戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
病院に運ばれたマリアと拓実そして爽谷はすぐに治療が始まった。拓実と爽谷の場合は疲労のため一時休息を取ることになっていた。しかし、ある日切歌と調が訓練ルームで少しでも大きく適合係数をあげようと努力していたがバックファイアの前に中止せざろう得ない状況下になった。そんな中エルフナインがLiNKERの最後のひとかけらである脳とのリンクについて翼を除く装者たちに話した。過去マリアがなぜLiNKER頼みでありながら高い適合係数を弾き出せたのかということも明らかになって行った。
「お願いします!僕と戦ってください!マリアさんのアガートラームの力が必要なんです!マリアさんの適合係数が上がれたのはきっとギアが脳との繋がりがあったからなんです!だからそこに乗り込めればきっと!」
「いいわよ!これがあなたの戦いだというのなら一緒に戦って挙げましょう!」
「マリアさん…」
エルフナインはそういうと早速マリアとの準備にかかった。
「切歌、調くれぐれも無茶しない程度に頑張りなさい。」
「うん、気をつけてね。アグモンは私たちでどうにかするから。」
「心配はしなくてOKデス!ただのやけっぱちのマリアでもきっと大丈夫デス!」
響たちとともに調は爽谷と拓実の病室へと向かった。
一方その病室の一室の中で、爽谷は静かに眠っていた。
(僕があのとき感じたものはなんだったんだろうか?僕はこうして戦い始めたが切歌たちは大事なもののために傷つこうとしている。僕に大事なものをくれた人はこれ以上減らせない…あの日から始まったんだから…今あるものよりくれた人に与えたかった…)
今から9年前___爽谷はレセプターチルドレン候補としてアメリカ政府に拉致されていた。しかし当時あまり成果自体、実らず研究スタッフは聖遺物を機械で起動するコンセプトのもと、実験結果から体は大して強くはないが生命力に優れた実験体として爽谷が選ばれた。生命力の高いものを実験体にしておけばただでさえ少ないレセプターチルドレンの消費を抑え、確実な成果を出すきっかけを作れるという確信によるものだった。
「お前は今日からモルモットだ!せいぜい役にたてよ!」
爽谷はそれ以降白い部屋から冷たくて暗い牢獄のような部屋に閉じ込められた。
「お願いします!出してください!お願い!」
出ようとしたらドアから高圧電流が流れ気絶したかと思ったら、脳内回路を無理やり機械と直結させられたりした。
「動くな!お前に今からとっておきの実験をしてやろう!」
「やだ!やめてください!やめて!やめてえええええええええええ!!!!!」
そして最終的になんと自らの肉体にアンテナのようなものに無理やり接続され電子信号のままに意思とは関係なく爽谷は毎日のように実験を強要された。動かなくなれば高圧電流を流されたり直接暴行を受けたりとボロ雑巾のように扱われ、レセプターチルドレンとしての実験にナスターシャが関わっていない分地獄のような苦しみを味わっていた。さらには自傷を試みるも24時間体制の監視のためあっという間に禁止されてしまった。
「はあっ…はあっ…」
時々部屋を出ることを許された爽谷だったがその度に通りかかった他のレセプターチルドレンたちからは恐怖を抱かれた。
「あれってまさか…アケミちゃんの…」
「怖い…」
爽谷もストレスでやせ細り髪も少し白くなり、実験の副作用で体の動きすら鈍くなっていた。アケミは研究員たちから嘘の経過報告を受けており爽谷のことはあまり把握できてはいなかった。
「ああ…ああ…」
(こんな地獄に生まれて僕は何のために生きてるんだろうか?意味なんてどこにあるの?)
