戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
翌日、響は父親の晄と面会していた。晄はサンドウィッチを悪びれもせず食べていた。
「まず…どうして家族をやり直したいだなんて言うようになったの?なんでデジモンをお父さんが持ってるの?」
響は頬を膨らませながら晄を見た。
「ええっとな、以前月が落ちるとか落ちないとか騒いだ事件があってな。そん時テレビに映ってた少女がお前そっくりだったんだ。以来、お前のことが気になって…もう一度やり直せないかなあって思ってな。それからなんとか生活してたら、その辺の河原でこの灰色のデジヴァイスを拾ったんだ。」
しかし、晄の態度は明らかにやり直す気すら感じなかった。そんな中で響は数年前のライブ事故のパッシングが頭をよぎっていた。
「勝手なのは晄自身分かっているんだ。けど、あの環境は晄自身耐えられなかったんだ。」
シャコモンもサンドウィッチをつまみ始めた。
「だから、頼む!な?またみんなと一緒に…
母さんにそう伝えてくれ!」
その言葉が火に油を注いだのか、響は一緒にいたいときにいなくなったのはお父さんだと言い、これを拒否した。
「そうだよ!あなたがいなくなったことで響は…」
「アグモン…ありがとう…」
(響…珍しく怒ってる…こんな響…見たことない!)
アグモンは珍しく怒りを抱く響に驚いていた。
「やっぱダメか〜!なんとかなると思ったんだけどなあ〜!いい加減時間も経ってるし」
晄は軽口を叩き出し、なおも響の琴線に触れて行った。そして響はドンと音を立ててその場を去った。
「響!」
晄の必死そうな声に振り返った響だったが、次の瞬間言われたのはサンドウィッチ代を払えと言うことだった。それにより響は奥歯を噛み締めながら出て行った。晄はそれでもまあいいかと言い、シャコモンとサンドウィッチを食べ始めた。
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オートスコアラーはファラが奪ってきたレイラインマップを見ていた。かつてナスターシャ教授がバラルの呪詛を起動させる際にフォニックゲインをフロンティアに収束させる時にこのレイラインを用いたのだ。すでにガリィを失った3人の計画は僅かだが動いていた。
「どうやら…ガリィが倒されてしまったようだね。」
その時、キャロルの白の床から黒い影が現れた。
「何者?」
「すまない、すまない。君たちにこの姿を見せるのは初めてだったな。」
黒い影から悍ましい姿をした悪魔が現れた。
「これがこの私…デーモンの真の姿だ!今まであやつらを騙すために姿を見せてはいなかったのだ。」
「そうでしたか…よくぞまあ地味にご無事で」
「おや?ミカはどうした?」
「出かけてますわ。ちょっとした野暮用です。」
「そうか、そうか。ならば変えるのを待つとしよう…今しばらくはSONGたちにも気づかれまい。よもや自分たちが監視されているということがな。フハハハハハハ!!!!」
戻ってきたデーモンと最悪なままの再会を果たし、対話した響と晄。複雑な糸が今絡み合おうとしていた。
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その後SONGによりミカが地下の共同溝に現れたという報告により調と切歌は響と合流した。しかし、響は変わり果てた父により苛立っていた。ひたすら「へいきへっちゃら」と言いながら響は目的地に向かった。普段と様子がおかしい2人は何故か聞いたが2人には関係ないとして響は他人を珍しく怒鳴りつけた。
「ホァット!?せっかく心配してんのにその言葉かよ!?」
キャンドモンが突っかかろうとしたが調に静止された。
「確かに私たちは力になれないけど…」
「ごめん…どうかしてた」
響は俯くながら拳を握った。
(拳でどうにかできるのは簡単なことじゃないのかもしれない…さっさと終わらせちゃおっと!)
