戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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第41話 踏み躙られた理想!すり抜ける手!

 響たちは緊急手術の後に弦十郎からレントゲン図で新たな臓器が形成されていることを知った。

 

「じゃあ…これが…」

 

 拓実が唖然としながら赤い塊を指差すと弦十郎が首を縦に振った。

 

「ああ、これが響くんの爆発力の原因であると同時に命を蝕んでいるものだ。」

 

 それを聞いた響は皆を心配させまいと笑顔で振る舞おうとした。

 

「いい加減にしろ!"なるべく"だと!?寝言を口にするな!今後一切の戦闘を禁止しなければ、死ぬんだぞ立花!」

 

 翼の目の涙を見た響は辛そうな表情に戻ってしまった。

 

「やめとけって!このバカだってそんくらいはわかってんだよ!」

 

 翼はそのまま部屋を出て、アーティストとしての次のスケジュール場所に向かった。

 

「翼さんは一度奏さんを喪ってるから、きっと立花さんも喪いたくないって思ってるんだ。そこはわかって欲しい。」

 

 拓実が翼の後ろ姿を見ながら響に言った。

 

「まっ、医療班も目下全力で治療法を探している。安静にしとけば、治療法なんていくらでも見つかるさ!」

 

 弦十郎が響きの頭にポンと手を置いた。

 

「はい!」

 

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「出鱈目?」

 

 次の日、二課本部では友里と藤堯がNASAの発表した月の公転軌道には僅かながらの誤差があることを弦十郎に伝えた。

 

「となると、アメリカ政府が今後100年に渡ってルナアタックによる公転軌道のずれ関係は問題ないという公式見解に疑念が生じ鵜呑みにできないというわけだが…」

 

 ロードナイトモンが腕を組みながら弦十郎を見た。

 

「ああ…FISのような連中がいるんだ。遠くない未来に月は落ちてくるのだ…」

 

 そして、東京スカイタワーではマリアとナスターシャがアメリカ政府に対して協調路線を敷くために向かった。そのことをマリアは知らなかった。

 

「マム…どうして私は新生フィーネを演じる必要がないの?」

 

「分かったのです。私たちのすることは所詮テロリストの真似事に過ぎません。本当に大切なことは月がもたらす最悪な被害を最小限にとどめることです。」

 

「つまり、もうマリアたちでは無理だということか?」

 

 ブラックウォーグレイモンがデジヴァイス越しにナスターシャに質問するとナスターシャは首を縦に振った。

 

「あの子たちをこれ以上…傷つけないために…」

 

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 一方、留守番となった調はカップラーメンにお湯を入れ、切歌はフィーネになり自らの魂が塗り潰されるのかという不安に怯えていた。

 

(私が私で無くなるんデスか?)

 

「切ちゃん…僕はどんなになっても切ちゃんについて行くから…」

 

 ワームモンが切歌を見つめた。

 

「ワームモン…ありがとう。」

 

「切ちゃん〜!」

 

 エプロンを着た調とキャンドモンがやって来た。

 

「あれ、爽谷はどうした?」

 

「ああ、あそこデス。結構黄昏てるデス!」

 

 爽谷は近くの湖畔に座りながら、湖を見つめていた。

 

(僕はこの先どうなるんだろうか?僕らは許されないことを数多くした。フロンティアが浮上しなかったから活動を辞めたって…行く場所なんかないんじゃ…)

 

「爽谷〜ご飯の支度が出来たデス!」

 

「うん!」

 

 爽谷が立ち上がった。

 

「そういえばドクターは?」

 

「あんな奴のことはいいデス!それよりも調、今日のメニューはなんデス?」

 

「ヘッヘッ!聞いて驚け!本日のメニューは…!」

 

「298円…!」

 

 調が2人にピースした。

 

「ごちそうデス!」

 

(高くない?値段が…)

 

 爽谷が苦笑いを浮かべた。

 

「あれ?」

 

「どうしたんデスか、爽谷?」

 

「僕のデジメモリが無いんだ…カラテンモンにギロモン、パロットモンの3枚だ。」

 

「そんなことより早く食べるデス!冷めちゃうデスよ!」

 

「うん…」

 

____________________

 

 マリアたちが米国政府の使者と講和を結ぼうとする中、スカイタワーには響と未来が遊びに来ていた。しかし、響は翼に死ぬと言われ思い悩んでいた。

 

(戦えば死ぬのは当然のことだ。けど…いつからかそんなことが麻痺していたんだ。戦えない私って、誰からも必要とされない私なのかな?)

