体育祭   作:春の雪舞い散る

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 戸部の依頼は引き受けませんし、旅行を前に葉山グループは崩壊します



修学旅行

  

 ①  アタシに言えた義理じゃないが人の気持ちを考えろよな

 

 

 修学旅行を目前に控えたある日の放課後の事

 

 隼人が戸部を連れて訳のわからないことを言ってきた

 

 姫菜が好きな戸部が姫菜に告白したいけど失敗はやだって… お前はだだっ子かよ?

 

 余りにものその身勝手さと馬鹿馬鹿しさに当然アタシ雪乃は却下

 

 なのに結衣が引き受けたいと騒ぎ出すから三人に思いっきし説教をかましてやった

 

 「 ふざけんじゃねえぞっ! お前らアホか?ナニ、告白失敗したくないって… 意味わからん事抜かしてんじゃねえゾッ!

 

 失敗したくないってアレか? 滑ったり噛んだりしたくないって意味か?

 

 少なくともアタシ等だけじゃねえ、結婚相談所だって結果にゃ責任持てんのに引き受けたきゃ一人でやれ

 

 一生に一度の修学旅行をそんなわけのわからんもんで棒に振りたくねえぞ?

 

 そもそも、失敗しない告白なんてそんな方法が有るなら平塚先生が独神なんて呼ばれてるわけねぇだろが?

 

 つか、平塚先生に喧嘩売るつもりなら勝手にやってくれよな? 巻き込まれたいとか、微塵にも思ってねぇからな

 

 隼人、お前もアタシに負けず劣らずアホだったんだな? 方向性は違うけど…

 

 趣味優先の姫菜に今は男と付き合う意思は見られんからな? 玉砕の覚悟が無きゃコクるんじゃねぇよ

 

 つかはっきりと言わせてもらうが戸部… お前にはホント失望したぞ、もっと男らしいヤツだって思ってたのにな

 

 隼人、お前… 雪乃にこんな話持ちかけていったいどうゆー神経してんだ?

 

 雪乃や陽乃さんにイヤな見合い話が来ても仕方ないから諦めろとでも言うのかよ?

 

 結衣もだ、これって完全に姫菜の気持ち無視なんだからな?

 

 少しは姫菜の事を考えてやれよ、アホな男二匹がまるっきり考えてないんだからアタシ等が考えてやらなきゃ救われんだろうがよ

 

 それに実際の話、雪乃や陽乃さん達に有り得る雪ノ下家が断れない政略結婚を容認しろって…

 

 そー言ってるのと同じ事なんだぞ? お前、それをわかって言ってるのか?

 

 ハッキリ言ってこれを機に、この先お前らとの付き合い方を考え直させてもらうわ

 

 悪いが彩加と沙希にはアタシから…

 

 さすがに詳しい内容までは話せんがある程度の事情を話して修学旅行の班や部屋割りについても考えなおさせてもらうからな

 

 それに、三日目の自由行動も今ここではっきりと言っておくがお前ら三人とは別行動を取らせてもらう

 

 せっかくの浮かれ気分で楽しみにしていた旅行気分を台無しにされたんだからな

 

 雪乃… 悪いが頭冷やしてくる、いい加減ムカついたからな

 

 最後にひとつだけ警告する、お前ら三人… 特に結衣はアタシの前では二度とコイバナすんなよな

 

 お前らの恋愛に対する価値観は肌に合わんどころかヘドが出るっ! ペッ 」

 

 雪乃に退出を告げて床に唾を吐き、自販機に向かって部室を出たら部室の扉の前に姫菜と優美子が居た

 

 二人が部室に近付いて来てたのは気配で知っていたけど取り敢えずは居るのに今気付いたふりをして

 

 「 ん~っ… もしかしなくても聞今の話こえちゃったよね? ごめん 」

 

 そう言って二人に頭を下げると

 

 「 別に八重は全然悪くないし姫菜のために怒ってくれたんだから謝るなし… それにあーしも八重の意見に賛成だしね

 

 それにさ、今はあの三人にあーしから敢えてゆー事なんかはひとっ言もないないかんね…

 

 言いたいことはあらかた八重が言ってくれたから今追い討ち掛けるまでもないんじゃね?

