戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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今回、敵錬金術師の「言葉」に装者たちが追い込まれます。本人たちは一度乗り越えたことを他人がズケズケと語られえると嫌な気分ですよね?それで今回満を持して(?)ダイペンモンの登場です。全然出す機会もなく燻ってましたが今回の話的に出してもいいかなと思い出した次第です。


第195話 悪魔のささやき!暴走する裁き!!

 警報がなった。響たちは直ちにアルカノイズを迎撃するべく向かった。

 

「さてと、本格的に…!」

 

 その時、どこからともなく拍手が響き渡った。するとアルカノイズたちは次々と道を開けた。

 

「待ってましたよ〜!罪人、シンフォギア装者のみなさん。」

 

 中からシルクハットを被り無精髭を生やした男が現れた。

 

「御機嫌よう、僕は元パヴァリア光明結社の錬金術師のリュゲと申します。お見知り置きを。」

 

「ご丁寧に本体が生身とはいい身分だな!」

 

 クリスがアームドギアを構えようとしたらリュゲは手を広げた。すると全員、特殊空間に飲み込まれた。

 

「ここは?」

 

「はいはーいお待ちかね、お待ちかね〜楽しい楽しいリュゲくん劇場の始まりです!罪人どもの過去を余すところなく覗いて仕舞いましょう〜!」

 

 するとそこには響と翼が病院で会話するシーンが流れた。

 

「これって響さんと翼さんの…!」

 

「実に麗しい、実に感動的な演説じゃないですか〜!事件の負い目でなく誰かを守りために力を振るう、その上で人が敵だったらなぜかを問うという姿勢に私もうっかり涙です!」

 

 リュゲは目元をハンカチでぬぐっていた。

 

「それがどうした!?」

 

 メルキューレモンの拓実が睨みつけるがリュゲはニヤリと笑った。

 

「僕は肉弾戦より精神攻撃が趣味なんですよ。ですから言葉であなた方に挑戦するんですよ。続いて、このシーン!パチパチ!」

 

 嘲笑したかのような動作をとったリュゲはガリィと響が対面するシーンだった。

 

「君はルナアタックの時に覚悟を決めたはずだ、しかし!人助けの力で戦うのは嫌?おかしーいですねー!あなたはとっくに答えを出してるのに…それってつまり口だけってことになりませんか?」

 

「え!?」

 

「お前何を!」

 

 拓実が睨みつけたがリュゲに捕らえられてしまった。

 

「劇場ではお静かに…その牢屋にでも入っててください。」

 

 拓実を鉄格子のようなもので覆ったリュゲは冷ややかな笑みをから一転して馬鹿笑いを始めた。

 

「だってだって〜!あの時あなたは"人助けの力で戦うなんてできない!"なんてことを言ってたけど、あの後周りに無駄な面倒をかけさせマリアの体を傷つけさせた!あなたは人と理解したがろうと必死になんでしょうが僕からしたらあなたは所詮無駄に優柔不断拗らせて関係ない人が死ぬのを見ないふりのろくでなしにしか見えないんですよ。」

 

「そんな…!」

 

「所詮は傷つけることしかできやしない上に歌という免罪符であなたたちはねえ…己を誤魔化してるんですよ。血反吐を吐いてまで得た力でなぜ血に濡れたがらない?所詮同じ人の血、浴びようがたいしたことなどないでしょう?」

 

「それは…!」

 

 リュゲは響の頭をポンポンと叩いて踊り出した。そしてモニターにサンジェルマンを映しだした。

 

「おまけに人をいっぱい殺しまくった人と仲良く、なんてタチが悪いですね〜!やーい、やーい!この偽善者め〜!ウヒッヒヒヒヒ…」

 

 響の心情すら理解せずにリュゲは一歩的に響の戦いや日常を映し出していった。

 

「ふざけんじゃねえ!」

 

