戦姫絶唱シンフォギアDigitalize   作:ジャン=Pハブナレフ

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今回は前回捕らえたリコリスの尋問です。ここまででロイヤルナイツがすでに半数でましたが、まだ響たちがあってないのはガンクゥモン
にエグザモン、オメガモン、クレニアムモン、デュークモンそしてアルファモンになります。彼等をどう出すか今の所悩んでます。


第141話 希望への模索!

「そんなことがあったのか…やっぱ、サンジェルマンたちの狙いがわかった以上こちらから先回りはしときたいものですね。」

 

「そうね、今エルフナインが対策を模索してるわ。時間はかかるでしょうけど…」

 

 拓実と爽谷は無事復帰して戦いの様子を翼から聞いて、LiNKERを注入したマリアたちと訓練を始めた。

 

「さてマグナモン、お前が来たということはなにか分かったのか?」

 

「まあな。ドゥフトモンにジエスモンも来たか。」

 

「私はこの姿ではハックモンなのだが、まあいいでしょう。」

 

「それでいきなり我らを呼んでどうした?」

 

「デジタルワールドでは最近悪しき人間の横行でデジモンが次々と殺されている。」

 

「なんだと!?デジタルワールドに入れるのは一部の国以外ありえん!」

 

「恐らく何者かがゲートを提供させたのだ。しかもだ…」

 

 マグナモンが見せた画面にはギズモンがデジモンの村を襲っているものだった。

 

「なんということだ!暴走デジモンに紛れて逃げ待とうデジモンたちを…!」

 

「しかもこやつら、調べてみれば今お前たち3人が相手をしているパヴァリアとかいう組織の者の手じゃないか。そのためイグドラシルから命を預かった。"直ちにその結社を解体させよ"それがイグドラシルの意思だ。分かったか?」

 

「分かった。こちら側の情報も追って提供しよう。パヴァリア光明結社の戦力をな。しかし、人類側も手を打ってはいるが一部が何か企んでいるがあの者たちならば問題はない。」

 

「そうか。それと、これはまだ一部のロイヤルナイツしか知らぬのだが、例のものも盗まれたらしい。」

 

「なんだと!?」

 

「それと同じ頃、奴も行方が知れないそうだ。奴の策謀をもってすればゲートの件は説明がいく。くれぐれも油断するなよ。秩序のために!大きな危機だからこそ、秩序が必要なんだ。」

 

 そういうとマグナモンは姿を消した。

 

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「そうか…デジタルワールドにまで奴らは手を伸ばし、さらなる魔王の影…」

 

 弦十郎は眉をひそめ新たな敵の脅威に思い悩んでいた。キャロルとの戦いでの決戦兵器であったイグナイトモジュールでさえ敵には通じずエルフナインも過去の聖遺物関係の資料をアケミとともに探していた。

 

「で、あの錬金術師の様子は?」

 

「はい、装者の方々も尋問に協力してますが未だに喋ろうともしません。」

 

「あんたらもしつこいな。何度来たんだ?ええと、9回くらいだったかな?」

 

 寝そべっていたリコリスが怠そうに体を起こした。

 

「そんなことは大したことではない!」

 

「ああそうだ!いい加減知ってる情報を吐きやがれ!」

 

 リコリスはうんざりしたのか顔までシャボン玉を近づけさせて合図を送らせ2人の目の前で弾けさせた。

 

「てめええええ!!!」

 

「よせ雪音、どうやら吐くつもりはなさそうだ。出直しだ。」

 

 クリスを宥める翼を無視してリコリスは背を向けてベットで寝そべり始めた。

 

「って、今度はお前たちか。よっぽどお暇なようだな。」

 

 数時間後、リコリスが振り返るとそこには響と調が立っていた。リコリスへの尋問は装者およびエージェントにエルフナインたちが交代制で2人1組にして行われていたがいずれもリコリスは先ほどのような嫌がらせをしては相手を怒らせていた。

 

「あなたから聞きたいことがあります。サンジェルマンさんについて教えてください!」

 

「あなたにだって何かあるはず…あるんなら教えて。」

 

 調が鋭い視線で睨みつけた。キャンドモンとアグモンもその場にいた。

 

「あーあ、今日はこれで10件目だな。いい加減うんざりしてた…「私は、サンジェルマンさんたちとわかり合いたい!戦いではなく話し合いで!拳をぶつけるだけだなんて悲しすぎる。」」