 

 あーしも八重と一緒に自販機に行くから姫菜も一緒に来なよ 」

 

 そう優美子に誘われ三人で揃って行く事にした

 

 

 そして奉仕部、部室では

 

 「 どうやら貴方の思いは報われそうになかったみたいね?

 

 今、ドアが閉まる瞬間、海老名さんと三浦さんが八重さんと話してるのが見えたけどどうやら立ち去ったみたいね足音が離れていくわ 」

 

 そう雪乃に言われた結衣が

 

 「 何で優美子と姫菜がここに… 」

 

 そう呟くのを聞いて

 

 「 八重さんじゃないんだから女子なら普通に気付くのではないのかしら? そう言った視線で男の人に見られていれば…

 

 恐らくは三浦さんが相談に連れてこようとしたのだと思うのだけれど? 」

 

そう雪乃が言うと

 

 「 あたしにはそんなこと何も… 」

 

 「 言われなくても気付いてあげるべきだったわね、友達と言うのならばなおさらのこと…

 

 それだけ貴女は、海老名さんの事をちゃんと見てこなかった、うわべだけの付き合いだった…

 

 って、そう言う事ではないのかしら?

 

 秘めた思いなら気付かなかった… そう言って済まされるけど今回の事はそうではないはずよ?

 

 積極的に人と関わろうとしない八重さんですら海老名さんの気持ちに気づいていたのにね

 

 それにつけても哀れなのは大岡君と大和君ね… 楽しみにしてた修学旅行で下手したら八重さんに相手にしてもらえないかもしれないんでしょうから…

 

 彼等はなにもしていないのによ?」

 

 そう言って雪乃は溜め息を吐く雪乃だった

 

 

 結局… 姫菜と優美子は大岡と大和の四人で班を作りアタシは彩加と沙希に実家が薙刀の流派を構えている柳楽君を誘うことにしたんだ

 

 コスプレでとあるゲームの薙刀使いのヒロインを演じるのに薙刀を我流で振り回してたんだよね

 

 最初の内は闇雲にね… だけどやっぱりそんな事で薙刀の経験の無いアタシが薙刀使いのヒロイン気持ちを理解なんかできるわけもないしこればかりは八に聞いても仕方無い

 

 そんな風に悩んでた時に

 

 「 実は家の母さん柳楽流薙刀術の師範で少ないながらも門下生も居る道場主なんだけど良かったら一度見学に来る?

 

 来るなら母さん…師範に紹介するんだけど? 薙刀に興味有る子だよ、ってね」

 

 それで紹介してもらって週一位のペースで通ってるんだ 

 

 そんな感じで親しくなった柳楽君に彩加と大岡に大和の四人で一部屋

 

 アタシと沙希に姫菜と優美子で一部屋のグループに別れた

 

 優美子に 『 大岡と大和はこの件には関わって無いから修学旅行を一緒に楽しをんでやれし

 

 アイツ等だって八重との修学旅行を楽しみにしてたんだからね? 』

 

 そう言われて彩加と沙希も二人を受け入れてくれるからアタシも様子を見ててナニも知らなかったことに気付けたから優美子の助言を受け入れた

 

 因みに結衣は相模と名前知らん女子と班を組み戸部と隼人は佐東と鈴置を誘ったらしい

 

 まぁ、アタシには何も関係ない事なんだがな

 

 これがきっかけで結衣と隼人とは距離をおき始め

 

 とある事件のせいで更に疎遠となり始め、三年になる時のクラス替えで完全に交流が途絶える事となることをアタシ達は知らなかった

 

 

 

 

 ②  夢の超特急ね

 

 新幹線の座席は六人掛け進行方向を背に窓から沙希、姫菜と優美子で向かいは窓から柳楽、大岡に大和

 

 夕べ?今朝?作っておいたサンドイッチとクッキーを渡して

 

 「良かったら摘まんでいてくれ」

 

 そう言って彩加と席に着いた

 

 アタシと彩加は向かい合わせにはしないで彩加にもたれて寝ていた

 

 彩加にもクッキーとサンドイッチを渡してから

 

 何しろ夕べは寝ないで彩加へのクリスマスプレゼント用にセーターを編んでたんだからな

 

 もちろん、今のアタシにはオリジナリティーなんか出せるはずも無いからわざわざペアルックなんて言う必要はない

 

 当然、親父に母ちゃんと小町にアタシのもサイズか違うだけで一緒なんだからな

 

 まぁ、強いて言うなら色が違う

 

 親父は青で母ちゃんはオレンジでアタシは黄色に小町はピンクに彩加は水色

 

 それと、一番最初に作る親父のと一番最後に作る彩加のとじゃ経験値の差によるクオリティーの違いはあるけどな

 

 それでもまぁ、比企谷ファリー with 彩加… みたいな感じゃね?

