戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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最近字数が長かったり短かったりで安定しませんが、少しずつGも終わりに近づいていきます。実際G〜GXまでの間のオリジナルストリーが薄ぼんやりと浮かんで来た今日この頃ですが、まずはGを完走させます。


第43話 分裂!FIS!

 マリアたちが東京スカイタワーから戻るとマリアが泣き噦れていた。

 

「この手は血に汚れて…!セレナ…私はもう…」

 

 マリアが泣く横で調、切歌、爽谷は目を丸くしていた。

 

「マム、教えて。何があったの?」

 

 調がナスターシャが問おうとしたがナスターシャは険しい表情で何も言わなかった。

 

「それは僕から、お話ししましょう。」

 

「ドクター?どこに行ってたんです?」

 

 爽谷が部屋に入って来たウェル博士を見た。

 

「ナスターシャ教授は月の落下にて害われる命を一つでも多く救おうなどと言う崇高な理念をアメリカ政府に売ろうとしたのですよ。」

 

「マム、本当なの?」

 

「どうして!どうして僕らに言ってくれなかったのさ!」

 

 爽谷と調がナスターシャの前と横に立った。

 

「それだけではありません。マリアにフィーネの魂が宿ったのもナスターシャとマリアによる狂言芝居だったのです。」

 

「そんな…!じゃあ、他の誰かがフィーネの魂を!?」

 

 爽谷がマリアを見た。

 

「ごめん、3人ともごめん…」

 

「さあね…僕を計画に加担させるためとはいえ知らされなかったあなたたちを巻き込んだこの裏切りは…あんまりじゃないですか?」

 

 ウェル博士が横顔で笑いながら3人とナスターシャを見た。

 

「せっかく手に入れたネフィリムの心臓も無駄になるところだったんですよ?」

 

 そして全員に沈黙が訪れた。

 

____________________

 

「マム、マリア。ドクターの言ってることなんてすべて嘘デスよね?」

 

 切歌が開口一番マリアに尋ねた。

 

「そうだよ。マリアさんが違うなら一体誰がフィーネなのさ?」

 

 そしてマリアの口からナスターシャはアメリカ政府の協力を得ようと接触したことを切歌とワームモンは知った。

 

「けど、アメリカ政府の連中って自分たちが助かろうって言うチート思考だろう?」

 

「ええ…キャンドモンの言う通り弱い人を切り捨てるってことだよ。」

 

 キャンドモンと調も怪訝そうな表情だった。

 

「どうしてなんだ!?どうして信用できないあいつらを頼るんだい?僕らはそんなに信用できないの、マム!?」

 

 ナスターシャは目を瞑りウェル博士を向いた。

 

「あなたはあのまま講和が結ばれると我らの優位性は失われる。だからあの場でノイズや暴走デジモンを放った。違いますか?」

 

 ウェル博士は微笑んでからナスターシャの前に立った。

 

「勝手に僕のデジメモリを奪ったんですね、ドクター!どうして!?」

 

「決まってるじゃないですか!悪辣なアメリカ政府の連中から僕はこのソロモンの杖や君のデジメモリでナスターシャを守ったんですよ?」

 

 ウェル博士はナスターシャにソロモンの杖の先端を向けた。すると調と切歌が敵意を向け攻撃しようとした。しかし、マリアがウェル博士側に立った。

 

「どうして?」

 

「分かったの。決して偽りの気持ちでは世界なんか守れないって。それではセレナの望む世界を築けない!」

 

「マリアさん!あなたには無理だ!優しさを捨てたってあなたには…!」

 

「そうだ、マリア!爽谷の言う通り力ばかりを求めて世界を救ったってお前に訪れるのは破滅だけだ!」

 

 爽谷とブラックウォーグレイモンがマリアの前に立った。

 

「力をもってして世界を変えられるのはドクターのやり方だけ!だったら、私はドクターのやり方に賛同する!」

 

「ふざけるな!」

 

 ブラックウォーグレイモンがマリアに剣幕を浴びせた。

 

「お前はただの優しいマリアなんだぞ!?

 

 そんなお前自身はこんなに苦しい決断をこれでいいの一言だけで言えるのか!?お前はただ自棄になってるだけなんじゃないのか!?

