隙も与えないように周囲を取り囲む程の素早さは持っていないはずだ。あらかじめ回り込む必要がある。そしてきっちり前衛後衛が分かれている陣形。タウロスはこれほど統率が取れる種族でもないはずなのだ…。

 

そんな事を思っていると、タウロス達の中から一際目立つ装飾と巨大な体のタウロスが前に出てきた。

 

「こ、こいつは!?」

 

「なるほど、そういうことだったの…」

 

驚愕するダクネス。私は1つ目の理由がわかり、顔をしかめる。

 

タウロスコマンダーだ。タウロスの中でも特別優秀な力を持った個体だ。力が全てのタウロス達を束ねるリーダー格の存在であり何よりも他のタウロスと違うのが知脳があるということだ。様々な戦略を組むことができるとされていて、狡猾な戦法をとることが多い。こいつが指揮をしていたからここまで統率の取れた動きができていたのだろう…。

 

コマンダーはこちらをじっと見つめ、うまそうだと言わんばかりに舌なめずりをした。

 

「うっ…くぅっ…こ、こいつ。私達を捕まえた後あんなことやこんなことをしようと考えているな!!わかるぞ…!!しかし騎士として屈するわけには…」

 

くねくねと体をよじらせ始めるダクネス。先ほど私を守ろうとしてくれた騎士らしさはどこへ行ってしまったのか。

 

「こんな時でもぶれないダクネスは本当にすごいね…」

 

やれやれと頭を抱える。そして2点目の気になる事なのだが…先程から何か妙な力を感じるのだ。特にこのコマンダーが出てきてからその力がより強くなった気がする。

 

「!!!!」

 

私はようやく気づいた。2点目の気になる事、それはコマンダーの嵌めている籠手から発せられている力だ。一見、漆黒の鋼で出来た厚籠手にも見えるが妙な黒いオーラのようなものを纏っており明らかに普通の装備でないことがわかる。

 

「ダクネス!あいつは特にまずい!!何とか逃げる方法を考えよう!」

 

私は小声でまだ身をよじらせているダクネスに話しかける。

 

「む…ふぅ、そうだな。…クリス、君だけなら逃げられるだろう?ここは私に任せて逃げてくれ」

 

「な!?」

 

確かに、盗賊で素早さの高い私一人なら多少怪我をするかもしれないが煙幕などを駆使して逃げられると思う。

だが、ダクネスはクルセイダーだ。そこまで素早さは高くない。この囲まれている状況では逃げ切るのは不可能だろう。

しかし。

 

「馬鹿なこと言わないで!ダクネスを見捨てられるわけないじゃん!!私たち親友でしょ!?」

 

「ふっ、親友だからこそ言っているんだ。このままでは共倒れだ。そうなる位なら私は親友であるクリスには逃げ切ってもらいたい」

 

にこりとこちらに笑みを見せるダクネス。

 

「もう!急に騎士っぽくならないでよ!!馬鹿!絶対見捨てないからね!!」

 

例え共倒れになるとしても私はダクネスを見捨てないと決めていた。何とか、この場を切り抜けないと…。

 

「来るか!」

 

ダクネスが剣を構える。

コマンダーが腰に携えた剣を抜いたのだ。その剣は一度黒く輝いた後、表面に赤い葉脈のようなものが走った。

 

あの装備はまずい。コマンダーだけでも今の私達2人では確実に勝てないだろう。

 

嫌だ…大切な親友を失うのは嫌だ。

 

誰か、お願い…助けて。

 

 

 

 

 

 

 

そう心で祈ったときだった。

 

「死は…来たる」

 

突如ダクネスの前に黒い霧の渦のようなものが出来、そこから誰かが出てきた。

真っ黒なロングコートにフードを被った骸骨のような顔をしたその者は一瞬死神かとも思えたが、私たちはその者を知っていた。

 

「あ、あなたはヒデオさん!?」

 

そう。アクセルの街で知らない者はいないとされる謎が多い冒険者。骸骨仮面こと、ヒデオだった。

 

 

 

 

 

 

ヒーローside

 

 

「ふん、間に合ったようだな」

 

俺は後ろにいる話に合った冒険者であろう女性二人に声をかける。

スピードブーストをかけ時折シャドウステップを使ったりしながら急いできたが状況から察するにかなりギリギリだったらしい。危なかった。

 

「な、何でここに?もしかして援軍が!?」

 

銀色短髪の子が期待を込めた視線でこちらを見ている。

…ちょっと伝え辛くなってしまったな。

 

「あぁ、俺一人だがな」

 

それを聞くと銀髪の子はえっと驚愕し少し項垂れてしまう。

いや、そんなに落ち込まれるとショックなんですけど。仮にも俺ヒーローなんだぞ?

