戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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イノセントシスター編最終回です。2018年内はこれでラストです。2019年はいよいよ最終章に突入します。何卒応援よろしくお願いします。それでは2018年も良いお年を


第214話 イノセントシスター、純粋なままの愛

「…」

 

「さあどうした?なんとか言ってみたらどうだ?」

 

 セレナに対してアドルフは勝気で挑発を仕掛けたがまるで反応がなかった。

 

「…ま…ん」

 

 セレナが一言呟くと立ち上がった。

 

「なに?」

 

「どうしたの〜?頭でもおかしくなっちゃったって感じ?」

 

「マリア姉さんを悲しませる人…泣かせる人は許しません!」

 

 セレナが立ち上がって幼い顔から凛としたマリアと同様の厳しくも優しい眼差しで声をあげた。

 

「お前、話は聞いて…「たった一人の姉さんだから、理由はそれだけです!」」

 

(ありがとう、姉さん。私ずっと寂しかった。でももう泣かない!私はこの歌で前に進む!!)

 

 そっと微笑むとセレナは目を閉じた。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el baral zizzl

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 Emustolronzen fine el zizzl 」

 

 絶唱から放たれた光はマリアやネフィリム達を包み込んだ。

 

「なに?この光は?」

 

(この感じ…どこかで…!?)

 

 マリアが手に目線を移すと傷がみるみる回復して行った。そして彼女も絶唱を口ずさんでいた。

 

「傷が癒えていく?」

 

「これは…なんだ!?アガートラームにこんな力が!?」

 

「すごい、傷が癒えていく!?」

 

「これはネフィリムを起動させたときに見せたセレナの絶唱特性?誰かを守り癒したいという彼女の願い!」

 

 ナスターシャ教授の痣もみるみる消えていった。

 

「黙れ!ネフィリム、奴を捻り潰してしまえ!!」

 

 逆上したアドルフがネフィリムに攻撃を仕掛けるが先ほどよりその負のオーラは消されつつあった。

 

「姉さん。」

 

「セレナ、あなたは知ってたのね?」

 

「うん、マムから聞いた。最初はショックだったけど私はこの瞬間一人じゃないって分かってる。」

 

「バカな!?何なのだ?さっきから貴様らは一体何なんだ!?」

 

「お前に発言権はない!」

 

 マリアが一瞬でアドルフの腹部に突きを入れナスターシャ教授をすぐに別の場所に移した。

 

「ありがとう、セレナ。」

 

「うん!」

 

 姉妹が互いに抱擁を交わした。

 

「マリアとセレナから光が!?」

 

「アガートラーム同士が一緒に反応してるデスか?」

 

(感じる、姉さんの温もりが…)

 

(感じる、セレナの優しさが…!)

 

「「私たちの光が今フォニックゲインに!!」」

 

 重なり合った姉妹からよりまばゆい光が発せられた。

 

「あれはかつて観測された限定解除したギア!?」

 

「ふざけてんじゃねえよ、だれかがいないとどうにもならない小娘がああああああ!!」

 

 ヴェノムヴァンデモンが二人を握りつぶそうとしたが次の瞬間、両腕が切断された。

 

「うっぎゃああああああ!!」

 

「私は一人じゃない!だって人はみんな…助け合って、支え合って、笑いあっているから本当の意味で強くなれる!」

 

 全員が空を見上げたらそこには妖精のような姿をしたギアを纏ったセレナだった。

 

「舐めんじゃねえよ!モルモットが!!」

 

 ヴェノムヴァンデモンが攻撃しようとするが傷の癒えた調と切歌の横からの攻撃で妨害された。

 

「これ以上先には行かせないデス!」

 

「行くよ!!」

 

 気がつくとヴェノムヴァンデモンの足元には肩の触手のようなものが巻き付いていた。

 

「なんだと!?」

 

「切ちゃん!」

 

「調!」

 

「俺たちを忘れんな!」

 

「こいつら!」

 

 正面から腹部めがけてデスメラモンとジュエルビーモンが攻撃してきた。

 

「お前の弱点は腹部にある!喰らえヘビーメタルファイアー!!」

 

「スパイクバスター!」

 

 左右から切歌と調も同時攻撃を仕掛けたことで腹部を破壊された。

 

「ぐあっ!」

 

 爽谷だけ弾き出される中、ネフィリムが全員を押しつぶそうとした。

 

「セレナ!あなたが決めなさい!!」

 

「うん!!」

 

「はああああああ!!」

 

<JUDGEMENT†STRIKE>

 

 マリアの連続攻撃で弱体化したネフィリムは足が千切れた。

 

「これが私たちの絆の力!はあああああ!!」

 

 セレナは右から左からでネフィリムを攻撃したそして全身から光のオーラを放ちネフィリムは一瞬のうちで消滅した。

 

「そんな…!ネフィリムが倒されただと!?」

 

 目を覚ましたアドルフは愕然としていた。

 

「マリア姉さん!ありがとう。」

 

____________________________

 

 それから4日後、事後処理が行われたドクターアドルフは勝手にネフィリムを暴れさせたことで懲戒処分を受けアメリカ本国へと引き渡された。その中でマリアたちは彼の経歴を知った。彼もまたノイズの脅威で人に裏切られ、謂れのない中傷を受け力を欲した男だったのだ。

 

「けどイマイチ腑に落ちないデース…」

 

「?」

 

「だって、あのヒゲグラサンはどうしてああまでしてネフィリムに執着したんデスか?」

 

「F計画…」

 

