戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
ダウルダブラを纏ったキャロルが糸を操って翼とクリスを攻撃した。さらに赤と青の魔法陣を展開させて2人を寄せ付けなかった。
「こんな力がどこにあると言うの?」
友里が呆然としながら見ているとエルフナインがそれは"想い出の償却"だと言った。
「キャロルやオートスコアラーたちの源となるのは人の電気信号を変換し錬成したものです。数百年の時を経て想い出を貯蓄したキャロルは…」
「それだけ強力な力を持っていると言うことね」
友里が緊迫した表情でキャロルを見た。
「マジかよ、化け物かよあいつは…!」
拓実が2人を追い詰めていくキャロルを唖然としながら見ていた。
「力と変えた想い出はどうなるんだ?」
「燃え尽きて失われます。キャロルはこの戦いで結果を出すつもりです」
「その程度の歌で俺が満たせるか!」
翼はキャロルの攻撃を受けてしまった。
クリスは反撃としてGIGA ZEPPELINを放つも、あっさり糸の結界で防がれ風の中に閉じ込められ懐にドリル攻撃を受けた。
キャロルは早くも強化したギアを纏った2人を撃破してしまった。
「まだよ!まだ立ち上がれるはずよ!」
「クソッ!」
「待つんだ!僕らが居てもあいつには勝てない!」
「けどこのままじゃ…!2人が死んじまう!」
「拓実さん、プロジェクトイグナイトの可能性はここからですよ」
モニターにはディアボロモンとベリアルヴァンデモンに苦戦するレイヴモンX3とムゲンドラモンX3が映っていた。
「大丈夫か雪音?」
「あれを試すにはギリギリだ…」
「隠し球があるなら見せてみろ。お前たちの希望は俺が打ち砕く!」
クリスが不安な状況の中笑みを浮かべた。
「付き合ってくれるか!?」
「無論だ!独りでなどいかせん!」
「「イグナイトモジュール 抜剣!」」
<Dainsleif>
するとモジュールが展開し2人の胸部に突き刺さった。
「魔剣ダインスレイフはモジュールのコアであり伝説にもある通りの殺戮の剣です。」
すると2人が黒く禍々しいオーラに包まれた。
「この腹わたが煮え返る感覚は…!」
「あのバカはこの衝動とずっと戦ってたのかよ!」
「ダインスレイフは人の心の闇を増幅し人為的に暴走を引き起こします。それでも人の叡智と力さえあればこの試練を乗り切り、キャロルの錬金術にだって勝てます。」
「叡智と力…」
響たちは成功を祈るばかりだった。
翼が目を覚ましたのはステージだった。
「私は終われない。夢のために…」
しかし、翼が見たのは観客全てがノイズという光景だった。
「私の歌を聴くのは敵だけなのか!?」
そして、彼女は幼い頃に父親でもある八紘に薄汚れた風鳴の道具に過ぎないと突き放され、彼女は身も心も剣となった。すると今度は奏と亡きパートナームシャモンと拓実が現れた。翼は奏と抱擁をかわそうとしたが奏とムシャモンは人形のように崩れ、拓実は翼の手が触れただけで目から血を流したまま立っていた。
「剣は…誰も愛せない!誰も抱きしめられない!誰とも交われない!」
SONG本部では翼とクリスは自らの闇の負荷で危機的状況だった。
「やはりぶっつけ本番では…」
緒川が奥歯を噛み締めながら2人の精神状態の図を見ることしかできなかった。
「それでも信じてください。2人を…!」
「エル!信じる、信じないだと?こんな諸刃の剣でしかないやつで2人に博打をかけさせたのはお前なんだぞ!俺はお前を信じるって言った。けど、いくらなんでもこの状況でその言葉は無責任だろ!?」
拓実がエルフナインに駆け寄り罵声を浴びせた。
「やめなさい!あなたのすべきことはそれじゃない!あなたがするべきことは、あの子たちを信じるだけ…」
「けどマリアさん!」
爽谷も反論した。
「マリアさんの言う通りですよ。確かに拓実さんは私たち装者の中でも1番翼さんを知ってます。クリスちゃんに対しても必死に奔走してて2人が心配なのは十分分かります。けど、こんな状況だから見守るんです。それが私たちにできることです!」
「うっ、分かったよ!一回ガングニールを失った立花さんに言われちゃ説得力があり過ぎだぜ!」
拓実は渋々モニターを見た。
一方で、クリスは教室にいた。彼女は今まで欲しかったものに対して未だに違和感を覚えていた。しかも、せっかくできた後輩も自分の不甲斐なさでボロボロにされたという自己嫌悪に陥り友人や先輩や後輩など求めてはいけないと考えるようになってしまった。そして彼女にはリディアンが破壊された跡と調と切歌が力尽き倒れてしまうヴィジョンが見えた。
(残酷な世界にみんな殺されて一人ぼっちになりたくない…!)
