戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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第203話 解けた蟠り

 ゴライアスというさらなる危険因子が現れた。翼は先の絶唱の負荷をアームドギアを介してでなんとか抑えられたものの当分の戦線を離脱せざるを得ない状況下となってしまった。

 

 その中でマリア達は引き続き協力することを承諾、共にカルマノイズ並びにゴライアスの排除へと動き出した。

 

 まずわかった情報は"ゴライアスは永田町の記憶の保管庫に管理されていたがフォニックゲインの増加で目覚めた"ことと"日光による光量で動くため夜間は弱い"ということであった。つまりゴライアスは夜間では力を失い弱くなってしまうのだ。

 

「けどどうするんだよ?夜でも明るくさせるってのは簡単にはいかねえぞ。」

 

「任せろ、こう見えても機械いじりが得意でな。こっちもこっちでバックアップはまかしとけ!」

 

「え?」

 

 マリアたちは首を傾げた。事件の後にわかったのはこの世界の弦十郎の趣味はSF映画の鑑賞らしい。そのおかげあってかすでに特許をいくつか得ているそうで二課で何か機械系統のトラブルは彼1人がいれば数時間で片付くらしい。

 

(なんだか混乱するわね…)

 

____________________________

 

 一方、未来はアケミと共に響の元にやって来ていた。

 

「あら、ありがとうね〜」

 

「別に、大したことじゃないよほら。」

 

 2人が見たのは横断歩道がうまく歩けないおばあちゃんを助けている響の姿だった。

 

(やっぱり響の本質は変わらなかったんだ。誰かと手を繋ぎたいって本人が一番望んでいるんだ。)

 

 おばあちゃんを渡らせて見送る一部始終を見ていた2人は響に接近した。

 

「やーやー、また会ったね〜」

 

「響、こんにちは。」

 

 響は篭ったような表情でそっぽを向いた。

 

「なんのようなの?」

 

「見てたよ、見てたよ〜!君は今、おばあちゃんを助けたよね〜?」

 

 アケミが響の方に腕を乗せて笑顔を浮かべた。

 

「…!それがどうかしたの?」

 

「響、あのね。響はきっと誰かと手を繋ぎたいんじゃないかな?」

 

「違う、そんなこと…」

 

「そうなの?本当に違うの?わたしは違くないと思う。だって、響は生き生きとしていたんだよ?」

 

 未来が俯いてばかりの響の手をそっと握った。

 

「響の手はきっと誰かと繋ぐために…」

 

 その時、ノイズ出現の警報が鳴り響いた。

 

「ピヨモン!」

 

「うん!!」

 

 未来がデジヴァイスからピヨモンを呼び出した。

 

「ピヨモン進化!バードラモン!!」

 

 バードラモンへと進化して町外れに向かうとすでにノイズが暴れていた。

 

「させない!」

 

 アームドギアを振るいながらノイズの攻撃を飛行能力でかわし遠距離から未来はノイズを纏めて倒そうとした。バードラモンには人々の避難の誘導を任せ未来は応援が来るまで待っていた。しかし、イカ状のノイズが背後から未来を捕らえようとした。

 

「はああああああああ!!!」

 

 その時イカのノイズが顔面からはじけとんだ。

 

「…!」

 

 響はそのまま迅速にノイズを殲滅していった。

 

「響…!」

 

 未来が笑顔を浮かべると響は恥ずかしくなったのか目を背けていた。

 

「これは…!」

 

「どうやら彼女の説得には成功したみたいね。」

 

 マリアたちも駆けつけノイズは容易く撃破された。

 

「ねえ、本当にあなたは怖がらないの?こんな私を…もう1人の私がいるのに。」

 

 戦いの後響は未来に尋ねた。

 

「理由なんてないよ。どんなに世界が違っても響は響だもん。それを知っているからこそ私は何度だって手を伸ばす。それが私の知ってる立花響なんだから!」

 

「…ありがとう。」

 

 すると未来の後ろに響がついて来た。

 

「響?どうして?」

 

「協力してあげる…強い奴がいるんでしょ?」

 

「本当に!?」

 

「うん。」

 

 未来はこの時始めて並行世界の響の笑顔を見た。

 

(人だから、助けなきゃ…人だから、コロサナキャ…)

 

 それから響は未来とともに二課へやって来た。

 

「立花だな?私だ。小日向たちを守ってくれたようだな。礼を言うぞ。」

 

 翼も退院したばかりで今は休息期間に入っていた。

 

「はい…」

 

