戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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調ちゃんのメイン回になります。色々あって時間が少しばかり空きましたが次回は翼さん、その次の回はクリスちゃん、その後は拓実くんのメイン回とさせていただきます。新たな錬金術師に新たなデジクロス等にご期待ください。


第205話 調とそよ風の申し子

 調はタイムセールに向かっていた。

 

「急がないと!日直の仕事を頑張ってたら遅れちゃう!!」

 

「おいおいあんましストレスかけない方がいいぜ?」

 

 息を切らしながら走っていた調だったが突然何かとぶつかってしまい、気を失ってしまった。

 

「調?おい調!」

 

「タイム…セー…ル…」

 

____________________________

 

「うん?」

 

 それから目を覚ますと見慣れない建物のベッドで調は眠っていた。

 

「あら、目が覚めたみたいね。月読 調さん。」

 

 声がかかった方を見るとそこには緑色の短髪をした長身の女性が立っていた。

 

「!?あなたは、一体誰なの?」

 

 調が身構えたが女性はデジヴァイスを渡してきた。

 

「調〜!無事に目を覚ましてくれてよかったぜ〜!!」

 

「今日は帰りなさい。」

 

 女性が背を向けるとベットから起き上がって調は女性を呼び止めた。

 

「私の質問に答えて!あなたは誰なの?」

 

「そうね、私はそよ風の申し子かしらね。」

 

「せんせー!」

 

 すると女性の周りに子供達が集まって来た。

 

「大丈夫なの〜?」

 

 子供の1人が調に尋ねてきたところ戸惑いながらも調はうなづいた。

 

「うん…」

 

「ここにいる大和くんがあなたのことが心配で無理やり連れて来ちゃったみたい。ごめんなさいね。前を見ないで急いでるあなたにぶつかってね。」

 

「お姉ちゃん、あのままじゃ危ないから手当てしないと…」

 

「うん、ありがとう。」

 

 調が笑顔になりながら玄関まで戻ったが女性に対しては鋭い眼差しを向けたまま建物を後にした。

 

「あの女、ただもんじゃねえな。」

 

「キャンドモンもそう思うんだね?一体誰なんだろう?」

 

 その後、爽谷たちにタイムセールで安いものが買えずにやむなく調たちは外食し、結局食費を大きく使った。

 

____________________________

 

 翌日、弦十郎により響たちが集められた。

 

「きたな。これを見てくれ。」

 

 弦十郎の合図でモニターには黒いローブの男が見られた。

 

「これはまさか…錬金術師?」

 

「ここ数日の間この街で目撃されている錬金術師だ。我々は今この者をエージェントを使って追跡し先日その者の部下を捕らえることに成功したんだ。」

 

「今回はなぜ俺たちを呼んだんですか?」

 

「そうだな、実はこの街にあのパヴァリア光明結社の錬金術師が潜んでいることがわかったのだ。」

 

「錬金術師が私たちの街にですか!?」

 

 響が目を丸くして尋ねたが弦十郎は静かにうなづいた。

 

「そうだ。名前は水仙と言うらしい。彼女は結社のアジア方面の運営に関わっていたのだが壊滅後に姿を消したらしい。その中であのリコリスとも接触を図っていたそうだ。」

 

「なんだって!?」

 

「神の力の一件があってから緒川の手で捕らえられた錬金術師が提供した情報を基に僅かなエージェント達で調査を任せていたのだが、先日黒いローブの男たちを目撃することに成功したんだ。そして運良くそのうちの1人の確保に成功して確証に踏み込めたんだ。」

 

「おっさん、やべえ奴がいることはわかったがあたし達はまずどうしたらいい?」

 

「ひとまずこちらから尻尾を掴むまでは派手な動きは控えてほしい。もし取引でもするならそこに応じてまとめて尻尾を抑える。各自気を抜かないように!」

 

 それからミーティングが解散となり皆帰宅の途についた。

 

「錬金術師があたしらのそばに…ねえ。」

 

 調は1人難しい顔を浮かべていた。

 

「もしかして錬金術師は…」

 

「なになに?調ちゃんには心当たりがあるの?」

 

 響が調の独り言を聞き逃していなかったのか尋ねたが首を横に振った。

 

