戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
デジメモリは今回暴走デジモンを倒して出来たデジタマから得たデータの一部となり、デジタルワールドにあるともしかしたらまた暴走デジモンが増えるのを考慮し人間界で保存しています。
それから一ヶ月後、ツヴァイウイングのライブが行われようとしていた。拓実は会場の楽屋にいた。表向きはライブだったが、本来の目的は完全聖遺物ネフシュタンの起動である。チケット売り場では、多くのファンが集まっていた。
「ねえ、どこなの未来? 私もう会場だよ〜?」
少女は携帯で連絡していた。
「ごめんね響。急に山形のおばさんが怪我しちゃったみたいなの。それで急遽行かなきゃいけなくなっちゃって……」
「ええ!? そんな……私初めてなのに」
少女__立花 響は親友の小日向 未来にツヴァイウイングのライブに誘われていたが結局、1人で会場に入ることになった。その途中、誰かとぶつかった。
「ああ、すみません」
「いいや、大丈夫。ごめんね、余所見してたわ」
ぶつかった少年__拓実は走り去っていった。
「あの人……同い年かな?」
その様子を闇の神殿から悪魔の風貌のデジモンが伺っていた。
「おめでたいものだな。これから悪夢の地獄絵図になるというのに……フハハハハッ!!」
そのデジモンはデビモン__クワーガーモン、モジャモン、シェルモンといった暴走デジモンを呼び出していた存在である。
そんなことも知らずに奏と翼は開場を待っていた。
「この時間だよねえ……なんていうか、緊張するじゃん?」
奏が退屈そうにコンテナに座った。
「ったく、こちとら早く大暴れしたいんだってのに……」
「うん、そうだね……」
奏が翼に顔を近づけた。
「もしかして、緊張してんの?」
「当たり前よ! だって、櫻井女史が言ってたでしょ? 今日は……大切な日だって……」
そんな元気のない翼は次に額に受けたのは奏のデコピンだ。
「っ!」
「真面目だねえ〜。そんなに真面目じゃあ、そのうちポッキリと剣、折れちゃうよ」
「ここにいたのか2人とも」
弦十郎と拓実が現れた。
「おお! 旦那に拓実か」
「2人とも、頑張って。人気急上昇のアーティスト名で見られるライブなんざこの瞬間以外ないですよ!」
サムズアップをした。
「おう、ステージの上は任せなッ!」
「分かってるだろうが、今日の結果が世界の運命を左右するんだ」
「了子くんからか」
弦十郎の携帯がなった。
「どうも〜櫻井 了子でーす! 準備万端よ!」
「司令、俺はここにいるんで」
「ああ、いざという時は君に任せたぞ」
「任せてください。俺だって防人なんですから!」
弦十郎は去っていった。
「うっし、あたしらはあたしらのことをするよ」
奏が張り切るが、翼はさっきとまるで変わらなかった。
「はあ……ったく。なんて顔してんのさ。あたしは翼の相棒だよ。そんなんじゃあたしが楽しめないよ」
「ああ、そうだぜ。出なきゃ俺らを始めとした翼さんのファンも楽しめませんぜ」
柱にもたれていた拓実も言った。
「ああそうさッ! 私たち両翼揃ったツヴァイウイングはどこまでも遠くまで行ける」
「そしてどんなものも超えて見せる!」
翼が顔を上げた。
そして幕が開き、イントロが始まった。
(以下、逆光のフリューゲルを流しながら読むのを勧めます)
響はペンライトを折った。
「イエイ!」
会場の興奮度は一気に高まっていった。
「イイねえ! イイねえ!」
観客席と異なる場所で拓実も興奮しながらライブを観ていた。
翼と奏はファンを前に楽しそうに歌っていた。そして一曲目が終わった。
「まだまだ行くぞッ!」
一方、司令室ではネフシュタンの起動は順調に進んでいた。
「ふう、どうやら成功のようね。お疲れ様」
しかし、破滅が迫っていた。
「司令、太変です! 上昇するエネルギー内圧により制御が持ち堪えられません! このままでは……聖遺物が暴走してしまいます!」
「なんだと!?」
そして破滅の狼煙である爆発が起こった。地上のライブ会場でも、爆発事故で狼狽えていた。
「これは……!」
拓実は緒川に通信機で連絡した。
「緒川さん、今すぐ放送で避難を呼びかけてください! 嫌な予感がする!」
「分かりました。気をつけて!」
会場がざわついていた。
「そうだ、司令室ッ!」
急いで司令室に連絡を取ったが誰も応答がなかった。
「くそッ、最悪だッ!」
ステージの上にいた奏たちは顔を険しくしていた。その時、放送がなった。
「ただいま、爆発事故が発生しました。ライブは中止です。皆さん、落ち着いて避難を……」
その声は途切れてしまった。一部は避難したが、入り口で詰め合うことになった。
