戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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今回、前回重症どころじゃないダメージを負った響とその代償です。タイトルはG本編のタイトルの考察から思いつきました。


第37話 残酷な軌跡と奇跡の交差点!

 ウェル博士が馬鹿笑いをする中、響の胸のアザらしきところから光が反射した。

 

「何が起こってるんだ!?」

 

 拓実もモニターでその様子を恐る恐る見ていた。そして響は黒い影に包まれていた。

 

「あれは!?」

 

 メタルグレイモンがそれを見ているとヴェノムヴァンデモンに殴り飛ばされ、気絶してしまった。パートナーデジモンは全員ヴェノムヴァンデモンの足止めを受け、響たちを助けに行けなかった。

 

「そんな!?」

 

 翼もあっけにとられる中、ウェル博士は唾を飲み込み、暴走した響を見た。暴走した響はギアのエネルギーを腕の形に固定させた。そして食いちぎれた腕を再生させた。

 

「クッ!ネイル…!」

 

 スカルサタモンは必殺のネイルボーンを放とうとしたが響が一瞬で獣のように迫ったため、懐に放った一撃で吹き飛ばされた。

 

「なんだって!

 

 仮にも完全体のジョグレス進化したスカルサタモンなのぃいいいいいいいいいーーーーーーー!!」

 

 爽谷は空中からかかと落としを受け、その場に倒れるとなおも響のパンチを受け、レボリューションが解けた。

 

「ぐはっ…」

 

「やめろ、立花!生身の人を傷つけるな!」

 

「クソっ!このままじゃまずい!!」

 

<ゲコモン!エレキモン!コンバート>

 

 響を足止めさせるために拓実はゲコモンとエレキモンを呼び出した。

 

「クラッシュシンフォニー!」

 

「スパークリングサンダー!」

 

 響は一瞬動きを止めたが、すぐにエレキモンとゲコモンを蹴り飛ばした。そして次にネフィリムの腹部を殴り飛ばした。

 

「や、やめろーーーー!!ネフィリムはこれからの未来に大切なものなんだ!それを…それをおおおおおおおおーーーーー!!!!」

 

 喜びから一転してウェル博士は苦悶の表情で響を見ていた。ネフィリムも反撃するも響の重い一撃を何発も受け、スタミナがほぼ切れそうだった。

 

「ぐぎゃああああああああ!!!!」

 

 錯乱したウェル博士がノイズを複数呼び出し、合体させた。合体ノイズは響を飲み込むが体内で連続攻撃をされたため、内側から砕け散った。

 

「こ…怖い…こんなに怖いなんて…」

 

 爽谷は恐怖で足がすくんでいた。

 

「ヴェノムヴァンデモン!」

 

 ウェル博士はヴェノムヴァンデモンに響を攻撃させたがパンチで片腕を貫き、その勢いで逃亡したネフィリムに対して馬乗りの姿勢になった。そして体に腕を突っ込み、ネフィリムの心臓らしきものを無理矢理引きちぎって投げ捨てた。

 

「ぐおおおおおおわああああああ!!!」

 

 ウェル博士は完全に恐怖を覚えていた。

 

 さらに止めと言わんばかりに右腕からガングニールの槍に似たものを生やし、ネフィリムを切り裂いた。その衝撃で周囲が大爆発を起こした。それにより、ヴェノムヴァンデモンや他のデジモンが吹き飛ばされた。

 

____________________

 

 その衝撃はマリアたちFISが飛行船を停泊させるところにも届いた。マリアが耳をふさぐ中、調と切歌、ナスターシャが暴走した響に慄いていた。

 

「生体の機能不全が聖遺物の制御不全を起こすとは…」

 

 するとナスターシャが咳き込んだ。病の身であったナスターシャを治療できるのはウェル博士だけだったが、その博士は今ここにはいなかった。むしろ彼は今、暴走した響から悲鳴をあげながら逃げていた。まるでノイズから逃げる人のように…

 

 すると、響は爽谷に目をつけた。

 

「やだよ…やめてくれよ!」

 

 爽谷はデジモンに変身できないほどの恐怖心を覚えていた。

 

「分かったよ!もう脱走しないから!頼むよ、ぶたないで!やめて!」

 

 響が攻撃しようとしたが、翼とクリスに止められた。

 

「もういい…もういいんだ立花!」

 

「お前、黒いのは似合わないんだよ…」

 

 すると眩い光を放ち、響は元の姿に戻った。

 

「ああ…あああ…ぶたないで…いい子になるから、ぶたないで…」

 

 爽谷は地面を這いながらその場から逃げた。

 

「立花!おい立花!」

 

 翼が響の違和感に気づいた。なんとネフィリムの食いちぎられた左腕が元通りになっていたのだ。

 

「立花さん!」

 

 拓実もその場に駆けつけると、翼たちがクレーターのように窪んだ場所に立っていた。

 

____________________

 

 FISの飛行船ではマリアはナスターシャに近づいたが、ナスターシャは血を吐いて気絶していた。

 

「調と切歌はドクターと爽谷をお願い!」

 

「爽谷はともかくあの人は…」

 

「マリア…」

 

 普段は物静かなブラックウォーグレイモンは心配そうに呟いた。

 

「分かってる!応急処置は私でもできるけど、ドクターでしかマムは治せない!」

 

「分かったデス!」

 

 調と切歌がウェル博士と爽谷を探し始めた。

 

 デジヴァイスの画面に涙が落ちた。

 