 

 その時、響が顔に冷たい缶を当てられた。

 

「わひゃあああっ!!」

 

 その大きな声にカップルや子供が目を丸くしながら響と未来を見ていた。

 

「大きな声出さないの。」

 

「だ、だ、だって〜こんなことされたら誰だって驚くよね、アグモン?」

 

「う、うんそうだね。」

 

「でも響が悪いわよ?未来ったら響を心配しっぱなしだものね〜」

 

「こら、ピヨモン!まあそうだけど…」

 

「そうだね!スカイタワーを満喫しないと!」

 

 響と未来が走り去るのを近くで拓実が見ていた。

 

「どうして、コソコソするんだい?拓実?」

 

「立花さんがまたいつ無茶をしでかすかはわからないだろ?

 

 いざとなったら俺たちが戦うんだ。翼さんやクリスに俺を結ぶのはあの人なんだ。あの人が死んじまったら、俺たちは共に戦えなくなるかもしれない。」

 

 ベタモンと共にスカイタワーに来てすぐに響と未来を目撃し、後をつけていたのだ。

 

「そっか、でも拓実…これじゃストカーじゃない?」

 

「大丈夫だ。向こうは気づいちゃいないさ。行くぞ!」

 

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 一方、マリアとナスターシャはアメリカ政府との交渉を終えたが彼らは異端技術に関わったとしてナスターシャとマリアに銃を構えた。

 

「銃は歌よりも早く、躊躇なくあなたの命を奪う。」

 

「最初から取引に応じる気は無かったと…!」

 

「必要なものは手に入った。あとは…不要なものを片付ければいい…」

 

 すると飛行型ノイズが現れ、使者であるエージェントたちを次々と炭化させていった。

 

 そのノイズたちが現れるのを近くのカフェでウェル博士はそれを冷ややかに横目で見ていた。

 

「誰も彼も…勝手なことばかり…」

 

「そうだ…滅ぼせ!お前の嫉妬を煽るものたちを!」

 

 宝玉から声が響いた。ノイズは皆、ウェル博士が呼び出したものでもあったのだ。

 

「Granzizel bilfen gungnir zill」

 

(ここから先は 烈槍ガングニールを聴きながら読むのを勧めます)

 

「この 胸に宿った!信念の火は 誰も 消しことはできやしない 栄光のBraze!」

 

 マリアのアームドギアで目の前のガングニールをナスターシャに近づけないようにして部屋のドアを爆破で吹き飛ばした。

 

 その衝撃は下の階の一般人にも伝わり、外にノイズが入ると分かったものたちはパニックに陥りながら避難していた。

 

「クソッ!一旦外に出ないとかよ!」

 

 拓実も急いで地上に出ようとした。

 

「こうなったら、これで!」

 

<オオクワモン!アトラーカブテリモン!デジメモリオン!>

 

「こちら拓実!ノイズが現れ目下交戦中!場所は東京スカイタワーです!」

 

 二課に連絡した拓実は階段を降りた。

 

 響も戦いに行こうとしたが、未来に止められた。

 

「だめ!」

 

「未来…でも、行かないと!」

 

「放さない!響を戦わせない!遠くに行って欲しくないの!」

 

 すると、パロットモンが攻撃を仕掛けようとしていた。

 

「お母さん、どこ〜?」

 

 近くで少年が泣いて入るのを見た2人はデジヴァイスを構えた。

 

「お願い、アグモン!」

 

「ピヨモン!」

 

 2人のデジヴァイスが輝いた。

 

「アグモン進化!!グレイモン!

 

 グレイモン超進化!!メタルグレイモン!」

 

「ピヨモン進化!!バードラモン!