「ノイズが来るッ!」
そしてそこから亀裂が発生し、ノイズの大群と、暴走デジモン__メカノリモン、トゲモン、メラモン、ヌメモン、サンダーボールモン、バケモンが現れた。
「我が名はデビモン! 愚かな人間よ、ひれ伏せッ!」
「ヒイイ!! ノイズに暴走デジモンだ!」
デジモンにより多くの人間が怯える中、ノイズが人を襲い続けていた。
「クソッタレ、最高のステージをぶち壊しやがってッ!」
ベタモンが舞台から現れるとデジバイスが水色に輝いた。
「ベタモン進化! シードラモン!」
ステージに現れたシードラモンは人々を守りながらたった一体で守っていた。
「アイスアロー!」
ノイズを蹴散らして行くが、メラモンが立ちふさがった。
「バーニングフィスト!」
シードラモンの腹部が焼けてしまった。
「頑張れシードラモン!」
拓実も辺りを見回すがとても避難誘導できるような状態ではない。
ステージで奏と翼がその様子を見ていた。
「行こう、拓実が戦っているんだ。この場で槍と剣を携えてんのは私たちだけだッ!」
「でも、司令からは何もッ!」
奏は飛び上がり、聖詠を唱えた。そしてガングニールを纏い、ヌメモンとノイズの大群に向かって行った。
(以下、君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデを聴きながら読むのを勧めます)
奏は槍を投擲し、ヌメモンとノイズを薙ぎ払った。
<STARDUST∞FOTON>
翼も天羽々斬を纏い、戦場に向かった。
「翼! 我らも特訓の成果を発揮だッ!」
「ええッ!」
翼の意思でデジバイスが青く光った。
「コテモン進化、ムシャモンッ! 切り捨て御免ッ!」
ムシャモンがメカノリモンを真っ二つに切断しながら駆け抜けた。
「よし来た! これを試すかッ!」
<クワガーモン! デジメモリオン! >
倒したデジモンのメモリをクダモンにより解析してできたデジメモリは一時的にデジモンを召喚し、技を放つのだ。
「シザーアームズ!」
大型のノイズを倒しながら、デビモンに向かって行った。
「愚かな。デスクロー!」
伸びた腕がクワガーモンを貫いた。
「だったらッ!」
ムシャモンも攻撃したが、弾かれた。
「キリがねえ!」
拓実が悔しがった。
奏と翼たちが敵を倒し続けている間、司令室ではデジモンたちによる救護で手一杯だった。
「すまない。みんな」
「ええってことですわ」
藤堯のパートナーであるテントモンと友里のパートナーカメモンも他の研究員たちの救助に追われていた。
「あれは……ネフシュタン? ネフシュタンが光っている?」
その時、弦十郎の目の前が崩れ、ネフシュタンが見えなくなってしまった。戦いの様子を響は唖然としていた。
「何これ?」
奏は槍で竜巻を発生させた。
<LAST∞METEOR>
しかし、奏のガングニールの色が褪せた。
「時限式じゃここまでか!」
その時、響のいた床が落ち、彼女の元にノイズが近づいた。しかし、奏がなんとか駆け付けノイズを倒した。
「駆け出せ!」
一方、翼はサンダーボールモンを撃破しノイズの討伐に当たり、ムシャモンはデビモンと、シードラモンはメラモン、トゲモンに苦戦していた。
「だったら! ムシャモン超進化────ッッ!!」
ムシャモンが光に包まれ、顔が三つ腕が6本の阿修羅のような姿に変わった。
「アシュラモン!」
「完全体だと!? おのれえええッ! デスクロー!」
デスクローを受け止めたアシュラモンはデビモンを投げ飛ばした。
「喰らえ! 阿修羅神拳ッ!」
アシュラモンの一撃でデビモンは腹に風穴を開けられはしたが、まだ生きていた。
「甘いッ! デスクロー!」
「ぐわあああ!」
アシュラモンは背後から攻撃を受けた。
「くそッ! こうなったら!」
やぶれかぶれのデスクローは響を襲おうとしたが、奏がそれを防いだ。しかし、ノイズの攻撃を受けた奏は適合係数が下がる中、攻撃を防いでいた。
そしてその破片が響に突き刺さった。それをみた奏は青ざめて響に近づいた。
「おい死ぬなッ! お願いだ。目を開けてくれッ! 生きるのを諦めるなッ!」
必死に叫ぶも意識は朦朧としていた。しかし、すぐに瞼を開いた。
「よかった……」
しかし、アシュラモンはデジバイスに戻り、シードラモンはメラモンをやっとの事で倒した状況で劣勢に立たされていた。
(私はもうすぐ死んじまう……こんなに傷ついちまった。こうなったら……)
奏は槍を構えた。
「いつか……心と体を全部空っぽにして思いっきり歌ってみたかったんだよな。今から、とっておきのをやるよ。私の命の唄___絶唱を……」
(絶唱? なんだろう……? 歌が……聞こえる?)
