戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
アヌンナキ降臨から一夜明けた世界は混乱に包まれていた。歩くにはシェルターの拡大を、歩くには軍事交戦を掲げまたもや混乱を迎えていた。
「自分たちだけが生き延びたい、そう思う人間たちの相違ね。」
「いつだって大体の人間はそうだよ。しかし我々には今できることをする。
まずはアルゴの場所の特定を行う!一ヶ月の時の中できっと奴らが動くのは明白、ならばこちらから先手を取る!」
現在響も学校から長期の臨時休校が発せられていた。
「早く日常に戻らないと…」
「そうだな、あたしも進学を控えてる身、先に延ばせねえしな。」
「あたしや調も先輩になるためにやってやるデス!」
「全くこの子達ったら…」
「マリアさん…」
「お父様、私たちも調査には協力します。かかる危難を前に鞘走らずには…「わかっているよ。」」
翼の提案を首を縦に振るだけで答えた。
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それから調査が続けられて数日が経ったある日ある場所が候補となった。
「
「かつての大戦時に我が国の軍事施設があった島だ。現在、日本国政府でも限られた者しか認知されていない極秘のものだ。」
「そこがどうかしたんですか?」
「そこはいまある研究施設が極秘で建設され日夜研究が行われているらしい。慎司たちの活躍で情報の漏れを見つけ、そこから調査に成功したんだ。」
「じゃあここにエルフナインちゃんが捕らえられてるんですね?」
「ああ、しかしそれと同時にヒンリヒの全勢力が集結しているには間違いない。各自突入作戦を準備しておくように!」
SONGが動く中ヒンリヒも密かに動いていた。
そうとも知らず未来は夕飯の食材を買って帰宅しようとしていた。スーパーも出来るだけ物資を買っておく人が増えてはいたものの災害時における奪い合いにまでは発展していなかった。
しかし、そうでいられるのは今だけ。いずれ時が経てば自ずと人は食料を奪わずにはいられなくなるだろうという不安は彼女にも少なからずあった。
「あっ、響!」
「未来。」
響もニコニコしながら未来と話していた。
「あのね、今日のご飯は…!」
その時未来が腹部を殴られ気絶してしまった。
「立花さん?何をやってるんだ!!」
偶然通りがかった拓実がデジヴァイスを構えるが背後から何かに刺された。
「行くぞ。」
「はい…」
偽響を連れた錬金術師が未来を連れ去った。
「これで…だ!」
何か錬金術師が話していたが拓実の耳には届かなかった。
「はやく…伝えねえと…」
またもや刺し傷を負った拓実はなんとか立ち上がって通信機を手に取った。
「拓実です、小日向さんが…さらわれました!」
「え!?」
「なんだって!!」
その後拓実が気絶しているのを一般人が通報したことで無事診察が完了した。
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「まさか未来が狙われたなんて…」
「そんなことより奴ら、気になることを言ってたんです。小日向さんを人柱ってね。」
「人柱?」
「ええ。刺された時に偶然呟いてたから確証は乏しいですけどとにかく小日向さんとエルフナインには何かが関わってるんじゃないでしょうか?」
「信じられん…」
「それか神の力とか?」
「響さんをいいように使うために人質?でもそんなの今更な気がします、クリス先輩。」
「調の言う通りおかずは最初に食べておく方がいいデース!」
翼たちが処置を済ませた拓実の話を聞きながら同時に八紘の調査で明らかになった島の全容とその上陸法を検討していた。
「この島…一見すると二箇所侵攻する場所があるのか。」
「けど片っ方がゴツゴツしてるデース…」
「かと言って正面からじゃあ手に勘づかれる。どうしたら?派手に戦いつつ小日向先輩も助けないと行けないし…」
装者たちメインの作戦なため八紘は敢えて装者たちで作戦を組ませるようにした。その上でサポートに専念させるためであった。
「うーん…いっそ横切っちゃえばいいのかな〜」
「よこぎるって、こんな風にか?」
爽谷がペンで島に直線を書いた。
「そうです、そうです!なんかぶち抜いちゃったらいいかなって…」
「立花さん、君はもしかしたらこの状況において最善の方法を選んだのかもしれないよ!」
爽谷はそれをみて笑みを浮かべた。
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それから数時間後、神始潞島で敵組織のレーダーに何かが引っかかった。
「来たか…総員備えろ!」
やってきた飛翔体は3つ、そこにはクリスとマリア、爽谷が立っていた。
「何故だ?陽動のつもりか?」