「だれか…」
ひたすら他を求めて彷徨い続けた爽谷だったが鏡を前にしてその悍ましい姿を前に皆、恐怖心を抱き遠ざかって行った。
「誰も…いない?」
爽谷の前には誰1人として人影が見えなかった。
数ヶ月後、己への絶望と訓練の過酷さも相成って爽谷自身のストレスは日に日に高まりその視力も失われつつあった。ある日、ナスターシャ教授がレセプターチルドレンの訓練を休んで来た際あまりの変容ぶりに息を飲んだ。
「なんて惨たらしいことを…」
「誰だ?あんたは…」
爽谷はナスターシャ教授を睨みつけた。
「あなたの成長を確かめに来たナスターシャです。今日はあなたの訓練をたしかめにきました。今まであなたの訓練はあまり公にされておらずレセプターチルドレンの中から派遣した身としてあなたに会いに来ました。」
「そうですか…ならみるといい。そして伝えてください。僕は地獄にいると…」
爽谷がナスターシャ教授を案内した。しかし、訓練中意識がふらつき倒れてしまった。
「貴様!来客の前で…「お待ちなさい!」」
ナスターシャ教授は爽谷を確認して息を飲んだ。
(この子、ほとんど体が弱り切っている。過剰な訓練による疲労やストレスが原因で…!ここまで悪化するなんて…!)
「何をしている貴様!早く続けないか!」
「は、はい…!」
(この人もおんなじだ。僕はカゴに入れられた奴隷にすぎない…そう言った人を見る目だ…)
爽谷がたとうとしたがナスターシャ教授が止めた。
「待ってください!彼はほとんど失明しています!視力が不安定になってます!」
(えっ?何を言ってるんだこの人は?僕なんかただの実験動物でしかないのに…)
「しかし!そうは言っても…!」
すると横から爽谷に眼鏡を渡した男がいた。
「これをどうぞ。」
「ドクターウェル…」
「英雄にはゴーグルが必要なんですよ。もっともこれはメガネですが。君の痛みは糧となる!より多くの人々に革命をもたらすゥ!まさしくレボリューションだああ!!」
当時のプロジェクトのメンバーの1人、ウェル博士が神妙そうな雰囲気からおちゃらけた雰囲気に変わる中爽谷はメガネをゆっくりとかけた。
(英雄…革命を目指せばきっと姉さんたちも救われる…僕も、変われる!だったら諦められない!全ては革命のため!)
短絡的な変化だったがそれまでほとんど孤独な爽谷にはウェル博士とナスターシャの存在が大きなものになりつつあったのだ。
数年後、マムとドクターウェルの励みで爽谷は訓練に対して嫌気を示さず自らが英雄となって弱い人々を守ろうと考え始めた。そのためか以前よりも笑顔が増え景色にも少しづつ色が加わったかのようになった。
しかし…
「コンバート適応…」
「ネフィリム起動します!」
ネフィリム起動実験の最中ナスターシャ教授はレセプターチルドレンの中でも選りすぐりの適合者であるセレナとマリアを連れて来ていた。
「あの人がいればきっと大丈夫だね、姉さん。」
「そうね、セレナ。祈りましょう。彼が成功することできっとみんなが守れる…」
すると殻のようなものからネフィリムが現れるかと思われたが突然爽谷が吐血し始めた。
「おい!どうした!?」
「ネフィリムが暴れ出しました!これ以上の脳リンクは危険です!」
「大丈夫ですか?」
「ゴホッ!ゴホッ!まだ、大丈夫です。」
「ダメじゃない!血が出てるわよ!」
「まだ、やれます…」
そういうと爽谷は倒れてしまった。そして眼を覚ますと初対面のセレナが死にネフィリムを止められたらしい。ネフィリム自体が機械で起動した段階で暴走し既に爽谷側に干渉していたことがのちに判明していた。
(僕が役立たずだったから、あの子が…初対面で死ぬ必要だってなかったのに…)
セレナの墓標を前に立ちすくんでいる爽谷に対してマリアが声をかけてきた。
「あなたが気に病むことないわ…」
「いいえ、僕が大した役にも立たずにこうして生き延びてしまった恥を晒してセレナさんを死なせた…僕があの場でやりきれればきっとこんな目には合わなかった。そういうあなたも僕を恨んでたんでしょう?かけがえのない家族を奪った男ですから…」
