この素晴らしい世界にヒーローを!   作:不死身の決闘者モル

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プロローグ
世界は今、ヒーローを求めている!


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「…どこだ?ここ」

 

気が付けば俺は真っ白な空間の中にいた。

 

「斎藤英雄さん、ようこそ死後の世界へ。先ほどあなたは不幸にも亡くなってしまいました」

 

そして俺の前には透き通るような水色の長い髪をした美人なおねーさんが椅子に座って意☆味☆不☆明な事を言っている。しかも彼女はまるでコミケにいる魔法少女のような恰好をしているんだが…え、ナニコレどういう状況?もしかしてコスプレした子と色々する系のお店?俺そういうお店には行かないと心に誓っていたはずなんだが…とりあえず適当にごまかして帰ろう。

 

「えーと、ごめんなさい。ワタシオカネナイネ。ノーマネー、ソーリーバイバイ」

 

「は?」

 

おねーさんは意味が分からないといった風に首を傾げる。

あ、やべぇこれ帰してもらえない奴かな?筋肉モリモリのマッチョマンの黒服を呼ばれる前にダッシュで逃げないと…。

 

「どうも混乱しているようね。良い?辛いかもしれないけど、少し前のことを思い出してみて?」

 

少し前?少し前といえば俺は仕事が終わってそのまま帰ろうと…

 

「…はっ!?」

 

そ、そうだ…思い出したぞ…!!

 

「そう。あなたは誘拐されかけていた少女を助けようとして犯人グループと揉みあいになり犯人の一人にナイフで心臓を一突きされたのよ」

 

「そ、そうだった…俺は…」

 

「…まぁ、安心しなさい。あなたのおかげで少女は無事逃げることができたわ。犯人達が捕まるのも

時間の問題「こんなんじゃ満足できねぇ!!!」よ…え?」

 

俺はおねーさんの前まで行き肩をガシっと掴む。

 

「こんなんじゃダメなんだ…ヒーローは最後まで立ってなくちゃいけねぇんだよ!ヒーローネバダイなんだよおおおお!!」

 

そして掴んだ肩を思い切りグラングランと揺すった。

 

 

俺こと斎藤英雄(23歳)には夢がある!そう、それはヒーローのなる事!!

 

どんなヒーローかって?そりゃあ誰かのピンチに颯爽と駆けつけて助けた後、クールに去っていく。

そんな仮面ライダーのようなヒーローに憧れているのだ!!

しかし、現実はどうか?俺はこの23年間、全く波の立たない平凡な人生を送ってきた。実際、漫画やアニメのように学校にテロリストが襲撃してきたり、町中に怪人が現れたりなどの突拍子もない事件に遭遇することはない。俺がした事といえば落とし物を拾ったり道を教えたり電車の席を譲ったりなどの誰にでもできるようなことだけだ。平和なのは何より良いことなのだろうが、どうも俺はそんな平和に退屈していた。俺は、俺にしか解決できない事件を解決したかった。

そんな時だ。目の前で覆面の奴らに誘拐されそうな少女を見つけたのは!

このおねーさんの話だとあの子は助かったらしい。そこまでは良いんだ。そこまではな…。

 

「ヒーローの俺が死んじゃあ意味無いじゃねぇかよおお!ようやく!長年の!夢が叶ったのによおおお!!」

 

「ちょちょっと…お、おおお落ち着きなさいよ…うう…」

 

はっ、と我に返るとおねーさんが半泣きになっていた。

 

「す、すまない。つい我を忘れてしまった…許してくれ」

 

「あんた何か怖いわ…」

 

かなり引かれてしまったようだ。結構ショックだが話を進めてもらうとするか。

 

「それで、確かに俺は死んじまったようだな。んで、あんたは何者なんだ?」

 

「はぁ、そういえばまだ自己紹介がまだだったわね。私の名は女神アクア。日本において若くして亡くなった者を導いているわ。勇敢にも少女を誘拐犯から救って命を落としたあなたには2つ選択肢があるわ」

 

おねーさん、ことアクア様の話によると1つが人間として生まれ変わること。もう1つが天国とかいう場所でのんびり暮らすことらしい。生まれ変わったら記憶も消えてしまうらしいし当然天国を選びたいところであるが天国は実際そこまで楽しい場所でもないようだ。

 

「ぬうぅ…どっちもどっちだな。俺のヒーローとしての道はここまでか…」

俺はガクッと肩を落としその場にしゃがみ込む。

 

「さっきからヒーローヒーロー言ってるけどそんなにヒーローになりたいの?」

アクア様が俺の顔を覗き込むように話しかけてきた。

 

