東方黒龍記 ~守りたい者達~   作:黄昏の月人

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その幼き妖怪との出会いは、少年に何をもたらすのだろうか。


第8話 宵闇との邂逅

「じゃあな静也、また明日」

そう言って真は妖夢と一緒に飛んで行った。

「いいな、僕も空を飛びたい」

「お前の能力なら飛べるんじゃないのか?」

「それができないんだよね。

 人は空を飛べないっていうのが世界の理だからね」

「名前だけ聞くとすごそうだけど、静也の能力って案外大したことないのね」

肩を落とす僕に霊夢が追い打ちをかけてくる。

自分でもわかってるんだけど、それを言われるとなぁー。

「ま、そんなことより早いとこ香霖のとこに行こうぜ」

「魔理沙も来るの?」

「当然だぜ。それじゃあ私は先に行ってるからな」

そう言って魔理沙はあっという間に飛び去った。

すごい速さだな。

「まったく、箒で行くのなら後ろに静也を乗せていけばいいのに」

あ、それは僕も考えてなかったな。

でも、さすがに女の子の後ろに乗るのはな~。

「ま、過ぎたことを言ってもしょうがないか。

 私たちも早くいきましょう。

 夕方までには帰りたいし」

「そうだね。案内よろしく頼むよ、霊夢」

「任せなさい」

歩き出した霊夢の後ろを半歩遅れでついていく。

それから10分ぐらいたったかな。

ようやく長い階段を下りて今は森の中を歩いてる。

なんであんなところに神社を立てたのかな?

参拝客が来ないのって、たぶんあれの・・・

僕は思考を中断させて足を止めた。

その突然の行動に霊夢も僕の方を振り向いて止まる。

「静也、どうかしたの?」

僕はそれに答えず、静かに『黒龍』を抜き少し先の林にすべての注意を向ける。

「何か、いる」

僕が告げると、霊夢も林の方を向いてお札を取り出した。

半身を引いて構えながら、左手は常に『白竜』を抜けるように添えておく。

「守龍の心得、護衛対象、博麗 霊夢」

そっとつぶやくと同時に頭が冴えていき、霊夢を守ること以外を思考から外す。

僕と霊夢が見つめる先で林から人影が出てくると同時に、うつぶせに倒れた。

「な!?」

僕は心得を解いてその人影に駆け寄る。

倒れこんだのは見た目10歳前後で黒い洋服を着ていて、

短い金髪の上に大きな赤いリボンが特徴の女の子だ。

「きみ、大丈夫!?」

どうしてこんな森の中に女の子が?幻想郷って結構危ないところのはずだよね?

「おなかすいたぁ~」

まさかの行き倒れ!?

呆然とする僕に女の子が目を向ける。

「あなたは、食べてもいい人類?」

その言葉とともに、かすかに感じる妖力。

とっさに刀に手が伸びかけたけど、途中でやめて笑みを浮かべる。

「食べないでくれると嬉しいかな」

「そうなのか~」

僕の言葉に残念そうにしているけど、

人間を食べられなかったからではなく、

おなかを満たせなかったからのように見える。

やっぱりこの子・・・

「あら、ルーミアじゃない」

「霊夢、知り合い?」

「ええ。その子はルーミア。人食い妖怪よ」

「やっぱり」

「気づいてたの?」

「うん、この子からは妖力を感じたからね」

「そのわりには警戒しないのね」

「確かに食べてもいい人類なんて聞かれた時は驚いたけど、

 この子、ルーミアからは攻撃的な意思を感じなかったし、

 何より血の気配(・・・・)を感じない」

「血の気配?」

「人妖関わらず、生物を殺めたことのあるものは必ず血の気配をまとう。

 これは決して消すことのできない証になる。

 職業柄、そういうのには敏感でね」

「ふーん」

霊夢に説明しながら鞄の中を確認する。

確かこの辺にいつも入れてたはずなんだけど・・・あった。

「これ、食べる?」

僕が差しだしたのはカロリー〇イト。

学校帰りにそのまま仕事が入ってくることが多くて、

そういう時に限って長丁場になる。

だから鞄の中に常に保存食を入れておいたんだよね。

まさか学校帰りに異世界に迷い込むとは思はなっかたけど。

ルーミアは初めて見る食べ物のせいか、しばらくにおいをかいだ後一口食べた。

「おいし~い!」

おいしいかな?簡易食料だから味はいまいちだと思うけど。

初めて食べる味だからかな?

それとも単に空腹のせい?

ま、いっか。喜んでるんだから。

箱の中身がなくなると、ルーミアは満足そうに立ち上がった。

「ありがとう。すごくおいしかった!

 私はルーミア。あなたは?」

「僕は龍導院 静也。よろしくね、ルーミア」

「うん、よろしくね!

 それじゃあまた今度。バイバイ静也、霊夢」

「バイバイ、ルーミア」

「もう行き倒れるんじゃないわよ」

「はーい」

その言葉を最後に、ルーミアは飛んで行った。

本当にみんな飛べるんだな。

「さぁ、私たちも早くいきましょう」

「魔理沙も待ちくたびれてるかもしれないしね」

そう言って、僕たちはまた香霖堂にむっかて歩き出した。




ルーミアと出会い、触れ合った静也。
香霖堂までは、あと少しである。
それでは次回を乞うご期待。

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