 

 もういい!」

 

 すると、ブラックウォーグレイモンは飛行船を降りどこかへ飛び去って行った。

 

「うわああああああああああああああああああああああーーーーーーーーー!!!!!」

 

 憤怒を込めた雄叫びが辺りに響いた。

 

「マリアさん…ダメですよ…」

 

 爽谷がマリアの手を握った。

 

「僕たちのマリアさんで無くなるなんて嫌ですよ…」

 

「爽谷…あなたは甘すぎる。力でしかもう世界を救えないの!だったら、やさしさなんて…!これが私なの!」

 

 爽谷がマリアを見ると次の瞬間頬をはたかてた。

 

「うわああ!!」

 

 爽谷が倒れたのを切歌が受け止めた。

 

「爽谷!」

 

「そうだよ、マリア。力で弱い人を抑え込むなんて…!」

 

 切歌と調が動揺する中、ナスターシャは冷静だった。

 

「それが…フィーネではなく、"マリア・カデンツァヴナ・イブの決断"なのですね?」

 

 マリアはじっとナスターシャを見たが、わずかに視線をそらした。

 

「どうして…!どうして!?どうして?」

 

 爽谷はマリアにはたかれた跡をさすりながら動揺していた。またもナスターシャが咳き込むと、マリアは一度見てから目を逸らした。

 

「さてと、ナスターシャ教授は静養してください。これから計画の軌道修正もしなければなりませんし、来客の対応もしないと…ああ〜忙しい!」

 

 静養と言っても直せるのはウェル博士だけである。彼は悪い笑みを浮かべながら、部屋を出た。

 

 そして別室の牢獄には未来が捕らえられていた。

 

「響…」

 

____________________

 

 あの時、未来は爆発に巻き込まれる直前に上の階へと移動するマリアと遭遇した。その中で、マリアは妹のセレナと未来を重ね合わせ、彼女に"死にたくないならついてこい"と手を差し伸べ共にあの場を脱出したのだ。

 

 未来の横では、マリアが小さい時にセレナと共に聞いたわらべ歌であるAppleを歌っていた。その手にはセレナの纏っていたギアのペンダントが握られていた。

 

「あの…」

 

「何かしら?」

 

「どうして私を助けてくれたんですか?」

 

「さあね。逆巻く炎にセレナを思い出したからかもね。」

 

「セレナ?」

 

 するとマリアの後ろからウェル博士が現れた。

 

「セレナとは…マリアの妹で今から6年前に亡くなっているんですよ。」

 

 未来は一度ウェル博士にあったためかなり警戒した眼差しを送った。実際、未来が牢に入れられたのも彼の仕業でもある。そのことをマリアに問いただされると彼は計画遂行の一環だと言い、未来に微笑みながら近づいた。

 

「そんなに警戒しないでください。少しお話でもしませんか?私ならきっとあなたの力になれますよ?」

 

 怪しさがバレバレの笑顔でウェル博士と未来は話し始めた。

 

____________________

 

 一方、外では切歌と調が洗濯を行い爽谷はまたも引きこもっていた。マリアがフィーネでないとわかった切歌は次第に自分こそがフィーネだという確信にたどり着いた。

 

(怖いデスよ…私が私で無くなるなんて…)

 

「マリア…どうしちゃったんだろう?」

 

「え?」

 

「私はマリアだから手伝ったの。マリアがフィーネだからじゃない。だって、マリアは私たちみたいな施設で泣いてばかりの子たちに手を差し伸べてくれた弱い人たちの味方だった…」

 

「けど、あの人は変わっちまった。すっかりリバースだ。」

 

 デジヴァイス越しからもキャンドモンが話しかけてきた。

 

「爽谷もショックだったはずデス。だって、マリアが弟のように見てたからこそ、怯えてばかりの頃から少しだけの勇気を出せたんデス…」

 

 その爽谷も体育座りをしながら、泣いていた。

 

「マリアさんはどうして?どうして、僕らを頼らないの?僕らが信用できないの?」

 

 爽谷はマリアたちに出会う前まではナスターシャ以外の多くの人間により冷たい仕打ちをされ、時には他のレセプターチルドレンの見せしめとして虐待されていたこともあった。しかし、マリアの優しさに触れ少しずつ自分を変えられるようになっていった。

 

「姉さん…どうしたらいいの?」

 

 現在も実の姉とは会えず、今までマリアを第二の姉として見てきた爽谷はマリア自身に拒絶され過去のように恐怖に怯えていた。

 

「どうしたらいいのさ…もう何もかも僕の敵だらけだ。敵しかいない…だったら…!」

 

デジメモリを机から取り出した。

 

「調は怖くないんデスか?マリアがフィーネ出ないのなら、私たちがフィーネになってしまうかもしれないんデスよ?」

 

 切歌が調を見ると、調は目を逸らしてわからないと一言だけ言った。すると切歌がその場から立ち去った。

 

____________________

 

