「我が名はめぐみん! 紅魔族最強の魔法の使い手アークウィザードにして爆裂魔法を操る者! 我が力は大地を砕き、全てを滅ぼす最強の一撃なり!」
彼女は黒マントに黒ローブ、トンガリ帽子を被った典型的な魔法使いの出で立ちで、左目に眼帯をつけている。
「我が名はコウ! ネクロノミコンのマスターにして、最恐の魔力を持つものなり!」
「うわぁ」
「紅魔の人なの?」
まあ、実際問題大導師マスターテリオンの魔力を持っているので、最恐といえる。
「ネクロノミコンとは、伝説に伝わる物凄くやばい魔導書ではないですか!」
「うむ。これだ」
ネクロノミコンを見せてやると、大喜びで近付いてくる。
「これ、本物のですか!」
「もちろんだ。クトゥグア、イタクァ」
魔導書から銃を呼び出して、みせる。実際に信じるかどうかはわからないが、問題ない。
「さて、これが俺のメイン武装だ。遠距離攻撃ができる」
「と、取り敢えず、よろしくな」
距離を取るガリル達。まあ、男に嫌われても問題ない。
さて、ところ変わってアクセルの街の近くにあるキールのダンジョン。俺達は松明を持ちながら、進んでいく。
「前方、三メートルぐらいに罠がある。落とし穴だな。今から封鎖する」
「頼むぜ」
イタクァの弾丸を撃って、罠ごと凍らせて封じる。他にもアロースリットなども一緒の対処法で進んでいく。
「便利な魔道具だな」
「ネクロノミコンの装備だからな」
「まさか、本物なのか?」
「そうだ。それよりもモンスターだ。ゾンビが5、スケルトンが4だな」
「わかった」
さて、俺の役目は一旦終わって下がる。前衛が前に出て、プリーストやウィザードが準備を行っていく。戦闘自体は簡単に終った。流石に最初の方の敵に苦戦する事はないようだ。
「おい、なんでお前は戦わないんだ」
「私の爆裂魔法はこんな所で使えません。ボス戦まで温存します」
「それもそうか」
「じゃあ、他の魔法で援護を頼みますね」
「……ん」
「?」
そのまま奥へと進んでいくが、めぐみんは全然戦わない。だが、俺も二丁拳銃で援護をするので問題なく戦えた。そんなこんなでかなり奥まで来たのだが、結界を張った休憩中に問題がおきた。ガリルがキレたのだ。
「だから、なんで戦わないんだよ!」
「私の爆裂魔法はここぞという時にしか使えません! 一発しか放てないんですから!」
「なら、他の魔法を使えよ!」
「使えません! 私は爆裂魔法以外は使えないんです!」
「だったら他の爆裂系の魔法を習得しろ!」
「嫌です! 私は爆裂系が好きなんじゃありません。爆裂魔法が好きなんです!」
「本当に使えんな」
「失礼ですね!」
「ああ、くそ、わかったよ! おい、こいつを置いて帰るぞ」
「なっ!? 待って下さい! そんな事をされたら、私は……」
「いいわね。そうしましょう」
「ええ」
めぐみんを除いた、全員が賛成した。俺はどうするか悩む。このままここで放置すれば恐らくめぐみんは酷い目に合うだろう。
「そんなっ!」
「ついて来ないように縛っておけ。それが嫌なら魔法を習得しろ」
「そんなの御免です!」
「そうか。じゃあな」
他の連中はあっさりと戻っていった。残ったのは俺とめぐみんだけだ。
「お、お願いします……」
「お前もこい」
「ちょっ」
俺はガリルに引きずられて帰ることになった。そのまま、入口まで戻った。
「本当に放置していくのか?」
「あいつの実力なら、魔法を習得すれば出てこれる。ましてやテレポートも使えるアークウィザードだからな」
「それもそうか」
「そうそう。流石に戻る手段は用意していますよ」
「それに習得しないと彼女はこれから大変ですからね。一応、明日には向かえに行く」
さて、俺はどうするか。
『主よ、どうするのだ?』
めぐみんは可愛かったからな。助けにいくのもいいか。
「おい、本気か?」
「だって、あいつの性格なら習得しない可能性の方が高くないか?」
「しかし、流石に命の危機ならするだろう。それに今、助けたらあいつの為にならんぞ。それとも、お前がこれから面倒をみるのか?」
「ふむ……それもいいかも知れない」
「そうか。おい、戻るぞ」
「「「は~い」」」