「当たり前だ!俺は困っている人はもちろん、世界を救うレベルのヒーローを夢見ていたんだぞ!」

それを聞いたアクア様は何故かニヤリと笑みを浮かべる。

 

「だったら、一ついい話があるんだけど…」

 

 

 

 

 

「何だとおぉぉ!?異世界に転生!?それも特典付き!?」

 

アクア様はニコニコ笑顔のまま、うんうんと頷く。

 

話によれば、何とその異世界では魔王と呼ばれる存在に人々が苦労しているらしく、こうして死んだ者に転生の話を持ち掛けているらしい。

 

「そうよ!しかもその世界の魔王を倒したら何でも願い事を聞いちゃうわ!!どう?興味ない?」

 

「あるに決まってるだろ!よし決めた!早速転生だ!!」

 

「決まりね!話が早くて助かるわ!それじゃあ特典は何にする?この中から選んでね」

 

と、アクア様は俺に分厚い本を寄越す。

中を見てみると、そこには様々な能力や伝説の武器などの名前と説明がずらりと並んでいた。

…しかし、違う。俺が欲しいものはもう決まっているんだ。

 

「なぁ、アクア様?この中にない物でも良いか?」

 

「え?まぁ物によるけども可能よ。何が良いの?」

 

俺は少し間を置き答える。

 

「オーバーウォッチヒーローの能力が欲しい」

 

 

オーバーウォッチ…それはブリザードエンターテインメント社が開発したFPSゲームだ。

ヒーローと呼ばれるキャラクター同士が戦うゲームなのだが、どのヒーローも個性が強く一長一短で魅力がある者ばかり。そしてゲーム内ではあまり絡んでこないがストーリーや設定も作りこまれており面白い。好評発売中なので是非皆もやってみてくれ。

 

それを聞いたアクア様は少し困惑した後俺に寄越した本とは別の厚い本を見始めた。

 

「えーとオーバーウォッチ…オーバーウォッチ…。あ、これね。へー、こんなゲームあるのね…ってプッ!!アハハハ!何よこれ!!ゴリラとかいるじゃない!!アハハハハ!!」

 

こいつ、ウィンストンをバカにしやがった…!!かなり良い人(?)だし使いこなせば相当強いんだぞ!!

っと、落ち着け俺。これから能力貰うんだしこいつとか言っちゃだめだ。

 

俺は必死に怒りをこらえアクア様の笑いが収まるのを待つ。

 

 

 

「はー面白かった、あ、ごめんごめん。で、誰の能力が欲しいの?全部ってわけにはいかないわよ?」

数分後、落ち着いたアクア様が目元の涙を拭い改めて俺に訪ねてくる。

流石にそれは無理だったか…。

 

「じゃあ何人分までだったらいいんだ?流石に1人分だと先にも後にも辛いと思うんだが…」

 

そう、先ほども少し話したがオーバーウォッチのヒーローは皆一長一短で癖が強い。その上1ヒーローのスキル、つまり使える技もかなり少ないのだ。

 

「あー、そうねぇ…わかったわ。じゃあ最初は2人分まで選んでいいわ。その後は成長するにつれて使えるスキルが増えていくっていうのはどう?」

 

「おお、いいねぇ。よし、それで頼む」

 

「それで、結局誰の能力にするの?」

 

もちろん、決まっている。

 

「それは…」

 

 

 

 

 

 

「はい、それじゃあそこの魔法陣の中央に立って動かないでね」

 

特典を選択し終えた俺はアクア様に促され魔法陣の中央に立つ。

が…。

 

「ちょっと?アクア様?」

 

「あー、ちょっと今話しかけないで!!あぁっ!もうこのゲンジ鬱陶しいわね!!」

 

アクア様は絶賛オーバーウォッチプレイ中であった。

いや、転生の儀式中にゲームする女神がいるか?まぁ、はまってくれたのは嬉しいが。

 

「あとちょっと、あとちょっとでペイロードが…えっ!そこでULT合わせ!?いやあ!もう!!全滅したわ!!あー、時間ないし間に合わないわこりゃ」

 

どうやら負けたらしい。

 

「はー…あ、それじゃあ転生するわね。魔王倒すこと祈ってるわーじゃあ頑張って」

 

ゲームに負けたことで露骨に下がったテンションのアクア様に見送られ俺は転生した。

…ふふふ、ようやく、ようやく俺が真のヒーローとして活躍する時が来たのだな!!待ってろよ異世界!!俺が必ず魔王の手から救い出してやるぜ!!

 


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