クリスは涙を流しながらもがいたが横から一本の手がクリスをぎゅっと握りしめた。
「すまんな雪音…!お前の手を握っていないと底なしの淵に呑まれてしまうのだ…!」
苦しみながらも翼は笑みを浮かべクリスを見つめた。
「ああ、こっちも危うくあの悪夢に呑まれるとこだった…!」
クリスと翼が互いの手を握りながら痛みに耐えるも、不発に終わってしまった。
「不発?」
キャロルもこれには面食らったのか呆然としていた。
SONG本部ではエルフナインが涙を流していた。
「僕の錬金術では…キャロルを止められない…」
涙を流しそうなエルフナインの手を未来は優しく包み込んだ。
「大丈夫…可能性が尽きたわけじゃないからから」
一方レイヴモンとムゲンドラモンも翼とクリスがピンチの中、必死に立ち回るがディアボロモンとベリアルヴァンデモンに苦戦を強いられていた。
「こいつら…つよい!」
「カタストロフィーカノン!」
「無駄だ。そいつは能力を数倍に引き上げた個体だ。勝てると思うのは大間違いだ。」
キャロルの攻撃で二体は動けなくなってしまった。
「まあ、貴様らが戦えないのなら戦えるようにしてやる」
キャロルはアルカノイズを放ち、市民の攻撃を開始した。
「なんてことを…!」
拓実は背を向いた。
「どこへ行く!?」
弦十郎が拓実を呼び止めた。
「市民の救助です!あの人たちを見殺しにはできねえ!」
拓実は司令室を飛び出して市街地へと向かった。
街ではアルカノイズに人が襲われていた。
「うおおおおお!!!」
アルボルモンにスピリットレボリューションした拓実はメガシードラモンと共に人々をシェルターに避難させた。
「あ、ありがとう!」
襲われた人が逃亡した。
「キャロルめ、もうあいつは倒すしかない…あいつとは分かり合えない!」
キャロルへの憤りを露わにした拓実はスライドレボリューションでペタルドラモンに変わり、アルカノイズを蹴散らして行った。
「サウザンドスパイク!」
背中に生えていた根を地面に這わせアルカノイズを一気の串刺しにしたが、相手が大型のため枝を分解して逃亡した。
「待ちやがれ!」
すると空からミサイルが流れてきた。その上には修復されたガングニールを纏った響が乗っていた。
「なあ、今回もそうだけどミサイルサーフィンとか結構危ないし怖くね?」
「フッ、そんなもの防人にはどうということはない!乗りこなせば怖くない!」
「そうですよ!結構爽快ですよ!」
「ミサイルに乗りたきゃ今乗せてやろうか?」
「いえ、結構です…」
「そういうな。ほら、行くぞ!日々精進あるのみだ!」
(拓実、翼に連行される)
「待って!ちょっと待ってええええええええええ!!!!」
第64回 拓実、翼、響、クリス(inSONG本部)
ミサイルサーフィンは街中でやるのはやばいと思うんだ。