 

 響がリコリスの言葉を遮るとリコリスは冷ややかな目で目を逸らして鼻で笑った。

 

「くだらねえ…まるで理想に殉じようとする偽善者そのものだな。たたか…「響さんにその言葉を言わないで!」」

 

 調が怒りを露わにしてリコリスの胸元に掴みかかった。

 

「あなたに響さんの何がわかるの!?あの人はその言葉でいっぱいつらい思いをして涙まで流してる!それはそんな軽い気持ちで口にしていい言葉なんかじゃない!」

 

「調ちゃん…」

 

 響が肩にポンと手を置いて止めた。

 

(いつになくホットになってやがるな。あのクールな調の怒りなんて早々出るモンじゃないな)

 

「ごめんなさい、響さん。話を続けましょう。」

 

 調が手を離して響のもとに歩み寄った。

 

(こいつ…ただのクールキャラかと思ったらこういう面もあんだな…)

 

「ゲホッ!ゲホッ!ったく、話は最後まで聞いて欲しいモンだな。戦いの果てにあるのはゴミのように失われた命とゴミのように残る亡骸、無数の悲しみと絶望そして憎しみだけだ。本当はわかってるんじゃないのか?

 

 綺麗事でどうにかできることなどない。仮に戦いの後に訪れる平和なんてのは長い歴史のごくごく小さな一点だ。お前たちは絵空事を並べ、理想に溺れる__偽善者そのものだな。いい加減絶望の海に落ちろよ。」

 

 リコリスが起き上がりながら顔を歪めた。

 

「だとしても、私たちには言葉が通じる!話し合えばそういったものはなくせる!響さんからそう教わったから…」

 

 調が胸に手を当てながら響を見つめた。

 

「調ちゃん…」

 

(面白い…)

 

 リコリスもそんな2人を見てニヤリと笑んでいた。

 

「争いはなくせるか…フッ、ならお前らだけに話してやろう。喜べ、お前らに少し興味が湧いた。あのサンジェルマンを説得しようなんて考えてるなんてな。まあ、俺の昔話だ。少し長くなるかも知れないが長かったら適当に拡散でもしな。」

 

 リコリスが起き上がって部屋に支給された水のボトルに口をつけた。

 

____________________

 

(ここから先は、リコリスが語り部となります)

 

 俺は今から410年前に生まれた。ただの村人としてな。

しかし、当時は身分社会…生活なんて当然貧しいし、碌な生活なんかできやしなかった。親父は領主に殺され、母も病死…俺は1人になった。生きるために俺よりも豊かそうな奴らから盗みや放火、あらゆることをしたさ。殺人ってのも時と場合でやった。

 

 そうやって生きてくうちに俺は15歳にして領主の家に火を放ち、復讐としてそいつを殺したため、世間からは凶悪人物認定だ。

 

「そんな…」

 

 驚くのも無理ないな、何せお前らがのうのうと今を生きてるのとわけが違ったんだ。

 

 それから俺はお尋ね者として迫害されそうになったさ。しかし俺は当時のサンジェルマンに会った。俺は貴族どもの家にも放火してやろうとしてたがあいつに見つかってな。

 

「お前、随分と荒れているな。」

 

「なんだてめえは!」

 

「別に何も…あなたのその目、私と同じだ。何もかも背負われてない空っぽな瞳だな。」

 

 それが俺とあいつの最初の会話だった。あいつは冷静だった。俺が火を放とうって時で見つけたらボコボコにしてやろうってとこだった。

 

「なんだと!?てめえに両親のいねえ俺のどこがわかるってんだ!?ああ!?」

 

 俺があいつを見て苛立ったのか結局手が出ちまった。が、結果はボッコボコだ。俺はそいつに対して死を覚悟したよ。

 

「てめえ…!」

 

「私はかつて奴隷の母によって命を授かった。父は私や母を所有物としか見なかった。」

 

 あいつは変わらず冷静そうな表情でいやがった。そして俺はあいつと重なるところがあったらしい。だからなのか協力を求めて来やがった。もちろんなにを考えてんのかも聞き出してな。

 

「すると何か?この世界を支配するのがそのバラルの呪詛だって言うのか!?」

 

「そうだな。それにより人と人は不和が生じ完全体へと昇華するのが妨げられている。お前が今そんな立場にあるのもバラルの呪詛による相互理解の剥奪に他ならない。」

 