「Balwisyall Nescell gungnir tron」
3人もパートナーを成熟期に進化させて地下に降りた。そこにはアルカノイズとミカに加えてモノクロモンにゴーレモンがいた。
(ここから先は限界突破G-Beat Newを聴きながら読むのを勧めます)
「来たな!けど今日はお前らの相手をしてる場合じゃ…」
ミカが笑みを浮かべながら響たちを見ると響が御構い無しに攻撃を仕掛けて来た。
「迷いはないさ 拳に包んだ!」
「まだ全部言い終わってないんだぞ!」
響は鬱憤が溜まっていたのか考えもせずにただ暴れまわっていた。
「やめるんだ響!」
グレイモンも止めようとするが、ミカの呼び出したヴリトラモンに足止めされていた。
「切ちゃん!立花さんが変だ!」
スティングモンはモノクロモンに、メラモンはゴーレモンと戦っていた。
「泣いてる!?」
「つっかかりすぎです!」
「クッソ!一度クールになれって言いてえとこだけど、こいつらが邪魔しやがるから行けやしねえ!」
「だったら!」
調がデジメモリを挿入した。
<アイスデビモン!ピッコロモン!デジメモリオン!>
アイスデビモンとピッコロモンが横からヴリトラモンを攻撃し体勢を崩させた。
「今だ!メガフレイム!」
一度ヴリトラモンを吹き飛ばしたもののすぐに持ち直したためグレイモンは懐に大ダメージを受けた。
(なんでやり直したいって簡単に言えるんだ!壊したのはお父さんなのに!お父さんのくせに!)
響が壁などを破壊しながらノイズを一掃して行った。ノイズもただサンドバックのように倒されるだけだった。
(違う…きっと壊したのは私のせいだ。それは私も同じだったんだ)
冷静さを欠いたために響はミカに強襲されてしまった。
「ほら言わんこっちゃない!大丈夫デスか!?」
切歌が響のフォローに入った。
「歌わないのか?歌わないと死んじゃうぞ!」
ミカが口から炎を吐いた。するとメラモンと調が守りの体勢に入った。
「クソッ!こいつ以前よりも強くなってやがる!吸収すんのが精一杯だ!」
メラモンも決して炎を全て吸収出来るわけではない。調が防いでいるのはその漏れた炎だったが威力は十分だった。
「切ちゃん大丈夫!?」
調の姿を見て切歌はかつてクリスが言った言葉を思い出していた。
「んなわけないデス!大丈夫なわけないデス!」
「切ちゃん!?」
「こうなったらイグナイトで!」
「ダメ!切ちゃんが無茶するのは私が足手まといだから!?」
するとミカの元にファラからさっさと戻るよう言われ、響たちをひとまず吹き飛ばしてから撤退した。
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その後現場の調査が行われたが目立ったのは響の攻撃の後だった。そして緒川は敵が何かを盗むと分かると顔色を変えた。
「調が悪いんデス!後先考えずに飛び出すからデス!」
「切ちゃんの方だって!無茶するのは私が足手まといだからって思ってるんでしょ!」
「2人ともストップストップ!怪我してるんだから大人しくしてないと!」
爽谷がリンゴの皮を剥くのをやめて間に入ろうとした。
「そうだよ、今は八つ当たりしてもダメだよ…」
「クールに行こうぜ!クールに!」
「「ちょっと黙ってて!!」」
「うっ、何だよ…もう…」
爽谷が落ち込んでしまった。
「傷に障ります!そんなことじゃ、イグナイトモジュールの制御ができませんよ!」
エルフナインが2人の間に立った。
「いいのよ、エルフナイン。2人の喧嘩とか結構めんどいから自然に終わんのを待ちましょう?」
「アケミさん、そんな無責任な!」
すると響が自分の責任だと謝り始めた。
「さっきはどうしたんデスか?」
「響はまたお父さんにあったんだ。」
アグモンがデジヴァイス越しから話しかけて来た。
「立花さんの…お父さんに?」
爽谷が立ち上がった。
「ずっと前だと、格好良くて優しかったのにね。嫌な姿を見ちゃった。」
「嫌な姿?」
「自分のしたことが悪いことだって気づいてないお父さんが無責任で、格好悪くて見たくなかった。二度と会いたくない…あんな格好悪いお父さんには…」
未来も自分が悪いと言い始めた。元々立花家が崩れる間接的な要因は皮肉にも未来が原因とも言えてしまうのだ。涙を流していた未来の手をそっと握りしめた響の顔も穏やかではなかった。
部屋を出てもなお調と切歌は険悪だった。エルフナインは敵が現れた時に備えてLiNKERを一本ずつ2人に渡した。このまま響はどうなってしまうのか?そして2人の友情は崩れ去ってしまうのだろうか!?
「はあ…みんななんかに苦労してるが何の役にも立てねえなあ、俺って…」
「んなこと別にいいじゃあねえか。」
「そうは言うけどなクリス、立花さんに翼さんは家庭問題だし調と切歌の2人は痴話喧嘩だ。簡単にはどうにかならないだろ。」
「そうそう、だからほっときな。んなモン自分らでなんとかするしね。」
「けどやっぱりなあ…辛いわあ…」
第68回 拓実、クリス、アケミ(inSONG本部)