「ああ、それは俺だけでいい。一人の方が楽に進める。隠密とかできるしな」
「そうか。わかった。なら、俺達はここで待って居よう」
「いや、戻ってくれていい」
「そうか?」
「ああ、問題ない。一応、明日まで戻らなければ助けに来てくれ」
「了解。結界はもつよな?」
「持ちます。明後日までは」
「なら、大丈夫だ」
俺は彼等と別れて、ダンジョンへと戻る。中に入ってから、しばらく進む。それから、そのまま進む。二丁拳銃と一緒にアトラクナクアを使いながら進んでいく。
一人で狩っているから経験値も美味い。そのまま魔力全開でアルと共に進んでいくと、予定の場所に到着した。
「ぐすっ、うぅ……」
そこには蹲って泣いているめぐみんが居た。
「やっぱり習得していないのか」
「たっ、助けに来てくれたのですか!」
「お前次第だ。それで、習得はしないのか」
「絶対にしません! 爆裂魔法こそが大事なのです!」
「なら、魔力を下げて数を撃てるようにするとか……」
「そんなのは邪道です!」
どうやら、真正の爆裂オタクのようだ。
「そうか。じゃあ、ここで一人になるな」
「御願いです、助けてください! 魔法を習得する以外はなんでもしますから!」
縋り付いてくるめぐみん。さて、ここからが問題だ。
「しかし、実際問題これからどうするんだ? 爆裂魔法だけで金を稼げるのか?」
「うっ、それは……」
その瞬間、お腹が鳴った。
「ご飯は?」
「食べれてないです……実はこれで3度目のパーティーでして……もう行く当てがありません……」
「だったら……」
「死んでも御免です!」
こうなったら、仕方ない。言われた通りに面倒を見てやるか。
「そうか、そうか。なんだったら俺が養ってやってもいい」
「本当ですか!?」
「ただし、わかるだろ?」
「それは、つまり……身体で払えと……」
やはり、悩んでいるな。だが、この状況だと余程の物好きでも居ない限りはどうしようもないだろう。このままだと飢え死にするのがおちだろう。
「うむ。そして、今ならなんと契約するとこの杖がついてくる」
取り出したのはスカーレット・ヴァンパイア。ただし、七つの封印をつけた状態だ。全開放なんてやばすぎだからな。詠唱破棄と魔力増大、消費魔力削減、チャージ機能だけだ。後は封印解放が必要で、本人の力量次第だ。
「おお、凄そうな杖です!」
「アーティファクトだからな。軽く持ってみるといい」
「おお、なんですかこれ! 今なら爆裂魔法を二発くらい撃てそうです!」
「はい、終り」
取り上げる。この杖は高いぞ。
「そんな! そんな杖を持ったらもう我慢できません!」
「なら、買ってくれ。売ってやるぞ」
「本当ですか!? でも、お高いんですよね?」
「今ならなんと、特別価格でこんだけだ」
両手をパーにして差し出す。
「50万エリスですか!」
「いやいや」
「500万?」
「いやいや」
「ご、5000万?」
「50億エリスだ」
「高すぎますよ!」
「なんていったってアーティファクトだからな。神器だからな」
「ぐぐぐぐ、欲しい。でも、とても買えません……かくなる上は……奪ってでも……」
「出来ると思うか?」
めぐみんの額にクトゥグアを突き付けてやる。同時に魔力を解放してやる。
「じょ、冗談です! だから、そのおっかない魔力を引っ込めてください! ちびりましたから!」
「いいだろう」
「ふぅ……それで、どうすればいいんですか? わざわざ見せたのですから、私が手に入れる手段があるんですよね? 要求はなんですか? もう、その杖が手に入るならなんだって聞いてあげますよ! 処女ですか? 処女を捧げたらいいのですか!」
「そうだな。50億エリスを支払うまで、俺の好きな時に出来る都合のいい女になって貰おうか」
「っ!? それって愛人という事ですか!」
「ああ。だが、代わりに衣食住の保障と返済は無期限でいい。どうだ?」
「乗ります! 乗りますから、それをください!」
「いいぞ。なら、契約書にサインをして貰おう」
「はぁはぁ……なんでもサインしますよ」
魔法での契約書にめぐみんはサインしていく。こいつ、簡単に騙されそうだな。
「ああ、これで愛人になったんですからそれを渡してください!」