 

 バードラモン超進化!!ガルダモン!」

 

 アグモンとピヨモンが窓を突き破った後に進化したため、メタルグレイモンとガルダモンによりノイズの数は減らされそのまま空中戦にもつれ込んだ。

 

「ミョルニルサンダー!」

 

 パロットモンの頭部の電撃を受け、ガルダモンは苦戦を強いられていたがデジメモリで現れたアトラーカブテリモンとオオクワモンにより助け出された。

 

「これは、デジメモリの!?」

 

「ホーンバスター!」

 

「シザーアームズΩ!」

 

 両者の技がパロットモンに直撃すると、姿を消した。

 

「今なら!シャドーウイング!」

 

 ガルダモンのシャドーウイングを正面から受け、パロットモンはデジタマに戻った。

 

____________________

 

 上の階ではカラテンモンが現れマリアを攻撃しようとしたが、ブラックウォーグレイモンにより外に弾き飛ばされた。

 

「貴様ら、よくも!ガイアフォース!」

 

 暗黒のガイアフォースによりノイズとカラテンモンは一撃で倒された。

 

 その様子をウェル博士はニヤニヤ笑いながら見ていた。マリアもノイズを倒しながら脱出を試みるも、アメリカの特殊部隊が現れ上からの脱出を余儀なくされる。特殊部隊をマントや蹴りで打ち倒して行った。

 

「たがために この声 鳴り渡るのか? たがために この歌は あればいいか?」

 

 マリアは階段を蹴飛ばして上の階へと向かった。

 

 その後頃、響とクリスは泣いている少年をスタッフに預け避難しようとしたが、ノイズの攻撃で上の階の床が崩れたことで外にいる拓実からでも煙が立ち込めているのが分かった。

 

「クソッ!遅かったか!ベタモン!」

 

 拓実がデジヴァイスを構えるとベタモンがジャンプした。

 

「ああ!!ベタモン進化!!シードラモン!」

 

 シードラモンは飛行型ノイズを締め上げ、アイスアローで次々と倒して行った。

 

「どこだ?どこかにウェル博士がいるはず…!どこだ!?」

 

____________________

 

 上の階へ逃亡を図るマリアだったが、一般人がアメリカの特殊部隊に射殺されるのを横で見ているとマリアはそれを見て震えていた。

 

「マリア…」

 

「…のせいだ…」

 

 ブラックウォーグレイモンと特殊部隊もその場に現れた。

 

「おい、マリア!逃げるぞ!おい!」

 

「すべては、フィーネを背負いきれなかった私のせいだあああああああ!!!!」

 

 己への怒りが爆発したマリアは特殊部隊をマントで吹き飛ばし、蹴りで歯が折れるまで攻撃しさらにアームドギアで2人まとめて叩きつけた。

 

「マリア!なんてことを!」

 

 ブラックウォーグレイモンが詰め寄るとマリアは涙を流していた。

 

「マリア…」

 

 ナスターシャもそれを悲しそうに見ていた。元々、彼女が講話を結び月の落下を阻止しようと動いた。しかし、ウェル博士が妨害しためにマリアをさらに辛くさせてしまった。勿論ノイズはウェル博士のものだとは知る由もないが。

 

「ヒイイ…」

 

「いや!助けて!助けて!」

 

 近くにいた一般人を見てマリアは"うろたえるな!"と声を掛け逃げるよう言った。そしてライブ会場でも言った"うろたえるな!"は自分自身に言ったことだと痛感した。

 

「もう迷わない!」

 

 するとマリアはアームドギアの先端を回転させて、天井を突き破って上の階へと避難した。

 

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 一方、響と未来は一命を取り留めてはいたものの近くの床が崩落し響が落ちそうな状態になってしまった。メタルグレイモンもガルダモンも敵のデジモンやノイズから一般人を守るのに手一杯で響と未来を助けに行けなかった。

 

「未来!ここはもたないから手を離して!」

 

「ダメッ!私が響を守らないと!」

 

 未来は必死に響の手を掴んだ。それを見た響は優しく微笑んだ。

 

「いつか私が本当に困っている時、未来に助けてもらうから…」

 

 すると未来も涙を流し、自分も守りたいのにと告げた。そして未来の手をすり抜け、響は地上に落下してしまった。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

「あれは!」

 

 拓実は響の姿をようやく目撃したと同時に響が激しい衝撃波を生じて地面に着地した。辺りを見回していた響だったが、すぐに上を向いた。

 

「待ってて未来、今行くから!」

 

 すると未来のいたエリアが爆発した。それを見た響は唖然としてしまった。

 

「未来ーーーーーーーーーーー!!!!!」

 


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