 

 

 京都に着きバスに乗り換え観光地巡りで金閣寺~龍安寺~仁和寺と巡り一泊目のホテルへ

 

 食事の時は相変わらずなアタシはオカン優美子に世話を焼かせ、アタシに好意的な人達に苦笑させ平塚先生に溜め息を吐かせている

 

 そして大浴場では

 

 「 八重っ、ちゃんと頭と身体を洗ってから入りなっ! 」

 

 「 ちょっ、ちょっと八重… ほら、 危ないから風呂場で走り回ってるんじゃないよ、全く…

 

 けーちゃんより落ち着きがないヤツだねぇ~っ…

 

 ほらっ、ちゃんと肩まで浸かるっ! 」

 

 そう言って溜め息を吐かせ、上がったら上がったで長く伸ばした髪をろくすっぽ拭く気もなくお風呂上がりの牛乳を飲むアタシに

 

 「 髪の手入れする気がないんだったらバッサリ切っちまいなよ? 」

 

 そう言って溜め息を吐くと視線に気付いた沙希に

 

 「 小町や陽乃さんが切るなって煩い 」

 

 そう言って知らん顔を決め込んでるアタシを見て

 

 「 普段のしっかり者のイメージが全壊だね… 比企谷さん 」

 

 そんな言葉を聞いた沙希が

 

 「 仕方無いだろ? このだらしの無いのも八重なんだよ…

 

 医者や妹の話しじゃ八重は時々こんな風に幼児退行化するそうなんだよ…

 

 しかも最近、その頻度が徐々に上がってきてるってね

 

 この見た目のまんまの幼児化した八重も八重なんだよ 」

 

 そう言って溜め息をつく沙希と優美子に姫菜だった

 

 

 二日目、お昼まで太秦見学のアタシと沙希はくの一に…

 

 沙希は水戸黄門のあの人みたいでスゴく格好良いけどアタシはどうみても子役だった上に小学生と間違われ子役としてスカウトされた…

 

 ホント、マジに超ムカつくんですけどもぉ~っ

 

 彩加は暴れん坊将軍で大岡と大和は水戸黄門のお供の二人に柳楽君は虚無僧になり

 

 優美子はやっぱりのお姫様に変身して ( 時代劇の衣裳に女王様はないからな ) 姫菜は辻占い師へと各々に変身したんだ

 そのせいでアタシと彩加に沙希、優美子はかなりの人目を引いて取り囲まれ写真を何枚頼まれたのか覚えてないけど調子に乗って小道具の薙刀を借りると

 

 『 神崎風塵流… 胡蝶の舞っ! 』

 

 ってやったらこのネタ知ってる人達に

 

 『 例のアレ決めてよっ、ア・レ・っ ♪ 』

 

 ってリクエストされたから皆に 『 アレ 』 説明して

 

 『 勝利のポーズ、………『 決めっ! 』 』 カシャって感じで祈念撮影

 

 

 因みにその後暫くはくの一だからな、アタシは… ステルスモード発動でのんびりさせてもらった

 

 昼食後は清水寺界隈で、参拝とショッピングと散策を楽しんだ

 

 夜、ラーメンを食うためにホテルを抜け出そうとする平塚先生と遭遇してしまい喋らないよう口封じにと道連れにされちゃったけどお腹痛い

 

 普通に一人前食べきれないのにご飯食べた後なんだよ?

 

 半分位しか食べれず残りは平塚先生が平らげましたよ…アンタ、マジで太るよ?

 

 寝る前に胃薬飲みましたけどね、全く…

 

 あの人と関わるろくなことにならないだからさ、ホントとんでもない目に遭いましたよ 

 

 

 

 三日目の自由行動はやっぱりコスプレ?の舞妓さん体験で、勿論四人揃って舞妓さんに変身する予定

 

 え?高いのに平気なのかって?

