さとりの姿で今日もぐつぐつの鍋を大きな棒でかき回して特殊な金属、ヒヒイロカネとオリハルコンの合金を作っていきます。素材には色々と貴重品を使っていますが、作れるので問題ありません。
次はフラム、オリフラム、テラフラムなど爆弾系を火、水、雷の四つを制作します。大量の爆弾を作れば続いて複製のために作ったコルネリア人形ちゃんにお任せして一気に大量生産をします。
低級、中級、上級ポーションも大量生産してから、状態異常回復の薬も作ります。ああ、いいことを思い付きました。使い捨ての緊急避難用ゴーレムも作りますか。ぬいぐるみをゴーレムにして巨大化して戦うようにしておけばいいですね。
「マスター、素材と品物で部屋がいっぱいです」
「店も狭くなってきましたし、拡張しましょうか。エセルドレーダ、その辺の土地を買収してきてください。くれぐれも迷惑かけないように」
「イエス、マスター」
可愛いエセルドレーダが消えて、しばらく紅茶を入れて読書をしているとカズマがやってきました。
「さとりん、これを頼む!(これで俺も神器持ちだぜ!)」
「大きな剣ですね……神器ですか。手に入れた経緯は……」
「大丈夫。合法だ(勝負であの糞野郎から奪い取っただけだからな)」
カズマが思い出した内容はソードマスターであるミツルギキョウヤなる人がカズマに因縁をつけて駄女神やめぐみん達を賭けて勝負を挑んできたようです。それでカズマは勝利して戦利品として神器である魔剣グラムを貰ってきたということですか。
「なるほど、合法ですね。いいでしょう。使用者登録がされているようですし、それを解除すればいいですか?」
「いや、俺大剣とか使えないし……もっと使いやすいのがいい。(どうせなら俺専用で可愛い女の子がいいんだが……エセルドレーダみたいにやばくなくていいから)」
「そうですか。魔剣グラム、魔剣グラム……いいでしょう。二刀流とかどうですか?」
「二刀流か、いいな!」
「では、今から作りましょうか」
「いいのか?(やったぜ!)」
「構いませんよ。ただし、精霊をつけるのでちゃんと可愛がってくだいよ。剣の手入れと稽古は絶対にしてください。未熟だとしても自ら使いてに相応しくなるように」
「任せてくれ! 嫁のためなら頑張れる!(まともで駄目じゃない美少女とか最高だしな!)」
これはアレですね。従順な子じゃカズマが駄目になります。だったら、可愛い女の子ですが、キツイ性格の子も用意しましょう。ただデレもしっかりとするようにして……ああ、いいゲームがありましたね。魔剣グラムなんですからそうしましょう。幸い、金属もありますし。
「では今から作業を開始しますが、カズマ。貴方の血をください」
「お、おう……注射機か……(ナース服とかいいかも)」
「ナース服ですか、いいですよ」
「いいいの!?」
「ええ」
指を鳴らして服装を変える。ピンク色のナース服になり、魔剣グラムを受け取ります。しかし、大きすぎるので手伝ってもらわないといけません。
「では血を抜きます。それから手伝ってくださいね。重いので私ではきついです」
「わかった」
カズマの腕を取って縛ってから血管に針を入れて血を抜き、その血を錬金釜に入れてグラムを溶かしていきます。そして、追加の金属を合わせて更にマスターテリオンの魔力をたっぷりと入れます。
「さとりんが作ってくれるのか?」
「いいえ。これから連れてくるので待っていてください」
「わかった」
二階にあがって自室じゃない方で変身を解除して男の姿で階段を降りていく。
「はじめましてサトウカズマ。カズマでいいか?」
「ああ、それでいい。そっちは?」
「コウと呼んでくれ。じゃあ、これから好みの姿とか聞けないがいいよな?」
「美少女なら構わない。性格もまともならそれで……」
「それは保証しかねるが、ツンデレは確定だ」
「ツンデレか。それもいいな!」
「よしよし、では作るとしよう。そうだ、まずは金属を鍛える。その手伝いをしてくれればカズマ専用の物ができるが、どうする?」
「もちろんやるに決まってる!」
「そうか。じゃあ、手伝ってもらおう。作るのは長い髪の毛の銀髪と黒髪の美少女だ」
「魔剣グラムでそれって、まさか……」
「知っていたか、カズマ」
「もちろんだ! 最高だぜ!」
「では、気合を入れろよ」
「おう!」
用意するのはヘファイストスと天津麻羅の槌を神器で用意し、鍛冶公房の神器を作って作業する。カズマと一緒に互いに交互に叩いて不純物を消していく。