「もう、そんなに照れなくてもいいのよ?」

 

 照れで目を背けた響に対してマリアが肩に手を置いてポンポンと叩いた。

 

「はい…マリアさんもクリスさんも迷惑かけて、その…すみませんでした。」

 

「そんなに畏まらなくてもいいんだぞ?」

 

 クリスたちが苦笑いしながら響の顔を見ると初対面の時の刺々しさはもう無かった。

 

「ねえねえ響ちゃん、せっかくなんだから未来ちゃんとイチャイチャしなくていいの?」

 

 アケミが横からひょいとやって来て響に尋ねた。

 

「え?イチャイチャ?」

 

 目を丸くした響の耳元で囁いた。

 

「そーそ、一緒のベッドで寝るとかね。」

 

「…!?」

 

 響が顔を赤らめてその場から去った。

 

「ありゃりゃ。こっちの響ちゃんは初心なのね。」

 

「全くもう…いっつもアケミは茶化すんだから…」

 

____________________________

 

 全員苦笑いを浮かべ、その後響以外が弦十郎に呼び出された。しかしその表情はどこか険しかった。

 

「昨日、響くんに検診を受けさせて結果が明らかになったんだが…」

 

 弦十郎が見せたのは心電図に黒いモヤがかかったものだった。

 

「これって!」

 

「ああ、彼女の体は2年前のガングニールにより侵食を遂げている。しかもこの黒いモヤがそれを速めているんだ。」

 

「くそッ、こっちでもか!」

 

 クリスが拳を握った。

 

「まさか、そちらの世界の立花も!?」

 

「ええ…」

 

 マリアが自分たちの世界で起こった出来事を話した。しかし、それを盗み聞きしていた響が本部を飛び出したしまった。それから対策を練るべくマリア達は本部廊下で話し合っていた。

 

「カルマノイズを取り込んで融合が進められるなんて…」

 

「マリアさん、私の神獣鏡で…」

 

「無理よ!カルマノイズは未知数、下手をしたら彼女が死んでしまうわ!」

 

 マリアが未来の提案を否定したその時、警報が鳴った。

 

「大変だ、カルマノイズとゴライアスが現れた。場所は都内山中、急いでくれ!」

 

「これは!?」

 

 友里が現地の様子を把握するべくモニターを見ていたがすでにカルマノイズとゴライアスが響と戦っていたのだ。

 

「響ちゃん、すでに戦闘中です!!」

 

「なんだと!?」

 

____________________________

 

「あんたたちが私を呼んだの?いいよ、私1人で相手してやる!」

 

 ガングニールを纏った響はたった1人でカルマノイズとゴライアスを相手取っていた。

 

「はああああああ!!」

 

 拳で攻撃するものの、ゴライアスにはあたりもせず、両腕から放たれた光線を受けて響は吹き飛ばされてしまった。

 

(もう私は助からない、死ぬんだ!嘘つき!嘘つき!嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき!!!)

 

 響は先程自らの話を偶然聞いていたためこっそり本部を脱出していた時から、未来への失望の念がみるみる激しくなっていきそれに呼応するかのようにガングニールから鈍色の輝きが発せられた。

 

「ハアアアアアアアッッ!!」

 

 鈍色の輝きに包まれた一撃はカルマノイズの首を難なく飛ばして黒い気を再び取り込んだ。

 

「響ィ!」

 

 翼以外の装者たちがヘリで現場に到着した。デジモンたちも究極体へと進化させ万全の体制だった。

 

「このバカ!死ぬ気かよ!!」

 

 クリスが黒い気を受けた響に駆け寄ったが響が殴りかかって来た。

 

「うるさい、私に指図をするな!」

 

「お前何を!」

 

「手を出すな!手を出すなよ…」

 

「何を言ってやがる!ふざけんな!!」

 

 クリス達が援護に入ろうとしたが響は一人でゴライアスと戦っていた。

 

「響、いっしょに…「あんたが悪いんだよ!」」

 

 未来が説得するも響は防御もとらず攻撃を続けていた。

 

「あんたは私に隠し事をした!それが許せない!あなたが来たせいで…私の体はボロボロだ!!」

 

「なにを証拠にそんなこと!?未来ちゃんは響ちゃんを守ろうと…」

 

「うるさい!」

 

 アケミの言葉を無視して響が涙を流しながらゴライアスを殴りかかるがゴライアスの一撃で弾かれてしまい遠くの岩場に吹き飛ばされた。

 

「そいつは私のものだあああああああああ!!」

 

「あの子の元へ!」

 

