戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
「拓実くん、爽谷くんがベルフェモンにダメージを与えられました!!」
「そうか…しかし、ベルフェモンは厄介だ。実力自体はデーモンやリヴァイアモンに負けず劣らずだが奴の眠りが覚めて仕舞えば別だ。奴の火力は瞬間的なら魔王随一だ。果たして手に負えるかどうか…!」
クダモンはベルフェモンと直接戦ってはないもののガンクゥモンからベルフェモンの恐ろしさは聞いていた。しかし、仮に今向かったとしても自分1人ではベルフェモンは止められず、ドゥフトモンたちに協力を要請したが未だに現れずにいた。
「大変です!!ベルフェモンから高エネルギーが検出!どんどん高まっています!」
「目覚めた…だとぉ!?」
一方響たちもベルフェモンに異変が起こっているのがわかっていた。
「何が起こってるんだ!?」
「可愛い顔が徐々に…!」
ベルフェモンも全身がみるみる変化していき、可愛らしい姿から凶暴な姿へと変化した。
「嘘…!変化した!?」
「まだかの二段変形!?」
響たちがベルフェモンを見つめているとベルフェモンは辺りを見回していた。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーー!!!!!!!」
ベルフェモンの咆哮を受けデジメモリのデジモンが一撃で消滅してしまった。
「しまった!回復源が!」
「咆哮だけでデジモンが消えた!?」
「どうやら…お互い回復手段がなくなった以上、覚悟を決めるしかないようだな。」
「そう…みたいだね。」
「「ダブルスピリットレボリューション!!」」
回復手段を失った2人は現状最強のベオウルフモンとアルダモンに変化して飛びかかろうとしたが羽ばたき一つで押し負けていた。
「まだだ!!ブラフマストラ!」
両腕から火球を連続発射してベルフェモンになんとかダメージを与えたものの、相次ぐ連戦で体力は十分にあるものの疲労困憊となっていた。
「ツヴァイハンダー!うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
ベルフェモンに対して正面からベオウルフモンが亜光速で切り掛かって連続攻撃を放つがベルフェモンは全く動じることなくアルダモンとベオウルフモンは一撃で叩き落とされた。
「そんな…!ダブルスピリットレボリューションも効かねえのかよ!?」
「くっ!エクスドライブさえあれば!」
戦えないクリスたちが各々悔しさをにじませていた。
「ギフトオブダークネス!」
ベルフェモンの一撃が2人を襲おうとしたその時、空からジエスモンが2人を救った。しかしその体はボロボロであった。
「ジエスモン?」
「すまない…やつに邪魔されて遅くなった。」
拓実たちもスピリットレボリューションが解けて疲労困憊であった。
「バルバモンめ…シンフォギアが調整しなければならないというタイミングを狙ってベルフェモンをぶつけるとはな。」
「水琴、大丈夫か?」
「すいません…ダメでした。踏ん張りどきがこのザマだ…」
息を切らしながらだがなんとか拓実は翼に支えられ立っていた。
「はあ、はあ…あいつは強すぎる…!僕たち2人じゃ勝てない!!」
爽谷も支えながら起き上がったがメガネのレンズの片方が割れており、頬が軽く出血していた。
ベルフェモンは雄叫びをあげ辺りを見回していた。
「もうどうしようもないデスよ…」
「私たちの負け?」
「サンジェルマンさんたちがあんなことになってまでしてせっかく終わったのに!こんなのあんまりだよ…」
ベルフェモンの圧倒的なパワーとシンフォギアが使えない状況下で響たちにもはや勝ち目がなかった。その時、スピリットが爽谷と拓実のデジヴァイスから飛び出し、眩い光を放ち響たちを包んだ。
「な、何!?いきなりスピリットが!!」
「なんなのよおおおおおお!!!!」
別のところにいた未来とアケミも光に包まれた。
「装者ならびに車両にいた未来ちゃんとアケミの反応途絶!!」
「どこにいるのか探るんだ!」
「一体どこに行っちまったんだよ!?」
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目を開けると響たちは真っ白な空間に立っていた。
「いったいどこだここ?」
「未来!?どうして?」
「響!?」
響たちも何が起こったのかわからないでいるとスピリットが合体して10体のデジモンの姿が現れた。