「イメージはわかっているな?」
「グラムちゃんかオルタちゃん、どっちだ?」
「両方だ!」
「だから二刀流か」
「そうそう。といっても大剣だから片手剣に作り替える。もちろん、合体機能ありで」
「最高だ!」
イメージが互いに一緒なので頑張ったらできた。使用者によって小剣から大剣まで自由に変化する変機能に互いが融合して殲滅モードになったり、使用者に乗り移って戦闘をサポートしたり、永久機関を取り付けて再生能力をあげたり色々とやった。
そして、精霊は身長142㎝、体重39kg、スリーサイズ72/55/73でここは双子とも一緒で完璧に近い美少女。姉は白銀の長い髪の毛に気の強そうな紫の瞳。妹は薄い黒色の長い髪の毛に気の弱そうな薄い黒色の瞳。服装は姉が白で妹が黒。互いに胸元が開いていて臍もでている。
「魔剣グラムよ。貴方が私の新しいマスターね」
「魔剣グラム=オルタ、です。お姉ちゃんと一緒によろしく、お願いいたします。私なんかじゃお役に立てないかもしれませんが……」
「俺はサトウカズマで、君達のマスターだ。よろしく頼む!」
カズマが二人に抱き着くと、グラムに蹴り飛ばされて頭を踏みつけられる。
「塵屑が私達に気安く触れないでくれるかしら?」
「お、お姉ちゃんっ!?」
「ど、どういうことだ!」
「まだ使い手として認められてないだけだろ」
「そうよ。すくなくとももっと鍛えて……」
「あの、私はいいですよ?」
「え? オルタ?」
「あの、優しくしてくれれば……」
「優しくします!」
「抜けが……こほん。まあ、仕方ないわね。不甲斐ないマスターを育てあげるのもいいでしょうし……」
あちらはあちらで何かやっているようだし、余った素材に修行に仕える神器、時の箱庭を作る。設定としては時間経過が一時間しかなく、ドッペルゲンガーなど様々な敵がでてきて、死んでも自動復活する設定にする。さらには中での筋力の成長などはしないが、年も取らないようにしておく。
「さて、サトウカズマ」
「なんだよ?」
「彼女達は俺の娘である。よって、くれてやるには試練をクリアしてもらおう」
「おい」
「というわけでいってらっしゃい」
「ちょっ、まっ!?」
カズマ達を時の箱庭に突っ込んでから、さとりに戻って後片付けをする。工房を仕舞って部屋からでると仁王立ちしているエリスがいた。
「また勝手に神器を作ってくれましたね……?」
「今から報告をしにいこうと思っていました。それに神器を作り直しただけだから問題ないです」
「複製しておいて何をいっているんですか!」
「まあまあ、いいじゃないですか。魔王を倒してくれますよ」
「……まったく……」
エリスと一緒に部屋に戻って、彼女のご機嫌取りにお仕事を手伝ってあげる。すぐに一時間が経ち、カズマ達が戻ってきた。カズマの雰囲気は歴戦の戦士のような雰囲気を放ち、両の腕にグラム達を抱き着かせて戻ってきた。
「やったのですか」
「ああ、すごかった。最高だった」
「おめでとうございます。では、こちらをどうぞ」
「お、お祝いの品か?」
「かしてみなさい」
グラムが受け取りにきたので、紙を渡す。それをみて納得したようにカズマに渡す。
「なんだこれ……え? 請求書?」
「はい、請求書です」
「……はわわ、お兄ちゃん……10億エリスって……」
魔剣グラム4億エリス。魔剣グラム=オルタ6億エリス。妥当な金額ですね。
「こんなの払える訳が……」
「すでに手を出したのですから支払ってもらいますよ。それと二枚目をみてください」
「えっと、売却金額で魔剣グラムが3億エリス、工賃割引4億エリス……」
「合計で3億エリスね」
「無茶苦茶高いんだが……」
「問題ありません。この近くに来たらしい魔王の幹部の賞金が丁度3億エリスですよ。頑張ってて来てください」
エリスの仕事を手伝っているとその情報があったので、魔剣グラム姉妹の性能テストとして任せるのもいいかもしれない。
「魔王の幹部とか無理無理」
「そうです、絶対に無理です……」
「私達なら楽勝よ」
「まあ、しばらく考えていればいいですよ」
「わ、わかった」
カズマが二人の本体を腰にさして連れて帰っていきました。さて、これで面倒な仕事はカズマになすりつけられましたね。貰ったお金は結納金として返してあげますし大丈夫でしょう。
「私、貴女に依頼したんですけど?」
