戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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第2話 決意 シェルモン襲来!

「で……何で、俺はこんなとこにきたんだ?」

 

 車で眠くなって寝た拓実は目を覚ますと楽しそうな表情を浮かべた大人たちが目の前にいた。しかも、目の前には「歓迎! 水琴 拓実様、ベタモン様!」という垂れ幕付きだった。

 

「弦十郎の旦那は何考えてんのかねえ……」

 

「はあっ……」

 

 朱色の少女と青い少女も呆れていた。

 

「ええっと、どうも……どちら様で?」

 

「おっと、すまん。自己紹介が遅れたな。俺は風鳴 弦十郎(かざなり げんじゅうろう)。この特異災害対策機動部二課。通称、特機部二の司令でもある」

 

(特機部二って、随分いい加減な略し方だなぁ、おい)

 

「ってことは政府の……」

 

 そういうとハイテンションな女性がベタモンを抱いていた。

 

「あら〜あ! 珍しいわねえ。あんまりベタモンを見ないと思ったらこんなとこにいたのね!」

 

「うう……苦しい……」

 

「ちょっ! 放して下さいって!」

 

 拓実がそれを止めた。一瞬ぶーたれた表情を浮かべた彼女だったがすぐさまウィンクを浮かべる。

 

「彼女は櫻井 了子。我ら二課の技術者でシンフォギアシステムの櫻井理論を提示した人だ」

 

 弦十郎が椅子に座った。

 

「そして左から、二課のオペレーターたちだ」

 

「あっ、さっきのお姉さんじゃないですか!」

 

 先程拓実に手錠を掛けた女性もいた。

 

「あの時はごめんね。私は友里 あおい。こっちは藤堯 朔弥(ふじたか さくや)よ」

 

「おっす!」

 

「どうも、よろしくお願いします」

 

「でもって、私は天羽 奏。こっちは……って、どうしたの翼? もしかして緊張してんの?」

 

「してないわよ奏! ただ……緊張しただけ」

 

「ああ、先程の防人さんたちですか。ありがとうございます」

 

 ベタモンがお礼を言った。

 

「ありがとうございます。で、弦十郎さん? 俺はどうしてここに?」

 

「ああ、実はデジヴァイスを持っている君に相談があったんだ。どうぞその辺に座ってくれ」

 

 ソファーにベタモンと拓実が座り、奏と翼が横に座っていた。

 

「じゃあ、何から知りたい?」

 

 弦十郎と了子が正面に座った。

 

「はい……のっけから言いますけど、何ですかあのコスプレ? 

 

 人間コスプレしたらノイズに勝てるものなんですか?」

 

 しばらくあたりが静まり返った。

 

「拓実……! 何かまずいこと言ったんじゃ……」

 

「ハハハ!! コスプレか! 正確には違うな。あれはシンフォギアシステム。ノイズにデジモン以外で立ち向かえる切り札だ」

 

「え、マジですか!?」

 

「ええそうよ。大マジよ。シンフォギアを装備すると特殊な波形で位相差障壁を持ったノイズを私たちの知っている物理法則の領域にに引っ張れるの」

 

「だから、そこの2人はノイズ相手に無双できたわけだ」

 

「そう、だからとて誰の歌でもシンフォギアは起動はできないの。シンフォギアは歌で戦うようなものなの」

 

 翼がコーヒーを飲みながら話した。

 

「そうだったのか……」

 

「しかし、このシンフォギアは扱いが難しくてな。あまり表沙汰にはできないのだ」

 

 拓実が相槌を打った。

 

「つまり、纏めると俺が出会ったのはシンフォギアの……えっと……」

 

「適合者。もしくは装者ともいうな」

 

 奏が横から補足説明してきた。

 

「その、装者は扱いが難しい分、許可みたいなのが降りれば色々あってノイズ相手に無双できると」

 

「まあ、大体そんなもんね」

 

そして拓実が懐から何かの端末を取り出した。

 

「そうですか……あ、そうだ。このおもちゃみたいなのを持ってたらベタモンがシードラモンだっけか? そういうのに進化したのは何故なんです?」

 

「それは、私が説明しよう」

 

 その時、細長い白いデジモンが現れた。

 

「私はクダモン。弦十郎のパートナーで人間界とデジタルワールドとの仲介役だ」

 

「デジタルワールド?」

 

「デジモンにも色々住む世界があるんだ。人間界には私を入れて3人の仲間がいるんだが、彼らはそれぞれの役割に没頭しててな。

 

 私はシンフォギアを持つ日本を担当しているのだ」

 

「そうか。市役所で登録した時にこいつが渡されるのはそのためだったのか。

 

 で、肝心のこいつの名前は一体なんだ?」

 

「それはデジヴァイス。聖なる力を秘めたデバイスだ。それにはデジモンを進化させる効果がある」

 

「そうなのか……」

 

「進化と言っても、本人の心に反応するがな」

 

「心……」

 

 拓実はシードラモンに進化した時のことを考えていた。

 

(思えば俺はあの時、死にたくない一心だった。そのおかげで進化したのか?)

