戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
数日後新学期が始まった響たちだったが結局宿題を一部しか片付けられなかったことを響は先生に謝罪すると9月中に片付けろという返答をもらった。SONGの任務に関して一応学校側も理解はしていたがその上の返答なのだろう。その日の夕方、響は未来にパヴァリアの考えを伝えていた。その中で響は“誰かを傷つけてでも成し遂げなきゃいけないことをする理由”とは何かと考えていた。その間に翼とマリアはバルベルデ政府から受領した資料を隠蔽しようとした敵に帰国中に襲われはしたがなんとか迎撃には成功していた。
「アンティキティラの歯車でこのオートスコアラーであるティキを蘇らせる。さあ、目覚めよ!」
アンティキティラの歯車をティキに使用するとたちまち起き上がった。
「あ!サンジェルマン?久しぶり!ねえ、アダムはどこ?」
ティキは甲高い声でサンジェルマンを見つめた。そのとき電話がなった。
「統制局長…」
「アダム!?アダムなの?」
「やあ、ティキ…元気そうだね。」
電話越しのアダムは穏やかそうな声色でティキの復活を喜んでサンジェルマンに変わるよう言った。
「局長、ティキの復活に成功はしましたが、シンフォギアはいかがなさいます?」
「そんなもの破壊しちゃいなよ。ついでにデジモンもギズモンでエネルギーを奪い取って養分にするといいよ。」
仮にも組織のトップとは思えない浅はかともとれる要求にサンジェルマンは戸惑いをあらわにしたがそれに了承した。
「それと、彼が何やらフラフラ動いてるみたいだけど放っておいていいよ。彼1人は君たちよりも上かもしれないけど“アレ”があれば問題ないでしょ。じゃ頼むよ。」
数時間後、街に現れたアルカノイズの迎撃に響、翼、クリスが挑むも敵の罠により異空間に閉じ込められてしまった。拓実が遅れて発生地点に駆けつけるも特に誰もいなかった。
「どこにいるんだ!?本部、立花さんはどこにいますか!?」
「拓実さん!いま響さんたちは敵の空間に閉じ込められイグナイトモジュールを抜剣して戦ってます!」
「そうだったのか…その空間に対して外から干渉することはできるか?」
「いえ…」
エルフナインが響たちがイグナイトモジュールでアルカノイズを一掃しているのを眺めていた。
「とにかく外からやってみなさい!内と外のエネルギーのひずみですぐに脱出できるはずよ!」
「わかりましたマリアさん!スピリットレボリューション、メルキューレモン!」
(さてどこだ?)
辺りを見回す拓実は目をつぶり気を沈めていた。
「行くぞ立花!」
「はい!」
空間内ではアルカノイズが通常の倍の強さになっていたため、響たちも火力を上げてこじ開けべくイグナイトモジュールのカウントが許す限り走り敵を倒していた。
「時間は限られている!」
「早く突っ走るデス!」
(こうやって気を穏やかにして何か引っかかったとこに攻撃を叩き込む!あの映画トレーニングで一番気に入ってるやつだ。)
「ここか!」
真正面を殴りつけた拓実は何か壁のようなものを感じていたがすぐにそれは消えてしまった。
(手応えらしきものはあったが消えた。次の場所を把握してなんとか!)