「確証とまではいかないです。ただ…本当にそういう人がいるんなら気をつけたほうがいいのかも。」

 

「そっか…」

 

「まあ、一先ずは様子見だな。」

 

 その夜、SONGは監視カメラ等をハッキングして怪しい人物がいないかの捜査を行っていた。

 

「ったく…錬金術師たちも人を休ませるってこと知ってんのかよ。」

 

「ボヤかない!あと数時間したら交代よ。」

 

 すると友里の目の前のモニターで不審なものは見られた。そこには厳つい男たちが1人の女性を取り囲んでいた。そして男が掴みかかろうとした瞬間、女の周りから風が発生して男たちは全身から血を流した。女は辺りを見回してゆっくりその場を去った。

 

「見つけた!」

 

 すぐさま司令に報告が入った。それからすぐに装者たちは夜中前でありながら召集をかけられた。

 

「監視カメラの映像だ、姿からしてこの女に違いない。彼女が水仙だ。」

 

 その映像を見て調はモニターに映った水仙をにらんだ。

 

「この辺り、あたしたちのうちの近所デス!もしかしたら入れ違いに…」

 

 そのとき警報がなった。

 

「どうした!?」

 

「嘘!?例の女が本部前に突っ立ってます!」

 

 アケミが本部前の様子を見せると水仙が監視カメラを前に無表情で手を振っていた。

 

____________________________

 

 それからエージェントたちが現れ無抵抗のまま水仙は捕らえられた。

 

「それで、何故来た?」

 

 弦十郎たちが慎重になる中水仙は両手に錠をかけられ天井を眺めながら自首したいと言った。

 

「別に私のことなどはどうでもいいだろう。私は錬金術師だ。世間の悪者、忌むべき敵対者だ。さっさと身柄を引き渡してくれ。」

 

「答えになっていないぞ。」

 

 弦十郎の肩に乗っていたクダモンが睨んできたが意にも介さず水仙は突っ立っていた。それから尋問に入った。

 

「まるで敵意のようなものすらない?」

 

「自首しに来たって言ってっけど何を考えてるのか…」

 

 クリスと拓実が警戒心をあらわにしながら小声で話してると水仙は目線を移した。

 

「分からないだろう?私のことなどな。それでいい。」

 

 それから彼女は本部で留置されることになった。

 

「あの、話してくれませんか?」

 

 その後尋問が始まったが一向に喋らずに彼女は黙秘し続けた。リコリスの話題に関しては知らぬ存ぜぬの一点張りで進展が一切なかった。

 

「…別に話したいわけじゃない。私は自首しに来ただけ。」

 

「嘘つくなデース!」

 

 切歌が机をバンと叩いた。それを調が諌めた。

 

「切ちゃん、じゃあ質問を変えます。あなたはなぜ子供たちと一緒にいたのですか?」

 

 子供という言葉で目つきを鋭くしたのを調は見逃さなかった。

 

「…別に、ただ園長に拾われただけ。」

 

「園長?」

 

「あの子達は笹園っていう施設にいる身寄りのない子達だよ。その園長に拾われただけ。別にあの子たちは関係もないし、話題にしないでほしい。」

 

「じゃあ、リコリスとの関連性は?」

 

「ない、さっきから言ってるだろ?」

 

「結社は!結社はどうなんデスか!?」

 

 切歌が尋ねるもぷいとそっぽを向いて水仙は口籠った。そんな彼女を調は気にかけていた。

 

(あの人…)

 

 それから水仙は敵意を感じないことと囮役として一時経過観察となった。黙秘が続く以上解放させて取引現場に向かわせようという目論見だ。

 

「はい、あなたは一先ずここに返すわ。」

 

 調が護衛で水仙を送り届けた。

 

「…」

 

「あー!先生だ!」

 

 建物のドアを開けると子供達が水仙に抱きついてきた。

 

「ねえ、昨日どうして先生は帰ってこなかったの?」

 

「すまない、ノイズが現れてね。このお姉さんに助けてもらって避難所で一夜を明かしたんだ。大丈夫だったかい?」

 

「ああ、先生〜!無事でよかったです〜!」

 