 

「ああもう! まるで分かんねええッ!!

 

 常軌を軽く逸してるぞマジで…」

 

 拓実が頭を抱えた。

 

「一片に詰め込み過ぎましたね」

 

 スーツを着たイケメンが現れた。

 

「えっと、あなたは……」

 

「僕は緒川 慎二(おがわ しんじ)。表向きはマネージャーを務めてます」

 

「マネージャー? アイドルとかそういうほうのですか?」

 

「ええ、きっとご存知ですよ」

 

「おいおい、気付いてなさそうだな。しょーがないな、何を隠そう!私と翼はツヴァイウイングなのだ!!」

 

 奏が写真を見せた。写真を見た拓実は驚いた。

 

「ええ!? あの……ツヴァイウイング!? マジで!?全然テレビやネットで見た感じと違う…リアル目線だからか?」

 

驚きから思わず写真と本人を見比べ彼が困惑するのだった。

 

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

 

「ああ、良かったら今度ライブに来て見てくれ」

 

「ええ、まあ…」

 

 緒川たち3人が去ると拓実はどっと倒れかけた。

 

「ダメだ、訳が分からん。 色々あり過ぎた……」

 

「まあ、色々疲れてしまった中で申し訳ないんだが… 本題はここからだ。

 

 実は君の力を貸して欲しいんだ。デバイスに選ばれたテイマーとして」

 

「何故に俺が?」

 

「最近、暴走デジモンの数が増えてきているんだ。海外の国での被害は少ないのだが我らはあくまで組織柄、ノイズ対策に重点を置きたい。

 

 

 デジモンはデータで構成されてるからノイズの炭素化は受け付けないんだ。だから、我々は君の力を借りたいのだ」

 

「えっと、すみません。脳内に色々詰め込みまくって現在パンク寸前なのでゆっくり考えてもいいですか?」

 

「ああ、すまない。じゃあこれを」

 

 弦十郎から装置のようなものを渡された。

 

「それは自販機とか色々なのに使えるぞ。何より通信機だな。いざという時はそれで連絡するから気が向いたら出動してくれ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 拓実は本部の行き方を学び、帰宅した。時間はすっかり8時だった。

 

「ただいま〜!」

 

「拓実ィ! 何時だと思ってんの? 自転車はどうしたの?」

 

「えっと、ごめん」

 

「謝らなくていいから何があったんだ? 一部始終話してくれないか?」

 

 拓也がお茶を飲みながら呟いた。

 

「ええっと、なんて言うか」

 

 うっかり、拓実は両親に今日の出来事について口を滑らせてしまった。

 

「政府の人に会った!? しかもベタちゃんの進化!? あんたどうしたの? 頭打った?」

 

 稔が驚いた。拓也はポカンとしていた。

 

「それが、俺も色々あって分かんないんだよ!機密がどうとか、シンフォギア がどうとか」

 

「拓実……お前……」

 

 拓也は真剣そうな表情で拓実を見た。

 

「要するに……正義の味方になったってことだろ?」

 

「へ?」

 

(てっきり、ふざけんなッ!何でお前なんだッ!! って言うと思ったのに……)

 

「ったく、息子が正義の味方とはなあ……

 

 ああ〜羨ましい!」

 

「何言ってんだい、あんた!」

 

「稔、拓実は色々自分で考える必要があるんだ。色々拓実には考えさせてやろう。未来の防人だしな!」

 

変に茶化してくる父に対して拓実が顔を赤くし目を背ける。

 

「けど、大丈夫? 変な人とかいない? 自分を防人とか言う人以外に……」

 

「いいや、大丈夫だよ。な、ベタモン!」

 

「うん!」

 

「拓実、お前は色々自分で考えるんだ。自分で何が正しいか。それを考えて今後防人になれ! 今回は水琴家だけの秘密だ! それにしても退屈な日常をオサラバしやがってこの野郎、どんだけ俺を嫉妬させんだ!?」

 

 拓也は拓実の頭をくしゃくしゃにした。

 

「し、知らないよ。そんなの!」

 

「ほれほれ! ったくこのラッキーボーイが!」

 

