戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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前回ファラに敗北した翼さんですが、例によって再戦を仕掛けられます。そんな中意外な人物の声援で立ち上がります。ぶっちゃけブレイドネタだとわかる人は思いっ切り笑えるかもしれませんが翼さんの出生を知ったらガチで笑いもんになりませんよ。中の人もそれ聞いてうまく寝付けなかったんだとか…


第82話 夢よ羽ばたけ!翼の歌!

 目がさめるとそこは寝室だった。

 

「翼!目が覚めたんだね!」

 

「ファルコモン…そうか、私は負けたのか。」

 

(身に余る夢を捨ててもなお届かないのか…)

 

 翼が暗い顔を浮かべていた。

 

「大丈夫?翼」

 

 マリアが襖越しで声をかけた。

 

「すまない、不覚を取った。」

 

 翼は多少傷が痛むもファルコモンに起き上がらせてもらい立ち上がった。

 

「パパさんが呼んでるわ。パパさんの部屋に来てちょうだい」

 

 ____________________

 

 八紘が4人に書類を見せた。その内容はアルカノイズが倒されたり何かを分解した時に生じる赤い粉についてだ。それを八紘はドイツ政府の研究機関であるアーネンエルベに依頼したところ赤い物質の名はプリママテリアと呼ばれるものだった。

 

「プリママテリアは万能の溶媒でアルカヘストによって分解還元された万物の根源要素らしい…」

 

「錬金術は分解と解析そこからの構築で異端技術の理想形と言っても差し支えないですが…」

 

 緒川が3人に補足説明した。

 

「一体、キャロルは世界を分解した後何を構築しようとしてるのか…」

 

「確かに、マリアさんの言う通りキャロルの奴は何を考えてるのかこっちは分からねえし、かといって奴の腹の内も探れねえ。完全に俺らが不利だってことだけは以前変わりはないか…」

 

「翼、怪我の具合は?」

 

(ん?)

 

「はい、痛みは殺せます。」

 

「翼!」

 

 ファルコモンが痩せ我慢している翼に声をかけたが翼は俯いてしまった。

 

「ならばここをすぐに発ち、然るべき研究機関にて情報解析にあたれ。お前の守るべき要石はもうないのだ。」

 

 八紘は冷淡とも取れる態度で翼に次の任務遂行を行うよう言った。

 

「確かにそれは合理的かもしれないのだけれど、自分の娘にかける言葉としては冷たすぎるんじゃない!?」

 

 マリアがなおも反論した。

 

「いいんだマリア…お父様、失礼します。」

 

「うむ、水琴くんと伸次は聞きたいことがある。残ってくれ」

 

 そして翼とマリアが出た。

 

「で、ええっと何かあるんですか?」

 

「単刀直入に言おう、翼は私のせいであのようになったのか?」

 

「ああ…少なくともですかね。しかし、八紘情報官が珍しいですね。さっきまでは娘を気にもかけていなさそうな事を言ったのに」

 

 八紘は書類を片付け拓実と慎二を見つめた。

 

「翼に薄汚れた風鳴の道具に過ぎないと言い放ち、あんな風にしてしまったのは私の責任だ。だが私は謝らない。私には、それを言う資格すらないのだ…」

 

「分かりました。それじゃあ、自分は翼さんたちのところに戻ります。失礼致しました。」

 

 拓実は八紘の部屋を出た。

 

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「全く!あれが政府のスペシャリストなの!?家族の繋がりを蔑ろにするなんて!」

 

 マリアはご立腹のまま廊下を歩いていた。

 

「うむ、実の娘にあの態度は信じられんな。まあ、よほどの事情があるのだろうな。出なければ救いようがないな。」

 

 アグモンも同調した。

 

「すまない、だがあれが私たちの在り方なのだ。」

 

 翼が近くの部屋の襖を開けた。

 

「ここが私の幼い頃の部屋だ。続きは中でたっぷりしよう。」

 

「翼さん!今戻りました!」

 

 2人の後ろから拓実が手を振ってやって来た。

 

「水琴も来たか…まあいい、2人には改めて聞いてもらおう」

 