「松山さん…」

 

 奥からメガネをかけた好青年が出てきた。調も水仙の顔を伺ったが彼女は無表情から一変して穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「ねえ、君たちってこの人が大好きなの?」

 

「うん!」

 

 子供達がうなづいた。

 

「そっか、じゃあ私はここで失礼いたします。」

 

 調はその場から去って最寄りのファミレスで待機中のクリス達の元へ向かった。

 

「で、なんであたしらがここに?」

 

 クリス、調たちは監視用として張り込みを行なっていた。

 

「仕方ないデス、休日でおヒマなんだからできることを積極的にするデース!」

 

<モニタモン、コンバート!>

 

「さてと、頼むぜ。」

 

 一方拓実と響は秘密裏で建物の裏口に入っており、自分のデジヴァイスでモニタモンを呼び出していた。

 

「これで話さないんならこっちもある程度強硬手段で行く必要があるな。」

 

「でもどうして話してくれなかったんでしょうか?」

 

 響が路地裏から出て張り込み場所に戻りながら拓実に尋ねた。

 

「さあね、今回モニタモンを送ったのはそこんところを明らかにさせるためでもあるしな。」

 

 それから交代で張り込みを行なったが今のところ目立つような動きもなかった。そのまま夕方になり、突如として水仙が動き出した。

 

「おい!行くぞ!!」

 

 クリスが仮眠中の響と切歌を起こしたが一向に起きる気配もせず、やむなく調と拓実が先行することになった。

 

「切ちゃん、大丈夫かな?」

 

「まあ、クリスなら起こし方は荒っぽいかもしれないが俺たちで先陣を切るしかない!行くぞ!!」

 

____________________________

 

 それから2人は尾行をこっそり続け横浜周辺の倉庫に来ていた。

 

「どうやら、ここで間違い無いみたいだな。」

 

「どうします?突撃します?」

 

「まだだ、ひとまず上空から奴らの様子を把握してからだ。奴らが何を隠しているか分からない。頼むぞベタモン。」

 

 ベタモンをシードラモンに進化させ拓実は天窓から様子を伺っていた。

 

「さぁて、最後通告だ。お前はヒンリヒに加盟しなければならない。」

 

「何度言われても答えは変わらないよ。私は静かに生きていたいんだ。」

 

 水仙以外にローブを着た男3人とスキンヘッドのリーダーが取り囲んでいた。

 

「どうですか?」

 

 シードラモンに乗った調が尋ねてきた。

 

「どうやら、交渉をしてるみたいだな。調ちゃん、今のうちに応援要請を。立花さんたちがくれば正面から攻めるだろうがなんとしてもあいつらはここで一網打尽だ。機を見て一気に行くぞ。」

 

「はい。」

 

 調はすぐさま通信機で本部と連絡を取った。

 

「何度も言わせるな?こっちのセリフだ!キャロルの情報を持っていた奴はみんなお前が知ってると言っていたぞ。」

 

「それは捨てたわ、鳳仙。別にどうでもよかったし。そっちも結社が無くなってから落ちぶれる一方だ。いっそ過去を忘れ今を生きて行こうじゃないか。」

 

「いいのか?お前のことは知っている。今からでもあの餓鬼どもを実験台にしてもいいんだぞ?」

 

「!?」

 

「おい!連れてこい!」

 

 鳳仙の合図でその場に猿轡をされた少年が突き出された。

 

「大和くん!」

 

「ふん、お使いしてたところを襲ったのさ。さあどうする?」

 

____________________________

 

(妙だ…あいつら俺たちの存在に気づいていないのか?)