「俺に協力しろと?しかし俺にはなんの力もないぞ。お前だってそうなんじゃないか?」

 

「いいや、我らパヴァリア光明結社はバラルの呪詛解放のために志を共にする同志がいる。お前の居場所だってできる。どうする?ここで犠牲となるか、手を取るか。お前もアテがないのだろう?ただ彷徨うだけのゴロツキと言ったところか。」

 

 

 俺が下した答えはイェスだ。俺は分からなかった。ちょいと前まで村人だったけどそうで無くなったならなんなんだ?領主や貴族どもの人形か?出来損ないの存在か?その空っぽな心は放火や犯罪であっても満たされなかった。己は何だったのか___それすら分からなかった。

 

「リコリスさん…」

 

 それから俺はサンジェルマンの教えのもと錬金術を叩き込まれた。俺は教わった。呪われた世界だからこそ俺たちのような力のあるものが守らなければならないとな。それから組織の名を広めるべくいろんな奴らを採用した。俺みたいなジレンマを抱えたゴロツキ、辛い思いをして苦しんだやつら…みんなサンジェルマンや俺に共感してあっという間に仲間ができていった。あいつらは今のカリオストロとプレラーティのように俺たちと共に戦ってくれた。しかし、悲劇は予告もなしに訪れた。

 

____________________

 

 力をつけること__それは同時に無視できない存在になっていく。俺たちはカストディアンと対話したとされるフィーネと交渉すべく向かった。しかし…!待っていたのはフィーネの裏切りだった!

 

「何故だ、フィーネ!?俺たちでバラルの呪詛の解放を目指すべきだ!」

 

「黙れ、貴様らは前から目障りだったのだ。この場で消えてもらう。」

 

 俺たちは必死に戦ったが圧倒的なフィーネの力を前に皆犠牲になった。

 

「兄貴、姉御!ここは俺たちが時間を稼ぐ!ティキと親玉を逃せ!」

 

「何を言ってる!」

 

「兄貴たちに拾われたこの命、無駄にしねえ!行くぞおおおおお!!!!」

 

 俺が見たのは地獄だった。あっという間に俺の仲間はゴミのように殺されて行った。なにが起こったのかさえわからねえ。

 

「消えろ!」

 

「させない!」

 

 そして決着はお前たちが知っての通りだ。

 

 俺はその後戦いに巻き込まれ、運良く島に漂流し、行方をくらませた。サンジェルマンたちにあったのはそれから数百年後だった。しかし…!俺はまたしても悲劇を体験し、絶望した。

 

「絶望?」

 

 ああ、俺は結社の噂を聞きつけサンジェルマンの元に戻った。

 

「リコリスか…フィーネの戦いの中で私たちは影に潜むことになったがこの力があれば理想は近づく。」

 

「おい、何を言ってるんだ!?賢者の石なんか使って何をするんだ!?昔みたいにまた一緒にやり直そうぜ!なあ!?あいつはつよいかもしれないがやり方を真似る事になるんじゃないのか?俺たちにしか出来ないことだってまだあるはずだ!」

 

「理想を叶えるためだ。」

 

 当時あいつはすでにカリオストロとプレラーティを仲間にしていた。あの2人はもともと男だったんだ。ファウストローブを纏うには生物的に完全な存在つまりは女になることが必要になる。

 

「嘘!?」

 

「なにそれ、変なの〜!」

 

 そこの黄色いデジモンの言うように俺はサンジェルマンが変なのに変わってしまったことが嫌で嫌で仕方がなかった。共に同じ夢を見たやつが別の方法で夢を叶えてるってのはわかる。それなのに…あいつらは神の力に頼り出した!あんなものは借り物だ!借り物の平和など絶対にやって来ない!それじゃフィーネの言う聖遺物を使ったやり方と同じだ。神の力は俺たち自身の手で勝ち取るべきだ!!