一方、内部では戦いの中空間を支配しているアルカノイズを発見し3人はカタパルトを生成し、カタパルトと飛行し空間を操っていたノイズを撃破した。
「さらにもういっぱ…!あれ!?」
拓実が気配に気づくが空間は消失し響たちが戻ってきた。
「終わったみたいだな。」
「ったく手間取るかと思ったぜ。」
その時、後ろから拍手が響いた。
「やはり、シンフォギア装者を扱うSONGなだけはあるようだな。見事な連携だ、大したものだな。」
「誰だ!?」
「翼、この声って!」
「ああ…」
翼がアームドギアを構えた。
「どこにいるんですか!?出てきてください!」
「おいおい、せっかちだな。俺には俺のペースがある。それを誤解するな。」
すると霧とともに人影が現れた。
「あいつは!」
マリアが険しい表情を浮かべた。その者は黒髪で片目を隠した小柄な青年だった。
「マリア、知ってるの?」
調が尋ねるとマリアはコクリと頷いた。
「私が以前ロンドンにいた時に戦った錬金術師…リコリス・タオ=リヒト!」
リコリスがニヤリと妖しい笑みを浮かべ現れた。
その後、リコリスはSONGに連れていかれたが特に動揺もせずシャボン玉を吹いていた。
「で、一体何を考えている?自ら投降しに来たのか?」
弦十郎の威圧感に対しても大した動揺も見せずにリコリスは立ちながらストローで水を飲んでいた。
「こんな小さい子がマリアと翼さんを?何か凄く子供みたい…」
「おい、俺をチビ呼ばわりすんじゃねえ!少なくとも俺は数百くらいは生きてるからな。少なくともあのキャロルよりかは年上だ。」
リコリスがシャボン玉を吹くと切歌を鋭い目つきで睨みつけた。
「ええ…」
(年上のくせにすぐムキになってるデスよ…大人気ないデスね、調。)
(子供っぽいね、切ちゃん…)
調と切歌のヒソヒソ声を聞き取る中リコリスはよっと言いながら深々と座った。
「悪りぃ、くだらねえことをしたな。はっきり言うぞ、お前らと手を組みたい…」
「手を組むだと!?」
「おいおい!てめえ何ジョークを言ってんだ!?」
クリスが動揺するがリコリスはソファーでくつろいでいた。
「大マジだぜ、正直言うとなだな…もう結社なんか必要ないんだよ。だからこうして交渉しに来たんだよ。近々奴らも本格的に動く。いまは情報が欲しいだろうと思ってね。」
髪をかきあげてリコリスはニヤリと笑みを浮かべた。全員の表情は警戒の意を示していた。
「安心しな。手土産として情報は提供する。それからでも判断してもらっていい。知りたいだろ?パヴァリア光明結社の真の目的が…」
「真の目的!?」
全員に緊張が走った。それを見てリコリスはしたり顔を浮かべた。
「まずそれを語るにはバルベルデで回収したあのティキとかいうオートスコアラーについて語る必要がある。あのオートスコアラーを始め結社はフィーネと対峙していた歴史があったのさ。」
「了子くんとだと!?」
全員驚愕している中リコリスは淡々と話を続けた。
「とはいえそんなやつじゃなく別の人柱だったがな…フィーネはカストディアンの月の遺跡そのものを破壊しようとするのに対して、結社は神の力による人類の歴史変革およびカストディアンの遺跡の強奪によるバラルの呪詛の支配を企て、人類を完全な生物に昇華させる思想が対立していたが結果として両者が交戦してティキが行方不明になったために結社の目論見は失敗。400年もの間、周り道を通ることになった。」
「あのカストディアンと同じように月の遺跡を制御しようしたからフィーネと対立していたのか…」
翼からしてみればフィーネは仲間であったと同時に奏を奪った存在でもあるため今でも拓実以上に複雑な心境を抱いていた。
「俺もかつてはその結社の思想に興味はあったが、フィーネの戦い以降落ちぶれた結社はもう必要ねえ。錬金術師は大人しく悠久の時の中で1人歩いていけばいい。それも分からず結社はあの無能のアダムが色々やらかした。」
「ええ、それに関しては調査済みよ。けどまさか統制局長ともあろうものがそう呼ばれてるってことに関しては意外だったわ。」
「ほう、ネコ娘。お前のおかげで気づいたって感じだな。やるな。」
「ネコじゃないわよ!」
マリアがネコという言葉で顔を赤くして答えた。
「その後、結社は色々小細工をやらかした結果欧州をめちゃめちゃに蹂躙し、わざわざてめえらがフィーネを殺してくれたおかげで結社はますますつけあがってフロンティア事変やキャロルのくだらねえ夢に漬け込んで手を貸すなんて真似を仕出かしやがった。そこに関しても結社は余計なことをしやがったのさ。例えばチフォージュシャトー…あれはプレラーティとかいうチビメガネいたろ?