 翼が中を開くと拓実は呆れ顔を浮かべ、マリアは構えを取った。

 

「敵か!?」

 

「またあの人形が…!」

 

「ええっと、マリアさんそのですねー…」

 

 拓実が補足しようとしたがマリアが翼の部屋を指差した。

 

「何をしてるの!?敵がいるかもしれないのよ!?」

 

「これは、その私の不徳だ…申し訳ない…」

 

「だからって10年もそのまま!?」

 

 翼の汚部屋にマリアは呆れ気味だった。

 

「翼は昔パパに流行歌をここで聞かせてあげてたんだ。まあ、本人は気難しそうな顔だったけど…」

 

「?この部屋は…」

 

 翼とファルコモン以外は部屋の違和感に気づいていた。

 

「昔から?」

 

「それって、私が片付けられない女だからって事!?」

 

「たぶん、そうじゃないと思いますよ翼さん。」

 

「そうよ、パパさんとはずっとあんななの?」

 

 翼によると翼の祖父である風鳴訃堂は老齢に入り後継を決めようとし候補者は八紘と弦十郎のいずれかになる予定だったらしい。

 

「それのどこが翼さんと関わりが?」

 

「うむ、実はその後継が…私なのだ。しかも生まれたばかりの私なのだ。」

 

「なんだって!?」

 

 マリアと拓実は驚きを隠せなかった。

 

「理由はわからない。けれど今日まで生きていると伺いたくはなる。それでわかったことは…私には"お父様の血が流れていない"らしい…」

 

「何!?」

 

「私は"風鳴の血を濃く受け継ぐために祖父がお母様の腹から産ませた赤ん坊"なのだ。」

 

「そんな!そんなことをするなんて…!」

 

「風鳴訃堂は人の道を外れたのか!」

 

 2人は人の道を外れた風鳴訃堂への怒りを募らせていた。そんな中翼は過去に八紘に言われた薄汚れた風鳴の道具という言葉を思い出してしまっていた。

 

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 その夜、突然ファラが現れた。

 

「ここに要石のない今、貴様になんの目的がある!?」

 

「私は貴女の歌を聴きにきただけよ?剣ちゃん…

 こちらも全力でいかせてもらいます…ダブルスピリットレボリューション!」

 

 するとファラの持つ風のスピリットが反応した。

 

「さらに…おまけをあげるわ。ユキダルモン!ガルダモン!デジクロス!」

 

 すると四つの光が合体した。

 

「ジェットシルフィーモンX3!」

 

「2人はあいつを!俺がデジモンをやります!」

 

「任せた!行くぞ!」

 

 拓実はヴォルフモンにスピリットレボリューションし、メガシードラモンとペックモン、ジオグレイモンとともにジェットシルフィーモンX3に向かって行った。

 

 翼とマリアがファラに攻撃を仕掛けたがうっかりマリアが武器を蛇腹剣にしたためソードブレイカーで剣を破壊させてしまった。

 

「マリア!クッ、この身は剣!切り拓くまでだ!」

 

 翼はファラに突っ込んで行ったがまたもソードブレイカーに破壊された。

 

「あらあら…いくら向かって行っても無駄よ。まあそっちの坊やはデジタルワールドの剣だったからソードブレイカーにはただの剣の模造品___棒切れみたいね。」

 

 一方、拓実も4体がかりで攻撃するもジェットシルフィーモンのパワーに押されていた。

 

「ダブルスピリットにデジクロスなんて…!強すぎる!」

 

「サンダージャベリン!」

 

「苦無羽!」

 

 デジモンたちも技を放つがジェットシルフィーモンが風車を構えた。

 

「ウルトラタービュレンス!」

 

 装備していた風車から発生した乱気流でデジモンたちの技を跳ね返し、拓実たち5体はあっという間に吹き飛ばされてしまった。

 

「この風は強すぎる…!うわああああああ!!!!」

 

 ジェットシルフィーモンの一撃で拓実たちの進化が途切れてしまった。拓実は吹き飛ばされ、近くの木に激突してしまった。

 

「ちく…しょお…」

 

 拓実は気絶してしまった。

 

(砕かれて行く…剣と鍛えたこの身も…誇りも…)