見張りが空を見上げて撃ち落そうと攻撃する中地中をメタルシードラモンが突き破った。
「アルティメットストリーム!」
「奇襲作戦か!!」
一撃で施設の大半を破壊し、他の装者たちが上陸した。
「食い止めろ!」
銃撃を放とうとするも弾丸が切り落とされたり、当身で気絶させられたりで私設部隊はなんの役にも立たなかった。
「アルカノイズを出せ!」
アルカノイズが放たれると切歌と翼そしてマリアが異空間に閉じ込められた。
「行くぞ、この隙にエルフナインを助けるんだ!」
「拓実、お前は今負傷してんだ。無理をしたら取り返しのつかないことになるからな。」
「ああ、わかっている!」
拓実と共に残り全員は敵本部へと向かった。
別の部屋にエルフナインと未来が閉じ込められていたが騒動により部屋が揺れていた。
「ほう…みんなお前らのために出てきたようだ。」
「響が!?」
「ああ、だが思い通りにさせてもらうぞ。」
枷で押さえつけた未来に謎の装置のエネルギーを注ぎ込んだ。
「あっ…うわあああああああ!!」
未来が悲鳴をあげる中リコリスは冷静だった。
「さあ目覚めろ!お前も神の力を持っているんだ!お前の手で争いなき時代を作れ!」
一方特殊空間に閉じ込められた3人はそれぞれフュージョンレボリューションされた錬金術師と戦っていた。
「効かねえデス!そこを退くデス!」
「舐めんじゃねえよ!てめえみてえなガキはぶっ潰す!」」
メラモンにフュージョンレボリューションしたエクストラは切歌に火球を切り裂かれた。
「はっ!」
「スパイクバスター!」
さらにパートナーとの連携で防御もできず一撃で変身を解かれた。
「フォックスファイアー!」
「はあああ!!」
マリアもアームドギアで敵の攻撃を弾いた。
「悪いが突破させてもらう!」
アームドギアを連続で投擲してガルルモンは倒れた。
翼も相手に何もさせる余裕すら与えずに一撃で敵を撃破した。
「あ…ああ…」
敗れた錬金術師たちが粒子となって消えた。
「これは一体!?」
「とにかく先へ!」
マリアたちも施設に乗り込んだ。
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敵はほとんど逃亡するなり、アルカノイズの餌食になるなりであっという間に大局が決していた。
「ここは?」
「新たなるフロンティアだ。」
広間のようなところに出るとそこに人影があった。
「風鳴…訃堂!?」
「貴様さえいなければと思ってはいたが感謝するぞ。」
「どう言うことだ?」
「貴様は神の力を宿したからだ。あの力は制御できれば我が国の兵器として利用できる。」
訃堂はほくそ笑んだように響を見つめた。
「ふざけんな!これでどれだけ人が傷つくのか分かってんのか?」
「ふん、無能な反逆者に捨てられた挙句、自分の都合で他人に危難を押し付けた小娘が言える言葉ではないな。」
クロスボウを構えたクリスを批判した訃堂はゆっくりと椅子に座った。
「貴様らは不要だ。兵器に必要なのは多くの障害を排除できるかどうか、歌など必要ない。」
「そんな…!」
「そうかい、あんたの言うことは一理ある。けど今この状況では最善じゃないってことわかってるのか?」
拓実が表情を変えずに訃堂を睨んだ。
「歌がなければそもそもノイズで多くの被害は出たし、フィーネや錬金術師たちの蹂躙を許してしまうかもしれなかったんだ。それをあんたは承知してるのか?」
「ふん、ならば強大な兵器を作れば良い。どれだけ民が死のうと国が残れば全ては安定する。」
「そんなの…間違ってる!」
響が声を荒げた。
「戦って勝って、それで悲しみが残ったらそれって本当に勝ちって言えるのかな?」
「そんなものは不要な思考だ。そういった稚拙な感情を切り捨てることでしか秩序は訪れないのだよ。」
訃堂と平行線の主張を繰り返すだけで時間だけがたった。
「失敗作どもの代価品などまた作ればいい。ご苦労だったなシンフォギア、そしてさらばだ。」
すると地響きにより島全体が倒壊しつつあった。
「なんだ!?」
「目覚めるぞ…天を旅する舟____アルゴが!!」
「響くん、一刻も早くそこから出るんだ。島の倒壊にこのままでは巻き込まれるぞ!」
響たちが訃堂を睨んだが訃堂は一人歩き出した。
「今は2人を連れて…!」
しかし崩落が進む中、やがて島の一部が浮遊してしまった。
「そんな!?施設が!」
すると浮遊した島から翼たちが降ってきた。
「翼さん!?」
翼とマリアが落ちないようにパートナーが支えながらゆっくりと島の入り口に降り立った。
「みんな大丈夫ですか!?」
調がエルフナインを支えていた。
「すまない立花、小日向を助けられなかった。」
「やつら…念入りに計画を立ててたみたいだ…!」
爽谷が腕のようなものを放り投げた。
「これって…!」
「ええ小日向未来の模型の一部よ。」
「それじゃあここにいた未来は偽物?」