 

 二人が気を取られていると背後から攻撃を受けた。

 

「ぐわあああああああ!!」

 

 不意打を喰らってシードラモンごと倒れ拓実と調は崩れた屋根から落ちて敵に捕らえられてしまった。すると攻撃したスティングモンが鳳仙の手元に戻った。

 

「まさかお前らまで来るとはな。大方応援を頼んだんだろうが…」

 

 すると鳳仙はスカルグレイモンのデジメモリとデジヴァイスを投げた。

 

「これは?」

 

「そのガキを助けたいんならこれを使って表に出ろ。でもって迎え撃て。」

 

「くっ…」

 

 その時、警報が鳴った。

 

「リーダー、大変だ!SONGの奴らだ!!」

 

「チィッ、アルカノイズを放て!!」

 

 鳳仙の指示で倉庫一帯にアルカノイズは放たれた。

 

「人質がいる以上到着は遅れる。オラ、さっさと決めろ!」

 

「私は…もう…」

 

 水仙はスカルグレイモンのデジメモリを見て震えていた。

 

「先生!早く逃げ…「ガキは黙ってろ!」」

 

 鳳仙が容赦なく顔面に蹴りを入れた。

 

「大和くん!」

 

 水仙が震える手でデジメモリを取った。

 

「わかった、あいつらと戦おう。」

 

「ハハッ!そう来なくては面白くない、受け取れ!!」

 

 鳳仙が紫の薬品を渡した。

 

「それを飲んでおけ。」

 

 薬品を投与してアンプルを水仙は鳳仙に投げつけた。

 

<スカルグレイモン!フュージョンレボリューション!!>

 

 水仙が禍々しいスカルグレイモンの姿となった。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 倉庫を破壊して水仙は表に飛び出した。

 

「クリスさん、ここは任せて早く先に!」

 

「ああ任せろ!」

 

「立花さんと切歌は避難誘導を!このスカルグレイモンは僕が相手する!」

 

 爽谷は駆け出してダイペンモンに変わってスカルグレイモンを押さえつけていた。

 

「ぐおおおおおおおおお!!!」

 

 スカルグレイモンのパンチを受け止めたダイペンモンはアイスでスカルグレイモンの腹部を叩いた。

 

「グラウンド・ゼロ!」

 

 背中からミサイルを一発発射したスカルグレイモンをダイペンモンは口から放った冷気で凍結させた。

 

「ぐおおおおおおお!!」

 

 それでもスカルグレイモンはダイペンモンに掴みかかっていた。

 

____________________________

 

 一方、クリスは先行して敵の元に到着した。

 

「動くな!そいつらを解放しろ!」

 

「来たか…!」

 

 鳳仙は大和を人質にとって立っていた。

 

「2人はどうした?」

 

「ここだ!」

 

 拓実と調が縄で柱にくくりつけられていた。

 

「あいつらの私物は俺がいただいた。あとはお前らだけだ!ヒンリヒに逆らったことを思い知らせてやる!」

 

 鳳仙は薬品を自分と大和に注入した。

 

「何をしやがるんだ!?」

 

<スティングモン、エクスブイモン!ジョグレス!フュージョンレボリューション!>

 

 鳳仙と大和は光に包まれた。

 

「ふん、ディノビーモンか。行くぞ!」

 

「頼む、ハグルモン!」

 

「アア!」

 

 ハグルモンはムゲンドラモンへと一気に進化を遂げディノビーモンを押さえつけていた。

 

「大和くんを取り込んでフュージョンレボリューションだなんて…!」

 

「奴にデジヴァイスを奪われたままだ、頼むクリス!」

 

 拓実と調はクリスによって縄を解かれた。

 

「大丈夫か!?」

 

「ああ、おかげさまでな。けど…」

 

「オラオラオラオラ!どうしたどしたぁ!?」

 

 ムゲンドラモンもディノビーモンの攻めを防げてはいたが手数で劣っていたため徐々に攻められていた。

 

「助けて!」

 

 大和の声で反撃しようとするムゲンドラモンは躊躇ってしまった。

 

「オラよ!」

 

 ディノビーモンは怯んだ隙に懐を攻撃した。そしてすかさずエネルギーチャージを行なった。

 

「ムゲンキャノン!」

 

「先生、助けて!」

 

 しかし、ディノビーモンはなんとスティングモンの頭部の複眼部から大和の顔らしきものを見せつけて来た。

 

「くっ、ムゲンドラモン!それじゃガキを撃っちまうぞ!私は二度とあんなことは…」

 

「ッ!わかった…」

 

 クリスの脳裏にはステファンの足の悲劇がよぎってしまい攻撃ができずにいた。

 

「せんせえ、助けて!」

 