 

「強化型シンフォギアでも叶わないなんて!」

 

「夢に敗れ…それでも自分の中にある誇りすら壊された…どこまで無力なのだ!私は!」

 

「翼さん!」

 

「翼!」

 

「翼…さ…ん…」

 

 拓実もほぼ瀕死になりながら声をかけたが翼は立ち上がれなかった。

 

(ダメだ…全く動かない…すぐに動かねえと…いけねえのに…)

 

「翼!!」

 

 翼は声の主を見て驚愕した。なんとその場には危険を顧みずに冷静な表情を浮かべた八紘が立っていたのだ。

 

「お父様!?」

 

「歌うんだ翼!」

 

「しかし…私には…風鳴の道具にも剣にもなれない私など…」

 

「ならなくていい!夢を見ることを恐れるな…」

 

 八紘は冷静ながらも翼に声援を送っていた。

 

「そうだ翼!立つんだ!翼の部屋は10年間そのまんまなんかじゃない!さっき分かったんだ。あの部屋にはなぜチリがないと思う?それはパパさんがお前との想い出を無くしたくないという思いがあったからだ!そんなことができるのはパパさんは翼を愛しているからだ!娘を疎む父にあの様なことはできない!いい加減に気づけ!バカ娘ええええええええーーーーーーー!!!!!!!」

 

「翼…!受け取れ!」

 

 すると八紘がデジメモリを投げた。

 

「お前の夢は…まだ途中なのだろう?」

 

 八紘とマリアの言葉で翼は涙を流していた。

 

「ほんと…不器用だな…親娘揃って…」

 

 拓実も朦朧とする中苦笑いを浮かべた。

 

「まさか…お父様は、私が夢を追いかけられるように風鳴の家から遠ざけた?それなら、私はもう一度夢を見ても良いのですか!?」

 

 八紘は何も言わなかった。

 

「分かりました!ではお聴きください!イグナイトモジュール抜剣!」

 

<Dainslaf>

 

 そして翼は黒い影をまといイグナイトモジュールを纏った。

 

(ここから先はBeyond The Balde IGNITED ARRANGEMENTを聴きながら読むのを勧めます)

 

「ファルコモン!行くわよ!」

 

「ああ!!僕も翼の夢の果てまでついて行く!」

 

 翼のデジヴァイスが輝いた。

 

「ファルコモンワープ進化!!レイブモン!

 

 レイブモン!アクィラモン!スティングモン!ムシャモン!ガイオウモン!デジクロス!」

 

 レイブモンは光に包まれる中、レイブモンの兜がムシャモンに武器の剣はガイオウモンの菊燐へと変化した。

 

「レイブモンX5!」

 

「あらら、すこしはたのしませてくれるのかしら?」

 

 翼は牽制用に千ノ落涙を放つがそれでもソードブレイカーは健在だった。

 

「真・天ノ尾羽張!」

 

 レイブモンX5は新たな武器でジェットシルフィーモンを攻撃するも、風車に防がれてしまった。

 

「いくら姿形を変えたとて、それが剣である以上、私には毛ほどの傷も与えられない。」

 

 ファラは薄っすらと笑みを浮かべた。そしてソードブレイカーを二刀流とし、竜巻を放った。

 

「剣にあらず!」

 

<逆羅刹>

 

 翼の一撃でファラのソードブレイカーが破壊された。

 

「ありえない!哲学の牙が…!」

 

 レイブモンがジェットシルフィーモンの懐に潜り込んでいた。

 

「ホーンフィニッシュ!」

 

 アクィラモンとスティングモンの合わせ技でジェットシルフィーモンは吹き飛ばされた。

 

「トドメだ!」

 

 吹き飛ばされたジェットシルフィーモン目掛けてレイブモンが超スピードで飛行した。

 

「ライトニングクロス!」

 

 武器を二刀流に変化させ、レイブモンX5はジェットシルフィーモンを十字型に切り裂いた。

 

「貴様はこれを剣と呼ぶか?否!!これは夢に向かって羽ばたく翼!貴様の哲学などには翼は折れぬと心得よ!」

 