 クリスと調がアームドギアで攻撃を仕掛けてきたがヒラリとリュゲは身をかわした。

 

「おやおや?彼女が主演では不満でしたか。いいでしょう!第2弾はあなた方にしましょう!」

 

____________________________

 

 すると次に全員が見たのは深淵の龍宮のレイアとの戦いだった。そこではクリスが狼狽しているシーンが映されていた。

 

「そういうのを持ったら…残酷な世界に殺されて本当の独りぼっちになっちまう!」

 

 それを見た一行は開口して攻撃の手を止めていた。

 

「君は知っているはずだ、散々他人に迷惑をかけておいて許されている!

 その結果自分には許される価値があるのか、生きているのに不足はないか、そう思ってるのではないですか?そうやって閉じこもっているから周囲の足を引っ張る君も惨めな後輩たちも揃って可哀想ですね〜」

 

「勝手なことを言うなああああ!!」

 

 逆上した切歌に対してもリュゲはうすら笑みながら切歌を見つめていた。

 

「おやおや、お仲間が貶められて悔しいのですか?しかしあなたも可哀想だ…」

 

「何を言ってるデスか!」

 

 切歌の攻撃をかわしながらリュゲはなおも嘲った態度を取った。

 

「君はよくそこのピンクの人といられますね。彼女は君を狂わせ屈辱すら味合わせた魔性の女なんですよ?

 自分の事実すら気付かずに親友すら追い詰め、挙句信頼していた人物を追い込んだ戦犯…!そして第二の母を殺した真犯人なんですよ?」

 

「うっ…!」

 

 調も動揺してたじろいでしまった。

 

「違う!調は…調は!」

 

 切歌は他の2人と違って口ごもってしまった。

 

「あなたはなんてことを…!調ちゃんだってそうしたくてしたいわけじゃないのにどうして!?」

 

 響も動揺しながらに拳を放つが冷静さを欠いていたため、軽々とかわされた。

 

「どうして?これは事実、事実であれば悪意だろうと構わないのです。

 僕はねえ、人の過去を見れるんですよ。そこから人の忌み嫌うものを見てその人間を貶める。それこそが楽しみなのです。ただ己が弱かったからではありません。生きるということは他者を殺し、奪うことなのです。どんな風に傷つけようと苦しめようと他者の苦しみは反転して喜びに変わるものだと思います。」

 

「確かに、人は悪いことだっていっぱいする。けど、それを反省して明日を生きて行くんだよ。誰かに一方的に決める権利なんかない!」

 

 響も戦わずに話し合いに持ち込もうとしていたがリュゲはそれを聞いて腹を抱えながら笑った。

 

「あっははははははは!まさかそんな綺麗事が聞けるとはこれまたいいものいただきました!けど…真実であればいいのです。」

 

 響たちはその言葉を前に口ごもった。自分たちが過去にしてしまったことをこうして言及、非難されてうまく反論できずにいた。

 

「真実は全ての人間にとって良きものとは限らない。人生すら狂わせるものだ。故に僕は他人の悶え苦しむ様を見ていると生きている感触が味わえるのですよ。苦しむことで生きてるから苦しいんだなってことがわかる。そうは思いませんか?」

 

「…随分と陰険な奴だね。」

 

 今まで黙々と話を聞いていた爽谷がリュゲに対しても嫌味を呟きながら構えをとった。するとリュゲは起き上がって爽谷を見つめた。

 

「フン、そう言う君も随分可哀想な子だねえ、お姉さんに会えたのに尊敬する人たちを次々と無くした挙句に家族すら自分から傷ついていく。守りたいのに勝手に自分から傷つこうとしている、実に気の毒だ!」

 

「黙れ、君は僕と言う人間の過去をそうやって評することはできたかもしれないけれど、所詮過去のもの。進化する人の力を甘く見ないことだ!」

 

 リュゲの冷やかしに爽谷はため息一つで受け流した。

 