 大和の叫び声にスカルグレイモンが振り返った。そしてムゲンドラモンは迂闊な手出しができずにそのまま倒されてしまった。

 

「?なんだ!?」

 

 ダイペンモンも攻撃をやめるとスカルグレイモンが引き返した。

 

「待て!」

 

「ほらほらどうした?こいつごと倒さないとあぶねえぞ〜?」

 

 攻撃のたびに大和の苦しそうな表情を見せつけてくるためクリスたちは迂闊な手出しができずにいた。

 

 その時、スカルグレイモンが横からディノビーモンを吹き飛ばした。

 

「何をしやがるてめえ!」

 

「貴様…大和くんに手を出すなと言ったのに!許さん!」

 

 スカルグレイモンはディノビーモンに容赦なく攻撃を加えた。

 

「ば、バカ!ガキのことはどうなってもいいのか!?」

 

 鳳仙の言葉も無視してスカルグレイモンはディノビーモンを押さえつけた。

 

「大和くんすまない、私はただの悪人の仲間だった。君らとの思い出はただの隠れ蓑だったんだ。お別れだ。」

 

 押さえつける力はなおも強くなった。その中でスカルグレイモンから涙が流れた。そしてゼロ距離からグラウンド・ゼロを放とうとした。

 

「ッ!意気地なし!!」

 

 調が叫んだ。

 

「大和くんたちはあなたが大好きなのよ!?思い出は隠れ蓑、あなたはそう言うけどあの子供達にはあなたは大切な大人なの。だから軽々とお別れだなんて言わないで!!」

 

「月読調…」

 

「っせえんだよ!ダボが!!」

 

 ディノビーモンが必殺のヘルマスカレードでスカルグレイモンを容赦なく撃破した。

 

「いい気になんな!この腑抜けが!!」

 

 スカルグレイモンから水仙の姿に戻った。

 

「裏切り者が!終わりだ!」

 

 水仙が調をみて何かを投げた。

 

「受け取れ!」

 

「しまった!!」

 

「ありがとう、待たせたねキャンドモン!」

 

「ロンリーだったぞ〜調〜!」

 

 デジヴァイスからキャンドモンが出てきてディノビーモンは水仙に迫っていた。

 

「させるか!」

 

 拓実が水仙に駆け寄って助け起こした。

 

「クリス、一旦表に出るぞ!」

 

「拓実さん、ここは私がいきます!」

 

「頼んだぞ!」

 

 クリスと拓実は一度倉庫から出て水仙の避難を行なった。

 

「必ず私の手で助けてみせる!Various shul shagana tron」

 

 水仙によって投げ渡されたお陰でギアをまとった調はディノビーモンを睨んだ。

 

「小娘がしゃしゃるな!」

 

 調がデジヴァイスを構えた。

 

「キャンドモンワープ進化!ボルトモン!!」

 

 ボルトモンに進化してすぐにディノビーモンが調に豪腕を振りかざしてきたがボルトモンは両腕でそれを受け止めた。

 

「でえええええええええええ!!!」

 

「なんだとぉ!?」

 

 ボルトモンはディノビーモンの腕を離さずにそのまま回転しながら投げ飛ばした。

 

「うをおおおおおおおおおおお!!」

 

 倉庫の天井を破って海に一気に激突した。

 

「トドメ!」

 

 百輪廻で容赦なく追撃を浴びディノビーモンは怯んだ。

 

「ま、待て!ガキがどうなってもいいのか?おい!」

 

「心配ないよ、デリケートに刃物を扱うのは、魚を捌くので…慣れてるから。」

 

<非常Σ式 禁月輪>

 

 円盤状の鋸とともに調はスティングモンの部分だけを集中的に攻撃した。

 

「ほらよ!」

 

 ボルトモンは攻撃した鋸を武器の斧で野球のボールのように打ち返して執拗にスティングモンの部分である足や顔面を攻撃した。

 

「トドメだ、調!」

 

「お願いボルトモン!」

 

 禁月輪を解いた調は回転し始めたボルトモンをヨーヨーで包み込んで自分とともに上空に巻き上げた。

 

「私の絆…!」

 

「「スパークサイクロン!」」

 