 翼は空を飛び、両手両足のブレードから火を吹き出した。そして高速回転した。

 

「ただ生きとし生けるものならば――過去だって飛び立てる!剣は剣としか呼べぬのか?違う、友は翼と呼ぶ!我が名は…「夢を羽撃く者」也!」

 

 そして炎を纏った逆羅刹がファラの上下半身を吹き飛ばした。

 

<羅刹・零ノ型>

 

 ファラは高笑いを浮かべながら倒れた。

 

 ____________________

 

「やった…」

 

「翼、私には何も言うことはない…ただまっすぐに夢へと羽ばたけ…自由の"翼"でな…」

 

 そういうと八紘は背を向けて自分の部屋へと戻った。

 

「いってててて…思いっきしやられちまった。」

 

 マリアになんとか助け起こされ拓実は歩き出した欠けた

 

「大丈夫なの?」

 

 拓実もフラフラだったが、自分で歩けるほどではあった。すると拓実が何かにつまづいてしまった。

 

「なんだ!?うわあああ!!!」

 

 足元にはファラの残骸が転がっていた。

 

「あなたの歌をしょぼいって言ってごめんなさい!剣ちゃん!!」

 

「こいつ…!まだ生きてたのか!?」

 

「あははははははははは!!!!!まるで体が真っ二つになるくらい素晴らしく呪われた戦慄だったわ〜!」

 

「真っ二つにされてるくせに何がまるでだ!」

 

 拓実が構えたがマリアに止められた。

 

「以前にもキャロルが呪われた戦慄と言っていたわ。答えてもらうわ!」

 

「マスターの世界の分解にはどうしても必要なものがいくつかある。そのうちの一つは魔剣の欠片が奏でる呪われた戦慄!私たちオートスコアラーの使命はそれを奏者に歌わせ、体に刻みエネルギーとして収集するのが使命!」

 

「そんな!じゃあ、イグナイトモジュールがお前らの狙いだったってのか!?」

 

「となるとまさか…!」

 

「バカな!エルフナインを疑えるものか!」

 

「とはいえ、マスターが一方的に奴と感覚を共有していたのですわ。同じ素体でできたホムンクルスだからできた芸当です。」

 

 4人は激しく動揺した。

 

「まず、最初の段階でマスターが敗れ、楽譜ができた。それからはあなたたちのイグナイトモジュールを使わせて仕舞えばいい。簡単なお仕事ですわ。」

 

「じゃあ、あの時の段階から俺たちはてめえらの操り人形されてたってのか!?」

 

「マスターの計画は間も無く始まる!もう、誰にも止められない!ハハッハハハハハハハ!!!!!!!」

 

 そう言うとファラは爆死した。

 

「クソッ、緒川さん!直ちに本部に連絡を!」

 

 マリアが緒川を向くと緒川が焦った表情を浮かべた。

 

「ダメです!この粉塵が邪魔をしてるんです!」

 

「周到な!」

 

「マズイぞ!本部はこのことを知らない!もしクリスたちが残ったレイアとかいう奴を倒したら大変やばいことになる!クソッタレ!クリスたち、踏みとどまってくれよ!」

 

 翼たちは敵に勝ったものの、ようやく知ってしまった真実に対し身動きが取れずにいた。それを欠けた月が眺めていた。まるで4人を嘲笑うかのように…

 

 ____________________

 

 ここは深淵の竜宮。翼がファラとの決着をつける数分前_____とある個室に一つの影があった。

 

「花火が上がった…争乱は近い!」

 

 影が立ち上がり、怪しく笑い出した。

 




「ちくしょう…こんな死闘も手の内だったなんて…」

「無理をするな水琴!」

「ここで少し休みましょう!司令に報告する必要があるわ!」

「よし、今近くの部屋に布団を引こう!水琴はそこで寝ててくれ!」

「へい…」

(ん?水琴だけ別の部屋にしたってことは?翼と同じ部屋!?)

第75回 拓実、翼、マリア(in風鳴邸)

ぶっちゃけ今回のセリフ「私は謝らない」とか今回の話にぴったりなんじゃと思って急遽入れました。余計だと思った方々にはお詫びいたします。

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