戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
翼は絶唱の直後、リディアンの近くの病院に搬送され治療を受けることになった。それに加え、コテモンも絶唱の時に翼の負荷を半分に減らすため自身を殺してでも彼女を救って消滅してしまった。
しかし、当分戦うのは無理で安静にしなければならない体になってしまった。その間に弦十郎たちはネフシュタンの鎧の行方を追いに司令室に戻った。
「あなたが気に病む必要はありませんよ」
緒川が俯く響と拓実に声をかけた。
「翼さんが自らの意思で歌ったのですから……」
拓実は黙ったままだった。そして緒川は翼のかつての相棒だった奏の話をした。響は翼が今まで奏の殉職で生じた穴を埋めようとがむしゃらに戦って来た事を知った。
「ええ、そうでしたね。
あの日から翼さんはどこか焦ってたんだが俺は言えなかった。あの人はどこまでも突っ走ってるから周りが見えなくなるから言っても逆効果なんだろうって思っちまってたんです。まあ、俺のことはあんまし眼中にないような感じでしたけどね……」
「はい、同じ世代の女の子たちが学ぶ恋や遊びも覚えずあの人は自分を殺して戦って来ました。そして、今日その役目を果たそうとして歌った……ほんとに不器用ですよね? でもそれがあの人__風鳴 翼の生き方なんです」
「そんなの……悲しすぎます」
響が涙する中、拓実は歯をくいしばることしかできなかった。
(そんなのも知らずに……私は翼さんと一緒に戦いたいって……!)
「僕も、奏さんの代わりなんて望んではいません。だって誰も望んでいませんから。だから、響さんと拓実さんにはお願いがあります」
「お願い?」
「ええ、翼さんを1人にしないでください。世界でひとりぼっちにさせないでください」
翼は治療室で今も安静にしている。そんな彼女のデジヴァイスには1つのデジタマがあった。
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翌日、弦十郎たちはネフシュタンの少女の目的が響にあるのを内通者によるものだということが分かった。そして響は翼を離脱させてしまった非が自分にあるのではと思い悩み、自己嫌悪に陥ってしまうことになった。
「響!」
声の方を振り向くと未来が立っていた。未来に対して強がりを言う響だったが未来にはお見通しだった。
「やっぱり、未来は響と一緒にいないとね」
「うん、私もそう思う」
「あのね、どんなに悩んで出した答えであっても響のままでいてね?」
「私のまま?」
「そうだよ! 君の代わりはいないし、僕の代わりやピヨモンの代わりだっていない!」
アグモンもデジヴァイスから響にいった。
「ありがとう……未来。私、私のまま歩いて行けそうかも!」
響は晴れたような表情で笑顔を浮かべやがて何かを決心した。
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一方、拓実は1日を終えたが昨日のことが忘れられなかった。
「なんかあったの? 拓実? また、防人のこと?」
稔がお茶を出した。
「実は……」
拓実は昨日のことを話してしまった。
「そうかい……で、あんたはどうすんだい?」
「え?」
「だってそうでしょ? なんかやって後悔したら次に大切なのは未来の自分だ。自分自身どうしたいのかをよーく考えんだよ。そうすりゃ嫌なことだって忘れていいことがあるはずさ。でもって行動すんのさ! あんたらしさを忘れないようにね……」
「母さん……」
「いつまでも……しょげんじゃないよ!」
「ああ! ありがとう!」
それから一週間、拓実と響は弦十郎により鍛えてもらうことになった。拓実は成績に関しては、普通よりやや上だったため学校やバイトもそれほど問題なかった。その度に、拓也からは「鍛えてもらって男前になれよ!」と背中を押された。その中、2人は精神的にも肉体的にも強くなっていた。
(にしても結構言ってること結構アバウトな感じであんましよく分かんねえよなあ……)
そう思いながらも拓実と響は特訓を終えた。
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山中のなかにある屋敷にて女が全裸で何者かと交信していた。彼らの会話にはソロモンの杖を起動させ、いずれある組織に役立ててほしいという内容だった。そして女は電話を切り歩き出した。
「野卑で下劣……生まれた国の人間でも辟易するくらいな奴らにソロモンの杖がすでに起動しているのを話す通りは無いわよねえ、クリス。
かわいそうに……あの子を捕まえればいいだけなのに空手で戻るとはねえ……」
その少女__クリスはほぼ裸で十字架のようなものに縛られていた。
「なあ……これでいいんだよなあ?」
「?」
「こうすれば……私の願いは叶うんだよなあ? ……」
「ええ……そうね。そのために私の全てを受け入れて頂戴。出ないと嫌いになっちゃうわよ」
そしてレバーを下ろすとクリスが電撃により悶絶の声を上げた。
「あああああああああああああ────!!