 

「神の力…」

 

 それにあいつらはかつてのやり方を否定して無関係な奴らを次々と生贄にしやがった。じゃあ何のために俺はいたんだよ!俺は何のために結社の錬金術師として存在してた!?最後まで反対した俺は結局、結社でも居場所をなくすことになった。

 

(語り部ここまで)

 

____________________

 

 話の中でリコリスは少し熱くなりすぎたからか息を切らしていた。

 

「俺はだから結社を抜けた。変わりゆく結社が許せなかった。自分たちの力で平和を作るっていう俺とサンジェルマンの夢をあいつらは踏みにじった!否定した!抹消した!俺は何のために戦ってたんだ…失意のまま俺は旅をしていた。その中で、サンジェルマンと会いその度に説得していた。しかし何度やってもあいつの心は揺らがない。…俺の話はここまでだ。」

 

 リコリスは無表情になってベットに座りだした。

 

「さあ、サンジェルマンのことは語らせてもらったぞ。どうする?俺をここで殺すか?お前らの信じる正義に反さずに厄介なこの俺を残すのも手だがな。そして知るんだ。人は決して理解できない。どれだけ歩み寄ろうとな、それは疎ましく思われ、わだかまりを生んだ。フィーネはそれを知ってたのかもな。けど俺の憎しみは消えたりしない。」

 

「あなたはフィーネを憎んでいるって言ってたけど、彼女はもう私や切ちゃん、マリアたちには宿ってないよ。」

 

 調がジッとリコリスを見つめた。

 

「なんだと!?」

 

「え!?」

 

 調の一言に響達は動揺した。

 

「みんなに話してなかったけどフィーネは私に宿っていた。けど切ちゃんと喧嘩した時に私は一度死んだ。」

 

「まさか、あの時だったのか?調!」

 

「うん、その時にフィーネに会った。あの人はルナアタックの後から誰の魂も塗りつぶす気も無くなったみたい。そしてメッセージをもらった。」

 

「それってどう言う事なの、調ちゃん!?了子さんが…死んだ!?」

 

 響が調に問い詰めた。

 

「はい、あの時響さんに伝えた事、あれはフィーネの言葉だったんです。私はドクターの強行でLiNKER過剰投与に伴う絶唱で、眠ってたフィーネが現れ、フィーネは完全に消滅したんです。最後にいつかの時代を託して…」

 

 その一言にリコリスは愕然とした。

 

「あのフィーネがだと!!?あいつにそんな変化が…!あの目的すら選ばなかったあの冷血なあいつが…?」

 

「了子さんがそんなことを…なんで?あの時の約束があったのに。」

 

 響が唖然とする中調が手を握った。

 

「響さん、今まで言えなかったことだけどフィーネはきっと響さんなら自分にできないことを出来るって信じてたんです。だから、諦めないで。」

 

「…ティキとか言うオートスコアラーは星を読むことができる。星に用心しろ。俺が知っているのはここまでだ。全く…今日はよく心移りする日だ。まるで誰かがそうしろと言ってるような感覚だよ全く…」

 

 リコリスはベットで眠り始めた。

 

「どうして急に心変わりなんか?」

 

「うるせえ、別にいいだろ。大したことじゃねえんだ。さっさとお仲間に伝えてこい。単なる気まぐれだってな。」

 

「うん、じゃあ行こっか調ちゃん!」

 

「はい。」

 

(あのフィーネを曲げたさせたやつと最期を看取ったやつか…本当に久しぶりだな、他人に対してこんなに激しい興味を抱くのは…)

 

 リコリスもわずかに笑みを浮かべて眠り出した。

 

 

 

 それから帰宅後、響は未だ残った宿題の処理をして居た。

 

「うん!美味しい!前回の失敗点が生かされてる!」

 

「そういえばビーフストロガノフを作ったのももう数ヶ月も前なんだね、未来!」

 

「うん!」

 

 数ヶ月間の調理実習時に未来と響はビーフストロガノフを作ったが結果は惨敗…それから基本的な知識などを学びながらついに完成したのである。

 

「ねえ未来、何かを叶えるのにアレもこれもしたいって考えるのはワガママなのかな?」

 

「響?」

 

「確かにそうかもしれない。けどそう言うワガママするとこ含めて好きだよ?響のそう言うところ。さっ、食べよ?」

 

「おおー!!お肉だ〜!」

 

「未来が気合入れて作ったのよ〜!」

 

 未来の脳裏には中学生時代の自分は陸上で競うことしか頭になく誰かを助けると言う考えがあまりなかったことが浮かんだ。しかし、響は誰かから否定されようと自分を貫き誰かを助け勇気を与えてきた。それを身近で知っているからこそ未来はリディアンでピアノを学び音楽で誰かを励ましたい。そう願っている。響はそんなことあんまり気にしてはいなさそうであるが…


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