「まだ諦めてもらっちゃ困るぜ。」
「スピリットからどうしてデジモンが出て来たの!?」
「君たちが、俺たち十闘士を目覚めさせてくれたのさ。」
「あれってアルダモン!?」
「それだけじゃないよ、ベオウルフモンにジェットシルフィーモンにライヒモンみたいなデジモンが全て揃ってる!」
響たちの周りをスピリットが囲んでいた。するとデジモンたちのホログラムが現れた。
「まさかあなたたちはスピリットの元になったかつての十闘士デジモン?」
アケミが尋ねると炎のデジモンがうなづいた。
「そうだ。俺たちは魔王との戦いで死にはしたがこのスピリットに意思は入ってたんだ。そしてお前たちが俺たちの心を目覚めさせてくれたんだ。」
「私たちが?」
すると響たちのデジヴァイスが輝き傷ついたパートナーたちが回復した。
「嘘、回復した!?」
「今地上は闇に染まろうとしている。しかし君たちの絆が生んだ力と正義ならそれを変えられる。」
響たちが見たのは一方的に攻撃されるジエスモンと破壊されて行く街並みだった。ビルも家も学校も一撃で破壊されていった。
「けど私には…」
デジモンたちの話を受けて響は俯いてしまった。
「響?」
「例えば、もし悪い奴がいて誰かを困らせるなら拳でなんとかできるのは分かってる。けど…正義を信じて握りしめたもの同士の戦いは簡単には解決できない…」
サンジェルマンの件やキャロルの件で響の胸に重いものがのしかかっていた。
「立花…」
「響さん…」
翼たちも響の不安に耳を傾けていた。
「昨日はできたけど明日にできるかわからない。明日の私は正義を信じて握りしめて変えられるのかどうかが…」
「そんなのわからないよ。だけどね。響の手を出されてみんな繋いでいられる。たとえ信じてるものがわからなくなったって私は…
ううん、手を繋がれたみんなは絶対に離したりはしないよ。」
「未来…」
未来が俯いたままの響の手をそっと握った。
「ああ、そうだよ!こっちはみんなお前が手を伸ばしてきたから繋いだんだ!お前から離しやがったら何のためにあたしらは手を繋いだんだよ!?」
「クリスちゃん…」
「立花のおかげで私も変わることができた。自分だけで何かをしようと思わなくなったのは立花と共に戦ったからだ。」
「響さんはいつも無茶をするけどそこが羨ましい。やりたいことをやれるから。」
「それに響さんは今日誕生日デス!今まででの大事なものを大切にするだけじゃなくてこれから増えるものも大切にして欲しいんデス!」
「あの時、諦めていた時の私にかけてくれたあなたの言葉を忘れないわ。だから諦めるな!」
「温いや甘いと言われても立花さんには協力してくれる仲間がいる限り僕らはとことん付き合えるんですよ。まあそういうのが好きだからってのも考えられますがね。」
「1人じゃ無理でもみんななら可能性は増えるもの。可能性は作れるのよ。そしてあなたは色んな子に可能性作ってるんだから!!」
「正直手を伸ばしたらどうにかなったりはしたしこれからも大丈夫だと思うぜ俺は。」
「みんな…!」
響がみんなの励ましを受けて響は思い切り笑った。
「そうだね!未来やみんなが言うんだ!きっと間違いない!」
「決まりのようね。」
落ち込んでいた響を皆が励ますとデジモンたちは笑みを浮かべた。
「じゃあお前らに俺たちの持つ今まで眠っていた力を託す!!お前たちのハートに火が付いてればできねえ事はねえ!俺はエンシャントグレイモン!火の十闘士だ!心の炎を冷ますなよ!」
火のスピリットが爽谷に向かっていった。爽谷はうんとうなづいた。
「君たちの友情と信頼は何よりの宝物、大事にしなさい。私はエンシャントイリスモン、風の十闘士です。」
風のスピリットが翼の手の上で回り始めた。
「かけがえのない命を救おうと一生懸命になる君たちはきっと誰よりも優しいはずだ。
木の十闘士、エンシャントトロイアモンだ。」
未来の手元にゆっくりと木のスピリットが流れてきた。
「壁があったら立ち止まるな!ぶつかって答えを手にしろ!土のエンシャントボルケーモンだ!当たって砕けるんだ!!」
土のスピリットが響の目の前に降ってきた。
「困難にくじけてはいけない。困難に出会った時に一人一人の持っている力強い勇気を忘れるな。氷、エンシャントメガテリウモン。」
氷のスピリットがクリスの周りで静止した。
「覚えておくんだ!氷も風も火に変わり、火が大地を清め、木を生むんだ。そこから生命は始まるんだ!!」