 ナスターシャが静かに呟いた。

 

「我々FISはかつてネフィリムを使ってフロンティアと呼ばれるものを浮上させる計画があったのです。しかしカルマノイズの一件で計画が凍結した上、立案者が死亡したために私もあまり詳細は把握していません。おそらくドクターアドルフはその情報を何処ぞから入手したのでしょう。」

 

「私たちの世界と同じ…ちなみにその計画の立案者は?」

 

「ドクターウェル…彼も7年前の犠牲者の一人です。」

 

「デデデース!!」

 

「まじかよ…聞くんじゃなかったな調…」

 

「マリア姉さん、あのね。」

 

「何も言わなくてもいいわ。あなたは私の妹に変わりないわ。」

 

 セレナはあの後検査を受けたがマリアと絶唱の負荷をアガートラームの共鳴により和らげたため1日寝てるだけで健全な状態に戻った。その様子をまさに奇跡だったとナスターシャ教授は評した。

 

「マリア姉さん!」

 

 セレナは感極まってマリアと抱擁していた。

 

 すると、本部にドアが開いた。

 

「やっほーマム!取り敢えずあいさつには来たわ〜」

 

 入ってきたのはこの世界の冷泉アケミだった。

 

「アケミ、ええっとその…」

 

「大丈夫、全部爽谷から聞いたから。にしてもまあ、レセプターチルドレンの子達は小さくて可愛いし愛で甲斐のある三次元ロリだって教えてあげてたのにまさか暴言に加えてダイレクトアタックなんて頂けないわね。」

 

「え?じゃあ2人はレセプターチルドレンじゃないの?」

 

「違います〜!ちゃんと姉弟揃って就職してる研究員です〜!」

 

「姉さん…」

 

「はい、爽谷!謝罪!!」

 

「この度は申し訳ありませんでした。」

 

「いいよ別に!でもこれから仲良くしていきましょうね!!」

 

 深々と頭を下げた爽谷に対してセレナはそっと手を伸ばした。

 

「誰かを憎むだけじゃダメだよね、マリア姉さん。」

 

「ええ、そうねセレナ。にしても随分と素直になったわね。」

 

「旅先で見つけた秘伝のツボを全身に押しまくったのよ。ほら、今回アドルフに関わった研究員たちは人員確保の問題で減俸ならびに監視体制を強化させるように上から連絡があったのよ。

 

 で、私はマムからその人たちの監視をお願いされたわけ。その記念でさっき一人残らずこの快感のツボを突いたのよ。ほい!」

 

 アケミは左肩をツンとついたことで爽谷はビクンと震えだした。

 

「ああああああ!!気持ちいいいいい!!気持ちいい…」

 

 ツボを突かれた爽谷はガクガクと足を震えさせて倒れた。

 

「って、過剰反応じゃない!」

 

「まあまあ、細かいことは気にしない!気にしない!」

 

「まあ…何はともあれ解決したってことで無事に切り抜けられたわね。変なところで和ませなくてもいいというのに。」

 

 マリアもツッコミを入れずにため息をついた。

 

「ふ…ふふふ」

 

「せ、セレナ?」

 

「いえ!なんかちょっとおかしくって!」

 

「あ、どう?セレナちゃん?お姉ちゃんにツボを突いちゃう?」

 

「あ、じゃあ是非!」

 

「ええ!?ちょっ、ちょっと!?」

 

「ああ!ズルイデス!あたしたちも!!」

 

「うん!切ちゃん!!」

 

「なーにやってんだ?」

 

「分からん。いい空気から一転ツボ突き大会だな。」

 

 ナスターシャもその光景を見てふふふと笑い出し、全員マリアに詰め寄った。

 

____________________________

 

 それから数日経った日、セレナが遊びにきていた。

 

「まーたべったりちゃんか。」

 

 クリス達もマリアとセレナに苦笑いを浮かべた。

 

「よく遊びにきてくれるのは嬉しいけど…」

 

「ほんとセレナちゃんったらいっつもマリアさんと一緒ですね!」

 

「それなのか、切歌ちゃんに調ちゃんがヤキモチ焼いてるよ。クリス、お約束はないのか?」

 

「いや、なんであたしがいつもあれをいう役なんだよ!!」

 

「こらセレナ!マリアはセレナのものじゃないデス!」

 

「私たちにも変わって。」

 

「ダメです!」

 

「あはは…」

 

「ほれ、行ってこーい!」

 

 遠目で見ていた爽谷を後ろからアケミが押すと爽谷はいつのまにかセレナごとマリアを抱きしめていた。

 

「!?」

 

 その場にいた全員唖然としていた。

 

「よーし、私も!」

 

 アケミがニヤリと飛び込んでセレナと爽谷ごと抱きしめようとした。

 

「ええ…」

 

「姉さん離してよ!」

 

「だーめ!可愛い妹と弟がいるんなら仕事忘れてフォーリンラブよ!!」

 

「よーし私たちも行くよ切ちゃん!」

 

「え、えええ!?了解デース!!」

 

「ちょ、ちょっと!?みんな、苦しいわ!翼、黙って見てないでなんとかして!!」

 

「いや、その…強く生きてくれマリア。」

 

 皆がマリアを囲むようにハグをしていた。約一名は巻き込まれているが…

 

「皆さん、離れてください!困ってます!!」

 

 セレナが抱きついていた全員を引き剥がした。

 

「だって…!マリア姉さんは私だけのマリア姉さんなんですよ!!」

 

 戸惑うマリアを優しくセレナは抱きついて微笑んだ。


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