うわあああああああああああ────!!」
「可愛いわよォ……クリス……覚えておいて、痛みだけが……人をつなぐの」
クリスはフィーネに頬を触れられホッとした。そしてもう一回電流を流された。
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そんなことも知らない響は拓実と朝の鍛錬を終えていた。
「はあ……疲れたあ〜」
「ふう……いい汗かいた……シャワー浴びてきますね」
「おう!」
拓実はシャワーを浴びに行った。
そんな中、二課本部に激震が走った。
元々二課はシンフォギアによる被害の情報秘匿を行なってはいたものの無理を通そうと強引になるため、一部から「特機部二」と揶揄されていた。そんな特機部二の理解者だった広樹 防衛大臣が何者かに暗殺されたとの報が二課に入った。
「どうも〜」
「どうもじゃありません! こっちは大変なんですから!」
拓実が了子を見て言った。
「広樹大臣が……暗殺されたんだ」
「複数の革命グループらしきものたちから犯行声明が出ている。目下全力で足取りを追っている」
それを聞いた了子はアタッシュケースを開け、3人に政府から受領した機密資料を見せた。そのアタッシュケースに血が付いているとも知らずに……
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機密資料などによれば、敵の狙いは日本が持つただ1つの完全聖遺物のデュランダルであった。
デュランダルは元々EUが経済破綻した時に日本が譲り受けたものだったのだ。そこで永田町のある場所にデュランダルを移送することを決定したのだ。
響は荷物を持ち二課本部に向かったが、未来に疑念を抱かれてしまった。
「絶対未来を怒らせちゃったよ……」
新聞を広げるとそこには女性の写真が載った記事が見え、慌てて畳んだ。
「お、男の人ってこういうのが好きなのかしら!?」
畳んだ時に風鳴 翼の記事があった。
「情報操作は僕の仕事でもあるんですよ」
緒川と拓実もやって来た。
「ほれ、今日のおにぎり。母さんが防人の友達のって言ってさあ……」
「え? 家族の人って水琴さんのこと知ってるんですか?」
「じつは秘密にしろって司令がいう前に言っちまったんだよ」
「そうなんですか!?」
「まあ、特別に許してもらった程度だけどな。それと翼さんだが、一番危険な峠は越えられたみたいだ」
「ホントですか!?」
「けど、しばらく安静です。それで、月末のライブも中止です。さてと、みんなでファンの人にどう謝ればいいのか……」
響が俯いてしまった。
「あ、嫌! 別に責めてるわけじゃないですから! 響さんに言いたい事は何事にもたくさんの人がバックアップしてる事です」
「ええ、緒川さんのいう通りですね。
俺の父さんもバックアップみたいなのをよく任されるんだ。そん時によくいうんだよ。肩の力抜いてやんだよ、ってね。
立花さんもその心意気で行くといいぜ。俺たち二人でこの間のあいつに一泡吹かせてやろうぜ」
「緒川さん、拓実さん、ありがとうございます。少し楽になりました」
響が走って言った。
「ちょっ! 立花さん!? おにぎり! 腹が減っては戦はできませんよ!? おーい!!」
拓実も響を追った。
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そして明朝5時、移送作戦は始まった。
拓実は弦十郎の乗るヘリからデジメモリの援軍でノイズを相手にする役だった。
「立花さん、お互い頑張ろう! 俺らにできんのは目の前のこういうことくらいだ!」
「ええ。お気をつけて」
その時、道路が崩れ落ちた。了子と響の乗る車は避けられたが、一台がやられてしまった。
「なんだよ、あのドラテク……荒ぶってんなあ……」
「来るぞ! 構えるんだ!」
「はい! 今回デジメモリの数は20枚あります。これでうまく立ち回ります。ベタモン! お前の出番は後だから休んでてくれ!」
「オッケー!」
一方、アグモンは目が回っていた。
「すごい、運転……」
「どこかからノイズが攻撃している! 気をつけろ!」
その時マンホールの蓋が車を吹き飛ばした。
「下水道だ! ノイズは下水道から攻撃している!」
「だったら!」
なおもノイズは車を吹き飛ばした。
<デルタモン! デジメモリオン! >
「トリプレックスフォース!」
ノイズたちの一部を地上から出る前に3箇所攻撃したがすぐにノイズを見失った。
