戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
今回は02のクリスマス回っぽく色々なテイマーが再登場です。そして次回、総集編を済ませてからいよいよ最終章です。
「カンパーイ!」
世間は年が明け、新たなスタートを切ろうとしていた。この日のSONGには並行世界の奏やセレナが遊びに来ており、新年会が行われていた。
「まさかこっちのパーティーに呼んで貰えるなんてね。」
「いいんですよ、奏さん。実際、翼さんも楽しみに待ってましたし。」
「なっ!水琴!そういうことを言うな!」
「いいじゃないの、今のあなたは可愛いわよ。」
拓実とマリアが茶化すと奏が後ろから赤面していた翼の頭を撫でた。
「おっ?翼も楽しみにしてたのかよ〜可愛いやつだな!」
「そ、そんなこと…ないから…」
「あーあ、あっちもこっちも大騒ぎだね。」
「そうですね。それにしてもこんなにいっぱいいただけるなんて夢みたいです!」
「そうだね、もっと食べてもいいんだよセレナちゃん!」
「そーそ、いっぱい食べて大きくなってマリアお姉さんみたいにナイスバディ目指すのよ!」
出されたメニューを見て目を輝かせるセレナにアケミはウィンクをしてマリアたちの方に向かった。
「もう…そう言えばさ。あっちの僕はどうなの?」
「それがですね、なんかこの間アケミさんと出かけてるのをみてツボを押してくれるようにおねだりしてました。
時々私もツボ押しを教えてもらってるんです。」
「おっ、映画っぽいね〜!ツボ押しって新しい修行なのかな?」
「もう、響は映画を見過ぎだよ?去年もお休みの日に映画を見すぎたり遊んだりして、課題忘れとか多かったでしょう?」
「あっ、そうだ!今からみんなで一緒に遊ばない?じゃーん!」
「もう、響ったら…聞いてるの?」
新年早々、人々が行き交う街並みだったが悪夢が迫っていた。
「どいつもこいつも浮かれやがって。地獄を楽しみな。」
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ババ抜きで遊ぶ響たちの元に通信が入った。
「響くん!パーティ中すまない!アルカノイズが国会前に現れた!」
本部でも対応に追われていたがなんと今度は横浜と大阪、仙台、札幌の数カ所にデジモンとアルカノイズが同時に襲撃を仕掛けてきたのだ。
「こんな日に!」
「奏にセレナくんに未来くんは待機だ、いざという時にバックアップできるよう準備を整えてくれ!」
「それじゃあ行ってくるね!」
響たちが外に出たその時上からクラッカー音が鳴った。
「よぉ〜あけおめ…
相変わらず無駄にエネルギーで溢れてるな。実に鬱陶しいくらいに」
「リコリスさん!」
「お年玉ついでに面白いゲームを提供したが如何かな?」
「邪魔しておいてふざけんな!」
クリスが怒声を浴びせるもリコリスは知らん顔をして降りてきた。
「翼、あいつは?」
「リコリス・タオ=リヒト、今私たちと敵対している錬金術師の頭領だ。」
「なんて冷たい目…」
奏も警戒心を露わにし、セレナもその眼差しに震えていた。
「おやおや並行世界からの客か、お前らのとこに送ったスパイから情報は聞かせてもらったぞ。まさかそんなものがあるなんてな。」
「やっぱりあの偽物はお前の差し金か!」
拓実の脳裏に過るのは自分と仲間の信頼を踏み躙った忌むべき偽物の姿だった。
「まあいい、素晴らしきニューイヤーゲームのルール説明だ。」
「ゲーム!?」
「そう、いまから俺は日本各地にアルカノイズそしてデジモンを30分ごとに解放させ暴れさせる。
現在、時刻は19時30分でタイムリミットは午前0時。お前らがいま出現してるエリアにいるやつらを全て倒しきれば勝ち。全てのエリアが壊滅したら俺の勝ち。なかなか面白いゲームだろう?」
「ふざけんなデース!」
「まっ、お前らがやらないのは勝手だ。けどそうしたら誰が困る?一般人たちだ。
あいつらはこの日を心待ちにしていた。そんな中正月が地獄でした、なんてことになってみろ。
助けに行けなかったお前らはまず非難される、お前らがやるしかないんだよ。まあ、せいぜい楽しませな。」
リコリスはシャボン玉を吹きかけると消滅した。
「ひとまず、行きましょう!」
SONGは各地に分かれた。響と翼は車で国会前、クリスと調はミサイルで横浜、切歌と爽谷はデジモンに乗って空から仙台、マリアと拓実は海を経由して大阪に向かった。
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国会前では成熟期デジモンが暴れていた。
「一気に片付けるぞ!」
「はい!」
2人はグレイモンとペックモンと共にデジモンの迎撃を行なった。
一方仙台でも仙台駅前でデジモンが暴れ、横浜ではなんとか海のあたりを彷徨ってるだけでまだ上陸はしておらず、大阪では大阪城にトリケラモン、通天閣にメタルティラノモンと観光名所がデジモンによって今まさに荒らされようとしていた。