「面倒なのでお断りです。私はここでゆっくりとしていますので。まあ、暇つぶしに動いていいかもしれませんが」
「わかりましたよ……いざとなったら動いてくださいね」
「もちろんです」
さてさて、エセルドレーダが戻ってきたようなので店を大きくしましょう。買い取りは予定通りすんなりといったようです。ウィズのお店では爆発とかもよくあったので、買い取る時はすんなりでした。色々とプレゼントも用意したし、買取金額も高かったので問題ないでしょう。これでお店をさらに拡張して大量生産できるようにしましょう。
カズマ
美少女の嫁ができたが、借金もできた。仕方ないので働くしかない。魔王の幹部とか戦うのはまだ早いだろう。だから、アクア達を誘っていこうと思ったら、皆がすでにギルドに向かっているようで、誰もいなかった。
そのままギルドに行くと騒ぎが起こっていた。どうやら、ミツルギキョウヤがいるようだ。グラムはさっさと離れてそっぽを向きながら俺の近くにいて、オルタちゃんは俺と手を握って不安そうにおどおどしている。
「サトウカズマはどこにいる!」
「知らない。昨日から帰ってない」
「なんだと! まさか持ち逃げを……」
「俺がなんだって?」
「「カズマっ!?」」
俺が近づくと皆が一斉にこちらを見て、二人に気付いて……ついにやったのかといった視線を向けてくる。
「カズマ、騎士団に出頭しましょう」
「そうだ。幼気な少女をかどわかすとは……」
「あの、すいません。私には既に身を捧げた人がいて……」
「違うわっ!」
「ひうっ!?」
「ああ、オルタちゃんにいったわけじゃないからな」
「サトウカズマっ! その子達のことは後できくが、俺の剣をどうした!」
「ああ、あの剣? 売ったぞ。ほれ、これが明細書」
3億エリスと書かれた明細書をみせてやる。
「お前っ!」
「ねえ、キョウヤ。これって作り直されてるわよ」
「なに?」
「ほら……」
「本当だ! 剣をどこにやった!」
「ここにあるじゃないか」
「どこに……」
「私がそうよ」
「へ?」
グラムが俺の前に立ちはだかって宣言する。それはもう堂々と胸を張って。それはまるで子供が……ごめんなさい。だから睨まないで。
「君がグラムだというのか?」
「ええ、そうよ。私は魔剣グラム。この姿は擬人化または付喪神や精霊化した姿という奴よ」
「なら、君は僕の……」
「違うわ。私のマスターはサトウカズマよ。少なくとも身体は捧げているわ」
グラムが俺に抱き着いてきて、爆弾発言をする。一気に冒険者達の視線が痛くなる。そしてオルタちゃんが書類を返してもらったが、すぐにおびえて抱き着いてくる。
「はっはっはっ、そういうことだ。お前の魔剣グラムは美味しく俺が頂いてやったぜ。でも、別にいいよな。これはお前から吹っ掛けて来た勝負なんだからな」
「ふざけるな! 君もこんな鬼畜外道な奴よりボクの方が……」
「嫌よ」
「なぜだ!」
「だって、私にたよりきりで短小な人は私のマスターに相応しくないんだもの」
「ボクよりも彼のほうが凄いというのか!」
「そうよ」
「ならば勝負だ! ボクが勝てば返してもらう」
「いいよ。じゃあ、かわりに俺が勝てばコイツを受け取ってもらう」
「っ!?」
オルタちゃんをみる。オルタちゃんはびっくりとしているが、俺がみているのは彼女が持っているものだ。
「外道め、目に物をみせてくれる」
「じゃあ、勝負だ。今回は開始の合図を……」
「私がしましょう」
「さとりん」
さとりんがわくわくしながらやってきていた。そして、あっという間に外に舞台を作り上げてしまった。そこで俺とミツルギキョウヤが立つ。
「来い、オルタちゃん」
「私でいいんですか? 負けちゃいますよ?」
「大丈夫だ。絶対に勝てる」
「わ、わかりました」
オルタちゃんが長剣に変わってくれたので、それを持って挑む。
「では、スタートです」
さとりんが花火をあげて、合図をすると相手が突っ込んでくる。それを俺は--
「不完全世界ファーヴニル」
広範囲に超絶強力な20連撃を叩き込む。一撃でミツルギキョウヤの身体が粉砕され、二撃目で舞台が壊れる前にさとりんがエセルドレーダの黄金の剣で弾いていく。片手間で弾きながら、ミツルギキョウヤにポーションをぶっかけていた。
「勝者、サトウカズマですね」
「ひっ、卑怯よ!」
「そうよ!」
「これ、そいつが最初にやったことだから」
スッキリした俺はさとりんにお礼をいってミツルギキョウヤに請求書を渡しておく。これで俺は晴れて自由だ。