 一家は特に雰囲気が悪くなることもなく、笑って済まされた。

 

____________________

 

 一方、東京のとある海浜公園。ここに歪みが生じた。

 

「行け……シェルモン……人間どもを苦しめよ」

 

 シェルモンが現れ、咆哮を上げた。その情報はすぐに二課本部に届いた。

 

「東京の海浜公園でシェルモン及びノイズの発生を探知しました」

 

「1日に2件だと!? こんなのは今までなかったぞ!」

 

「奏ちゃんと翼ちゃんと彼に連絡を!」

 

弦十郎がオペレーターの一人に命令をし自身も現場の様子を眺めていた。

 

「しかし、いいのか?」

 

「彼女たちは疲れている。彼に行けるかどうか聞くだけだ!」

 

 その連絡は拓実に届いた。

 

「分かりました。すぐに行きます!」

 

 拓実は玄関に出た。

 

「拓実……」

 

 稔が不安そうに見た。

 

「行ってきな! やるって決めたら半端は許さないよ!」

 

「うん、行ってきます!」

 

 拓実とベタモンは海浜公園に向かった。すでに海浜公園では翼と奏たちが戦っていた。

 

「クッソ、ノイズが多い!」

 

「されど、私たちで止めましょう! 奏!」

 

「ああ! 行こう翼!」

 

「ハイドロプレッシャー!」

 

 シェルモンが液体を高圧で発射したため、翼と奏が劣勢に立たされた。

 

「厄介な水だな!あたしも一発行きたいとこだが…ッ!」

 

「ここは私が!」

 

翼がムシャモンと共にシェルモンを狙うもノイズが突然現れる。

 

「切り捨て御免! くっ、ノイズが邪魔で手が出せない!」

 

「翼さん、天羽さん!」

 

「水琴!」

 

「お前、くるなッ! 死ぬぞッ!」

 

 奏が来るのを拒んだが、拓実は真剣な眼差しで立っていた。

 

「俺は戦いますよ! この力を手にしたら、使わないと! 自分が正しいと思うことのためにッ!」

 

「ああ!」

 

 ベタモンが水中に飛び込んだ。

 

「行け……ベタモン! 行け、ベタモンッ!!」

 

 デジバイスが輝いた。

 

「ベタモン進化! シードラモン!」

 

 シードラモンが水中から浮上し、シェルモンに巻き付いた。

 

「よし、いいぞシードラモン!」

 

「ハイドロプレッシャー!」

 

 シェルモンも攻撃を放ち、シードラモンに直撃した。

 

「油断大敵!」

 

 <蒼ノ一閃>

 

 <LAST ∞METEOR>

 

 斬撃と竜巻の攻撃がノイズを一掃し、隙だらけになったシェルモンを攻撃し、海面に吹っ飛ばす。

 

「勝機を逃すなッ!」

 

 拓実は首を縦に振った。

 

「今だシードラモン!」

 

「ああ! アイスアロー!」

 

「ムシャモン!」

 

「おう! 切り捨て御免!」

 

 2つのデジモンの攻撃でシャルモンは敗れ、たまごのような姿に戻った。

 

「いよっしゃ────!!!」

 

 拓実はガッツポーズを上げた。

 

「ふふっ」

 

 しばらくすると弦十郎が現れた。

 

「ご苦労。拓実君は我ら二課に協力するということでいいのかな?」

 

「はい、もう決めました」

 

「いいだろう。くれぐれも周りの人間には内緒に……」

 

「そのことなんですけど……実は」

 

 拓実は両親に話してしまったことを告げた。

 

「すみません!」

 

 弦十郎は頭に手を置いた。

 

「いいさ。秘密にしてもらえるんなら怒りはしないさ。俺にも非はある。とにかく、改めて歓迎しよう。水琴 拓実くん」

 

「はい!」

 

 こうして拓実の戦いは始まった。

 

 そして拓実はすぐに悲劇と直面することになる。




今回は拓実が二課のメンバーもとい防人として戦う決意を固めた回です。そして、次回からようやくシンフォギア一期の本編です。次回はかなり長めですよ。
それではCM風あとがきどうぞ!

「うむ、今日からよろしく頼むぞ、水琴!」

「はい、よろしくお願いします翼さん!同じ防人として戦いましょう!」

(拓実帰宅中…)

「なあ、翼。拓実の奴勘違いしてるみたいだな。自分を防人って言うなんてな。」

「ちょっと、奏!?何言ってるの?」

「別に〜〜!!」

「奏は私に意地悪だ…」

第3回 拓実、翼、奏(in海浜公園)

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