「こんな日だってのに!」
SONG本部では各地に次々と現れる敵の対処に追われていた。
「くっ、ようやく全てのポイントに装者ならびに闘士がついたが…一体次はどこなんだ?予告なしに人員を割くのは危うい…」
「大変です!今度は沖縄に出現しました!」
「師匠!こちら響!国会前の敵は倒しました!!」
「すまないが沖縄に向かってくれ!沖縄にもアルカノイズが出現した。」
「はい!」
「司令、まさかリコリスの狙いは米軍基地なのではないでしょうか?」
友里が各地へ避難誘導を行う旨のメッセージを各自治体に送る中告げた。
「確かに今奴が率いているヒンリヒの組織は主にアメリカや欧州と対立を深めている。それにサンジェルマンたち錬金術師を奪った直接的要因は…」
「アメリカ政府の放った反応兵器というわけか…」
SONGは各地に散開して現れる敵に対して本部を動かないことにして各自治体には自衛隊を派遣させ被害を最小限にとどめようとしていた。
しかしこの時SONGは知らなかった。予期せぬ援軍が日本各地に現れ、この窮地を脱する事を…
「なんか、ヤバそうじゃない?」
「どうする?」
「一応あの子たちに縁がないわけでもないし…私たちで片付けますか!」
「うん!行こう咲さん!!」
「ガニニニニ…せっかく北海道に旅行しにきたってのに何でこんなめんどくせえことになるガニか!!」
「もう〜!空気の読めない子達だね〜!でも私たちはまだ諦めてないよ!」
「はあ…冬空デートも台無しですか。仕方がない!」
「羽馬さん、ここはスクープですよ。聖夜に現れたアルカノイズ!行きましょう!!」
日本各地では続々とテイマーたちが動こうとしていた。
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仙台に到着した切歌はアルカノイズによる駅の攻撃を防いでいた。
「まだデスか爽谷!?このままじゃ、駅が壊されちゃうデス!」
場所が駅なため、迂闊に被害が出せないため切歌も派手にアームドギアを触れずに向かってくる的をいなす程度しかできなかった。
「そうは言うけど、人が多い中非難させるのには時間がかかるんだ。もう少しだけ食い止めてくれ!」
正月で仙台駅は新幹線を利用したりする客が増えていた。爽谷は人々の避難誘導に当たっていたためとても増援に行ける状況ではなかった。
「見つけた!」
海側から上陸した拓実とマリアは大阪城に到着した。すでに現地の人々の手で避難は完了していた。
「よし…早速!」
その時通信がなった。
「大変だマリアさん!今度は京都にメタルガルルモンとアルカノイズが現れた!」
「なんですって!?」
マリアたちが戸惑いながらもデジモンの足止めを行う中今度は都庁前にもアルカノイズが出現したと言う情報が届いた。
「これじゃキリがない!」
「!?待ってください!!」
「どうした友里!?」
「沖縄にいたアルカノイズが2体のデジモンにより殲滅されました!!」
「なに!?」
「どう言う事なの?」
マリアが攻撃をかわし反撃しながら通信を行なっていた。
「分からん、一体なぜ?ともかく響くん!進路変更だ!京都に向かってくれ!」
沖縄に向かっていたヘリにその情報は行き届いていた。
「はい、幸い近くなのですぐにでも出動できます!」
乗っていたヘリは西から一転して北へ向かった。
時を同じくしてすでにクリスと調が自衛隊と連携してデジモンを食い止めていた。しかしすでに各地では22時となっており、残り2時間となっていた。
「おらあああああ!!」
「トゥインクルレーザー!」
「ヘビーメタルファイアー!」
MEGA DEATH PARTYのミサイル攻撃とデジモンたちの必殺技で上陸前に撃破に成功した2人はデジモンをデジヴァイスに戻してすぐさま北へ向かった。
「北海道は任せな!あたしらでやってくる!」
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装者たちの活躍をリコリスは別の場所から監視していた。
「ほう…予期せぬイレギュラーか。面白い真似をするな。だが無意味だ。
さーて、食後の運動と行きますか」
SONG本部も日本全国の自治体に連絡を取って猫の手も借りたい状況にあった。
「大変です司令!国会前に再びデジモン出現!」
「なんだと!?」
国会前にボルトバウタモンが出現した。
「くっ、リコリス自らが現れたか!!」
装者たちも各地で奮闘するものの、とても間に合いそうにはなかった。
「おっさんどうするんだ!?」
奏たちが司令室に入ってきた。
「私たちも戦いますよ!」
「しかし…」
「あたしらは目の前の命を見捨てはしないんだ!だから頼む!!」
「わかった…幸い避難は完了している。くれぐれも無茶のないようにな。」
国家前に現れたボルトバウタモンは気ままに周囲の街を破壊していた。
「フハハハハ!!」
「そこまでだ!」
「みんなを悲しませるあなたを許しません!」
「来たか、約一名を除いてただの添え物どもが。」
