戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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今回から3回の間SONGが海外任務に当たります。XDUのヴァルキリー・エンドレスサマーをプレイ中に「海外任務」というワードから今回の話を練ることになりました。この海外任務ではある人物同士の関わりが最後の方で明らかとなります。ぜひお楽しみください!


第192話 内乱の影、お姫様を守れ!

「ふんふんふーん!」

 切歌は1人帰り道を歩いていた。今日は調が日直であるため先に本部に向かっていたのだ。その足取りは軽く、あっという間に本部の司令室に到着する。

 

「来たか、調くんは?」

 

「調は今日日直なので遅れてくるデス!」

 

「そうか、ではミーティングを始めよう。調くんに関しては後ほど個別で説明するとして…」

 

 すでにマリアと翼はロンドンに帰っていたためこの場に不在だった。それでもSONGに任務はやってきてしまうものなのである。世界が何かしらで乱れた時、対処する力は必要とされる。

 

「明日からオセアニアの小国、フルメーン国に向かうことになった。その際、我々SONGには王族のボディーガードを務めて欲しいという連絡が入ったのだ」

 

「俺たちがボディーガード!?」

 

「おいおい!?なんの冗談だ?なんでお姫様なんかを守んなきゃいけないんだよ?」

 

 拓実やクリスが首をかしげると弦十郎が藤尭に合図した。モニターに次々と映されて来たのはいくつかの廃墟と旗印のようなものが置かれていた。そのうちの一枚に響がハッとする。

 

「あれって、パヴァリアの…!」

 

 響が旗を見て反応を見せた。

 

「実はフルメーン国では最近、何者かによるクーデターが計画されているんだ。

 

 その中でパヴァリア光明結社の残党が度々目撃され、反勢力ではアルカノイズもすでに確認されてるんだ」

 

「じゃあ早速バルベルデみたく…!」

 

「それはいかんのだクリス、先程ドゥフトモンに連絡を取ったが今のところ国連はその協議を始めたばかりで可決するには時間がかかるのだ。バルベルデの時はパヴァリアの組織によるアルカノイズの戦力投入が大体的に分かったからこそ動けたが今回はまだその確信がない。だからこそ国連は慎重に動く必要があるのだ。下手に介入させて敵を取り逃がしてはならぬからな」

 

「そういうことかよ!」

 

 クダモンは補足するとクリスが悔しそうに椅子に座り直した。

 

「じゃああたしたちはそれまでの間、王様たちを守るんデスね?」

 

「ああ、現地では各地慎重な調査を行なってくれ。敵が尻尾を出す前になんとしてもとらえるのだ!」

 

「はい!」

 

____________________________

 

 次の日、響たちはフルメーン国に向かった。

 

「未来、ごめんね。協力してもらって」

 

 ちなみに今回は未来も一応SONGの協力者ということもあってか任務に参加し、皆におにぎりを作ってみんなに渡して回っていた。

 

 長期任務中では食事を済ませるのは出来るだけ短時間で、という弦十郎の考えや響たち装者たちの経験がそうさせたのだ。

 

「ううん、響たちが戦ってる間でも私は王様たちを守れるからってことで手伝って欲しいって言われたからびっくりだよ」

 

 既に到着して数時間、臨時の本部テントを敷いて作戦に臨もうとしていた。

 

「お待ちしておりました、SONGの方々」

 

 現れたのはオレンジの兜を被り、顔を仮面で隠した普通体型の青年だった。

 

「私はエイル、フルメーン騎士団長になります」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 未来は今回特別に姫を護衛する役に回っていた。彼女はギアも持ってない分これといって物騒でもなくむしろ同い年の姫を安心させるのにうってつけだったのだ。

 

 それから一行は街へと向かった。

 

「今この街の首都メレーンを含めると12の島の村があります。どこも小さな島の小さな村なのですが近年はテロリストたちで各島の村人たちも慌ただしくなっています。その原因で騎士団に志望する若者も年々減少の一途を辿ってるのです」

 

「てめえ、何見てんだよ!」「はぁ〜!?そっちが見てんだろうが!!」

 

「ドロボー!」

 

 車で響たちが見たのは治安が悪いからか街中で殴り合いを始める男たちに盗人たちと荒れ果てた現状だった。

 

 それからエイルの話を聞くうちに全員城についた。

 

「ここから先、国王と姫様とお会いになります」

 

「待っていましたよ、あなた方が国連組織SONGの方々ですね」

 

 部屋に入って全員は唖然とした。

 

「おや?そちらの方はわたしとそっくりですね」

 

「あたしがもう一人いるデス!」

 

「すごい偶然…」

 

「御機嫌よう、私はバシーリカ。話には聞いてましたよ」

 

 緑のドレスに身を包んだバシーリカはお辞儀した。

 

「バシーリカ様、国王様は今は病の身。一刻も早く跡を継いではいかがでしょうか?」

 

「それには及ばん、エイル」

 

 そこに現れたのは長身のヒゲを生やした男だった。

 

「ダリア様!」

 

「今まだ国王様は健在、今ここでバシーリカ様に負担を背負わせることの辛さはお前も知っていよう」

 

「ははっ…」

 

「…いくら国連組織とはいえこの国を荒らさないでくれよ」

 

 ダリアは響達を睨みつけて立ち去った。

 