 次の日、FISはフロンティアの位置へと向かっていた。なぜか神獣鏡を使わずに___

 

「マムの容体はどうなんデスか?」

 

「少し休んだ方がいい。疲労に加えて病状も悪化している。」

 

「そんな…」

 

 心配する調と切歌の横からウェル博士が現れた。

 

「つまり、のんびりとしてられないってことですよ!月の落下を前に人類を人どころに集めなくては!その旗振りこそが僕らの目的なのですから…!」

 

 爽谷は虚ろな眼差しになりながらウェル博士を見ていた。すると、マリアたちの向かうフロンティア周辺にアメリカの哨戒艦艇が待ち構えていた。

 

「こうなることも全て想定内…!派手にあいつらを葬り去って世間の目をこちらに向けさせるのはどうでしょう?」

 

 ウェル博士が笑みを浮かべながらマリアを見たが、調は怪訝な表情を浮かべていた。

 

「それって、弱者を生み出す強者のやり方…!」

 

 調べが何か言おうとしたがマリアはこれを格好のデモンストレーションとみなし交戦を主張した。

 

「私たちはフィーネ。弱者を支配する強者の構成を終わらせるもの__こうでもしなきゃ世界は動かない。」

 

 そしてマリアはウェル博士のデジヴァイスを使ってホエーモン、キャプテンフックモン、キャノンビーモン、クンビラモン、サゴモン、シェイドラモン、ケンキモン、オクトモン、シーラモン、マリンデビモン、トータモン、アイギオテュースモンの計12体を呼び出した。

 

(こんな世界になるんなら…裏切られるんなら…壊れればいい…こんな世界…最初から壊れてしまえばみんな苦しむ。こうしたらよかったんだ…)

 

 爽谷はマリアを見ていた。彼女はウェル博士にノイズを召喚するように命じ、艦艇を攻撃させた。それは二課に通じられた。

 

「ここからそう遠くない!行くぞ!」

 

「行くぞ、水琴!奴らとの決戦だ!」

 

「はい!決戦の準備を…!」

 

 翼が部屋を出たのに続いて拓実も駆け出した。

 

「私も…!」

 

 響も準備しようとしたが、クリスに止められた。

 

「お前はデジモンだけを出撃させろ!拓実はデジメモリを使う都合上、外に出なきゃいけねえがお前にはそんな必要はないだろ!」

 

 クリスが響のネクタイを掴んだ。

 

「お前はここから…いなくなっちゃいけないんだ…」

 

 クリスは響のネクタイを掴んでいた手を緩めた。

 

「頼んだからな…」

 

 クリスも準備に向かった。

 

____________________

 

 アメリカの哨戒艦艇の上ではアメリカ軍がノイズや暴走デジモンにより追い詰められていた。それをマリアが傍観しており、血が出るほど唇を噛み締めていた。

 

「ねえ、これがマリアのしたかったこと?弱い人たちを傷つけるのがマリアのしたかったことなの?」

 

 すると、爽谷が立ち上がり後方の扉の開閉スイッチを押した。

 

「何をしてるの!?」

 

「もういい…僕らは終わりだよ。こうなったら、何もかも破壊したほうがいい。救済なんて無理なんだよ。多くの弱い人を傷つけてきた僕ら諸共滅んでしまえばいい…!」

 

 そう言いながら、爽谷は10枚のデジメモリを取り出した。

 

<スカルグレイモン!メタルグレイモン!>

 

「何を言ってるんデスか!?」

 

<エアドラモン!エンジェモン!>

 

「簡単だよ。もう僕らはこんな世界を守る必要はない。"小人は始めありて終わりなし"

 

 僕らは最初は良かったけど、結局こんな形になっちゃった。それどころか自分たちでは弱い人たちを守れなかったどころか傷つけて敵を増やしてしまった。もう自分の周りには敵しかいないんじゃないかなって…」

 

<モノクロモン!ガルルモン!>

 

「だったら何もかも壊してみんな苦しんじゃえばいいよ…」

 

 爽谷は虚ろな瞳でデジメモリを挿入した。

 

「もう、未来も何もない世界が僕らの終点なんだよ」

 

「ダメだよ!そんな考えは私たちの望むものじゃない!」

 

<グレイモン!カブテリモン!クワガーモン!>

 

「さようなら…」

 

 涙を流した爽谷は最後のデジメモリを挿入した。

 

「ダメえええええええええ!!!!!」

 

 調べと切歌が叫ぶのも虚しく、飛行船から飛び降りた爽谷はそのまま光に包まれた。

 

<デビモン!フュージョンレボリューション!インフェルノ!キメラモン!>

 

 そして海に飛び込んだ爽谷は次の瞬間、ツノがカブテリモンで髪はメタルグレイモン、腕はデビモンが2本でクワガーモンとスカルグレイモンの計4本、胴体はグレイモン、翼はエアドラモンとエンジェモン、脚部はガルルモン、尻尾はモノクロモンの合成デジモンへとレボリューションした。

 

「キメラモン…!」

 

「怖い…」

 

 調と切歌はもちろんマリアも唖然としていた。しかし、ウェル博士は嬉しそうに見ていた。

 

「彼は自ら死にに行くようですね!