「添え物だって思ったら大間違いだ!」
奏、セレナ、未来の3人がボルトバウタモンに一斉攻撃を仕掛けるも片手でかき消された。
「行くぞセレナ!」
「はい!奏さん!」
「あまい!」
上空から槍を、地上からはアームドギアの投擲攻撃を2人が同時に放ったがそれも受け止められた。
「どうした?潰すんじゃなかったか?」
「ならこれは!」
<閃光>
「おっと!」
ボルトバウタモンは手をかざす事でバリアを生成した。
「障壁!?未来危ない!!」
未来のフォローに入った奏ごと反射された閃光は二人を攻撃した。
「ふん、俺も伊達に負けたばかりで済ませない男でね。」
「ここままじゃまずい!同時攻撃だ!」
「はい!」
<STARDUST∞FOTON>
<閃光>
<FAIRAL†TRICK>
3人の同時攻撃はボルトバウタモンを狙った。そして命中して爆煙が生じた。
「やったか!?」
「あーあ、こんなものか。」
爆煙を切り裂いてボルトバウタモンが出現したが傷一つついてはいなかった。
「あたしたちの技が…!」
「効いてない!?」
「技ってのはこうやるんだ!アーラディポロ!」
武器の拳銃からエネルギー弾が発射されやがて数百、数千へと拡散した。
「うわあああああ!!」
「きゃあああ!!」
「ふん、所詮は間に合わせのザコども。話にならないな。せめてトドメはさしやるか。」
ボルトバウタモンが武器を取り出した。
「剣でミンチにされるか拳銃で蜂の巣、どっちがいい?」
「ざけんな!」
奏が正面から向かってきたが片手で弾き飛ばされた。
「そうか…両方か。」
舌舐めずりをして武器をかざした。
「3人の戦況劣勢です!」
「大丈夫だ!あいつらなら!!」
その時、背後から銃撃がボルトバウタモンを狙った。
「待たせたなぁ!」
振り返るとそこには装者たちとマグナガルルモンとカイゼルグレイモンが立っていた。
「お前ら…なぜここに?」
「助けてもらったんだ。みんなに!!」
「全く、ゾッとしたよ。」
SONG本部に入ってきたのはかつてデジモンバトルグランプリで響たちと競い合ったライバルのテイマーたちだった。
「こっちも予定が予定だったんですよ。」
「ガニニニニ、貸しを一個つけてやったガニ!!」
「まあ後でじっくり取材させていただきますよ。」
「空の旅のぶち壊しのお礼参りで僕たちのパートナーは託しましたから。」
「君たちに感謝する。ありがとう!」
マグナガルルモンとカイゼルグレイモンの全身には彼らのパートナーの顔が刻まれていた。
「なるほど各地で俺の邪魔をしたテイマーどもの力を借りたか。良いだろう!叩き潰してやるよ!!」
ボルトバウタモンが攻撃しようと飛び出してきたが全員ひらりとかわして倒れた3人を救出した。
「大丈夫、未来?」
「うん!まだ歌えるよ!!」
「オラッ!」
後ろから振りかざしてきた一撃を受け止めると横から翼と奏が合体攻撃を仕掛けてきた。
「やってくれるねえ…実にうっとしいぜ!」
「どりゃああああ!!」
続いて背中から切歌と調の脚を刃物に変えて放った突撃攻撃が命中した。
「ならこっちも新技を見せてやる!デスレイン!」
拳銃から放たれたエネルギー弾が数百から数千に連鎖的に分裂した。
「させるか!マシンガンデストロイ!」
「あたしも忘れるな!!」
クリスとマグナガルルモンの同時射撃で敵弾幕を相殺する。
「行くよみんな!」
ボルトバウタモンが振り返るとすでにクリス以外の装者が手を繋いでいた。
「舐めた真似を!」
「九頭龍神!」
妨害に走ったボルトバウタモンを横からカイゼルグレイモンの攻撃が吹き飛ばした。
「貴様!」
「これがテイマーの力だ!炎龍撃!!」
「スターライトベロシティ!!」
二体の拳がボルトバウタモンに風穴を開けた。
「S2CAオールスター!」
9人の装者から放たれた波動が風穴の空いたボルトバウタモンを吹き飛ばし轟音が鳴り響いた。
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爆破の後に周囲は交通整理などを行なっていた。
「新年早々最悪の展開だったな。」
「しかし、今回奏たちがいたから奴の戯れは止められたが…」
「奴の姿はまるで発見されなかった、これは最早生きていることを明確にしているわ。」
「マリア姉さん!また何かあったら呼んでね、私たちも力になるから。」
「セレナ…」
「翼もだぞ、あたしも翼を失うのはごめんだからな。」
「奏…」
「大丈夫、きっと大丈夫だ。みんなが私たちを支えているから。」
その光景を見て響は夜空を眺めながら拳を握った。
一方ヒンリヒのアジトではリコリスが傷だらけで包帯が巻かれている足を引きずりながら廊下を歩いていた。
「リコリス様!大丈夫ですか!?」
「心配ない…それよりもアレはどうだ?」
「はい、各地で暴れまわっていただいたおかげでエネルギープラントのエネルギーは強奪できましたので修復は完了です。」
「そうか…オートスコアラーたちにはもう一働きしてもらわないとな。」
暗闇のカプセルが静かにうごめいた。