 

 フフンっ♪ ちゃんとパトロンが居るから平気なのさって言うより陽乃さんがアタシに舞妓さんの格好させたいんだからさ

 

 だから自分達も巻き込まれることを知らない沙希、姫菜、優美子も賛成し男子達は喜んで賛成した

 

 祇園で陽乃さんと待ち合わせして舞妓さんに変身

 

 町を歩いたら思い切り写真を撮られまくっちゃったけどそれはそれで面白い体験ができたね

 

 舞妓さんのは知らないけど、和服での所作は雪ノ下家でみっちりと躾ていただいてるので結構アタシと沙希は誉められちゃいましたよ(^^)v

 

 それにメイクのせいで、同級生達も案外気付かれないもの

 

 後で気付いてビックリなんだろうけど、偶然出会った何人かはアタシ達の舞妓姿をカメラに納めましたよ

 

 お昼前には、雪乃と合流してから湯豆腐を食べに行き

 

 その後、八坂神社を参拝してからぶらぶらと陽乃さんも含めてみんなで祇園の街を散策

 

 京都最後の宿は、陽乃さんと一緒に夜を過ごしたんだ

 

 

 

 最終日、姫菜と楽しみにしていた京アニメーションに立ち寄り京都駅でお土産を買うことにしたら京アニで京都在住のコス仲間とバッタリ

 

 陽乃さんとも意気投合して

 

 「 呼んでくれたら喜んで参加するから教えてね、コスイベっ♪ 」

 

 そう再会を約束してましたよ

 

 京都駅に戻りお店には沙希は生八つ橋にアタシは雪まろげで店長さんには祇園ちご餅

 

 自分用に雪乃と部室で紅茶を飲みながら食べるあんパンとカルネ

 

 小町と母ちゃんにあぶらとり紙と生八つ橋

 

 親父と雪ノ下家には地酒… え、未成年なのに買えたのかだって?

 

 そんなの陽乃さんにお願いしたに決まってるだろ?宅配便でな

 

 蒼空とけーちゃんには千代紙

 

 大志と留美に瑞希は小町にも渡すストラップと家に持って帰って貰う五色豆

 

 新幹線の中で食べる京菓子詰め合わせとカフェォレに彩加と共有するストラップ…

 

 鵜飼先生と師範には金平糖をそれそれに買った

 

 今、アタシの手に有る思い出の詰まったデジカメ…

 

 彩加が撮ってくれたくの一に舞妓姿のアタシ

 

 それに、そのアタシと彩加に寄り添うアタシの写真

 

 知らない人や、他のグループの人が撮ってくれたアタシ達の写真と共に沢山の想い出が詰まっている

 

 「彩加… これ、…貰って」

 

 そう言って渡した包みの中から出てきたのはアタシのPHSにもついてる四つ葉のクローバーのストラップで…

 

 「だから、僕にお揃いを買おうって言わなかったんだ…じゃあ、僕からはこれを八重に…開けてみて」

 

 そう言われて包みを開くと、中から出てきたのは花根付けの着いた柘植の櫛で

 

 「良い物は…僕達が大人になるまではそれで我慢してね」

 

 「う、うん…楽しみにしてる」

 

 そう答えたアタシの視界はボヤけていた、もちろんあふれでる涙のせいで

 

 バカばっかしやってたけど楽しかった修学旅行…

 

 心残りがあるとするなら…反省してくれなかった三人とそれを許せなかった心の狭きアタシかな…

 

 否、そんな考えはアタシの驕りだろう…

 

 確かに三人の犯そうとした罪を断罪したのはアタシだがいってみればアタシは検事に過ぎない

 

 自分勝手な事をしようとしていた自分達の愚かさ、それを自ら反省し言い訳じゃない誠意を姫菜と優美子に見せるべきだったのに…

 

 隼人と結衣は常に言い訳からしか口にしないから優美子をキレさせたのだからフォローのしようがない…

 

 つまり、アレに関しては怒っているのはアタシだけじゃないって事だ

 

 と、言うか大人と言うには未々遠かったんだよアタシ達はさ

 

 でも、これだけはハッキリ言えるのが優美子の勧めを受け入れ旅行を大岡と大和と行動を共にしてよかったってこと

 

 でなきゃ、もっと悔やんでたと思うし楽しめてなかったと思うからさ

 

 

 

 こうしてアタシ達の修学旅行は無事に終わりを告げ幕を閉じるのだったのだった


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