「でもマリアさん!!」

 

「マリアの言う通り、グレたあの子にチューしてきなさい!」

 

 アケミがフェアリモンになりながらゴライアスに小回りを効かせた動きで未来を説得していた。

 

「はい!ここは頼みます!!」

 

 未来が響の元へと飛んで行くのを確認して3人はゴライアスを睨んだ。

 

「空気の読めないのを退場させますか。」

 

「よしマリア!行くぞ!!」

 

「ええ!!」

 

(ここから先はChange †he Furtureを聞きながら読むのを勧めます)

 

「ダブルスピリットレボリューション!ジェットシルフィーモン!!」

 

 アケミがジェットシルフィーモンへと変わってマリアとともにゴライアスを狙った。

 

「ぎしゃああああああああああーーーー!!」

 

 雄叫びをあげながら両腕で攻撃してきたが二人は攻撃をかわして腕に乗ることに成功した。

 

「サイクロンスマッシュ!」

 

「はあああああっ!」

 

 ジェットシルフィーモンの風車の打撃とマリアのEMPRESS†REBELLIONはゴライアスのがら空きとなった胴体を狙った。

 

「持ってけもう一発!」

 

 さらにGIGA ZEPPELINで上からの攻撃でゴライアスは大きな傷を負った。するとゴライアスが両腕を放ち必殺の光線を放った。

 

「ムゲンキャノン!」

 

「グロリアスバースト!」

 

 クリス達を守るようにムゲンドラモンとシャイングレイモンが必殺技で応戦した。しかし威力が拮抗してあたりが吹き飛んだ。

 

「チィッ!やっぱ一筋じゃ行かねえか!」

 

「まだまだまだぁ!!」

 

 するとゴライアスが辺りを見回し出した。

 

「よしいまだ!」

 

 クリスが叫ぶとゴライアスが地中へと潜ろうとした。しかし、多くの電灯がゴライアスを包み込んだ。

 

「間に合ったみたいだな、ゴライアスの弱点は光量の低い夜間!つけいるには多くの光を夜間に当て続ければいい!!」

 

 ゴライアスは日が暮れているにもかかわらず大量の光を目の当たりにして戸惑い出した。

 

「今がチャンス!一気に行くわよ!」

 

「言われなくても!デジモン達を借りるわよ!」

 

 ジェットシルフィーモンが構え光が発生した。

 

「ジェットシルフィーモン!ムゲンドラモン!シャイングレイモン!デジクロス!!」

 

 光が晴れると一気にジェットシルフィーモンX2がゴライアスの腹部を攻撃して上空に吹き飛ばした。

 

「そらららららららららら!!!」

 

 連続でラッシュ攻撃を受けゴライアスは光が照射されている地上から真っ暗闇な上空へと飛ばされた。

 

「行くぞ!」

 

「ええ!」

 

 地上ではすでにマリアとクリスが攻撃する準備にかかっていた。

 

「世界分の一を独奏てええええええええええ!!!」

 

<CHANGE †he FUTURE>

 

 明るくなったり暗くなったりしてすっかり弱ってしまったゴライアスを貫き、轟音が鳴り響いた。そしてゴライアスのコアらしきものもすぐに発見されその場に待機していた二課の職員によって無事回収された。

 

「これでよし!後は…」

 

 戦いを終えたマリア達が後ろを振り返ると巨大な虹色の光が見えた。

 

「行きましょう!二人が心配だわ!」

 

 マリアたちは駆け出した。しかし、森に入ろうとしたところに突如としてノイズの大群が現れてしまった。

 

「こんな時に…!」

 

 マリアたちが強行しようとしたその時、流れ星がキラリと輝いた。

 

「はあああああああああ!!」

 

 するとその閃光がノイズの大群を一撃で消滅させた。

 

「!?嘘…!」

 

「怪我はないか?」

 

 そこに立っていたのは先日絶唱による怪我で入院していた翼だった。

 

「翼!病院を飛び出して…」

 

「叔父様からは後で話を聞く。もう何も、失うもんかと、決めたから。」

 

 翼が先行して走り出した。

 

(ヘッ、言ってくれるじゃねえか。)

 

 クリスもかつて翼と戦った時の発言を思い起こしていた。

 

「行くぞ、立花や小日向が心配だ!」

 

「全く、無茶ばっかり!」

 

 マリアもため息交じりで走り出した。

 

「でーも、そういうのは嫌いじゃないわ!」

 

 アケミもフェアリモンの姿で宙を舞いながら3人を追いかけていった。


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