響の意識は落ちようとしていた。
(そうさ、命を燃やした私の歌だ)
そして奏は唄を口ずさんだ。
「絶唱!? なんじゃそりゃ!? そんなの聞いてねえぜッ!」
人の避難を勧めていた拓実は入り口に戻った。避難はある程度進んでいたがパニックに陥った人々により大混乱となっていた。
「ダメ、歌ってはダメッ! 奏ッ!」
そして唄を歌い終わった奏の口から血が垂れた。
「それがどうしたァ! 全軍突撃ッ!」
デビモンの指示でノイズやヌメモン、バケモンの大群が襲いかかったが次の瞬間生じた波動によりすべてのノイズは塵に、デジモンはデジタマに変化した。
「奏! 奏!」
翼が駆け寄った。
「奏さん! 奏さん!」
拓実もその場に戻ってきた。
「よう……どこだ? 翼、拓実……よく見えないや。悪い……もう歌えないみたいだ」
「奏!」
翼は涙を流していた。
「そんなこと言うな! 今、救急車を呼ぶ! だから待っててくれ!」
拓実が通信機で救急車を呼ぼうとしたが、繋がらなかった。
「どうして!? そんなの言うなんて奏は意地悪だ……!」
「だったら、翼は泣き虫で……弱虫だ!」
「ちきしょう! 繋がんねえ!」
「お願い! 私と歌ってよ! これからも!」
「なあ……知ってるか? 翼、拓実……思いっきり歌うと、腹が減る……みたいだぞ……」
涙を流し、瞼を閉じた天羽 奏は塵となって消えた。
「奏ええええええええええええ!!!!!」
泣き叫んだ翼の声が木霊した。
「嘘だろ……嘘だ! 嘘だそんなこと! 嘘だあああああああ────────!!!!!」
拓実が叫んだ。
「ふう、死ぬかと思ったぞ! 全くたかが人間の分際で苦しめおって。実にお似合いの最後だ。まったく! まあ、貴様らだけでもいいか死んでもらうのはなあ……」
デビモンが瓦礫を退かして現れた。彼は絶唱の時、とっさにメラモンとトゲモンを呼び出し盾として使い捨てにしたのだ。
「うるせえよ…」
「何!?」
「奏さんがどんな思いで歌ってきたのか……知らないで踏みにじった奴が奏さんを笑うなよ! 奏さんは多くの人を歌で笑顔にしたいって思ってたんだ。
けど、その瞬間が終わっちまったんだ……それを笑ってんじゃねえッ!!」
拓実が涙を流しながらデビモンを睨みつけた。
「行くぜ! シードラモン……!」
「おう!」
「うおおおおお!!!!!!」
ボロボロのシードラモンが立ち上がった。するとデジバイスが水色に輝いた。
(以下、Brave Heartを流しながら読むのを勧めます)
「シードラモン! 超進化あああああああああああああ!!!!!!」
シードラモンが水に包まれた。そして中から赤いボディで雷のような形をした角を生やしたシードラモンが現れた。
「メガ……! シードラモン!!!!」
「バカな!? 完全体が2体だとおおおお!?」
デビモンがうろたえた。
「奏さんを安らかに眠らせるためにあいつを倒すぞ!」
「おのれえええ!! デスクロー!」
デスクローを放ったがメガシードラモンには通じなかった。
「デスクロー! デスクロー! デスクロー! バカな……何故だ!? 何故進化したんだ?」
何度もデスクローを放ったが、メガシードラモンには通じなかった。
「お前は人の夢を踏みにじった。そしてそれを貶め、彼女の大事な人を悲しませた。これは、その罰だ! 行け、メガシードラモン!」
「ヒイイイイイイイ!!!」
デビモンは飛び去ろうとした。
「サンダ────!!! ジャベリン!!!」
ツノから放ったイナズマが逃げ出したデビモンに直撃した。
「うぎゃああああああああああああああああ────────!!!!!」
デビモンはデジタマに変わり、パワーを使い果たしたメガシードラモンもデジバイスに戻った。しかし奏はチリとなってしまい多くの人が犠牲になった。サイレンがあちこちから聞こえる中彼と翼はただ涙を流すだけしかできなかった。
「ちきしょう……ちきしょう! ちきしょう! ちきしょう! ちきしょう! ちきしょおおおおおおおおおおおおお──────!!!!」
会場は翼の涙と拓実の叫びで包まれた。しかし、この時2人は知らなかった、天羽 奏は最期に大きな希望である小さな命を救ったことを……
病室で立花 響は目覚めた。
「私……生きてる?」
そしてもう一度響は眠った。
過去最多の5000字越えです。今回、奏さんの死にはデビモンがいいかなと思いデビモンを出しました。そして奏さんの死で翼さんと拓実は一度は出来た完全体進化が出来なくなります。
では、CM風あとがきです。
「わいが出てくんのが鬱回ってどういうことや!」
「なんで奏が死ぬ時に我が進化したのだ!」
「そうだよ!製作陣に行こうぜ。講義だ!」
「僕も喋ってないじゃないか!」
「「「「おー」」」」
第4回 テントモン、コテモン、ベタモン、カメモン(in現在の二課本部)