戦姫絶唱シンフォギアDigitalize 作:ジャン=Pハブナレフ
その後響たちは目を覚ました。どうやらあの後SONGの現場のものに助けられたらしい。しかしその前には予想外のことだったのか弦十郎自ら出向くという事態に陥っていた。
「全く、冷や汗を書かされるものだな。」
クダモンがため息をついた。
「そーそ、響ちゃんたちの予想外の出来事に加えてダブルで冷や汗もんだしな。」
藤堯がぼやきながら状況整理を行った。
「でも、よかった。響たちが無事で。」
未来が響の手を握った。
「でも、あの船は一体どうしたんです?」
「あそこは今SONGが24時間体制で監視を続けてるわ。」
友里が現場の様子をモニターに映した。
「ていうかなんであたしらは倒れたんだよ。」
「それに関してはエルフナインくんがある程度の見解を示している。」
エルフナインから語られたのはあの黒い浮遊物はスフィアゴーストであり、あのファラオは一種の哲学兵装である。それが倒された時に出た球体はファラオの呪いの集積体であり、それがツタンカーメンのマスクに宿ったからであるとされていた。
「と言うかなんデス、その哲学兵装って?」
「以前、オートスコアラーのファラがソードブレイカーという武器を持ってましたね?」
「ああ、あれには翼さんやマリアさんや俺も手を焼いたな。確かあれは“剣と定義したものを破壊する”とか言うやつだったな。」
「はい、きっと今回は何らかの呪いが具現化してマスクに宿りスフィンクス___つまりカースドファラオがその呪いで誕生し、みなさんは倒れたのだと思います。」
「まさか、呪いが次の敵とはね…」
「というかツタンカーメンってなんデス?」
切歌のさりげない一言からツタンカーメンを知るべく響たちは時間が許すまで調べていた。今アレキサンドリア号は辛うじて監視はできてはいるものの、いつスフィアゴーストが暴れるかに皆不安を覚えていた。響は安藤たちとまた街を歩いていたがツタンカーメンの呪いが頭から離れていなかった。
「どしたの?ビッキー?」
「え、ううん。なんでもない。」
「嘘、響ったら昨日からツタンカーメンに関して必死に調べてた。」
「あんた、最近世界史で先生から評価いいけどとうとうそういう感じまで来ちゃった?もしかしてまた任務?」
「実は…」
響がバツの悪そうな表情を浮かべた。
「そうでしたら私たちが手伝いますわ!」
響がゾッとしたような表情を浮かべた。
「でも!」
「大丈夫だって!たまにまあたしらも頼ってって!」
安藤たちはすぐさま家に戻ってツタンカーメンに関する情報を集めた。翌日、装者4人がリディアン校舎に並んだ。一応、拓実に爽谷はテレビ電話越しで話すことになった。
「で、どんなのが集まったんだ?」
クリスが尋ねると3人がメモのようなものを見せた。それによるとツタンカーメンはかつてのエジプトの王であり若くして病死し、ミイラにされそれを模したのがあの黄金の仮面だったという。
「…10歳で王様ってすごい。」
「リアルじゃ考えられないな。」
「しかし、その話によると特にあのスフィアゴーストとなんの関係もないように思えるな。」
拓実が腕を組みながら考える素振りをした。
「拓実さんのいう通りここまで語るとそんな対したことない話かもしれません。けど何より有名になったのは王家の呪いですかね。」
安藤によると王家の呪いというのはかつてツタンカーメンの墓の発掘隊が次々と無くなったというものであった。しかし後年になってからそれがまるっきり出鱈目だという事が分かった。どうやら発掘隊は熱病などを媒介する虫に刺されただけで、何より彼らが発見した碑文もてんで出鱈目ということから王家の呪いというのはただのホラ話ということになったと板場がメモを見せた。
「ありがとう!おかげで助かったよ。」
「普段から立花さんたちは多くの人たちを助けています。」
「だからビッキーたちくらいはあたしたちが助けるって決めたんだ。」
「あんたもアニメ街道一直線だしね。あたしらをもっと頼ってよ。」
「うん!」
安藤たちの協力を経てツタンカーメンに関してはわかった響たちだったが、その後ある疑問が浮上した。王家の呪いは出鱈目だったならなぜカースドファラオは現れたのか?
「出鱈目なのにどうしてあんな形で出てきたんだろう?」
そういった疑問の元響たちは現在監視中の拓実と爽谷を除いてエルフナインにそれを訪ねた。
「はい、恐らくそれは言い伝えの類であっても人によって真実を歪められたのでしょう。」
「え?」
「真実って言っても言い伝えデスよ?大したもんじゃないと思うデスよ?」
「はい、切歌さんの言う通りたしかに王家の呪いなんてただの迷信です。けどその迷信を受けて多くの人に広まって仕舞えば当然真実と思い込んでしまう。これが厄介なのです。それが起これば当然呪いのかたちで起こってしまうんです。」
「ちょっと待てよ、つまりあのカースドファラオってのは迷信が人の手を加えて誕生したってことか?」
「はい、そう考えてもらって結構です。これこそが哲学兵装___道理を超越し、法理としてこの世にその存在を確立させてしまう本質を持ってるのです。」
「王様…可愛そう…」
響が悲しい顔を浮かべた。彼女もかつてツヴァイウイングの一件で世間からありもしない出鱈目に振り回され家族が壊れてしまったこともあった。それが脳裏に蘇っていた。
すると現場から連絡が入った。
「現場の拓実くんから連絡です!」
「繋げ!」
「こちら拓実!現…ば…に黒い靄が大量発生…スフィアゴーストがたい…ry…」
通信があっという間に途切れてしまった。
「通信障害か!装者たちはすぐに現場へ!スフィアゴーストが街に出るのを防ぎ、元凶を倒すんだ!」
響たちはすぐに現場へと向かった。
「ツタンカーメンねえ、ミイラと関係あるかと思ったらそうでもないのね。」
「ツタンカーメンにミイラって…漫画の見過ぎじゃない、アケミ?」
「でもピコデビモン!それ言っちゃったらマミーモンとかミイラなのに進化したらファラオっぽくなってるけどそこはどうなのよ?」
「うーん…ごめん、よくわかんないや。」
第92回 アケミ、ピコデビモン(inSONG本部)