「奴ら制御されてます!」
「聞いての通り奴らはデュランダルを損壊させないようにするためにこっちはあえて危険な地域を選ぶんだ!」
「なるほど! そうしたらこっちの無双タイムって訳か!」
「勝算は!?」
了子が不安そうに言った。
「思いつきを数字で語れるものかよ!」
(やべ……めっちゃかっけえ! 学校とかで明日から使いてえ)
二台の車のうち一台は爆発し、もう一台も転倒した。そしてノイズの攻撃でヘリの視線は分からなくなってしまった。
「くそ! ここからじゃああと19枚の援護ができねえ!」
ノイズの攻撃が迫ると了子が手をかざした。するとバリアが発生し響を守った。その様子をクリスも見ていた。
「あなたのやりたいことをやりたいようにしなさい!」
「行けるよ響!」
「立花さん! 俺はあんたを上からデジメモリとベタモンで援護する! 思いきしいけ! でしょ、司令?」
「フッ……ああ!!」
「私、歌います!」
聖詠を唱えた響はデジヴァイスでアグモンをグレイモンに進化させた。
(ここからは激槍ガングニールを聴きながら読むのを勧めます)
「特別サービスだ! 持ってけトリプレックスだ!」
さっきのセリフはクリスの真似感覚だったが、そんなことを気にせずすぐにデジメモリを挿入した。
<レオモン! デビモン! レッドべジーモン! メモリオン! >
「獣王拳!」 「デスクロー!」「ハザードブレス!」
響の背後のノイズを一掃した拓実にはネフシュタンの少女が見えた。
「司令! ネフシュタンの少女です! どうします?」
「迎撃だ! デュランダルに寄せ付けるな!」
「了解です。行け! ベタモン!」
デジヴァイスが水色に光った。
「待ってたぜ! ベタモン進化! シードラモン!」
その向こうでは響の拳が唸っていた。
「修行の成果が出てるようだな。さてと……ようネフシュタン!」
「お前は……!」
「こないだの借りを返してやるぜ! 持ってけトリプレックスだ!」
「それは私のセリフだ! 勝手に真似しやがって……ぶっ潰してやる!」
ネフシュタンの少女はハグルモンを召喚した。デジヴァイスが赤く光った。
「へえ……パートナー持ちかい!」
「行け!」
「ハグルモン、シンカアアアアアア!!! メカノリモン!」
ハグルモンはメカノリモンに進化した。
「そいつをただのメカノリモンだと思うなよ!」
「メカノリモン! チョウシンカアアアアアア!!」
さらにメカノリモンがさらに進化した。
「完全体だとお!?」
「メガドラモン!」
飛竜のような姿に変わった。その向こうで響がヒールをへし折った状態でノイズを蹴散らしていた。
「完全体で浮かれてるようだが、俺と立花さんをなめんなよ! 足元滑らしてやるぜ!」
<カブテリモン! デジメモリオン! >
「メガフレイム!」
「メガブラスター!」
「アイスアロー!」
ギガドラモンとクリスに攻撃したが、メガブラスターとアイスアローが避けられメガフレイムは相殺された。
「こいつら! 戦い慣れている!」
シードラモンをメガドラモンに任せたクリスは響に蹴りを放った。するとデュランダルのケースが突然開いた。
「今日こそモノにしてやる!」
蹴りは響の頬にヒットし、両者は地上戦にも連れ込もうとしたがデュランダルがケースを突き破って宙に浮いた。
「もらった!」
クリスが手を伸ばしたが、響のタックルで吹き飛ばされた。
「渡すものか────!!」
響がデュランダルを手にした途端、パワーが溢れ出た。しかし、響は暴走に等しい状態になった。
「なんだと!?」
クリスがなぜか恍惚な笑みを浮かべた了子を見て、ソロモンの杖を構えた。
「見せびらかしてんじゃねえ!」
響が振り返った。
「なんじゃありゃ! まずい! シードラモン、いったん離脱するんだ!」
「え? 分かった!」
「クリス……!」
メガドラモンがクリスを守りに行った。響が振りかざしたことであたりが一瞬で吹き飛んでしまった。
「まさか……デュランダルの力なのか!?」
「こんなのが危うく渡るとこだったのかよ……!そうだ、みんなは!!」
その後二課は辺りの処理により移送作戦を中止した。しかし、ここに櫻井 了子の謎が増えたことの大きさをまだ知らない特機部二だった。
「ったく、この間あたしのこと散々ダサいとか言いやがった奴らに一発やってやろうかと思ったのにできなかった…」
「ツギデヤッチャオウクリー。」
「ハグルモン…お前今回インパクトあったんじゃね?初登場で完全体だぜ?」
第9回 クリス、ハグルモン(in撤退中)