「いいでしょう!第3幕は君を…!」

 

 モニターに何かが表示されたが爽谷はそれに構わずブリザーモンの拳で顔面を攻撃した。

 

「お前の問答には聞き飽きた!」

 

「ごっぷぁああああああ!!」

 

 リュゲは呆気なく吹き飛ばされて地面に落下した。

 

「お、おのれええ…行け!」

 

 リュゲは逆上して立ち上がった。

 

<ピエモン!コンバート!>

 

 どこからかリュゲはデジヴァイスからピエモンを呼び出した。さらに待機させていたアルカノイズを全員爽谷に向けさせた。

 

「人を長い目で見てのお前の判断は正しいのかもしれない。だが、まだ死んではいない!生きているうちに人は転換点を迎え成長するのだ!見せてあげるよ、これが進化するってことだ!ダブルスピリットレボリューション!ダイペンモン!」

 

 光に包まれた爽谷は青いペンギンへと変化した。

 

「今まで僕はこの姿は役に立たないだろうと思ってならなかったけど、お前に見せてやる。決めつけでは測れない可能性をね!」

 

 ダイペンモンは鈍重な動きでピエモンを追い込むが敏捷な動きを前にしてダメージを受けていた。

 

「あんなすばしっこいのに大きいのじゃ相性悪いデス!」

 

「助けに行かないと!」

 

「待て2人とも!もはや決着はついた。この勝負はあいつの勝ちだ。足元を見てみろ!」

 

 拓実に止められた2人はピエモンの足元を見ると徐々に凍りついていくのがわかった。さらにアルカノイズたちも動きが鈍くなっていた。

 

「ダイペンモンは氷の十闘士、体の表面に氷を纏わせてダメージを受けることで氷を足元に巻いてそれを成長させることができるのさ。」

 

「バカな!?そんな対して強くもない雑魚に負けるだと!?」

 

「行ったはずだ、人は生きているから成長する!お前のように今を生きて成長している人間を裁くことはできない!さあ思い知れ氷の衝撃を!ダブルアイスデス!」

 

 右手のアイスと左手のアイスの連続攻撃にピエモンは吹き飛ばされて消滅した。それに伴いアルカノイズたちも一撃で全て葬られた。

 

「バカな!この私が破れるなどあってたまるものかあああああ!!」

 

 リュゲは見苦しくも後ろから響を刺そうとナイフを構えたが拓実のパンチ一発で気絶した。

 

「所詮上っ面だったわけか、惨めだな。お前の真実、それは醜い小物だ。」

 

 その後リュゲはSONGに捕らえられた。

 

 

 

「人の心を見ることができる錬金術師か…厄介な相手だったな。」

 

「はい、でも所詮人のことを知ったかぶったやつで大したことはなかったです。」

 

「あいつは言葉で挑むとか大口叩いてあの様じゃ説得力がねえよな。」

 

「そうだねクリスちゃん。」

 

「人は間違いあってこそ。いっぱい間違えて明日に繋がないといけないよね、切ちゃん。」

 

「ん?そうデスね!」

 

 響たちは静かに微笑んだ。

 

「しかし、デジメモリとデジヴァイス…その出どころを探らなければならないか…」

 

 弦十郎が腕を組んでいると本部に通信が入った。

 

「司令、大変です!リュゲを護送していた車両が爆破されリュゲもろとも乗っていたものたちが全員死亡しました!」

 

「なんだと…!口封じのつもりか?」

 

 一方、別の錬金術師がリュゲを連行していて爆破された車両を見ていた。

 

「リュゲよ、少し頭を冷やすんだな。お前は相手を過信して大胆になりすぎた。しかしお前のおかげで目的のものは手に入った。これで箱舟は完成へと近づいた!あの方の野望はまた一歩…!」

 

 錬金術師の暗躍に次ぐ暗躍は世界に未だ大きな影を残していた。


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