爽谷はそのまま歩き去っていった。それから再び目に光がほとんど見えなくなっていった。
「お前の訓練を変更する。」
主任の命令で、その日から爽谷は数年前に現れたデジモンを量産して国の防衛さらには国際社会においてアメリカが有利に立つための技術として人間とデジモンの融合の実験を始めた。後のフュージョンレボリューションである。
「フュージョンレボリューション…」
デジメモリを人工デジヴァイスに挿入した爽谷はエクスブイモンに変わろうとしたがすぐに拒絶反応が起こり血を吐いてしまった。
「またか!お前が動けるようになればこの実験の意味もあるというもの!さあ早くたて!」
言われるままに成熟期、完全体デジモンのレボリューションに成功した爽谷だったが体の衰弱に伴い、実績自体は完全体どまりだった。
「全く!貴様はここまで脆い存在だとは思わなかったぞ。これなら他のレセプターチルドレンにした方がまだ良かったな…」
(今日もまた、僕は出来損ないになったんだ…こんなんじゃあ、英雄なんかにはなれないね。同じ痛みを持った人たちを笑顔にさせられたのに…)
心の傷が癒えないまま爽谷は数年かけて実戦訓練に当たった。ある日、ナスターシャ教授に呼び出された。
「何の用でしょうか?今更、僕になんの縁もないはずですが…」
「メガネをもらった日と同じ目ですね…まあいいでしょう。近々私たちはクーデターを仕掛けます。」
「クーデター?」
「政府はフロンティアと呼ばれるカストディアンの遺産を使い、特権階級のみが生き残るという情報を得ました。とある結社がその蜂起を促したのです。」
「で、それに乗るんですか?」
爽谷はほぼ無表情とも言える顔でナスターシャ教授を見つめた。
「あの子たちを守るため…あなたにも協力していただきたいのです。あなたとウェル博士が私たち武装組織"フィーネ"に加わるのです。ウェル博士の聖遺物研究の頭脳とデジモン技術適合者第1号のあなたは我々のアドバンテージになります…それに、あなたも自由が欲しいのですよね?」
ナスターシャ教授の言葉で爽谷は少しだけ考えた。
(この世には生まれた時から不幸を背負わされる…僕たちレセプターチルドレンみたいな子たちは幸ある人々の理不尽なエゴに虐げられる…だったら、もうそんな連中は根刮ぎ排除するしかない。根刮ぎ滅ぼさなければ守れない…)
「分かりました…僕でよかったら。」
数日後、FISメンバーが集結した。
「彼がドクターウェルとデジモン技術適合者1号の冷泉爽谷くんです。2人は今後私たちと共に戦います。」
切歌に調、マリアが2人を睨みつける中、ウェル博士はふてぶてしい態度でいる中、爽谷は目を逸らした。
(僕はあの時からマリアさんたちと出会ったけど僕は変われたんだろうか?あの頃と変わらないのかもしれない…もしかしたら…)
「あれ?もう目が覚めちゃったデスか、爽谷…?」
眼を覚ますと切歌たちが見舞いに来ていた。
「ああ、少し休めば大丈夫。すこし昔のことを思い出していたんだ。」
気がつくと爽谷は自分が大量の汗をかいているのに気がついた。
「そうなんだ…」
「まあ、いいものじゃなかったね。そんなことより翼さんにマリアさんは?」
「マリアさんはエルフナインちゃんと戦ってます。翼さんは師匠と共に偉い人にに呼ばれてます。」
翼は弦十郎と共に鎌倉に向かっていた。
「そっか…みんな頑張ってるのか…じゃあもう少しばかり寝かせてもらおうかな。」
「寝てんのはいいけどすげえ汗だったぞ?あんまあれならこいつらとか姉ちゃんに相談しろよな?お大事にな〜」
クリスたちが病室を出て行った。
「このタイミングで昔を思い出すなんて…まさかね?」
実際今回、爽谷ですが他のレセプターチルドレンみたく白い部屋でなくまんま牢獄に入れられてます。それで機械とか体に無理やり接続されてます。こう言うと地味に洒落にならない感じにしたなとは思いますが、レセプターチルドレン自体も色々やらされてた訳ですし別に爽谷だけ特別悲惨という訳じゃないです。