戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
夜の街の一角にベルゼブモンはいた。すると猫が近づいてきた。
「ケッ、物好きだな。にしてもここが人間界か。こんなののどこがいいのねえ……」
ベルゼブモンは魔王としてデジタルワールドでは手強い敵と戦って来た。そして先の大戦を思い出していた。
「どうした? そんなものか?」
ベルゼブモンはエンシャントトロイアモンを難なく追い詰め、エンシャントトロイアモンもすでに重傷だった。
「まだ……だ! お前を野放しにはできない!」
「ヘッ! ほざきやがれ! これで消えな! ダークネスクロウ!」
素早く間合いを詰めたベルゼブモンは、懐に入り込み自らの鉤爪でエンシャントトロイアモンの胴体を貫いた。
「みんな……」
エンシャントトロイアモン地面に倒れるとベルゼブモンは自らのショットガン"ベレンへーナ"で動けなくなった肉体を一方的に攻撃し始めた。
「どうした、それだけか?口だけのようだな
オラ立て! せっかくの戦いが終わっちまうじゃねえか!」
今度はエンシャントトロイアモンを一方的に踏みつけたベルゼブモンだったが背後の光を忌々しく振り返った。
「なにもんだ? てめえは……」
「我が名はデュークモン……
ベルゼブモン、お前はこの世界に存在してはならない!大人しく闇の世界に帰れ!」
「てめえ……俺を否定すんのか? いいぜ、相手になってやるよ!」
ベルゼブモンはエンシャントトロイアモンの手足をバラバラに引きちぎってデュークモンに投げつけた。
「ダブルインパクト!」
ベレンへーナの連射攻撃でさらにデュークモンを攻撃したベルゼブモンだったが、すぐに違和感に気づいた。デュークモンは一歩も動かず棒立ちのままだった。
「てめえ……なぜ攻めない!」
「フッ、貴様の邪悪な力など正義の心には通じない! それを分からせようとしたまで……」
冷静なデュークモンに逆上したベルゼブモンはジャンプした。
「さっきから澄ましやがって……この俺様を舐めてんじゃねえええええ────ー!!!」
ベルゼブモンは鉤爪で攻撃しようとしたがデュークモンの盾に突き刺さった。
「馬鹿め! 至近距離なら……!」
ベルゼブモンが片手でベレンヘーナを抜いた。
「無駄だ! 喰らえ、光の力を! ファイナルエリュシオン!」
「なっ!」
盾から放たれた光によりベルゼブモンは吹き飛ばされた。彼はその時、デュークモンの悲しい眼差しを見てそれ以来デュークモンを倒すことに執着していた。
(何故あいつは俺をそんな風に見るんだ! 何故だ!)
「他の奴らだってロイヤルナイツに負けている!
なのにどうしてもう一度奴らと戦わない!リヴァイアモンのジジイはロイヤルナイツたちともう一度戦えたらしいがわざわざこんなチンケな所を欲しがる価値はあんのか?あいつらはなんで負けて悔しくねえんだ!」
ベルゼブモンの苛立ちはなお増していくばかりだった。
「何故だ……!
何故だあああああああああああああああ────────!!!!!!」
ベルゼブモンの絶叫は夜の街に響いた。
一方、ミカとガリィの卑劣な連携を受けた響は重傷のまま運び込まれた。
「響! しっかりして響!」
そして響は集中治療室に入れられた。
「大丈夫ですよね!?」
未来が翼とクリスに尋ねた。
「大丈夫だ。これしきのことで立花は……!」
「ったりめーだ! こんなんであいつは退場なんかしねえ!」
響がミカと交戦する前に翼とクリスに拓実はプロジェクトイグナイトの説明を聞いていた。
シンフォギアシステムには絶唱とXD(エクスドライブ)モードといった決戦機能がある。しかし、前者は相打ち前提で後者は奇策で戦術には組み込めないと絶望的だった。
「と、ここまであげたのが代表的な決戦機能ですが皆さんはもう1つ御存知のはずです」
「まさか……! 暴走!?」
クリスが驚きながらエルフナインを見たが、エルフナインはそのまま首を縦に振った。
「確かに暴走は装者の心が不安定になった時に起こりうる現象だ。しかしエル……あれは周囲に対して無差別に暴れ回る!そんなのは機能と言えるのか?」
実際過去に響はクリスがカディンギルによって撃ち落とされたときとネフィリムに左腕を切断された時に暴走しているがいずれも周囲を巻き込んでのものであり、他の装者への危害を加える可能性は目に見えていた。
「否!水琴の言う通りそんなものは立花の決戦機能ではない!」
「てめえまさかトンチキなこと考えてんじゃねえだろうな!」
クリスがエルフナインの胸グラを掴んだがエルフナインは至って冷静だった。
「暴走を制御する……それにより純粋な戦闘力向上へと変換してキャロルと戦う。