「だめだこいつ、どうにかしないといけない」
杖を渡してやると、頬釣りしだした。
「早く爆裂魔法を撃ちたいです。ほら、さっさとでましょう」
「だが、その前にする事をさせて貰おうか」
「待ってください。流石にベッドでムードの所がいいです……お願いします」
「まあ、そうだな。だが、キスだけはさせて貰おうか」
「まあ、それぐらいなら……」
眼を瞑ってこちらに唇を吸いつけるように差し出してくる。これは微妙だな。まあいい。そのまま軽くキスをしてから、舌を入れる。しかし、この体勢は辛い。だから、さとりに変身する。幸い、もう彼等は帰っている。キスを続けながら
「ななな、なんですからそれ!」
「ふっふふ、ある時はコウ。しかし、その正体はさとり! そう、我が名は大魔導師さとりんです!」
「おお~」
「まあ、実際は男の方が本体です。あちらはアーティファクトを気に入った人達にばら撒くための姿ですしね」
「私みたいにですか?」
「そうです。こちらは普通に過ごして遊ぶためですね。それと身体もちゃんと女の子です。ギルドカードも別で持っています」
「そうですか。ですが、それだと私の契約はどうなるのですか?」
「する時以外はこちらですので、安心してください。基本、ベッドの中だけですね。この姿も気に入ってますので。それと契約内容はこちらでも引き継いでいます。契約書にもしっかりと書いてありますよ」
「あっ!?」
ちゃんと読んでいないのが悪いのですよ。
「それと爆裂魔法を撃つ時はアルを連れていってもらいましょう。というか、しばらくネクロノミコンごとアルを貸し出しましょう」
「アル?」
「この子です」
「うむ。我だ」
めぐみんにネクロノミコンとアルを貸し与えるのは簡単です。この爆裂っこならば絶対に規定一杯まで撃つでしょう。そうなれば連れて帰る人がいます。もしも、ろくでもない男達に動けない所を犯されてはかないません。めぐみんはもう私のものですから。ですので、アルを護衛もかねて預けます。それとアレですよ。こちらの姿だとエセルドレーダを連れて行く訳で、二人はとても仲が悪いです。喧嘩なんて当たり前で、心の底から罵り合います。それを常に聞かされるのは耐えられません。
「では、めぐみんの護衛を頼みます」
「任せるがいい」
「まあ、そういう事ならよろしくお願いします」
「では、先ずは出ましょうか。それから美味しいご飯を家で御馳走しましょう」
「おーもしかして、一緒に住むのですか?」
「そのつもりです。衣食住を保証すると言ったのでしょう」
「それは助かります。もう、お金がなくて野宿をしようかと思っていたのです」
「でしたら、丁度いいですね……でも、嫌な予感がしますね」
「?」
急いで、ワープポータルを習得して一気に転移した。すると、そこには大量の木箱を運んでいるウィズが居ました。
「うぃ、ウィズ?」
「あ、おかえりなさい。見てください、これは転移で帰還できるかえかえくんです。なんと、登録した場所に一瞬で戻れるんですよ。誤差が一メートルくらいあるそうですけど」
「地面に埋まる欠陥品じゃないですか! それも一つ100万エリスってふざけているのですか! ああ、いえ正気ですね。心を読めばわかりますから。ふふふ、しかも金庫の中身を全て使ったとか、何を考えているのですか! 私は100万までだと言いましたよね!」
「で、でもうれ……」
「売れません! 心を読んで市場調査をしている私に抜けはありません! これは断じて売れません!」
「あ、これお父さんの作品ですね」
「……」
「あの、そちらの人は……」
「新しい住人です。それよりも、ウィズは今すぐに食事の準備をお願いします。私は少しお金を作ってきますから」
「は、はい……」
家から出て、ポーションを売りにギルドに行きます。仕方ないので安売りです。明日の昼からの食事代すらありませんし。ああ、ついでに生存報告もしておきましょう。いえ、それなら彼等にそれなりの武器を半額で売り渡しますか。それがいいでしょう。後でウィズもエセルドレーダもお仕置きです。七千万エリスもあったのに、微か数時間で溶かすとかありえません!