 

「なぜ一人で!?ここは危険…はっ…そうかヒデオも私と同じ志を持つものなのだな!!」

 

今度は金髪の騎士っぽい子が妙に興奮気味に俺に話しかけてくる。

同じ志?もしかして、この子もヒーローなのか?見た感じ騎士みたいだし。こんなところに同志がいたとは嬉しい限りだ。

 

「あぁ、そうだ」

 

「やっぱり!!人目の多い街中で常にその恰好、前々からそうなのではないかと思っていたのだ!!」

 

ものすごく嬉しそうに喜ぶ金髪騎士。

 

「同志に出会えて俺も嬉しいぞ」

 

「あの、今やばい状況っていうのを忘れないでね」

 

銀髪の子が困ったように割り込んできた。

…いかんいかん。この金髪騎士の妙なペースに惑わされてしまった。

周囲にいたモンスター、タウロス共は俺の出現に戸惑っているようで警戒しているのか動かずにいた。

 

「…とりあえず、ここは俺に任せてもらおう」

 

俺はコートからショットガンを取り出し構える。

 

こちらが臨戦態勢に入ったのを見ると、少し離れた位置にいるタウロスの中でも一際でかい奴がこちらに向かって剣を向ける。

 

それを合図に武器を持ったタウロスたちが一斉にこちらへ向かってきた。

 

…ってちょっと待て武器?タウロスが武器使うなんて聞いてないぞ?めぐみんにもっと情報を聞いておくんだったな。

 

遠方には矢を構えている奴も見える。

 

「くっ…!」

 

ダクネスが前に出ようとするが、俺はすぐにそれを制す。

 

「2人とも、そこで屈んでいろ。俺がやる」

 

俺は無理やり2人をその場でしゃがませる。

 

「何を言っている!?私は痛めつけられ…」

 

「ヒデオ、何をするつもり…?」

 

「ふふ、まぁ見ていろ」

 

ここは森の中でも開けた場所のようで周囲に邪魔な木々はない。そして全方位から迫る剣や斧を持ったオーク、遠方から飛んでくる矢。まさに絶体絶命の状況だろう。

 

俺がいなければ。

 

「アルティメット、いけるぞ…!」

 

俺は小さくつぶやく。

見せてやる、これまで凶悪なモンスターとの戦闘で命の危機が迫った状況でも俺がソロで切り抜けられた秘密を!俺の必殺技を!!

 

タウロス共が間近まで迫ったのを確認し、俺は溜まっていた力を解放した。

 

 

「死ね!死ねぇ!!死ねぇぇ!!!」

 

2丁のショットガンから繰り出される射撃、それも只の射撃ではない。

残像が見えるような素早い動きで回転しながら全方位へ散弾を発射しているのだ。

その嵐のような攻撃を繰り出す俺の周囲には赤黒い破壊のオーラが纏われているようにも感じられ、飛んでくる矢と近付きすぎたタウロス達を問答無用で全てバラバラに砕け散らせた。タウロス達が細切れになって散っていく様は、まるで強風に煽られ花が散っていく様であった。

 

近づいてきた敵を全て片付けた俺はショットガンを捨てリロードし、腕をクロスさせる。

 

「え…?」

 

銀髪の子が唖然とした表情で声を上げる。金髪の子は何が起こったのか分からないといった様子だ。

 

 

いやぁ!やっぱり溜まらない。このスキルの快感は!!

これぞ、リーパーのアルティメットスキル。デス・ブロッサム!!

 

自身の周囲全員にダメージを与えるスキルだ。それもものすごい威力の。

タンクキャラなどの体力が高いキャラクターでなければ一瞬で葬り去れる程であり、皆で固まっていたりする時に食らうと一瞬で全滅する。

敵にリーパーがいた場合一番警戒しなくてはいけないアルティメットスキルでもある。

 

まぁこの世界ではある程度攻撃の相手は決められるようで屈ませておいた2人に攻撃は当たっていない。

 

さて、残るは遠くにいる弓を持った奴数体と…

 

「次は貴様だ」

 

俺は目の前で激昂している一際巨大なタウロスに銃を向けた。


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