あいつが余計なことさえしなきゃ世界分解なんてアホなことがなかったんだ。
仮にそれが起こったとしてもどのみち何人じゃが死んでいってもどうせ運のいい何人かは生き残るもんなのにな。」
リコリスが鼻で笑うとエルフナインが珍しく怒りを露わにしていた。
「キャロルの夢はくだらなくなんかない!キャロルは間違ってしまったかもしれないけどパパの願いを叶えようと頑張ってたんです!」
エルフナインがリコリスに詰め寄った。しかしリコリスは不敵な笑みでエルフナインにガンを飛ばした。
「おいおい、あいつは仮にも父親に歪まされた大量虐殺者だぞ?あいつをかばってなんになる?それにどっかの誰かさんらも元テロリストだったし打ち首でもされなかったのが不思議なくらいだがな。まあそのうちの何人かは実際あの世行きだがな。全く、くだらねえ夢だなんだで虐殺者をかばうとは全くおかしいな。」
リコリスが横目でマリアたちを見つめた。
「まあ、結社も似た者同士だろうがな。だいたい、お前の父のイザークさんもそうだったろ?もう父の死因を忘れたのか?」
その一言により場が凍りついた。
「それ以上エルフナインちゃんやマリアさんたちをバカにしないでください!」
響が怒りを見せリコリスを非難したが涼しい顔をしていた。
「フッ、なんとでも言え。だがそれらは紛れもない事実だ。話を続けよう。でだ、奴らの悲願は神の力を持ってしてカストディアンに成り代わって人類に変革を起こす。それが目的だ。ティキはそのためのいい道具ってとこだな。で、どうする?俺の知る情報はこれだけじゃない…奴らに手をこまねくんなら大人しく協力したほうがいいかもしれねえよ。オタクら的にもさっさと結社を潰したいんだろ?どんな手を使ってもな。」
「悪いが、お前はただの悪辣な理由で争いを求める危険人物とは組めない。情報提供は感謝する。しかしお前は人の命を助けるつもりはないのだろう?」
「ああ、どうだっていい存在だしな。だいたいそんなモンだろ?お前らの存在であってもどっちにしろ死人が出る。まあ数は減るがな。多く助けようなんていうくだらねえ努力なんざ捨てた方がいいぜ。犠牲は何であれ必ず出るものだ。いや、もしかしたらお前らのせいで死人が出るのかもな。」
「いいや!それでも私たちは国や人を防人るだけだ!損得など問題ではない!」
「そうだ!人命に徳もクソもあるか!」
翼の反論とともに反対意見が満場一致で決定し、リコリスの頼みをきっぱり断った。
「ハハハ!!そうか、なら仕方ない…」
するとリコリスは笑い出し、立ち上がって体が霧状になって消えた。
「お前たち後々後悔して泣きついて頼んできても、俺はイェスとは言わねえぞ。精々無駄に抗って見るんだな。お前らとの会話、楽しかったぜ。
だがこれだけは覚えとけ、奴らは神の力を手に入れるためならいくらでも血塗られたやり方が出来る。お前らのような理想主義はは首を締めるだけだ。肝に命じておけ。」
声だけが不気味にこだました。リコリスの本体は別のところに潜んでいた。
「ったく、分身で様子を見ようと思ったが失敗か。拘束される危険もあったわけだしあらかじめ分身を作って正解だったな。」
「リコリス、なぜあなたがこのような真似をした?」
リコリスの後ろにサンジェルマンが現れた。
「サンジェルマンか…いい加減目を覚ませ。神の力で革命なら起こせるだろう。しかしそれが錬金術師の役目か?神の力に溺れ、役目を果たすことが本当に正しいのか!?結社こそが全てなのか!?」
リコリスは冷静そうな表情を崩してサンジェルマンに問いた。
「いいや、人の歴史を変えるのは神の力でなければならない…」
リコリスは頑ななサンジェルマンを見つめて立ち上がった。
「お前、いつか死ぬぞ。お前は妄信しすぎだ。その妄信はいずれ破滅を導くことになる、強すぎる力にな。強すぎる力を背負ったっていいことがあるとは限らない…」
そういうとリコリスはシャボン玉とともに消えていった。
「たとえそうなったとしても私は立ち止まるものか!理不尽な支配に基づく恐怖から解放されることを待つ人々にために!」
サンジェルマンの手にはすでに赤い宝石が握られていた。
今回リコリスがズケズケと言い過ぎてましたがよくよく今までの事件で被害にあった人たちの家族や友人が事件に関して知ったらきっと彼のように事件起こした本人はきっと非難されるんじゃないかって言う考えも入ってます。
しかしマリアさんたちの場合はもともと蕎麦おじさんがどうにかした上での処分でしたしもし蕎麦おじさんが動かなかったら彼の言う通り打ち首になってた場合も無きにしもあらずです。
今後リコリスの第3勢力的行動も楽しみにしていただけたらと思います。そもそも彼はキャロルみたいに組織に属さない錬金術師を増やそうと言う考えのもとで作らせましたのでSONGとパヴァリアをある程度引っ掻き回してくれたらなあと思ってます。