これこそがプロジェクトイグナイトの真の目的です。そして制御を可能にするのが、この魔剣ダインスレイフ……」
ここで説明を続けようとしたところ、ミカが現れてしまった。もう一度続きを聞くか否かエルフナインが尋ねたが2人は響が倒れたため、一刻を争うのですぐにでも頼むと言いエルフナインはすぐに2人のギアを預かった。
それと入れ違いでマリアたちも帰ってきていた。
「翼! 立花 響は?」
翼は言葉を詰まらせてしまった。
「立花さんはオートスコアラーにやられましたよ。そして今集中治療室に……!」
拓実は奥歯を噛み締めていた。
「そんな! 折角聖詠が歌えるようになったのに……」
響の敗北はマリアたちに衝撃を与えオートスコアラーへの恐怖を高めるばかりだった。
「しかし、エルフナインが強化型シンフォギアの修復を行なっている。それを信じて待つしか無い」
「ああ! それであいつらをスクラップにしてやんよ!」
翼とクリスが扉を見た。エルフナインは早速部屋に入ってギアの修復を始めた。
「現状俺たちはオートスコアラーたちには先手を打たれ負け続きだ。だからこうしてエルフナインくんのプロジェクトイグナイトを推し進めたわけだが……」
「シンフォギア改修となると機密にひっかかりかねませんね」
不安そうな緒川に対して弦十郎は八紘の兄貴の口利きもあってどうにかなったと語った。
「なあ? 八紘の兄貴って誰だ?」
「確かに。司令の知り合いですか?」
「風鳴 八紘__限りなく非合法な実行力をもってして安保理を支える内閣情報官だ。彼をもってすれば普段起こりえない処置をどうにか対応するなど茶飯事なのだ。そして……」
クダモンが一瞬戸惑ったように弦十郎を見た。弦十郎も小難しそうな表情を浮かべていたが、緒川が説明すると言う合図を取った。
「翼さんのお父上であると同時に司令の兄上です」
「司令のお兄さんで、翼さんの……お父さん!?」
拓実の脳裏には弦十郎並みのムキムキな体でひたすら常在戦場と叫びながら体を鍛え、声が檜山 信之な マッチョが頭に浮かんだ。
(司令のお兄さんに翼さんのパパって……ダメだ! 碌なイメージがない!)
頭を抱える拓実をよそにクリスは蒟蒻問答がすぎんだよと言っていたが、翼の顔はあまりいいものではなかった。
「確か私のSONGへの編入を後押ししたのもその人と聞いていたわ。まさか、あなたがご子息だったとはね」
しかし、弦十郎と翼の胸中は穏やかではなかった。その時、モニターにノイズが入った。
「どうした!?」
「わかりません! 何者かがこのネットワークに侵入しようとしています!」
「SONGのネットワークがすごいスピードで抜けられてます! ファイアーウォールを張ろうにも間に合いません!」
藤堯と友里が必死にプロテクトを張ろうとしたらクダモンがため息をついた。
「皆の者、それ以上何もしなくていい。私の友人だ」
「え?」
「すまない、僕いいや私は君たちを脅かすつもりはなかったんだ。謝罪させてほしい」
その時、モニターから青い龍騎士型のデジモンが現れた。
「フッ、お前か。他にマシな入り方は無かったのか?」
「実はネットワークに入ったのはいいんだけど人間界のネットワーク自体が狭かったんだ。だからうっかりそれに引っかかっちゃったって言うか、なんと言うか……」
「誰だてめえは!?」
「かっこいい……」
「ええ!? 何言ってるんデスか調!」
クリスが敵意を露わにする中、調はモニターのデジモンを前に目を輝かせ、切歌は衝撃を受けていた。
「僕、いや私は! ロイヤルナイツ流星の闘士____アルフォースブイドラモン!」
「また新たなロイヤルナイツ……」
「それで何か用でも?」
「うん、単刀直入に言おう。僕と一緒に鍛えないかい?」
「まさかのアルフォースブイドラモン登場だ!」
「うむ、奴はセイバーズに出演した時に今の波動は…っていうセリフしか無かったからなあ…私より扱い悪いんじゃないか?」
「よせドゥフトモン。ガンクゥモンとか今の所アニメの出演とかないんだぞ。弟子のジエスモンやエグザモンはTriとかクロスウォーズでの出番があるのにだ…」
「うわあ…」
第58回 クダモン、ドゥフトモン(in SONG本部)
これでロイヤルナイツが13人中主人公たちと関わったのはスレイプモン(=クダモン)、ドゥフトモン、ジエスモン(=ハックモン)、ロードナイトモン、デュナスモンそしてアルフォースブイドラモンの6人になります。あとの7人もそのうち絡めたらなあ…って考えてます。次回は響以外がデジタルワールドに向かい修行します。とはいえ、ベタモンにアグモン、ハグルモン、ファルコモンは一度デュナスモンにみっちり鍛えられてますけどね。