 落下中に電撃を纏いながらボルトモンと調はディノビーモンの顔面を削りながら肉体を貫いた。

 

「ぐぎゃああああああああああ!!」

 

 ディノビーモンは爆散し、鳳仙と大和は弾かれ、鳳仙は海に投げられた。

 

「お願い間に合って!」

 

 一方で地面に落下しそうだった大和に手を伸ばした調はそのまま両腕で抱えたが体勢を崩してしまった。

 

「きゃっ!」

 

「調!」

 

「デエエエエエエエエス!!」

 

 しかし間一髪で2人をギアを纏った切歌がとっさに抱えたことで救出した。

 

「はあ、はあっ…」

 

「無事で何よりデース、ふぃ〜!」

 

「大丈夫か?」

 

 デジヴァイスを回収した拓実が駆け寄った。

 

「救急車は呼んである。さあ、その子を早く!」

 

「はい!」

 

____________________________

 

 その後、倉庫一帯の調査が進められた。それにより鳳仙率いる錬金術師の一派が捕らえられヒンリヒという組織の調査に入ろうとしていた。水仙に関しては人質となった民間人の救出を行おうとしたことを調や拓実、クリスによって報告されたため弦十郎の計らいで事なきを得た。

 

「大和くん、無事だって。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

「あんたのおかげだ。あんたがあの時スティングモンの部分から姿を見せた鳳仙の顔から調がヒントを掴んだんだ。」

 

 キャンドモンの言葉に水仙も笑顔をこぼした。

 

「そうか。」

 

 病院のロビーで調と水仙は話し合っていた。

 

「ねえ、これは私のお願いだけど…」

 

「なんだい?」

 

「あなたはあの子達を守ってあげて。親のいない子供の思いを私や切ちゃん、クリス先輩は知っている。親のいない子供の苦しみが…あの子達の親代わりになれるのはあなたなの。だから…」

 

「ああ、そのつもりさ。それと…!」

 

 水仙がデジヴァイスとデジメモリを渡した。

 

「これはもう私には必要ない。君たちが使っててくれ。いずれふさわしい人物に渡してくれると助かる。」

 

「…あなたは誰なの?どうして私にそこまで?」

 

「さあてね。ただ、風がそう囁いていたというのはダメかな?流れは君たちにあるとだけ言っておくよ、通りすがりの保育士さ。覚えておいてくれれば嬉しいかな。」

 

「せんせーい!」

 

 2人が笑っていると大和が手を振ってやってきた。

 

____________________________

 

 一方、東京から離れた鎌倉ではある者達が密会を行なっていた。リコリスと風鳴訃堂である。

 

「来たか。貴様の首尾はどうだ?」

 

「まあまあだ。こちらもいい戦力が入った。先日ようやく例の場所での調査を続けて"残骸"を入手することができた。全く、爆発してチリになっちまったから大変だったぞ。目玉や胴体と思われる破片が微小な形で見つかったが再構築が大変だ。けどこれで3つはどうにか目処は立った。」

 

 リコリスの説明に興味を持たず無表情で訃堂は口を開いた。

 

「SONGへはどう動いている?」

 

「極力奴らに嗅ぎ回られないようには動いてはいる。そちらは?」

 

「先日こちらも別で、残骸の回収に成功した。あとは機を伺い一気に我らが打って出るだけぞ。」

 

「そうか、せいぜい気をつけるんだな、風鳴 訃堂。俺の目的は…」

 

「分かっている。貴様への見返りはこれだろう?」

 

 風鳴訃堂が取り出したのはキメラモンのデジメモリだった。

 

「そうだ、そいつさえくれれば協力は惜しまない。俺はこれから南米に赴くとする。あそこにいる錬金術師が面白いことをしてくれてね。そいつらを勧誘させて勢力を大きくさせるとするさ。」

 

「そうか…こちらもSONGに近々探りを入れる。お互い足を引っ張らないことだ。」

 

 リコリスは背を向けながら訃堂に鋭い目線を向けた。

 

(老いぼれが、せいぜい俺の手の上で踊る事だな。)

 

(貴様も事が済めば消してくれるわ。)

 

 2人の残す残骸とは?謎は未だ深まるばかり…


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