 

 10枚もデジメモリと融合なんて無茶に決まってます!

 

 運が良くてもこの先まともには戦えない!精々いい実験体になってくださいよ!」

 

 本来フュージョンレボリューションはデジモンとの融合を図るためのものだが、2体のジョグレス進化までが安定しており、それ以上融合をすれば負担も倍になるという諸刃の剣だった。

 

「グオおおおおおおおおおお!!!」

 

 キメラモンが雄叫びをあげ、近くにいたケンキモンを素手で握りしめて空中に放り投げ、必殺のヒート・バイパーで消し炭になってしまった。さらに艦艇の上にいたノイズも蹴散らし、半ば暴走状態になっていた。

 

「グオおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 それを見た調も飛行船から降りようとしていた。

 

「危ないデスよ!何やってるのデスか!?」

 

「マリアや爽谷が泣いていたり苦しんでいるのなら…私が助けるんだ!」

 

 切歌の制止を振り切った調はキャンドモンを呼び出した。

 

「お願い!」

 

「任せとけ!」

 

 調のデジヴァイスが薄紫色に輝いた。

 

「Various shul shagana tron」

 

「キャンドモン進化!!メラモン!

 

 メラモン超進化!!デスメラモン!」

 

 シュルシャガナを纏った調とデスメラモンがノイズとキメラモンを止めるために向かっていった。

 

(ここから先は鏖鋸シュルシャガナを聴きながら読むのを勧めます)

 

「調…!」

 

 切歌の肩をウェル博士が掴んだ。

 

「連れ戻したいのなら…いい方法がありますよ?」

 

 ウェル博士が微笑みながら切歌を見た。

 

「首を傾げて 指からするり 落ちてく愛を見たの 拾い集めて 積み上げたならお月様に届くの?」

 

<α式 百輪廻>

 

 頭部のパーツから小型の円盤型のノコギリを発射して調はノイズとデジモンを牽制した。

 

「そお〜ら!」

 

 クサリでアイギオテュースモンを鎖で捕らえたデスメラモンはキメラモンに投げつけた。

 

「大人しくしな!ヘビーメタルファイアー!」

 

 口から放たれた高温の火を放ち、アイギオテュースモンを撃破しキメラモンと交戦した。

 

 キメラモンはデスメラモンにパワー、スピードで勝るものの、体にはクロンデジゾイドのようなコーティングが施されていないため攻撃を受けはしていた。

 

「ヒートチェーン!」

 

 炎を纏った鎖がキメラモンを攻撃した。

 

「タイダルウェーブ!」

 

 すると横から大波を起こしたホエーモンが襲ってきたが、デスメラモンに水は効かずそのまま殴り飛ばされた。

 

「邪魔をすんな!ヘビーメタルファイアー!」

 

 デスメラモンのヘビーメタルファイアーでホエーモンは一度水中へと逃亡した。

 

 調も頭部のノコギリを拡大してノイズを切り刻んで行った。さらに両足の小型のノコギリを回転させ、その勢いとイナバウアーの要領でノイズの攻撃をかわし一気に切り刻んだ。しかし、背後からノイズが襲ってきた。すると、ノイズは背後から真っ二つに切断された。

 

「切ちゃん!よかっ…」

 

 すると切歌は調にLiNKERのようなものを投与した。それにより調の変身が解除された。

 

 切歌がもらったのはAnti-LiNKERというもので、以前病院で響たちを苦しめたのもこれである。その効果は適合係数を無理やり引き下げて強制的に変身を解除するものだった。

 

「どうして…?」

 

 調が見たのは悲しそうな雰囲気を漂わせた切歌だった。




「響が帰って来たら、一緒にごはんを食べよう。それから一緒にお風呂に入らなきゃね…明日も早いから早く寝ないと…」

(なんなのこの子?怖い!)

「早く帰ってこないかなあ…響…」

(怖いわ!こんな怖い子が融合症例第一号の友人なの!?怖いわ、セレナ…)

第39回 未来、マリア(inFIS飛行船)

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