「マリア、泣いているのか?」

 

「これもフィーネを背負いきれない私のせい…そのせいで壊れて行く…」

 

「しっかりしろ!お前が悲しんでは調たちがお前のために無理をすることになるぞ!何かあれば俺を呼べ!俺はお前について行く!」

 

「ありがとう、ブラックウォーグレイモン…」

 

 

 

 そして響は二課のメディカルセンターに運ばれることになった。

 

「響くん…」

 

 弦十郎が、呟き翼が拳を握ったのをクリスと拓実は心配そうに見ていた。

 

 眠っている間、響は過去を思い出してしまっていた。クラスメイトに"人殺し"や"なんで生きてたんだ"や"パパとママの税金泥棒"というように貶められ、家に帰っても遊び感覚で石を投げ入れられ、家には"お前だけが生き残った"や"人殺し"といった張り紙のせいで辛い中学生生活を彼女は送っていた。

 

 それが原因で未来は陸上をやめ、代わりの響の"陽だまり"として寄り添うことになった。

 

 そして、彼女は今、調に言われた"偽善"という言葉にひどく思い悩んでしまっていた。ゆっくりと起き上がると響はアザの方に違和感を覚えた。試しに触るとかカサブタとは違う、何か石のようなものがポロリと落ちた。

 

 

 

 その間に二課はアメリカ以外の各国からの情報を得ようとしていた。それはルナアタックに関する月の落下についてである。

 

 様々な専門家を呼ぶも誰も彼もが"知らない"、"米国に聞け"、"関係省庁に根回しをしろ"、"独断をするな"など身勝手な答えばかりが返ってきていた。

 

 ロードナイトモンはドゥフトモンとハックモンに接近していた。

 

「月の公転軌道に関する情報をお願いしたい!」

 

 しかし、ドゥフトモンとハックモンは首を横に振った。

 

「すまぬ。我らをもってしても奴らはあくまで自分たちが助かろうとするので情報を提供しようともしないのだ」

 

「米国のネットワークに潜り込みはしましたが、奴らは子供を騙して私を攻撃しようとしました。各国の政府も知らないの一点張りです…」

 

 悔しそうに言うと、ロードナイトモンが怒っていた。

 

「なぜ人間どもは歩み寄らない!同じ人間同士での秩序を保たずして、繁栄などできるわけがなかろう!それなのに…!」

 

「静まれ、ロードナイトモン。イグドラシルの命とスレイプモンの希望をお前は裏切る気か?

 

 それに我らとて時に争い、繁栄や秩序と程遠い行為を繰り返したではないか…我らに言えた義理ではないだろう?」

 

「くっ!すまぬ…」

 

 ロードナイトモンが消えた。

 

「ロードナイトモン…珍しく錯乱している…」

 

 ハックモンが悲しそうな目を浮かべていた。

 

「行くぞ、ハックモン。我々は引き続き各国の捜査に当たるぞ。一つでも多く月に関するデータを集めるのだ。そしてリヴァイアモンの動向もだ。」

 

「はい…」

 

 そして翼と拓実、ロードナイトモンが集められていた。

 

「すまぬ。遅くなった。」

 

「ああ…」

 

「それは?」

 

 ロードナイトモンが鉱石のようなものを見て指差した。

 

「メディカルチェックの時に出た響くんの体組織の一部だ。」

 

「なんだって!?」

 

 拓実がそれを見た。

 

 そして翼には体内のレントゲン写真を見せた。

 

「そんな…」

 

「聖遺物のエネルギーにより聖遺物と生体が一つに溶け込もうとしている…」

 

 弦十郎が唇を噛み締めながら告げた。

 

「まさか、融合症例第一号って立花さんが言われてたのってそう言うことだったのか!」

 

「彼女にはどのような影響があるのだ?弦十郎…」

 

 ロードナイトモンが尋ねた。

 

「遠からず…死ぬ…」

 

「そんな…立花が、死ぬ?」

 

「なんとかなんないんですか!司令!」

 

動揺した拓実が尋ねる。

 

「無理だ。残念なことにこれ以上の融合が進んでしまえば…

 

 果たして人として生きていけるかどうか…」

 

 翼が涙を流し、ふらっと倒れそうになってしまった。それを拓実は咄嗟に受け止めた。

 

「つ、翼さん!」

 

「水琴…すまない…」

 

 翼はレントゲンから目をそらした。

 

「いつからそれを知ったのだ?弦十郎…」

 

「皮肉なことに先の暴走で我々の知り得なかった危険が分かったのだ、ロードナイトモン…」

 

 弦十郎はFISはノイズを使って人命を損ねているので、彼女たちを敵とみなした。しかし響がいない中でどう戦っていけばいいのか決めかねていた。

 

 とはいえ、無関係な人間の命はウェル博士によって奪われたことを知る由も二課にはなかった。

 

「それでも…かかる火の粉は防人の剣にて払います!」

 

「俺だって、戦いますよ!奏さんみたいに立花さんが死んで誰かには涙なんか流して欲しくないですから…」

 

 果たして響は戦いの中で死んでしまうのだろうか?

 




「立花さんをこれ以上戦わせるわけにはいかない…俺や翼さんたちが強くならないといけないんだ。」

「拓実…」

「わかってるさ、ベタモン…無理はしないさ。」

「僕も強くなるから!拓実は1人じゃないさ!」

「ああ!ありがとう、ベタモン。」

第35回 拓実、ベタモン(in二課本部)


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