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話を遡る事数分前、翼とマリア、切歌の3人は表にパートナーを残してアルカノイズを引きつけさせる間に内部をすでに探索していた調と爽谷に合流していた。
「よかった無事だったんだね!」
「ああ、しかし…妙だったんだ。奴らフュージョンレボリューションが解かれると消滅してしまったんだ。」
「バカな、そんな機能聞いたことがない。なぜ敗北したら消滅するんだ?」
「そいつは簡単だ。」
声がした方を振り返ると背後に誰もいなかった。
「ッ!」
前を見ようとした翼と爽谷は不意打ちで腹部に蹴りを入れられ壁に激突した。
「お前がいるということはそういうことなのね、リコリス!」
「あいつらは改良したApo-calypseを投与したのさ。これには通常時の倍の出力がかけられるが一度でも敗北したら遺伝子上にダメージがフィードバックして自然消滅を促す機能が追加されたのさ。」
「なんてことを!」
「自分の部下を失って平気なの?」
「おいおい、望んだのはあいつらだよ?それにその秘薬を投与された時点で人じゃない、お前ら同様、ただの人間兵器だ。まあお前らにボロボロにやられたんじゃあ、あいつらは二流品だったってことだ。」
「ッこの!」
物言いに激怒した調が攻撃を仕掛けたが水の障壁により攻撃が届かなかった。
「ほぉ〜お前も随分噛み付くじゃないか。協調性のかけらもなさそうだったオオカミもどきのお前も随分丸くなったモンだな。」
リコリスが調の首を締めにかかったが足の裏ののこぎりで左足を切りつけた。
「リコリス、あなたの野望は私たちが止める。」
アームドギアを構えた調達を見て舌打ちをしたリコリスは傷口から流れる血を見ながら背を向けた。
「そうか、精々無駄に頑張るんだな。」
シャボン玉であたりを覆ったリコリスはその隙に逃亡した。
「逃げられたか、でも今は!」
そして廊下の奥の部屋に入るとそこにはエルフナインたちが閉じ込められた機械があった。
「これは!?」
「くそッ、遅かったか!」
そこには未来の首の模型と衰弱したエルフナインの姿があった。
「やられた…エルフナイン!早く出るわよ!!」
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そして今に戻りエルフナインは緊急入院が始まった。
「未来を助けられなかった…」
「でも、あれだけ大きなやつならすぐ特定できる。今はゆっくり休むんだ。」
拓実が息を切らしたように歩き出した。
「彼、あんなに息を切らしてた?」
「気のせいじゃないデスか?」
拓実が個室に戻って上着を脱ぐと痣のようなものが広がっていた。
「この痣は一体…ぐっ!」
あざが急激に痛み出した。それを必死に抑えているうちに痛みが引いた。
「俺の体に何が?」
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それからアルゴの浮上を果たしたリコリスと訃堂は操舵室で向かい合っていた。アルゴ自体は姿を消しているため今はまだ上空を飛んでいるだけに過ぎなかった。
「アルゴは起動完了、これであとは神の力を送るだけだ。」
「教えてください!どうしてあなたたちは…!」
「噤め小娘、国のための人柱となれるのだ。」
「私は人柱なんかじゃありません!私はただの人ですから!」
「ばっかじゃねえの?」
リコリスが酒を飲み干して未来の首筋を撫で始めた。
「お前はな、化け物に近い人間なんだよ。」
そう囁くとリコリスは未来を突き飛ばした。
「お前は立花響を救ったように見せたが逆だ。お前は、あいつをまた這い上がってきた沼に顔面を突っ込ませて溺死させようとしてたんだよ。」
「…どういうことです?」
動揺した未来が恐る恐る震えた声でリコリスに尋ねた。
「お前はギアを纏ったろ?
その時の光でバラルの呪詛から解き放たれた穢れなき魂の一つなんだよ。
もう1人の響はそれが原因で神の力を得て、ただぶっ壊すだけの災害そのものになれたんだよ。
お前はあいつと同じ世界を滅ぼす力を持ってるんだ!」
「未来?」
デジヴァイス自体は別の場所に保管されピヨモンと離れ離れになっていたがテイマーの危機にピヨモンはよしとうなづいた。
「それでも!私は誰かのために使いたい。たとえ何かを壊す力であっても、それで終わらせたくない。誰かの笑顔のために私はこの力を使う!」
「黙れ小娘が!」
訃堂が頬を思い切り叩いた。
「貴様はフロンティア事変の時からいずれ誰かに使い潰されるために生きていたに過ぎぬ。余計な感情を抱くな。」
「さーて、こっちもこっちで準備するか?風鳴訃堂。」
「好きにしろ」
そうして2人は操舵室を出た。
「響、私は信じてる。だから出来ることを探すね!」
未来は絶望の中でも凛とした眼差しで響の助けがくるのを祈っていた。