「なんなんだよ、あいつは!」

 

 クリスはダリアの態度に苛立っていた。

 

「いいやクリス。あれが当然のリアクションさ」

 

 拓実がダリアの背を見つめながら呟いた。

 

「いくら自分の国にアルカノイズがいるとはいえ、そいつらを倒すのにクリス達が派手に建物とかぶっ壊しても再建するのは基本的にあいつらだ。ああいう発言は国を大事にしてる証拠だ」

 

「そうだね、シンフォギアでも毎回毎回派手に色々壊されちゃ国としては溜まったもんじゃないからね」

 

 爽谷もうなづいた。

 

「この国の現状の関してなのですが、今現国王で私の父____フラミンゴは高齢の身で病に苛まれているのです。すると突然この国にアルカノイズが現れだしたのです。騎士たちが毎晩交代で各島を見張っているのですがアルカノイズの痕跡が数日前から消えてしまったのです」

 

「それで私たちの協力が必要になったんですか?」

 

「そうですわ。姫としてあなた方のお力をお貸しください」

 

「任せてください、お姫様!」

 

 響がそのままバシーリカ様の手を握った。

 

 それから拓実と爽谷は本部の停泊している港に待機しつつ、各島のここ数日の報告書に目を通していた。

 

「やっぱ、どこかしこもアルカノイズが毎日現れてるらしいが一つ妙な記述があるな。それに数日前からアルカノイズの姿が消えたってのも、なんだかおかしいと思わないか?」

 

「うん、アルカノイズはひとしきり暴れるとすぐに姿を消してしまうにしても隠されているというか僕らの動きが察知されてるようにも見えるね。

 

 しかも毎回現れてるのはほんの数体、それにこの報告書は一見するとアルカノイズが特定の島に密集して出現しているんだ」

 

 爽谷が見せた分布図と拓実が今読んでた騎士団の資料を照らし合わせるとなにかハッとした表情を浮かべた。

 

「もしかしたら…!」

 

「?どうしたの?」

 

 拓実は城に連絡を取って単独で行動を開始していた。

 

____________________________

 

 一方切歌たちはバシーリカとトランプで遊んでいた。

 

「これがトランプ…すごいです!」

 

 バシーリカはフルメーン国であまり見ないトランプに感心していた。

 

「そうでしょ、これでみんなでババ抜きってゲームができるんだよ」

 

「すごいです!みなさんもこんなすごい遊び道具があって楽しそうですね!」

 

「あんまり、バシーは遊んだりしないんデスか?」

 

 切歌が尋ねるとバシーリカはフフフと笑った。

 

「日頃は部屋でお勉強したり、他所の国の本を読んでます。この国も今は小さくて貧しい国ですが信じてるんです。いつか笑顔あふれる国になることを」

 

「その夢、叶うよ!きっと諦めなきゃバシーリカちゃんならきっと!」

 

「はい!響さん、ありがとうございます。そういえばあの勇敢そうな二人はどこにいったんですか?」

 

「拓実さんと爽谷さんならあの2人ならいま今回の事件の詳細を報告書で確認してるよ」

 

「なんだ?あいつらが気になんのか?」

 

「あの2人はうちの国の騎士っぽいような感じがするんです。だからかな?ちょっと護衛してほしいというかなんと言うか…」

 

「そういやお前んとこの騎士って何人くらいいるんだ?」

 

「騎士たちは大体エイルを始めとして10人はいるわ。でもエイル以外はあんまり会わないから名前がいまだに覚えられないんです」

 

「そうなんだ…」

 

 その時、通信機が鳴った。

 

「立花さん、やべえものを見つけたんだ!早く来てくれ!エイルさんもいるんだ!」

 

 響たちは拓実たちの元へと向かった。

 

____________________________

 

「来てくれたな、見てくれ」

 

 そこにあったのは苦悶の表情のまま死んでいた2人の男だった。しかも片方は強烈な死臭を放っていた。

 

「何ですかこんなものを見せて」

 

 響たちもその酷さに思わず鼻をつまんだ。

 

「実は資料からアルカノイズが頻繁に発生しているのはこの2人の騎士が管轄しているエルナドとアルヘナっていう島だと分かったんだ。それで各島の騎士たちが眠る騎士の慰霊碑を訪れて確かめてたらビンゴだったんだ」

 

「この2人は間違いなくこの国の者だ。しかも片方は死後硬直もあることから何年も死体が放置されているのがわかる」

 

「まさか…!」

 

「そうだクリス、今いる騎士たちのうち2名は真っ赤な偽物でここにいる2人とすり替わったそいつらが主犯の可能性が高い」

 

「そうだとしたら急がなくては!こうしてはいられない!」

 

 エイルは死体を見つめながら城へ走り出した。

 

「?どういうことですか?」

 

「もし彼のいうことが本当なら、今日は騎士たちが全員王族と共に集結する日でもあるんだ。

 

 もしかしたらその場で…王と姫は抹殺されてしまうかもしれないんだ!しかも運の悪いことにあと数分でそれが始まってしまうんだ!」

 

「そんな!」

 

「急ごう、司令にはこのことを連絡した。数時間後には応援に来れそうだから偽物の化けの皮を剥がしてやろう!」

 

「ああ!」

 

 クリスたちは王宮へと向かった。


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