5人の手にしたスピリットが激しく輝いた。
「光は絆だ。誰かに受け継がれる。お前たちも誰かにこの光を受け継ぐんだ。それが光の十闘士であるこのエンシャントガルルモンの願いだ。」
拓実の元にゆっくりとスピリットが飛んできた。
「HEY!HEY!HEY!雷のように激しくやっちまうんだYo!そんでもって思いっきり痺れちまうんだYo!雷のエンシャントビートモンだYo!」
雷のスピリットが荒々しくマリアの元にやってきた。マリアもやれやれと言うような表情を浮かべたがうなづいた。
「この世の真理は限りなく難しい。ですが知れば己の見通す目が成長します。
おっと、無駄話でしたね。鋼のエンシャントワイズモンになります。」
調が鋼のスピリットを手にして笑みを浮かべた。
「全ての命は水で始まる。汚れれば命は終わる。心の海が汚れないようになさいな。水、エンシャントマーメイモンよ。」
切歌が水のスピリットを受け取って鼻さすりで了承した。
「闇が広いから光が綺麗になるのだ。闇を悪と決めつけるな。闇は光をひっそり支え、そっと手に掴め。
闇の十闘士の我、エンシャントスフィンクスモンなり。」
「光と闇は表裏一体、雷が水とともに嵐を呼び人はその鋼の心で混乱の渦中に眠る真実を見極めるのだ!」
「みんなの言葉は受け取った。俺たちに力をくれ!!」
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全員がスピリットを手に取った。するとデジモンたちは笑顔を浮かべ響たちはベルフェモンのいる場所に立っていた。
「嘘!?響ちゃんたち、ベルフェモンの正面にいます!!」
「無茶だ!もう切り札は残ってないんだぞ!?」
「もう負けない!行くぞみんな!」
「「はい(おう)!!」」
爽谷が響、翼、クリス、未来とスピリットを構えた。拓実たちも同様にスピリットを構えた。
「「ハイパースピリットレボリューション!!」」
そう唱え、スピリットを全員のデジヴァイスでスラッシュするとスピリットが集められ、光を放った。
「バカな!?もう一段階あったのか!?」
そして火と風、氷、土、木が一箇所に集まり大地を割って竜騎士をかたどった姿へと変化した。
「カイゼルグレイモン!」
一方、光と闇、水、鋼、雷も一つになって閃光を放ちながらオオカミのような人型デジモンに変化した。
「マグナガルルモン!」
「あれは!!」
ジエスモンもベルフェモンの攻撃を防ぎながら攻撃していたが経験が浅くまるで通用しなかった。
「よし!行くぞ!!」
(ここから先はThe last element を聴きながら読むのを勧めます)
戦場に現れた2体のデジモンはベルフェモンと向かい合っていた。
「データベースにもこの2体は確認されません!!」
「かろうじて十闘士の属性と思われる要素はいくつかわかります!」
「限界を超えた先の力なのか?」
「これが十闘士の真の力!?」
響たちは融合して一つの空間に立っていた。
「どうやらそうみたいだな。」
「ぐわおおおおおおおお!!!!」
ベルフェモンが襲いかかり腕を振り下ろした。それをヒラリとかわしたカイゼルグレイモンとマグナガルルモンは旋回した。
「まずは雷の力から!スナイパーファントム!」
マグナガルルモンの胸部と右腕のレーザーがベルフェモンの腹部を狙った。
「なら次はガイアの力だ!行くよ未来!!」
「うん響!大地は生命の陽だまり!だから私もお日様になる!」
「「九頭龍陣!」」
カイゼルグレイモンは武器である龍魂剣から九頭の龍を放ちベルフェモンは受け止められずに後方に退いた。
「ぐおおおおおおおおおおお!!!!」
「次は鋼と水の力だよ切ちゃん!」
「はいデス!鋼の強靭さと水の軽やかさを力に変えてぶっ放すデス!」
「「マシンガンデストロイ!!」」
両腕と胸部から放たれたレーザーはベルフェモンを全方向から攻撃した。
「ギフトオブダークネス!!」
両腕の攻撃を受け、2体は吹き飛ばされて地に叩きつけられたものの、すぐに立ち上がった。
「ならお次はこいつだ!はあっ!!」
マグナガルルモン全身の武器を捨てて小柄な姿になった。
「雷の一撃を!」
「闇と共にやっちゃってちょうだい!!」
「はい!闇と雷の力、お借りします!!」
捨てた武器からビームサーベルらしきものを取り出すとマグナガルルモンは超スピードでベルフェモンを攻撃した。
「スターライトベロシティ…光の速さでお前を攻撃したんだ!」
