「じゃあな静也、また明日」
そう言って真は妖夢と一緒に飛んで行った。
「いいな、僕も空を飛びたい」
「お前の能力なら飛べるんじゃないのか?」
「それができないんだよね。
人は空を飛べないっていうのが世界の理だからね」
「名前だけ聞くとすごそうだけど、静也の能力って案外大したことないのね」
肩を落とす僕に霊夢が追い打ちをかけてくる。
自分でもわかってるんだけど、それを言われるとなぁー。
「ま、そんなことより早いとこ香霖のとこに行こうぜ」
「魔理沙も来るの?」
「当然だぜ。それじゃあ私は先に行ってるからな」
そう言って魔理沙はあっという間に飛び去った。
すごい速さだな。
「まったく、箒で行くのなら後ろに静也を乗せていけばいいのに」
あ、それは僕も考えてなかったな。
でも、さすがに女の子の後ろに乗るのはな~。
「ま、過ぎたことを言ってもしょうがないか。
私たちも早くいきましょう。
夕方までには帰りたいし」
「そうだね。案内よろしく頼むよ、霊夢」
「任せなさい」
歩き出した霊夢の後ろを半歩遅れでついていく。
それから10分ぐらいたったかな。
ようやく長い階段を下りて今は森の中を歩いてる。
なんであんなところに神社を立てたのかな?
参拝客が来ないのって、たぶんあれの・・・
僕は思考を中断させて足を止めた。
その突然の行動に霊夢も僕の方を振り向いて止まる。
「静也、どうかしたの?」
僕はそれに答えず、静かに『黒龍』を抜き少し先の林にすべての注意を向ける。
「何か、いる」
僕が告げると、霊夢も林の方を向いてお札を取り出した。
半身を引いて構えながら、左手は常に『白竜』を抜けるように添えておく。
「守龍の心得、護衛対象、博麗 霊夢」
そっとつぶやくと同時に頭が冴えていき、霊夢を守ること以外を思考から外す。
僕と霊夢が見つめる先で林から人影が出てくると同時に、うつぶせに倒れた。
「な!?」
僕は心得を解いてその人影に駆け寄る。
倒れこんだのは見た目10歳前後で黒い洋服を着ていて、
短い金髪の上に大きな赤いリボンが特徴の女の子だ。
「きみ、大丈夫!?」
どうしてこんな森の中に女の子が?幻想郷って結構危ないところのはずだよね?
「おなかすいたぁ~」
まさかの行き倒れ!?
呆然とする僕に女の子が目を向ける。
「あなたは、食べてもいい人類?」
その言葉とともに、かすかに感じる妖力。
とっさに刀に手が伸びかけたけど、途中でやめて笑みを浮かべる。
「食べないでくれると嬉しいかな」
「そうなのか~」
僕の言葉に残念そうにしているけど、
人間を食べられなかったからではなく、
おなかを満たせなかったからのように見える。
やっぱりこの子・・・
「あら、ルーミアじゃない」
「霊夢、知り合い?」
「ええ。その子はルーミア。人食い妖怪よ」
「やっぱり」
「気づいてたの?」
「うん、この子からは妖力を感じたからね」
「そのわりには警戒しないのね」
「確かに食べてもいい人類なんて聞かれた時は驚いたけど、
この子、ルーミアからは攻撃的な意思を感じなかったし、
何より
「血の気配?」
「人妖関わらず、生物を殺めたことのあるものは必ず血の気配をまとう。
これは決して消すことのできない証になる。
職業柄、そういうのには敏感でね」
「ふーん」
霊夢に説明しながら鞄の中を確認する。
確かこの辺にいつも入れてたはずなんだけど・・・あった。
「これ、食べる?」
僕が差しだしたのはカロリー〇イト。
学校帰りにそのまま仕事が入ってくることが多くて、
そういう時に限って長丁場になる。
だから鞄の中に常に保存食を入れておいたんだよね。
まさか学校帰りに異世界に迷い込むとは思はなっかたけど。
ルーミアは初めて見る食べ物のせいか、しばらくにおいをかいだ後一口食べた。
「おいし~い!」
おいしいかな?簡易食料だから味はいまいちだと思うけど。
初めて食べる味だからかな?
それとも単に空腹のせい?
ま、いっか。喜んでるんだから。
箱の中身がなくなると、ルーミアは満足そうに立ち上がった。
「ありがとう。すごくおいしかった!
私はルーミア。あなたは?」
「僕は龍導院 静也。よろしくね、ルーミア」
「うん、よろしくね!
それじゃあまた今度。バイバイ静也、霊夢」
「バイバイ、ルーミア」
「もう行き倒れるんじゃないわよ」
「はーい」
その言葉を最後に、ルーミアは飛んで行った。
本当にみんな飛べるんだな。
「さぁ、私たちも早くいきましょう」
「魔理沙も待ちくたびれてるかもしれないしね」
そう言って、僕たちはまた香霖堂にむっかて歩き出した。
ルーミアと出会い、触れ合った静也。
香霖堂までは、あと少しである。
それでは次回を乞うご期待。