「ぐおおおおおおおおおおおお!!!!」
ベルフェモンが雄叫びをあげて2体を握りつぶそうとしたが、2体ともそれに動じていなかった。
「はああああああああああああ!!!!!」
カイゼルグレイモンが身体中から熱気を放って手に火傷を負わせた。
「よし!!正面から!」
「「炎龍撃!!!」」
「「スターライトベロシティ!!」」
炎を纏った一撃と光の一閃が重なり正面からベルフェモンの腹部を貫いた。
「ぐおおおおおおおおおお!!!!」
ベルフェモンは雄叫びをあげながら消滅した。
「勝った!!俺たち勝ったんだ!!」
「これでようやく一安心ってとこかしらね。」
「やはり君たちは素晴らしいな。」
ジエスモンが話しかけてきた。
「大丈夫何ですか!?その傷…」
「大丈夫さ、デジタルワールドで治療に専念すればすぐにこんな傷は治る。それよりも君たちは新たな伝説を作ったんだ。だから君たちはもっと変わることができる。さらばだ。」
ジエスモンはボロボロになりながらもその場から姿を消した。
「じゃあ帰ろっか私たちも。」
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響たちが歩き出して、迎えの車と合流すべき歩いているとフラフラしながら歩く人影を見つけて。
「お前!目を覚ましたのか?」
影の正体はサンジェルマンに気絶させられていたリコリスだった。
「どうやってここまで!?緒川さんがいるから逃げられないはず!」
「目覚めてすぐに手持ちのテレポートジェムを使って脱出したんだ。その転位先からデジモンが出てくるのが見えたんだよ。
ところでお前ら、サンジェルマンはどこいったか知らねえか?」
その言葉を聞いて一行は閉口してしまった。
「お前ら…どうして黙ってんだよ?おい、なんか言えよ…」
「実は…あの錬金術師さんたちは消えてしまったんです。」
未来のその一言にリコリスは唖然とした。
「嘘だ!!そんな話信じられるか!!てめえ、どういうことがあってそんな嘘を!?」
リコリスが怒りを露わにして手を構えた。
「もうやめましょう!戦いは終わったんです!」
響がリコリスの前に立った。
「ふざけるな!お前らはそうかもしれないが俺はどうなる!?俺は何のために何百年も動いてたんだ!?それなのにこの結末を受け入れろというのか!?」
次第にリコリスからは冷静さが失われ呼吸も荒くなっていった。
「残念だけどそうなってしまうわね…」
「嘘だ…嘘だ…嘘だそんなことおおおおおおおおおおおお!!!」
「リコリスさん…」
「うわああああああああああああ!!!!
何故だ!なぜ、何故だ!!!何故だああああああああああ!!!!!」
空に絶叫が木霊した。絶叫しながら水を周辺に撒き散らし、拳を握り締めて出血するまで地面を叩いていた。するとひとしきり叫んだリコリスは1人フラフラのまま歩き出した。
その様子を装者たちは何もいえずに立ち尽くしていた。
「どこへ行く!?」
「信じていたもののために尽くして、何も届かなかった虚しさを味わったことがあるか?」
振り返ったリコリスの表情は何もかもを諦めたかのような表情だった。そして装者たちに術式をかけた。
「俺にはもう、戦う意味すらない…守りたいものすら何もない。いっとき世話になった礼だ。じゃあな」
術式を受けるとみるみる傷が癒えて行った。
「傷が癒えてくデス!」
一行には何もかも失った錬金術師の背中が見えていた。立花響バースデー作戦はここに終結したのである。
いかがでしたか?ハカメモでもカイゼルグレイモンとマグナガルルモンは愛用してました。ぶっちゃけ後半の敵に対してだと結構活躍させてました。それでも貫通系統の技がないのは残念…
次回、AXZ編が完結です。その後は詳しく次回で解説します。
最後に十闘士のイメージCVを載せて終わらせます。
エンシャントグレイモン イメージCV:竹内 順子
エンシャントガルルモン イメージCV:神谷 浩史
エンシャントイリスモン イメージCV:佐藤 聡美
エンシャントボルケーモン イメージCV:西村 朋紘
エンシャントメガテリウモン イメージCV:渡辺 久美子
エンシャントトロイヤモン イメージCV:乃村健次
エンシャントスフィンクモン イメージCV:鈴村 健一
エンシャントワイズモン イメージCV:増谷 康紀
エンシャントマーメイモン イメージCV:七緒 はるひ
エンシャントビートモン イメージCV:千葉 進歩